とんぬらは落ち着いて出てくるように
バッツと
エーコに指示すると、再び
アイラのほうを見た。
動く気配はない。迷っているような、そんな印象を受けた。
何を躊躇っているのか、何を恐がっているのか。それはわからない。
魔物使いとはいえ、そこまではわからない。ただ戸惑い、恐れている。
それだけがわかる。あとはそれを受け入れるだけだ。
「出ておいで」
優しく声をかける。荒ぶる魂を鎮める音、虚ろな魂を揺らす音。
魔物は孤独だ。他と違うが故の、あるいは力があるが故の孤独を常に背負っている。
それを受け入れ、あるいは慰め、共に在ろうとするのが魔物使いだ。
それゆえに、その言葉にはある種の強制力が篭る。
アイラはバラックの影から姿を現した。
その姿を見てとんぬらは形のよい眉を歪める。
やや衣服は汚れてはいたが、
ゾンビ状態のアイラはそのままだ。
ただし、左の手がない。肘から少し先のあたりから、何も存在していなかった。
「これは」
巻いてあった布に触れる。若干血で染まってはいたが、思ったほどではないと思った。
ゾンビ状態のお陰か、血液の流れも止まって最低限ですんだということか。
しかし、何にしても処置をとる必要があると思う。
とんぬらはやってきたバッツに事情を話すと、アイラを見てもらうことにした。
応急処置レベルなら出来なくもないが、知識のある彼に聞いた方が良いと判断したからだ。
バッツは出血が止まっている事を確認して、切断面を覆った布を取る。
切断面は非常に綺麗だった。血管もほとんど潰れていない。よほど鋭利な刃物で、熟練した者が切ったのだろう。
更にアイラがゾンビ状態である事、切断した場所が零下だったことも優位に働いたようだ。
きちんと処置をすれば、指輪をとっても命に関る事はないだろう。
そう告げると、とんぬらはほっと表情を緩めた。
「それじゃ、早速その処置をしよう」
「ああ。まずはしっかり消毒して、それから切断面を焼く。しばらくは痛むけどな」
「そこは回復魔法で何とかするさ。我慢、できるかい?」
頷くアイラに、とんぬらは優しく微笑む。いい子だ、と。
とんぬらはアイラを連れて適当な家に入った。
程無く、酒場から酒を持ち出してきたバッツも入っていく。
エーコは、動き回る二人を呆然と見ていた。
こういうとき、自分は無力だと思う。それは嫌なことだ。
何かすることはないかと探すけれど見つからない。それは嫌いなことだ。
結局、自分はどうしようもなく子供だと思う。それは嫌なことだ。
こうして、待つだけしかない状態も。
処置は滞りなく終わった。痛覚のないアイラは大人しく、問題も発生しなかった。
アイラを連れて酒場に戻る。起きていたのは
アーロンだけだったが、
一度戻ったバッツが説明しておいたので、驚く事はなかった。
「なるほど、確かに死人だ」
淡々とそう語っただけである。その中に微妙な感情が含まれていたが、気付く者はいない。
クーパー、アニー、
リディアはまだ眠っていた。
クーパーのシャナクでアイラの呪いを説こうと考えていたが、無理に起こすのも酷だろう。
目覚めるのを待って、万全の状態で挑んだ方が結果も良くなる筈だ。
再び、周囲を静寂が満たした。静かで、ある意味平和な時間が再び始まる。
それが破られるのは、日付が変わる夜更けだった。
【
とんぬら 所持品:
さざなみの剣
第一行動方針:子供たちを守る
第二行動方針:
パパスとの合流】
【アニー(睡眠中) 所持品:
マインゴーシュ
基本行動方針:とんぬらについていく】
【エーコ&モーグリ 所持品:なし
第一行動方針:?】
【アーロン 所持品:折れた鋼の剣
第一行動方針:体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
【バッツ@薬師(アビリティ:白魔法)
所持品:
ブレイブブレイド グレネード五個 レナのペンダント
第一行動方針:パパスを捜す
基本行動方針:クーパー達と共に行動する
最終行動方針:ゲームを抜け、
ゾーマを倒す】
【リディア(魔法使用不可)(睡眠中) 所持品:なし
第一行動方針:アーロンの治療を見守る
第二行動方針:仲間を捜す?】
【クーパー(睡眠中)
所持品:
珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
第一行動方針:とんぬらについていく
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損、処置済み) 所持品:チェス板、駒
死者の指輪 ダイヤソード
第一行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらを探してついていく。死者の指輪が外れたら???】
【現在位置:七番街スラム】
最終更新:2011年07月16日 22:00