ふんっ!ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんっ!」
「ぬっ、ぬおおっ?おおおおおおおおっ!」
2種類の奇妙な雄叫びが、
ゾーマの城に響き渡る。
雄叫びを上げている片方…あらくれ仮面の鋭い一閃を、もう片方が、
バラモスゾンビが受け止めた。
鋭く冷たい輝きの
グレートソードを骨だけの掌で受け止めて、逆の手であらくれ仮面の顔面を狙う。
あらくれ仮面はグレートソードから片手を離し、手首の部分を鷲掴みにする。
そこで動きは止まり、力と力の拮抗に、みしみしと鈍い音が響く。
「ぬ、き、きさまは?」
バラモスゾンビは間近に迫ったあらくれ仮面の両の目を見て、それが誰であるかに気づいた。
アルスよりも早く、たった一人でゾーマの城にたどり着いた…そう、名前は
「お、おる…」
「シィィィィッ!そこでストップっ!」
出てきかけた名前を、あらくれ仮面が押しとどめる。
「その話は後でゆっくりと、だ。ここでは不味い。かなり不味い。マジ不味い」
覆面下の表情が容易に推察できるほど必死になって、あらくれ仮面が言う。
何となく断りづらく、バラモスゾンビはこくこく頷いた。
「なんというか…たいへんだな」
「…ほおっておいてくれ」
一瞬疲れた視線が絡み合い、その直後にはお互いが弾かれたように間合いを取っていた。
「凄く…強いわね、あの人」
「…うん、ちょっと信じられないくらいね」
あらくれ仮面VSバラモスゾンビの様子を見ながら、
ティナとアルスは呆然と呟いた。
いきなりアレが出てきた時はさすがに色々な事を…死まで含めて…一瞬覚悟したが。
まさか自分たち四人が束になってかかっても苦戦するような相手と互角に渡り合っているとは、にわかに信じがたい。
しかもあのあらくれ仮面の動き、誰かに似ているような…。
(いや、こうしてる場合じゃないんだ)
アルスはぼおっとしてしまっていた自分に渇を入れ、
天空の剣を手に取った。
「二人を…頼む!」
傍らのティナに
バーバラと
ライアンを頼み、立ち上がる。
脇腹の傷は治癒しきっていない、というかほとんど治っていないが、このまま座っているわけにも行かない。
そして剣を構えようとして、そして、愕然とした。
(重い…?!っ)
ついさっきまでは普通に振り回せていたはずの天空の剣が、ずっしりと鉛のように重い。
傷のせいで。とも思うが、違う。物理的に、剣が重たくなっている。
『資格がある者なら、自ら私の所へ来るはずだ。お前は私を持っていればよい』
(まさか、そう言う事か!?)
以前、一度だけ口を利いた天空の剣の言葉を思い出す。
資格がある者がいるなら、剣はその人の者。その瞬間剣は自分の物ではなくなり…。
「くそっ!」
思わず毒づいて、無理矢理剣を構える。だが、すでに視界の中に2人は居なかった。
遠くに剣戟の音が聞こえる。あの2人は戦っている内に、かなり遠くまで行ってしまったらしい。
「バラモスっ…!」
アルスは音のする方に走っていこうとするが、脚をもつれさせてあっさり転ぶ。
出血が脚にまで来ているのか、と思いながら、アルスは顔面を地面に埋める覚悟を決めた。
「アルス君ッ!前!」
ティナの声が聞こえる。慌てたような声で…え?前?
どん、と、衝撃と共にアルスの身体が止まる。
自分の胸を支える腕の感触。それを掴んで身体を起こすと…
「
ティーダ!」
「へへへ…久しぶりッスね」
恥ずかしげに頬を掻くティーダが、そこにいた。他にも知った顔が、何人か。
最終更新:2011年07月18日 08:32