まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

06話 - 世界に引きこもるハナ

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f29m1

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 クサイハナの習性を知ってるか? あのポケモンは、危険だとかストレスだとかを感じると、自分を守るために臭いにおいを出すんだ。そうでない時は、甘いミツみてーにイイ匂いだって出せるんだぜ。
 あんな所に閉じ込めてちゃ、あいつは一生クサイ臭いを出し続けるだろう。そんなの可哀相じゃねーか。

ゴウカザル
「朝飯、持ってきたぜ」
クサイハナ
「えっ」

 2重扉の小窓から朝飯を差し入れると、隙間から腐臭が漏れ出した。臭いが昨日より強くなってるのは、こいつがオレに負い目を感じてるからだろう。

クサイハナ
「……ごめんなさい。昨日は、私の臭いのせいで……」
ゴウカザル
「ちげーよ。昨日は腹が痛かったんだ、知らないポケモンばかりに会ったからな。オレ、ポケ見知りだし」
クサイハナ
「ふふっ……」

 お、笑ったぜ。なんだ笑えるじゃん、こいつ。

クサイハナ
「私もね……、ポケ見知りなの。すぐに緊張して、くさい臭いが出ちゃって……。だから、自分でここに……」
ゴウカザル
「なんだって?」
クサイハナ
「そうすれば、みんなに迷惑かけないもの」

 なんてこった。これは予想外だぜ……。みんなのために、自分で引きこもってるだと? そんな馬鹿げた話があるか。

ゴウカザル
「誰かにそう言えって言われたのか」
クサイハナ
「違うの。ここで待っていれば、きっとトレーナーさんが連れていってくれる。だから、待ってるの」
ゴウカザル
「……慰めても仕方ねえから言ってやるが、あのトレーナーはそんなヤツじゃあねえ。ここでストレスを溜めて、クサイ臭いを出し続けてるお前を連れていくなんて、有り得ないぜ」

 自分でもイヤな事を言ったと思う。嘘をつけねえ性格ってのも考えものだな。またニオイが強くなってきたから、オレは「また来るぜ」と言って去った。柳沢慎吾の真似をする余裕はなかった。
 だが、どうしようもない状況ではなさそうだ。クサイハナが笑った時、一瞬だけ臭いが消えたんだ。
 彼女に必要なのは、リラックスできる友達だ。
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