ありす&バーサーカー◆HOMU.DM5Ns
"彼"は、決してこの聖杯戦争には呼び出されない存在の筈だった。
個人的な願いが、ないわけでもない。"彼"にも積年の後悔、取り戻したいと思う存在がある。
だがそれが許されるものでないのは理解しているし、抱く望みがより上位の命令系統に塗り潰されてしまうものだという事も分かっていた。
戦う理由はあっても、そこに"彼"の意志は介在しないでいた。
それは"彼"が生み出された目的であり、本能であり、運命として始めから定められていたもの。
文明は壊さず、命だけを粉砕する。万物が抱く死滅願望の体現という設計思想。
その運命を、かつての"彼"は否定し、拒絶し、抗い続け。それでもなおも縛りは解けず、苦悩を刻み……。
多くの仲間からの力を借り受けて、最後には解き放たれる事が出来た。
ある一人の人間―――"彼"にとってはまぎれもなく―――との、永遠の離別を代償に。
地上(いま)の自分が生きている時代の視点よりも遥かな上。
次元を超えた座(ばしょ)で、"彼"は月に浮く揺り籠を俯瞰する。
聖杯戦争。
バトルロワイアル。
選ばれたただ一人を決める戦い。
運命を変えられるほどの報酬。
"彼"はかつて、それと酷似した争いに身を投じた数々の命の一つだった。
その世界には、不死の生命がいる。
生物には、その種の最初の一となった存在が必ずいる。
それらが生まれて初めて未来の扉は開かれ、無限の繰り返しの先にある繁栄を手にする。
参戦したのはそんな、地球にひしめく数多の種族の始祖。
始まりが故に終わりを持たない不死者たち。逆説的に種の代表という責務を背負った戦士。
自らの後に続く、未来の覇権を懸けて、太古の原種達は熾烈な生存競争を繰り広げた。
生き残った種族に与えられるのは、己が種の存続と繁栄。全ての命の取捨を自由にできる権利。
闘争の名をバトルファイト。
一万年後の地球を統べる事になる、ヒトという生命体が勝利者となった儀式だ。
"彼"が認識した聖杯戦争は、その闘争と酷く似通っている。
世界の垣根を超えても奪い合いは不変の法則なのか。胸に残された心に、棘の痛みが刺さる。
太古の神話の再編は、まさに原始の時代の理に立ち返った形で行われる。
競わせる。争わせる。殺し合わせる。
弱肉強食。表せばこの四文字に全てが集約されている。
過去から変わらない、物言わぬ野生の生命は知っている。
強き者。優秀な者。賢しき者。恐るべき者。弱き者。愚かな者。臆病者。
ただの要素(パラメーター)を比べるのみでは、種族の可能性は測れない。
熾烈な争奪と食らい合いの後に残るものは、個体の能力値に関わらず『生き延びること』に優れたものだと。
歴史の旅路に脈々と紡がれていく命の河。それを絶やさない事こそ生物の絶対の使命。
多くに分かれ自意識が固有化し、同胞と相争う人間達でさえ、そこにあるのは自分達を残すという純粋な思いだ。
本能と呼ばれる、生命体の第一義。
"彼"にはその、『生きる』という真っ当な機能が最初から欠けていた。
"彼"は、英雄でもなければ悪霊でもない。
かといって、何一つ業績のない無辜の民ですらもない。
"彼"は選ばれなかったもの。
残されなかったもの。許されないもの。呪われしもの。あってはいけないもの。
……だが世界にとって必要なもの。
星という巨大な生命が枝分かれする選択肢の一つとして備えられた、滅びという名の機構(システム)。
"彼"は系統樹なき虚無(ゼロ)の不死者(アンデッド)。
秩序と混沌の輪廻を繋ぐ星の自浄作用。
それは矛盾でありながら、全ての生命が持つ最低限の権限。
"彼"が選ばれたならば星は「その時」が来たと判断し、全ての命を収穫して無に還す。
苦しみに喘ぐ事なく速やかに滅び去るのもまた命の生業。
真の自由とは生ではなく、死にこそあると、天の星々は理解している。
そんな"彼"が仮にも英霊の座に置かれているのは、規模こそ違えど、その在り方は神霊種と同様であるからだ。
不死であり生命の始祖である彼らは発生した時点で高位の存在だ。
こうして"彼"が外で眺めている今も、地上の自分は現実での穏やかな生活を過ごしているのだろう。
だから"彼"は、戦わない。
かつての友のように、己を封殺して世界を守り続ける。
何故ならば意味がない。例え勝利しても、"彼"に与えられる報酬ははない。
戦いの果てに"彼"がたった一人生き残るという事実。それそのものが破滅の引き金となる。
全ての種をリセットさせる滅びの現象。"彼"が何を望もうが望むまいが、それは恙なく実行される。
何せその為に生み出された。"彼"の在り方が、そのまま一つの願いとして成立してしまっている。
下手をすれば、多世界にまで及ぶ破滅が起こりかねない可能性も孕んでいる。
優勝すれば自動的に全人類、全生命を刈り取る死神の化身。
そんな無差別な破壊兵器を求めるマスターなどまず存在しまい。いたとしても、己は決して受け入れはしない。
この箱庭の中で行われる異端の聖杯戦争にも、"彼"が顕れる事は無い。
死神は眠り、破滅は訪れない。願いが永遠に叶わない事に"彼"は安堵し、微睡みの内に観測(しせん)を閉じようとして。
視界の片隅で、流されるように夢遊する影が目に入った。
"―――――――――――――――――――――"
何かを追いかけるように、あるいは何かに追われるようにあてもなく歩く一人の少女。
風に吹かれれば消えてしまうほど淡く、儚い姿だ。
これより殺し合いが始まろうとしている戦場にはあまりにそぐわない。
彼女に焦点を合わせた瞬間、次元を越えた境界での認識力は、少女の経歴を余すことなく伝えてきた。
赤く染まった空を舞う鉄の鳥。
黒焦げた家を踏み潰す鋼の馬。
……無色の白い部屋で度重なって続く、実験(じごく)、実験(じごく)、実験(じごく)。
ただ、素質があるというだけで生かされ続ける。
利用されるだけ利用され、何の救いもなく、痛みだけの中で潰えてしまった人生。
体が息を止め、現実を追い出された精神は電脳に迷い込んだ。
彼女の物語は、とうに幕を閉じていた。
今見えている少女はただの夢。孤独に漂う、命の残滓に過ぎなかった。
そして今、少女はまた争いに巻き込まれようとしている。
戦う意思はおろか、戦うという行為自体も理解できていない幼い心で、凄惨な殺し合いに身を投じてしまっている。
人の悪意に解体された少女は、夢の中でさえも戦火と悪意から逃れられない。
それこそが、彼女が何よりも逃げたかったものなのに。
何故こんなにも彼女には救いがないのか。
この末路は、運が悪いだけのものだと認めてしまっていいのか。
そして気づいた自分は。このまま黙って終わりを見ているだけで―――それでいいのか?
数々の疑問と感情が生まれ、答えが出されるよりも速く。
"彼"は"俺"となり、何もない場を駆けだしていた。
これは許されない想いだ。
分かっている。俺では彼女は救えない。
この呪われた運命の体は勝ち残る事は許されず、帰る場所のない少女は残る魂を焼き尽くして消えるのが確定している。
運命を変える月に願うという最低限の救済すら、自分達には与えられない。
ならせめて。
最後まで、傍らにいよう。
もう二度と、誰にも看取られず一人きりで消えるような、悲しい終わりを迎えないように。
死神の忌み名を、その為に今こそ再び受け止めよう。あらゆる脅威から彼女を守り抜こう。
たとえ仮初でも、彼女の寂しさを埋め合わせる為に。
戦わなければ生き残れない世界だというのなら、その罪は俺が背負う。
甘い夢から覚め、砂糖菓子のような体が砕け散る時が来るまで。
彼女の手を取り、涙を流してくれるような友人を見つける。
そんな、小さな奇跡が起こるのを願いながら。
だから箱庭よ、俺を招け。彼女の許に連れていけ。
余分な権能(ちから)は捨ててやる。元から不要なものだ。
削ぎ落すだけ削ぎ落として、無理やりにでも規格に当てはめろ。
それが何を失う事になろうとも。手放してはいけないものだけが残りさえすれば構わない。
どれだけ厳しい罰が待ち受けようが足を止める理由にはならない。必ず勝ってみせる。
■ ■
運命と戦う事を、俺は決して恐れない。
■ ■
「……あら?」
突如として巻き起こった突風。
夜に星が落ちてきたと思えるほどの眩い閃光がスノーフィールドの一角を満たす。
マスターとして認識されてしまった少女の前に表れたサーヴァントは、恐怖の塊のような姿だった。
黒い全身に通う血は、怪物の証の緑色。
頭蓋骨をそのまま嵌め込んだような顔は、苦悶を食いしばった表情のまま固まっている。
それはまさしく死神(グリムリーパー)。目にした者に運命を告げる冥府の導き手。
人らしい理性など一欠けらも感じさせない、狂戦士のクラスに相応しい容貌だ。
「あなたはだあれ?
ありすのお友達になってくれるの?」
そんな人ならざる異形を目にしてなお、マスターたる少女は怯えの様子を一切見せずに語りかけた。
スカートが大きく膨らんだ、白く甘いデザインのドレス。陶器のようにつややかな肌。
"ありす"という、名前だけが残った少女に、聖杯戦争に参加したという自覚はない。
ただ果てのない道を歩き回ってる途中で落ちていた『白紙のトランプ』を拾い上げて、気づけばこの街に辿り着いただけだ。
しかし自覚はなくとも少女はマスターであり、目の前のサーヴァントとは互いを認識する契約で繋がっている。
そこから拙く情報を取得した少女は、この怪物が自分に危害を加える者ではないと理解していた。
「…………」
怪物……バーサーカーは答えない。
その名の通り理性の喪失を対価に能力を底上げする基本スキルを持つサーヴァントは、対話の能力が失われている。
言わんとする事は理解できていても、実際に声を交わし合う事はこの二人には叶わない。
「そっか、お喋りできないのね。つまんないの。
それにしてもこわい顔。まるでジャバウォックみたい。それともバンダースナッチかな?」
少女はやや不満そうに頬を膨らませる。子供は言葉の並べ合いに楽しみを見出す年頃だ。
心が通じ合えば言葉は不要、などという合理的思考には動かされない。
「…………」
無言のバーサーカーは無言でありすに腕を差し出した。
棘だらけの凶器で出来た指には、束になった紙の札が握られている。
「……?これ、くれるの?ありがとう」
興味を惹かれた少女は無警戒に怪物の手を取って紙札を広げた。
五十二枚の色とりどりの絵札。一枚一枚に異なる模様が入っており見る目を飽きさせない。
どれも統一して、何かの生き物を象っているもののようだ。
「わあ、すてきなトランプ!おもしろい絵がいっぱいあるわ。
トランプ兵を操ってるあなたは、ひょっとして女王さま?」
娯楽、遊戯に飢えていた少女はすぐさま札遊びに夢中になった。
同じ絵柄を合わせたり、並べて役を組んだり。即興の遊戯に没頭する。
「あなたは、ありすといっしょに遊んでくれるのね?ありすのお友達をさがすのを手伝ってくれるのね?」
バーサーカーは何も反応せずに、遊ぶありすを不動のまま見下ろしている。
だがそれでもよかった。少なくとも今、自分は一人ではない。その事実だけで、少女は一時の幸福の中にいた。
スノーフィールドに入ってからもありすは孤独のままだった。
大勢の人達は自分の姿に気づきもせず、風のように通り過ぎるだけ。
他者がいる分、自分が疎外されてるという気持ちは強くなる。無意識に忘れようとしていた痛みの記憶を思い出してしまう。
既に不安の気持ちはない。言葉が通じ合わなくても、"彼"は自分を見て、一緒にいてくれているのだから。
「さっきね、あそこでいろんなひとたちが集まってたの。あたしだけじゃ不安だったけど、あなたがいればへっちゃらね。
あたしね、みんなでトランプ遊びがしたいな!みんなで兵隊をうばいあって、さいごにババ(ハズレ)を持ってたひとを引っこ抜くの!
楽しいわ、きっと。あなたもそう思うでしょ?」
少女は歌う。くるくると、狂狂と。
誰かと一緒に、時間を忘れるぐらいに遊び続ける、人生では手に入らなかった思い出。
夢に見た念願が、遂に叶うのだと喜んで。
ありすの遊びは断れない。頷けばかくれんぼ、横に振れば鬼ごっこに変わるだけ。
ネバーランドにオトナはいらない。エイエンのこどもの国から逃げ出そうとすれば、ハサミで首を切り落とされ、遊びに飽きたら棄てられてしまう。
蝶の羽を毟る気軽さで殺し合いに臨む。その実感は少女にない。彼女はただ、寂しさを埋めたくて遊びに誘うだけ。
子供とは、玩具の扱いに杜撰なのが昔から続くお決まりだ。
無邪気にはしゃいで駆けていく姿を、バーサーカーは黙して追う。
自意識を喪ったサーヴァントは、残った一心のみを果たすだけの機械に等しい。
ソレは自身のマスターを全ての害悪から退ける守護者。
他のマスターやサーヴァントを屠る死神。
殺し屋であり、怪物であり、災厄であり、正体不明であり、ジャバウォックであり、バンダースナッチであり、人である。
何者でもない怪物―――ジョーカーアンデッドは夜を往く。
少女の夢を、悪夢で終わらせない為に。
【出展】仮面ライダー剣
【CLASS】バーサーカー
【真名】ジョーカーアンデッド
【ステータス】
筋力A+ 耐久A+ 敏捷C+ 魔力D+ 幸運E+ 宝具D+
【属性】
混沌・狂
【クラス別スキル】
狂化:A
パラメーターをランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
……皮肉にも、人の心を得たが故に「理性と引き替えに力を増幅する」狂化スキルの恩恵を得てしまっている。
【保有スキル】
原初の一:A
アンデッド。星の集合意志(ガイア)が神代以前の原初に一体ずつ産み落とした、各生物種の始祖たる怪物。
最初の産声を上げた星の胤子たち。始まりが故に終わりを持たぬ不死存在。
あくまでサーヴァントのために劣化しているとはいえ、生命そのものを直接対象とした呪い・概念干渉を弾く高い頑強性を持つ。
HPが0になった際、必要な魔力が供給されていれば幸運判定で復活の機会を得ることができる。
また、自らの意志や令呪による強制・補助を以ってしても自害、及びそれに繋がる行為ができない。
無貌の切札:A
ワイルド。
いかなる生物の系統樹でもないという、ジョーカーのみの特性。
特定の種族に適用する効果を一律無効化する。また自身の攻撃もそれらの効果に阻害される事がない。
Aランク相当の変化スキルも有しているが、狂化のため使用不能。
軍勢生成:―
眷属であるダークローチを生み出すスキル。
通常時にはまったく機能しない。
この能力が発動するのは、戦いの場で彼が最後の一人となった時。即ち、聖杯戦争の勝者となった場合のみである。
守護の誓約:D+
最後に残ったヒトの心(スピリット)。
種族ではなく、愛する者の為の守護。理性が吹き飛んでもその誓いは破れない。
他者を守る際に防御値のプラス効果が働く。
このスキルの存在が、破壊者でしかないジョーカーをギリギリ英霊に留めさせている。
狂化の影響で現在はランクダウンしている。元の形に戻るとしたらそれは―――
【宝具】
『寂滅を廻せ、運命の死札(ジョーカーエンド・マンティス)』
ランク:D 種別:対生宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
命を刈り取る形をした手持ち式の鎌。
地球上の全生命を死滅させるという、ジョーカーの攻撃本能が結晶化したもの。
斬り付けた対象の、生物としての純粋度、完成度に応じて追加ダメージが加算される。追加分が一定値を超えると即死判定が働く。
対象外となるのは、地球上の生物でないもの、生物の版図を越えてしまったもの、そもそも生物でないもの。
(人外の魔物や機械系サーヴァント、高ランクの神性スキル保有者が対象となる)
本人の霊格が落ちているのと、ジョーカー本人がこの宝具を望まないため、ランクも下がっている。
本来のランクはEX。地球全土にまで殺害範囲が増大する。
生命を滅ぼしながら星を傷つける事の無い、星の自浄作用であり自壊衝動の一つ。
【weapon】
『寂滅を廻せ、運命の死札』
基本武器。手に持って斬りつける他ブーメランの要領で投げつける。
『ラウズカード』
五十二体の生物の始祖の不死者が封じられたカード。
今は主にありすの遊び道具として使われてる。というよりその為に無理やり持ち込んだ。
解析すれば魔術の代替えに使える……かもしれない。
【人物背景】
生物の生存本能が結集し、生き残った最後の一匹が地球上の生命を思いのままに操れる「万能の力」を手に入れられる戦い、バトルファイト。
全ての生物の始祖たる不死者―――アンデッドが集う中、ただ一体何者の始祖でもないイレギュラーな存在、それがジョーカーである。
始祖がいない、系統樹がいないこの個体がバトルファイトに勝ち残ると、生物を残す必要がないと受理され、地球の全生命が死滅する仕掛けが施されている。
ジョーカー自身もその本能に従い暴れ回り、唯一自力でアンデッドを封印できる能力があるため、全てのアンデッド、全ての生命体から忌み嫌われるべき存在である。
しかし、次代のバトルファイトが行われた現代で目覚めたジョーカーは、前回の勝利者として生き残っていたヒトの始祖、ヒューマンアンデッドを封印した際、
内部からその心に働きかけられることで自身の運命に疑問を持つ。
アンデッドとの戦いに巻き込まれ命を落とした男が、最後まで家族を思い自分に写真を託した事で疑問は更に表面化。
人間(ヒューマンアンデッド)の姿に擬態し、疑問の答えを得るため男の家族の許へと身を寄せることになる。
男の妻と娘、「仮面ライダー」という、アンデッドの力を使い人を護る戦士達。
多くの交流の中でジョーカーは人としての心を育んでいく。
だがどれだけ感情を取得してもその本質はアンデッド。それも愛する者さえ手にかける事になる最悪の死神。
苦悩し、多くの仲間の協力を受け運命に抗おうとするが、遂にジョーカーが最後のアンデッドとなり、世界の滅びが始まってしまう。
最大の友となった人間に自分を倒すよう願うジョーカー。友はしかし、それを拒絶する。
掴んだ選択は誰も失わない方法。自らもヒトとしての体を捨てアンデッドとなる事で、友を運命から救ったのだ。
……ヒトの生と、永遠の孤独を代償にして。
不死であるアンデッドだが、生物の始祖という強大な神秘は発生した時点で英霊の座に登録されている。
このサーヴァントはそこから召喚に応じた存在であり、英霊の本体と分身のサーヴァントとの関係のようなもの。
現実の世界では、彼は今も人間として生き続けている。
【サーヴァントとしての願い】
孤独となった友を救いたいという願いはあるが、ジョーカーの存在意義である「命を刈り取る」という本能はそれを許さない。
優勝した瞬間、聖杯は生命絶滅という機能を真っ先に願いとして受理されてしまうからだ。
最悪、『白紙のトランプ』により接続された全地球の生物が死滅するという次元級の災厄も起こり得る可能性を秘めている。
ジョーカーもまたそれをよしとせず、ただ箱庭を傍観するのみでいた。
だが箱庭に迷い込んだ少女、ありすを見つけ、彼女を守るべく多くの無理を通してサーヴァントとして召喚される。
最たるものはバーサーカーのクラスになった事による、人の心の喪失だろう。これにより、人間としての姿と相川始の名は消失している。
月に来たアルクェイドや尾を切り離した玉藻の前を想像すると、どういう状態なのかが分かりやすいだろう。
奪われた理性、削られたヒトの心で願うのは、ありすの救済だ。
自分は決して勝ち残ってはいけないサーヴァントであり、ありすにもまた救われる術が、否、そもそも既に救えない「終わった命」だ。
聖杯戦争に参戦しながら、この組には優勝する望みがまったくない。
なら最後に消えるその瞬間まで、彼女の傍らに寄り添いその孤独を癒そう。
その思い出が涙に滲まぬように、彼女の望みを叶え続けよう。
砂糖菓子のように脆く儚いとしても、その最期に一筋の、暖かな光が差すことを信じて。
運命に勝つ。
それこそが、このサーヴァントの戦う意義である。
【基本戦術、方針、運用法】
バーサーカーらしく、その戦法は暴れ回るしかない。ありすの指示に従うか、ありすに危機が迫った時のみ行動する。
色々と制約がついて回ってるものの、その能力値は上級サーヴァントと遜色ない。
「無貌の切札」で概念系や干渉を限定する相手にも耐性があるため、正面切っての戦いではそうそう遅れを取らないだろう。
宝具は対純粋生物特化というべきで、相手によっては確殺もあり得る。大半が人間のマスターの方が危険。
マスターはマスターとしては規格外であるものの生存力という点では疑いなく最弱。攻めあぐねてるならそちらを狙うのもいい。
だがその戦法はこのサーヴァントに火に油を注ぐ行為。
一度でも狙いを向ければ、これ以上なく凄まじい形相でムッコロされること必至だろう。
【出展】Fate/EXTRA
【マスター】ありす(本名不明)
【参加方法】
電脳空間を彷徨っている最中に箱庭に辿り着いた。
あるいはデータ上の『白紙のトランプ』に触れていたのかもしれない。
【人物背景】
白と水色の衣装を身に纏った、八歳ほどの少女。イギリス出身。
第二次大戦末期に空襲で重傷を負い余命幾ばくもなかったが、その身に魔術回路があったことから実験体として無理やり延命させられる。
数年の後肉体は死亡するが、精神は繋げられたネットに残り続け、電脳空間という夢の世界に旅立つことになる。
命を奪う行為の重さも、殺し合いの残酷さも理解しないまま。
"知らない人たちがいっぱいあつまって、たのしそうだったから" という理由だけで、聖杯戦争に参加してしまう。
ありす自身、自分の状態については朧げながら理解しており、この夢が永遠でないことは分かっている。
【weapon】
なし
【能力・技能】
空間転移、固有結界級の魔術を複数長期に渡って展開できる規格外の魔力を汲み上げられる。
そのタネは、実体のないネットゴーストであるがゆえに肉体(脳)のリミッターが存在しないため。
だがそれは回路が焼き切れるまでエンジンを回せるといっているようなもの。いずれは魂が燃え尽きる運命である。
【マスターとしての願い】
なし。強いて言うのなら、友達を作って遊びたい。
【令呪】
ハートとカマキリ(全身と両の鎌)で三分割された形。
ラウズカード「チェンジマンティス(ハートのカテゴリーエース)」を想像すると分かりやすい。
【方針】
ジャバウォック(バーサーカー)をお供にして友達探しの探検。見つけた人と一緒に遊びたい。
鬼ごっこ、隠れんぼ、ババ抜き、遊びの種類は無限に尽きない。永遠に終わらない。
余談だが、『鏡』『モンスター』の点から龍騎系ライダーとも相性がいい。
最終更新:2017年02月28日 23:19