ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アヌビス神-6

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匿名ユーザー

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 熱狂なんて物は、覚めれば何をしていたのだろうと思うものである。
 だが少し覚めずに、燻り続ける人なんてのもいたりする。
「何が愛の男だっ!このぼくの前で、よくもそんな事が言えたな、このお漏らしギーシュ!」
「“マゾ”コルヌに言われたく無いよ!しかも昨日の晩全裸で疾走してたそうじゃないかこの変態っ」
 先日より男子生徒達は、派閥真っ二つに分かれている。
 各々の派閥リーダーはギーシュとマリコルヌだ。いや『ギーシュさん』とマゾコルヌ。
 ぶっちゃけて言えば、女居る派と居ない派である。もしくは、ノーマルな性癖派と歪んだ性癖派。
「女までお漏らしじゃないか、このお漏らしギーシュ」
「な、ななななななっ、モンモランシーを侮辱する事は許さないぞ」
「そうだぞこのマゾが!俺たちの『ギーシュさん』の大切な人になんて事を」
「マゾマゾ五月蝿い、僕はマリコルヌだ!
 そもそも誰だ、僕の事をマゾだなんて言いだしたのは!
 しかも全裸で走った覚えなんかねええええええっ!!!!」
「僕だってモンモランシーだって、お漏らし呼ばわりされる憶えは無いぞ。
 誰だそんな事を」

 そこまで白熱して彼等は気付いた。
『全てゼロのルイズと使い魔のアヌビス神が犯人じゃね?』


 ルイズは悩んでいた、さてこのアヌビス神の欠片をどうしようかなと。
 メイドが拾ってきてくれたので、一々探す手間は省けたのだが、正直これどうするよ?な訳で。
 そもそもルイズとしては、どうでも良いのである。アヌビスの能力は使い物になっても、ルイズとしては剣として扱うことが念頭に無い。その技術が無い。
 しばし睨めっこをした後、
「これは無かったという事で」
 さっさとその破片を、片付けようとする。
「それは無しだご主人さま。
 勘弁して」
「直すの高いのよ。特にインテリジェンスソードともなれば強力な魔力が込められてる事があるから、クラスの高いメイジじゃないと手におえない事が多いし」
「魔力?何それ」
「はぁ?何言ってんの。あんたインテリジェンスソードでしょう?何らかの魔法の力で作られたんじゃないの?」
「……違うんだけど。話さなかったっけおれ、スタンドの事」
「??」
「おれさー、この世界で生まれた訳では無いの
 でもって生まれた世界には、スタンドってのが有ってだな
 あ、スタンドって何って?
 スタンドってのは生命エネルギーが作り出すパワーあるビジョン。ご主人さま達の言う魔法では無い別の力。
 ちなみにおれはそのスタンドそのものなのだ。
 500年前におれを作った刀鍛治が本体なんだけど。ま、怨念?そんな感じのが強くておれだけ刀に残ったって訳。
 ご理解いただけた?」
「……??」
「異世界には生命力を形にする超能力者が沢山居て、その内500年前の人が作ってその人の超能力だけが残ってる刀って事」
「……判ったけど、何かあんた、日々段々フランクな物言いになってきてムカツクわ」
「え、ええええええ?口調だけでゲシゲシですかァー?ちょっと懐いてみただけなのに」
「しないけど……。取り合えず、くっ付けるだけだから安く直せそうなのは判ったけど、あんたそれ不味いわよ?」
「へ?」
「固定化の魔法かけて貰わないと、錬金で土塊に変えられたりしても知らないわよ?」
「マジ?」
「あんたにも判り易く言うと、
 生き物なら錬金で簡単に変化できる訳じゃないから、今の話し聞いてる限りあんたは生き物の部類に近い様だし、もしかしたら大丈夫かも知れないけど……
 大丈夫だったら、錬金で直せないわ」
「け、けどおれさ。この世界に飛ばされる前に、今よりバラバラにされたんだよ
 それがちょっと治ってるから魔法で治るんじゃない?……きっと」
 アヌビス神の脳裏に、スタープラチナが激しくオラオラしてくる光景が再生される。
「何震えてんの?ま、わたしにはお手上げね。一回誰か先生にでも相談してみないと。
 ま……きっと治るんじゃないかしら?
 そろそろ授業が始まるわ。直す話しは叉後で―――――――ー」
 とまで言ったところで、ルイズは複数の人影に気付きアヌビス神から視線を上げた。
 そこにはギーシュやマリコルヌが居た。
「マゾコルヌ!マゾコルヌじゃないか!」
「ち、違うわー!!」
 アヌビス神の言葉に、マリコルヌが机をダンッと叩いた。
「五月蝿いわよ、かぜっぴきのマゾコルヌ」
「風邪なんかひいて―――って、ゼロのルイズッ!お前までマゾと言うのか!」
「なじられて嬉しそうだねマゾコルヌ」
「ギーシュお前までッ!!」
「あんた達の意味不明な、三文芝居は見たくないわよ私は」
 ルイズは仲良く現れて、突然目の前でかけあいを始めた男子連中に向って、じとーっとした視線を送りながら面倒臭げに言う。

「ルイズ、先に良く判らない内にだけれど、モンモランシーとの仲を取り持ってくれた事には礼を言っておくよ。
 もうあの後からモンモンがべったりで離してくれなくてね。
 今朝なんかも、朝一番で僕を起こしに着てくれて――――――」
「ええい惚気るなギーシュゥッ!!よくもぼくの前で、そんな幸せな女の子との甘々生活の話しをっ!話しをっ!話しをっ!
 ぼくなんかなー、生まれて17年近くずっと女の子とマトモに話して貰った事も無いんだよぉぉぉぉぉぉ。
 もてねえええええええんだよッ!そんなぼくの前で――――――」
「何の話しだって言ってるのよ、この愚図犬2匹!」
 ルイズが切れた。盛大に切れて教室に響き渡る大音量で怒鳴り付ける。
「うわーっ犬きたー」
 ぼそりとアヌビス神
「人に話しかけといて何時まで横道それてんのよ。ええ?わたし、あんた達のやっすい幼児遊戯芝居見る気なんて小指の爪先程も無いの。お分かり?
 さっさと話し進めないと『フライ』かけるわよ『レビテーション』でもいいわ。飛んでご退場願うわよ?」
 ルイズは杖を取り出し、うりうりとギーシュとマリコルヌの首筋を順番になぞる。
 ギーシュが気を取り直すようにコホンと咳をつき、
「あのお漏らしは何だ、あと僕の大事な大事な秘密を、皆が知ってるのはどういう事なんだい!
 僕の名誉が大いに傷付いたじゃないかっ!」
 と大声を上げる。お漏らしの部分で、失笑が彼方此方から聞こえ勝手に一人また怒る。
「わたしがしたんじゃ無いわ。はい次」
 続けてマリコルヌが興奮して捲し立てる。
「昨日からずっとマゾ呼ばわりだ!だれもかれもが、ぼくを見るたびにぷぷぷっとか笑いながら、こそこそとマゾマゾ言うんだ。
 こんなんじゃ女の子とまともに話す事もできやしない!」
「わたしがしたんじゃ無いわ。それにあんたさっき自分で、17年近くマトモに話しして貰った事無いって言ってたじゃ無いの。同じよ同じ。
 むしろマゾだから、常に罵って貰えて嬉しいんじゃないの?あとなんで風邪ひいて無いのよ」
「うん、正解!
 な訳有るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 気を取り直し、ギーシュとマリコルヌ二人が声を揃えて言う。
「「名誉を取戻す為にルイズ、キミに決闘を申し込む!!」」
「だからわたしじゃ無いわよ。このアヌビス神が犯人よ」
「え、えぇーッ!?」
 いきなりおれに話し振るの?とアヌビス神が不満げに声を上げる。声を上げたら直ぐさま杖で叩かれた。
「あと話し聞いてる限り、あんたの名誉現在進行系で傷付けてるのギーシュだから、かぜっぴきはギーシュと決闘しなさい」
「いや、今さっきもルイズが……」
「あんたの前で、何度も惚気話をしたのは?」
「ギーシュ!ぼくはお前に決闘を申し込む!許さん!絶対に許さんぞギーシュゥッ!!」

「オッケーではこうしましょう。
 ギーシュはアヌビス神と決闘したい。
 マゾコルメはギーシュと決闘したい。
 アヌビス神は――――」
「出来れば全部ズバァーと斬りたい。細く筋張った肉もぶよぶよとした脂肪も、ずぶずぶゥーと」
 ルイズはアヌビス神を掴むと強かに床へ叩きつけ、
ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシゲシッゲシッゲシッゲシッ
ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシゲシッゲシッゲシッゲシッ
ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシゲシッゲシッゲシッゲシッ
 見ているギーシュやマリコルヌ始め、取巻きの連中が怯えるほどにアヌビス神を踏みつけた。
「躾よ躾、あと失敗者に制裁」
 アヌビス神を踏みつけたまま、ぐりぐりしながらルイズは続ける。
「アヌビス神を持ったマゾコメルが、ギーシュと決闘しなさい!」
「ま、まままっ待ってくれ。それ僕が不利じゃないか、一対二になっているよっ!」
 ギーシュ、そのルイズ采配に非常に慌てた。
「ほ、ほらギトー先生も来た事だし、この話しはまたの機会に……」
 今回の授業の教師が入室したのを確認して、ギーシュは逃げを計る。しかし、
「なんと『ギーシュさん』が決闘すると?それでは今回の講義は『ギーシュさん』の決闘の見学にすべきだな。皆も『愛』の『ギーシュさん』の生き様をしかと目に刻む様に」
 ギトー先生も『ギーシュさん』信者だった。昨日の晩は酒をガブガブ飲みながら、風より捨て身の愛が最強と五月蝿かったそうだ。

「大丈夫、アヌビスがマリコルヌの肉体を使って、ギーシュ、あんたと決闘すれば一対一で公平よ」
 ルイズはアヌビス神を拾って手に取ると、くるりと身体を翻し外へ向った。

 本日の授業
 青銅のギーシュVS風上のマリコルヌ(アヌビス神)


 さてさて、所変わって学院長室。
 ルイズが呼び出した使い魔アヌビス神と、契約の証明のルーンに付いてコルベールがオスマン氏に熱く語っていた。
「あの剣の柄に現れたルーンは間違いなくかの始祖プリミルの使い魔『ガンダールヴ』のものです」
「つまり君はあの剣が伝説の『ガンダールヴ』とでも言うのかね?
 ふぅむ……確かにルーンが同じじゃ……じゃがあれは剣じゃぞ?」
「確かにそうですが、只のインテリジェンスソードが使い魔として召喚される事はありえません!」
 コルベールが熱く熱く『ガンダールヴ』に付いて語っている所でドアがノックされる。
「誰じゃ?」
 扉の向こうから、オスマン氏の秘書、ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。
「私です。オールド・オスマン」
「なんじゃ?」
「決闘を行うと息巻いている生徒が居て、大騒ぎになっています。何でも教師まで一緒になって盛り上がっているとか」
「何と教師まで?怪しからん、一体どうなっておるのじゃ。その騒ぎを起こしておるのは誰じゃね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「なんと『ギーシュさん』か!」
 オスマンが机をだむっと叩き、唾を飛ばしながら立ち上がる。
「「は?」」
 コルベールと、ミス・ロングビルが、オスマン氏の方を吃驚した表情振り向く。
「こりゃ見にいかんとあかんのぅ」
「大半の教師たちは決闘を止める為に『眠りの鐘』の仕様許可を求めておりますが……」
 オスマン氏の目が、鷹のように鋭く光る。
「許可する。その教師どもを眠らせい!で、相手は?」
「ミス・ヴァリエールの使い魔アヌビス神とマリコルヌ・ド・グランドプレ。
 では私は失礼します」
 一礼し、ミス・ロングビルは眠りの鐘を使うべく、学院長室を後にした。
「なんじゃ、その面白過ぎる組み合わせは」
 コルベールはアヌビス神の名を聞き、唾をごくりと飲み込み、オスマン氏を促す。
「オールド・オスマンこれは『ガンダールヴ』について直接調査するチャンスです」
「直接見に行くんじゃっ。何せ『ギーシュさん』の晴れ舞台じゃ」
「は?」
「準備じゃ準備せい。授業は全部中止じゃ!」


 本日の特別授業
 青銅の『ギーシュさん』VS風上のマリコルヌ(アヌビス神)




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