最後の放送

デスピサロ、エドガー、デッシュサマンサ、そしてゼニスの五人は城の中を駆け回っていた。
部屋という部屋の中に入り、目的のオブジェが存在しないか確認する。
中には金銀財宝が詰め込まれた部屋もあったが、それもスルーして探し続けた。

暫くして、デスピサロは何か妙だと感じた。
敵と遭遇するときの状況が変わったような気がするのだ。
コレまではある程度集まって一気に押し寄せていたのだが、今は単体行動している魔物と遭遇する事が多い。
アルスたちに気を取られている可能性もあるが、それにしても妙だ。

そんなとき、曲がり角の向こうに、数体の魔物がいるのを見つけた。
こちらの様子には気付いていないようである。
デスピサロはエドガーとサマンサに無言で合図をすると、死神の鎌を構えた。

「しかし、暇だな。エビルマージめ、ゾーマさまのお気に入りだからって、調子に乗りすぎじゃねぇか?」
トロルキングの愚痴を、マントゴーアは半眼で受け流す。
エビルマージから仮想世界形成機のある部屋を守るように命令されたマントゴーア、トロルキング、ソードイドの三体は部屋の前までやってきたのだが、トロルキングはエビルマージの専横が気に入らず、ソードイドは黙して語らない。
協調性はまるでない。もっとも、魔物にはそもそもそんな概念自体ないのだが。
しかし、バルログたちも出て行って戻らない。敵は思った以上に出来るようだ。
油断をしていたらやられる…そう、諭すべきだろうか。マントゴーアが思ったその時。

轟!

「がぁぁ!!」
トロルキングの全身を、紅蓮の豪華が包んだ。

はっと我に帰った時には、2つの閃きがトロルキングを切り裂き、絶命させる。
「敵襲――――!」
マントゴーアは魔法を防ぐべく障壁を張り、ソードイドの複数の腕が敵目掛けて振り下す。
だが、鎌を持つ銀色の髪の男はソードイドの攻撃を一つ一つ跳ね返し、逆に腕ごとバラバラにしてしまう。
もう一人、金髪の男は魔法を唱えずボウガンを射てマントゴーアの瞳を潰すと、
返す刀で切りかかる。銀髪の男もその攻撃に加わる。
こうして、魔物たちは成す術も無く全滅した。

「上手くいったようだな」
剣を収めるエドガー。デスピサロは魔物たちが守っていた部屋の扉の前に立つ。
どうも、妙だ。何か、操られているような、気分の悪さがあった。
この魔物たちがここにある何かを守っていたようだった。
しかし、その割りには警戒は薄く、戦力も中途半端である。
まるでワザと、この部屋に誘導したような……そんな感じがした。

ワナ、か?そんな考えがよぎる。
それは部屋の中に自分たちが探していたミニチュアがあったことで、更にかき立てられた。
「コレだ!よし……」
早速作業に取り掛かろうとするデッシュに、デスピサロは念の為告げる。
「何が起こるかわからん、くれぐれも慎重にやれ」
「ああ、わかってる」
デッシュはそう言うと、パネルをたたき始めた。
出鱈目に叩いているようにも見えたが……どの道、ここはデッシュに任せるしかない。

「んー、なんじゃこれは」
部屋の片隅で、ゼニスが何かを見つけたようだった。
それを見たデスピサロはますます不信感を高めた。
それには、魔界の文字で、操作説明書と書いてあったのだ。

どういうつもりだ?このような重要品を、何故こんな場所に置く?
そんな疑念はあったが、デッシュの元に言って、説明書の中身を解説する。
なるほど、と相槌を打って計器を作動させていく様子から察するに、
本物の操作説明書であるのは間違いないようだ。しかし何故こんなものがあるかはわからない。
そうこうしているうちに、デッシュの調査は完了したようだった。

「よし、こいつの動かし方は大体わかった。このスイッチを押してこいつに喋りかければ、
 仮想世界の中に放送をかけることが出来るみたいだな」
と言って、ミニチュアの脇についている黒いマイクと、あるスイッチを指差す。

「それから、このあたりの計器を使って、仮想世界とここを繋ぐゲートを作る事が出来るみたいだ」
そう言いながらパネルの幾つかを叩くと、ミニチュアを覆うドームに数種類の文字が浮かび上がる。
「ただ……ゲートを開く事が出来るのは、指定した一つの座標のみのようだ。
 複数の場所から、ここに転送する事は出来ない仕組みらしい。
 つまり旅の扉はまた別のシステムを使ってる可能性があるな」
「そうか。 ……とにかく、皆に呼びかけよう」
エドガーの言葉に頷くデッシュ。サマンサもどこと無くほっとした表情である。

デスピサロは……少し考えた。怪しい。危険かもしれない。理性はそう言っている。
だが、何かをしないといけない、黙っていたら流されるだけだ、そうも言っていた。
だから。
「私は周囲の警戒をする。そちらは任せるぞ」
そう言うと、入り口の側に立った。
ここにいれば、何かが来る事をすぐ察知できる。何があっても対応も出来るだろう。
ワナだというのなら、正面から破ればよい。それだけのことだ。

「放送の前に、どこにゲートを作るか指定しないと」
「ゲートはどれくらいもつんだ?」
エドガーの質問にデッシュは首を横に振る。そこまではわからない、と。
「……そうか。では、なるべくわかりやすい場所にしないといけないな」
「このでかいビルの屋上は?」
「相当高いぞ?わかりやすいが、大変すぎるだろう。
 ……ビルの正面入り口にしよう、それならわかりやすいし、移動も楽だ」
「わかった。ちょっと待ってくれ……」
計器を操作するデッシュ。
完了したのを見計らって、エドガーはマイクを手に取った。

「この巫山戯たゲームに参加している全ての者に告げる。
 私の名はエドガー=ロニ=フィガロ。
 君たちと同じ偽りの世界にて殺し合いをさせられていた者だ。
 私は今、君たちと同じ世界にはいない。私はゲームが始まる前にいた場所にいる。
 とある方法で脱出した我々は、打倒ゾーマを目指して始まりの場所に舞い戻った。
 そして君たちに呼びかける。我々とともに、ゾーマを倒そう、と。
 これまでに幾つも命が奪われた。親しき者を亡くし、悲嘆に暮れている者も多いだろう。
 その元凶は何だ!
 ……状況に流され、手を血に染めた者も確かに悪い。
 だが、そんな者より遥かに悪しき者が、討たねばならぬ者がいる筈だ!
 故に、我々は皆に呼びかける。戦おうと。悲しみを終わらせようと!
 ……これより、君たちのいる世界に、この城に通じるゲートを開く。
 場所は、その世界の中心にある巨大なビルの正面入り口前だ。
 志在るものは、ゲートよりゾーマの城に来たれ。そして我々と共に戦おう!
 繰り返す、場所は中央の巨大なビルの正面入り口前。
 ゲートが何時まで維持できるかわからない。
 勿論こちらも最善は尽くすが、なるべく早く決断してもらいたい。以上!」

【デスピサロ 所持品:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌】
【エドガー 所持品:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧 スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5】
【デッシュ 所持品:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5】
【サマンサ 所持品:勲章 星降る腕輪 手榴弾×1】
 以上
【第一行動方針:参加者が訪れるのを待つ
 最終行動方針:ゾーマ打倒】
【現在位置:ゾーマの城】

【ゼニス 所持品:アンブレラ 羽帽子?
 基本行動方針:最後まで物見遊山?】
【現在位置:ゾーマの城】


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最終更新:2011年07月17日 21:49
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