まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

07話 - 確執

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f29m1

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 暫くの間、重い沈黙が続いた。
 きこえる音といえば、デリバードとエネコが、みんなの夕御飯を料理している音だけであった。

ゲンガー
「なあ……」

 沈黙を破ったのはゲンガーだった。

ゲンガー
「ガーディ。お前はさっき、『長期間放っておいて、終いには預けたことすら忘れてしまうトレーナーもいる』っていったよな……。本当にそうだと思ってるのか?」
ガーディ
「……どうゆう意味よ」

 ゲンガーの質問に、ガーディは顔をしかめて、ゲンガーに答えを求めた。その声に、少しばかりの怒りが込められていることに、気づいた者はいない。

ゲンガー
「俺がいいたいのは、つまり、トレーナーを信じろってことだよ」
ガーディ
「トレーナーを……、信じろですって?」

 確かに、ゲンガーのいってることは正しかった。

『ポケモンは友達』、『人間とポケモンは強い絆で結ばれている』
 これは、初めてポケモンと触れ合う者が、最初に教えられる言葉だ。
 そして、多くのトレーナーがそれを心に刻み、今日まで、ポケモンたちとの信頼を築いてきたのである。
 だから、ポケモンバトルをするときも、お互いの信頼関係は欠かせないのだ。
 トレーナーは自分のポケモンを信じて指示を出し、ポケモンはトレーナーを信じて指示通りに動くのである。

 いつの間にか、ガーディの目には涙が浮かんでいた。
 ここで初めて、ガーディの異変に気づいたキレイハナは、これ以上話が続くと、さらにガーディの心が傷つくと思い、話の趣旨を変えようとした。

キレイハナ
「もうこの話止めよう? 違う話しない?」

 ロコンも、この嫌な流れを変えようと、ガーディに声をかけた。

ロコン
「そ、そうですよ。ね? ガーディ……」
ガーディ
「私はゲンガーと話しているのよ!?
 キレイハナとロコンは邪魔しないで!」

 ガーディは、怒鳴りつけるように2匹にいった。
 彼女に返す言葉がなく、2匹は俯いてしまう。
 一方、ガーディはゲンガーを睨みつけるように、彼の目を見ていた。

ガーディ
「じゃあ、逆にきくけど、私たちをこんなところに閉じ込めておいて、トレーナーの何を信じろっていうのよ!?」

 ガーディの目に、涙が溜まっていることにも気づかず、ゲンガーは次の言葉を放つ。

ゲンガー
「じゃあ、お前はトレーナーを信じないっていうのか!?」
ガーディ
「信じないわ! どうせ人間なんて、そんな生き物なのよ!!」

 ガーディは、堪えきれなくなった涙を流しながら、吐き捨てるような大声で、ゲンガーに怒りをぶつけた。
 そして、自分の部屋へと走って行ってしまった。

ゲンガー
「おい! 待てよ!」

 ゲンガーはガーディを止めようとするが、キレイハナの言葉に遮られてしまった。

キレイハナ
「ゲンガー! あんたいい過ぎよ!」

 キレイハナは、バンとちゃぶ台を叩いて、ゲンガーを睨みつけた。

ゲンガー
「なんだよ。俺が悪いってのかよ!」
キレイハナ
「ええ! そうよ! あんた自分がガーディに何ていったか分かってんの? ガーディの事、何にも知らないくせに!」
ゲンガー
「ああ! 知らないさ! 今日初めて会ったんだからな!
 知るわけねえだろ!?」
キレイハナ
「何よそのいい方! 反省すらしてないの?」
デリバード
「ちょっと、どうしたのよ?」

 この騒ぎに気づいたデリバードが、心配してちゃぶ台の様子を見に来たのだった。
 暫く、キレイハナと睨み合いをしていたゲンガーだったが、「フンッ」と、そっぽを向いて、自分の部屋へと戻って行く。

デリバード
「ちょっと、ゲンガー!」

 デリバードは、ゲンガーを止めようと追おうとしたが――

キレイハナ
「放っておきなさいよ。あんな奴なんか」

 と、キレイハナに止められてしまった。
 デリバードは、ただ、部屋に戻って行くゲンガーの背中を、見守ることしかできなかった。
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