まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

08話 - ピチューの怒り

最終更新:

f29m1

- view
管理者のみ編集可
「こうなったら乗り掛かった船だ……」と、マリルリは覚悟を決めた!

マリルリ
「えーと、みなさん初めまして。紹介されましたマリルリです。N.Nは特にありません。よろしくお願いします!」

 ぺこりとお辞儀すると再び拍手が木霊する。どうにかうまく挨拶できたようでホッとし胸を撫で下ろした。

チャーレム
「ほらほら! どうせならもっと面白くアピールしなよ。二つ名つけるとかさ♪
 深海の騎士ポセイドン・マリルリ・ラ・スプラッシュブレードなんてカッコよくない?」
マリルリ
「すいません全力で遠慮します!!」
チャーレム
「えー? 自信作だったのに」
ムクホーク
「ここでの暮らしでわからない事があれば何でも聞け。おまえ達もちゃんと教えてやれよ」
一同
「はい!」
マリルリ
(……それにしても、♀だけのボックスに♂が混ざるって言うのにみんな堂々としてるなあ。まさか僕♂扱いされてないとか……、まさか、ね……)
ムクホーク
「時間を取らせてすまんな。皆も異義は無いな」
ピチュー
「あたいはヤダよっ!!」

 騒がしかった部屋が急に静まりかえった。怒りの色をあらわにし、力強い口調で続けるピチューに全員が釘付けとなった。

ピチュー
「みんな何考えてだよ! こんなヘタレそうな水ウサギ野郎をボックスに入れるなんて!!」
ムクホーク
「そう言うな。そもそもここに入ったのも彼自身の意思では無いのだぞ」
ピチュー
「だったらこんな奴、倉庫にぶち込んどけばいいだろ! ギタギタに畳んで縛って丸めて塩漬けにして!!」
マリルリ
(う、うわあ……。なんかすごい事を言われてる……)
ムクホーク
「言っている意味がわからんのだが……。特に最後」
ピチュー
「とにかくっ! このボックスにこんなヘタレ軟弱チキン野郎がいるなんてあたいは絶ーーーー対! 嫌だ!!」
ムクホーク
「意味が重複してるぞ。それにイーブイ10匹が来た時は♂が8匹もいたのに平気だったではないか」
マリルリ
「え?」
ピチュー
「あ、あいつらは集団だから、むしろOKなんだよ!! それにあいつらはちょっと他のボックスに場所が無いから一時的に来ただけで、しかもまだこのボックスが♀ポケモン専用じゃない頃の話だろ!?」
ムクホーク
「だがある程度ボックスの方向性が決まった後に、『ととろ』が迷い込んで来た時もとも仲良くしてたじゃないか」
ピチュー
「全然仲良くなんかしてねーよ!! アイツ大飯ぐらいだったし! いつも寝てるし、イビキがうるさいし最悪だっ!!」
ムクホーク
「体に登って遊んだり、腹で跳ね回ったりしていたのに?」
ピチュー
「だーーー!! あれは違げーよ! アイツはあたいのシモベだったんだ!!」

 ピチューはすでに余裕が無く必死になっているが、その攻撃……、もとい『口撃』は、さらりとムクホークにかわされている。
 心なしかピンク色の電気袋もほんのり赤く染まっている。

マリルリ
「あの……、話が見えないんですけど……」
チャーレム
「『ととろ』ってのは前にマリルリみたいにここに間違って放りこまれた♂のカビゴンのN.Nね」
マリルリ
「ええっ?」
チャーレム
「実はさ、ここによそのボックスのポケモンが迷い込むのって始めてじゃないんだよね~」
ノクタス
「ちなみに君で4回目。もうみんな慣れちゃってるってカンジ」
チャーレム
「とか言って、アンタ思いっ切りのぞきと勘違いしてたじゃない」
ノクタス
「だから~! それはうっかりなの! 不可抗力!!」
マリルリ
「そ、そうだったんだ……」
(僕が最初じゃなかったんだ。なんかホッとしたような、残念なような……)

ムクホーク
「バルビートには特に文句がなかったのではないか? 特に不満は聞いた覚えがないのだが」
ピチュー
「アイツが一番くせ者だったじゃねーかよ!! 地味で無害だと思ったら、イル姉連れて出て行きやがった!」
ムクホーク
「それは誤解だ。バルビートとイルミーゼはセットの方が映える、というトレーナーの意思だ」
ピチュー
「ふざけんな! こっちのことも知らないくせに馬鹿トレーナーが!!」

 マリルリは複雑な想いをしていた。ずっとボックスにいるとあんな風になってしまうのだろうか?
 自分はよくボックスを出入りしている。だけどトレーナーの元でそれほど活躍しているわけではない。

マリルリ
(お気に入り……か。……ムクホークさんはLv100だって言ってたっけ。当然ずっと手持ちにいてトレーナーの近くにいたんだろうな。
 きっとバトルでも大活躍していたんだろうし。ボックスに預けられたままのポケモンはトレーナーに見てもらえないから、だからあのピチューはあんな風になっているってことなのかな……? だけど、だったら僕は……)



マリルリ
「なんか疲れたな……」
ブースター
「大変だったねマリルリ君」
マリルリ
「あ、ブースターさん」

 声をかけられて振り向くとブースターが駆け寄って来た。ふわりと体毛をなびかせてマリルリの隣に並ぶ。

ブースター
「新入りの挨拶ってみんなやらされるのよね。私も始めて挨拶した時は緊張しちゃって。でも私の時は兄弟みんな一緒だったからよかったかな」
マリルリ
「みんな? あ、ひょっとしてさっきの……」
ブースター
「そ。さっきの話に出て来たイーブイ10匹のうちの1匹が実は私なんだ」
マリルリ
「そうだったんですか」
ブースター
「あの後みんなで別のボックスに引っ越したんだけど、私と妹が進化してからまたここのボックスに来たの。それからずっとこのボックスがメインの待機場所ね。たまに外に出たりもするけどね」

 その明るい笑顔と声にマリルリのモヤモヤした気分はスウッと消えていった

マリルリ
(……いや、大丈夫。きっとこれから仲良くなれるさ)
ウィキ募集バナー