イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー◆aptFsfXzZw
その英霊は、ただ。その少女を助けたかった。
――――助けたかった、はずだった。
◆
「……ん」
その夜は、いつもより少しだけ眠りが浅かった。
あるいは、意識が途絶える直前に覚えた違和感が、素早い覚醒のための引っ掛かりとして残っていたのかもしれない。
「……クロ?」
傍らに居るはずの姉の気配が感じられないことに、
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは声を発した。
部屋は暗いまま。しかし明らかに、そこにあるべき息遣いが認識できない。
それに気づいた時には、イリヤはシーツを払い除けて起き上がっていた。
――記憶が確かなら、前後不覚に陥る直前の自分は、きちんと布団に包まってなどいなかった。
その世話を焼いてくれたのは、今、部屋から忽然と消えた姉に違いない。
姉が、こういったところで密かに面倒を見てくれているのはいつものことで……あまり、感謝することもなくなっていたけれど。
最後に記憶している姉の様子が妙に気になっていたイリヤは、たったこれだけのことにも胸騒ぎを覚えてしまっていた。
足元の覚束ない暗闇の中を掻き分けて進み、照明を点灯する。詳らかになる姉妹の部屋には、果たしてイリヤ以外、動く者の姿はない。
やはり、姉がいるのは部屋の外――トイレかもしれない。妥当といえる推論を立てながら、しかしイリヤは納得して床に戻ることができなかった。
胸の内に残った、漠然とした不安を晴らすために、イリヤはドアノブを掴まえる。甲高い軋み声を上げた扉の向こうには、先程までの室内同様、無明の闇に支配された廊下が広がっていた。
……姉は、灯りも点けずにこの中を進んで行ったのだろうか?
鎌首をもたげた疑念を否定するために、イリヤはぺたぺたと、裸足で廊下を進んで行く。
電光を灯し、ある程度進んだが、己の足音しか聞こえて来るものはない。
他に、誰も起きている気配はない。
――クロの残滓は、見受けられない。
一つずつ、段階を踏んで認識されて行くその事実に、胸の奥を締め付けられるような恐ろしさを覚えながらも。それは杞憂であるはずだと。杞憂でなければならないと、イリヤは己に言い聞かせる。
そうして決心と共に階段を降りる最中にも、一階からひょっこり誰かが顔を出すような雰囲気を感じられず――まるで最初から、イリヤに同じ部屋で就寝する姉などいなかったかのように。
(……最初から?)
それとも、最初は、だろうか。
何故かそんな単語が意識に引っかかり、イリヤは微かに思考する。
こんなのは、初めてではない気がする。
部屋に一人で目が覚めて、一人で部屋を出て――むしろその方が、己に馴染む状況のような気が――
“――そんなはずはない”
“だって自分の傍には、ずっと、大切な姉妹が居たのだから”
不意に内から響いて来た声――のようなものが、イリヤの疑問を洗い流す。
“ああそうだ、一人で起きる方が、変なんだ”
だから、自分はいるはずの者を探しているんだと。
浮上しかけた大事な記憶(モノ)は、そうして再び、忘れ去られた空の領域へと沈没し―――――z_____
(わたしがいなくても、しっかりしなさいよ)
(ウジウジイリヤ)
「――――……っ!!!」
前触れ無く“そこ”に戻って来たナニカによって、叩き出された。
「っ!? ぁ……ぅ?」
(……そうだ)
突然、脳内を掻き乱されたような眩暈に見舞われながらも。その撹拌によって、表層には決して浮かび上がることのない澱と化していた記憶(ID)が巻き上がり、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという意識に遍在して行く。
結果、歪められていた彼女の自我は本来のカタチを取り戻し。その膨張に耐え切れず、拘束具として表面に張り付いていた偽りの自己認識が弾け飛び、引き剥がされて行く。
ああそうだ、わたしは――
「思い、出した……っ!」
「イリヤさん――っ!!」
衝撃に順応するように、視界が徐々に鮮明さを取り戻してイリヤの唇から、何とかその一言が絞り出されたのと同時。
大きな星飾りを戴いた、短く切り詰められた杖――本来のイリヤのよく知る『ステッキ』が、何もない虚空から飛び出して、彼女の名を叫んでいた。
「信じてましたよイリヤさん! きっと元に戻ってくださると!」
「ルビー……っ!」
イリヤの薄い胸に飛び込むように、星型のパーツを回転させて飛び込んで来たステッキは、感極まったように言葉を連ねる。
「ムーンセルにイリヤさんの記憶とともに封印されて焦りもしましたが! なぁにこんなの、エインズワースに捕まった時と同じ! わたしとイリヤさんの縁と絆は、聖杯にも引き裂くことはできないのです!」
「……でも、わたしたち」
興奮を表してか、パタパタと、まるで犬の尾のように柄の部分を振り回す杖――魔術礼装カレイドステッキの片割れ、マジカルルビーの叫びに最後の一押しをされ。イリヤは取り戻した記憶の整理、その全てを完了する。
「……月に捕まった、ままなんだね」
エインズワースから回収したカードの中に、いつの間にか参加券となる『白紙のトランプ』が紛れ込んでいたことと、その時、イリヤの中に決意という名の強い『願い』があったこと。
それが偶然にも、再現された聖杯戦争への参加条件を満たしてしまい。月の内包する仮想世界に取り込まれたという、現状認識を。
「……はい、そういうことになりますね」
つまりこれから自分達は、最後の一人となるまで月の牢獄に囚われたまま、殺し合いを演じさせられる。
事態の深刻さ――に、イリヤが受けた精神的ショックを慮ったのか。はたまた、深夜とはいえ他にも居住者のいる屋内であることを認識したのか。
記憶とともに、ムーンセルより返還された魔術礼装――に宿る人工天然精霊のルビーも、いつもの調子を抑え、沈んだ声でそう応じた。
「――ですが、ある意味チャンスなのでは? イリヤさん」
しかし応じた上で、カレイドステッキ――魔法使いの生み出した魔術礼装は、魔術師に倣った思考で、状況への見解を切り替える。
「これで私達は、美遊さんを犠牲にすることなく、美遊さん達の世界も救うための具体的な手段を見つけることが……」
「ダメだよ」
ルビーの提案を、イリヤは首を振ることすらせず、正面を見据えたままに否定した。
「そんなのダメ。美遊の代わりに、他の誰かが犠牲になるってことなんだもん。それじゃあ、意味ないよ」
「そうですか……」
イリヤからの強い否定に、ルビーも悄然とした様子で返事をする。
「……ですが、仕方ないですね! そんな我儘なイリヤさんだからこそ、如何なる逆境にも決して諦めないマジカルでリリカルな魔法少女、マイ・マスターに相応しいのですから!」
しかし、何時も切り替えが早いのがルビーの性格だった。それもまた良しとするルビーの、変わらぬ協力を約束する姿勢に、イリヤも少しだけ胸の内が軽くなるのを自覚しながら苦笑する。
「我儘なんて言われても……ここにはクロもいるんだよ?」
イリヤ自身も記憶を取り戻したことにより、先程まで違和感を覚えていたクロの様子にも合点が行った。
同じく月に拐われていたクロは、一足先にその記憶を取り戻していたのだ。
そして少しずつ、イリヤの記憶が戻るように、さり気なくアプローチを続けてくれていたのだろう。
「聖杯戦争で優勝しろ、なんて言われても、できるわけないじゃない」
マスターの死の必然性は定かではなくとも、ムーンセルから提示された尋常な手段では、脱出できるのは最終勝利者となった一人だけ。
どちらが姉かはまだ決着してはいないが、大切な家族であるクロと離れ離れになる道など、選びたいわけがない。
……そんなつもりで、零した言葉だったというのに。
「その……申し上げ難いのですが……」
それを合図にして、またもいつもの鳴りを潜めたルビーが――彼女にしては本当に珍しいことに。遠慮がちに、おずおずと声を発する。
「わたしが先程返還された――つまりイリヤさんが記憶を取り戻した時点での測定結果なのですが……イリヤさんの魔力量、以前の数値に戻っているみたいなんです」
ルビーの語る言葉の意味は、額面通りに理解できるかどうか、といったものだったが。
愉快型極悪ステッキらしからぬ態度を目にして、かつてクロに高ランクで所持していると称されたイリヤの直感が、その裏に潜む意味に警報を鳴らす。
「つまり、クロさんが持って行ってしまう前の状態に、です……平々凡々なイリヤさんが正気を取り戻せたのも、分離していた物が再統合された際のショックによるものなんでしょうね」
……わからない。
まだ、意味がわからない。
――――あるいは、脳が理解を拒否している。
そしてこれは、きっと、わからない方が良いものだ。
でも。
「どういう意味……?」
どんなに辛くとも、未来(まえ)に進むために。目を背けることはもうしないと、そう決めた。
故にイリヤは促した。ルビーが何を言いたいのか、その真意を。
そして――――子供の覚悟が、如何に薄弱なものであったのかを、痛感した。
「…………つい先程、クロさんが亡くなったものと推測されます」
◆
――――その時。
強度や、量や、持続時間の程、その由来や向かう矛先はどうであれ。
半身の喪失を知った小聖杯(イリヤ)が、純白であるその裡を――赤黒き『憎悪』で『汚染』したことは、ムーンセルの観測した確かな真実であり。
故に。彼女の下へと馳せ参じようと何より強く呼応していた英霊は、彼自身の意に反し。
要石となる少女の心理状態を投影し、かつてムーンセルが観測し再現した土地とも縁ある、『汚染』された姿で召喚されることとなった。
◆
――ああきっと、そうなのだろうと。予感は既に在ったのに。
覚悟していたつもりだったのに、そのせいで嘘だと目を瞑ることもできなかったせいで。
真偽を問い質すという抵抗すら間に合わず。あっさりと、装っていた気丈さが、貫かれた。
「……そんな」
ずるり、と。力なくイリヤは崩れ落ちた。
文字通りこの身から別れた半身――ずっと傍に居た大切な家族の、喪失の重さに耐え切れずに。
「なんで……っ」
イリヤ(もうひとりの自分)の影に閉じ込められていたから、当たり前に自分の人生を欲して。
それ故に、他の誰かの都合に振り回される友のために命を懸け。
そして彼女の居場所を奪っていたイリヤさえも、彼女の欲した日常を構成する家族だからと、大切にしてくれた。
――きっと彼女は、誰よりも懸命に生きていた。
「酷い、よ……っ!」
なのに、わけもわからないまま月に連れて来られて、そして命を奪われた。
半身たる少女の無念を想い、イリヤは堪えきれずに泣き崩れる。
わからない。何故彼女が、そんな目に遭わなければならなかったのか。
世界よりも、友と家族を優先したから? だとしても、誰も犠牲にしたくないと願うことが、そんなにもイケナイことだったのか。
どうして、何の関係もない月に、殺されなければならなかったのか。
わからない。わからない。いくら考えても、こんなの絶対におかしいと、そんな気持ちが溢れて来る。
――あるいは、間違いなく正当な理由があるのだとしても。
少なくともイリヤだけは、それを納得できるはずなどない。
だからイリヤには、ただ。クロを襲った理不尽な運命を呪うしか、できなかった。
……だが、たったの一撃で彼女の心の処理能力を限界にまで追い込んだそれは、既に起こってしまった出来事でしかなく。
ならばその意志がどうであれ、イリヤは過ぎ去りし時の、感傷にばかり浸っていられなかった。
何故なら、今、少女を取り囲む事態は未だ何一つ解決しておらず――その運命が辿りつくべき終着(こたえ)は、未来にしか存在していなかったから。
「――イリヤさん、あれ!」
先のルビーと同じように、しかし今度は更に青白い光を伴って――虚空から、見覚えのあるカードが顕現していた。
「例のトランプですよ……! サーヴァントが召喚されます――!」
ルビーが最後まで言い終える前に、エインズワースのサーヴァントカードともよく似た『白紙のトランプ』が発した眩い閃光が、イリヤの網膜を貫いた。
続いて吹き抜けた烈風が居間を荒らし、イリヤの髪を乱暴に梳いていく。
「……面白い礼装を持っているようだな」
他の皆も、起きて来てしまうのではないか――そんな不安が過ぎる前に、荒れ狂う力の奔流は、人の形を成していた。
その喉で形成された低い声が、未だ霞の掛かったままなイリヤの視界のその先から、無造作に放たれていた。
「佳い。それならば我が憎悪、存分に燃やすことができるだろう」
イリヤ、ではなく――ルビーに向けて、その途方も無く強大な誰かは、微かに獰猛を漏らし笑っていた。
そして再び夜闇に包まれた室内に暗順応を果たしたイリヤが見たのは、異様な風体の男だった。
赤黒い染料で全身の肌を塗り潰したその人物は、頭頂部に中心を置いた長布で顔面ごと、二メートル近い長身の前後を覆い隠していたのだ。
――奇妙なことに、二の腕だけでも自分の胴ほどの太さを持つ大柄な彼のことが、イリヤには何故か痩せ細った半病人のように感じられて仕方なかった。
まるで、本当の彼はもっと大きく力強いと――その誇らしい事実を知っているかのような、デジャヴに包まれて。
「憎悪により、このアーチャー(アヴェンジャー)を招きしマスターよ」
イリヤが不可解に感じた心配を他所に。怪人物(サーヴァント)が名乗ったクラス名は、二つの単語が重なって聞こえる不自然な響きだった。
「貴様の復讐を成すために、我が力を利用するがいい。私が貴様を利用するようにな」
――――復、讐。
その単語は、傷つき欠けたイリヤの心の空隙に、するりと忍び込んで来た。
……言われてみれば、そうだ。
聖杯戦争の最中に、クロが命を喪ったというのなら――それはきっと、誰かの手に掛かったからだ。
理不尽な運命だけではなく、主体として……クロを殺した何者かが、居るはずなのだ。
恨み言をぶつけるべき相手が、憎むべき相手がまだ、この街の、どこかに――――!
……しかし、容易く復讐心に染まりきれるほど、数多の激闘を経てきた彼女は既に幼くはなく、また、人として壊れてもいなかった。
加えて突き放すような言葉は、復讐という麻薬を前にした彼女に対し、逆に間一髪で冷静さを取り戻させる働きを行った。
結果――その顔立ちすら読み取れない分厚い布越しでも、自らの思考に躊躇うイリヤの様子を見咎めたのか。サーヴァントは幾らか声の調子を低くして、宣告した。
「――だが、我が復讐の障害となるのであれば、幼子であろうと容赦はしない。どんな理由であれ、妨げとなればそのか細き首、我が手に捩じ切られるものと思え」
「……っ!?」
瞬間、イリヤの全身を構成する細胞の一つ一つ、体の芯から順に震え上がった。
前途ある子供を見守る年長者の目ではなく、愚鈍な役立たずを切り捨てようと思案する、冷徹な大人の視線に晒されて。
一瞬にも満たない苛立ちの間だけとはいえ。脅しではなく、そのサーヴァントから照射された本物の殺意によって、イリヤはその小さな脳髄を揺さぶられたのだ。
ただのそれだけで意識を失ってしまいそうな恐るべき威圧を前に、イリヤは呼吸の仕方すら一瞬忘れ、パクパクと口を開閉する。
その様が一層気に障ったのだろう。布越しに浴びせられる圧力が高まり、イリヤが悲鳴を抑えきれなくなる直前に、ルビーが動いた。
「アーチャー……それともアヴェンジャーかは知りませんが、あなたはどういうつもりですか!? わたし達のマスターであるイリヤさんを殺すなどと……!」
ルビーとて、あの雷神の戦槌にも比肩する圧力を前に何も感じていないはずはないだろう。
それでも、イリヤとこのサーヴァントを一対一で対峙させ続けては危険だと判断してくれたに違いない。
先刻、このサーヴァントが利用価値があると認めた己を前面に出し、交渉材料とすることで、イリヤを庇おうと試みたのだ。
それに対するサーヴァントの応答は、クラス名だけではない、自らの素性を明かすというものだった。
イリヤの記憶とは結びつくことのなかった、眼前のサーヴァントの真名は――意味する物に理解の及ぶルビーにとっては、食って掛かる勢いを失くすほどの衝撃を内包していた。
「オリンポスの暴君どもを否定し、蹂躙し、穢すため――そして奴らに迎合した愚物を抹消するためだけに存在する、生きた呪いよ」
その存在に圧倒され、沈黙するしかできないイリヤとルビーに向けて、サーヴァント――アルケイデスは語り続ける。
己こそが一切の妥協なき憎悪であり、呪詛であり、復讐鬼であるのだと。
そして。
「故に。復讐者たるこの私に、二度と慈悲など求めるな」
歩み寄りの余地を否定する宣言が、そこに成された。
◆
偽りの街で巡り会ったのは、かつて、どこかの世界で共に在った者達。
しかし少女は、あり得なかった道を辿った別存在。
そして復讐者に堕ちた英雄の側面からは、英霊本体の持つ記憶すら失われていた。
彼ら彼女らは同一人物であると同時、全くの別存在である故に。そこに再会の喜びはなく、運命を引き寄せたはずの決意さえも風化して。
単なる恐怖と侮蔑の交錯、互いが向け合う値踏みの視線と――そして、断絶を告げる声を聞き。恐怖以外の感情で、当人も理由を知り得ぬままに少女の零した涙だけが。
二人の果たした偽りの再会(ファーストコンタクト)にある、全てだった。
【出展】Fate/strange Fake
【CLASS】アーチャー(アヴェンジャー)
【真名】アルケイデス
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力A 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運B 宝具A++
【クラス別スキル】
復讐者:A
復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。
周囲から敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はただちにアヴェンジャーの力へと変わる。
単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
サーヴァントがマスターの制御を離れ、独自の行動を取る危険性も孕む。
ちなみにマスターを失っても、Cランクならば一日は現界可能。
対魔力:A
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
事実上、現代の魔術師の扱う魔術ではダメージを与えることができない。
【保有スキル】
歪曲・二重召喚:A
かつての聖杯戦争において、本来呼び出したクラスが強制的に歪められ、別のクラスの特性を付与された経歴を持つサーヴァントに限り付与されるスキル。
召喚時点で、かつての歪曲状態をある程度再現されていることを示す、ムーンセルでのみ発生する特殊スキル。
通常の二重召喚スキルでは三騎士クラスには適用されないが、歪曲スキルとの複合であるためにその制限が取り払われ、更に保有スキルにも影響が出る。
アーチャー(アヴェンジャー)の場合は、当時保有していたスキルの内、勇猛が精神汚染に変化している。
心眼(真):B
修行と鍛錬に基づく戦場での洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
神から与えられた本能を捨てたために、人として積み上げた技術による発現となる心の眼。
精神汚染:EX
『この世全ての悪』に由来する、膨大な復讐の念により精神を汚染されているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。
ただし、精神汚染がされていない他者との意思疎通に支障を来たすようになる。
歪曲・二重召喚の影響により、本来この英霊が持つ勇猛スキルが変化した物。
このスキルを所有している人物は、目の前で残虐な行為が行われていても平然としている、もしくは悪辣な手段を率先して行うようになる。
戦闘続行:A+
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦い続けることのできる、戦場で生き足掻く強さを表した能力。
【宝具】
『十二の栄光(キングス・オーダー)』
ランク:C~A++ 種別:- レンジ:- 最大補足:-
稀代の大英雄が成し遂げた十二の功業、その“試練を捩じ伏せた証”の数々。
『神獣の裘』や『戦神の軍帯』などの生前の伝承の中で手にした宝具を具現化させ、己の道具として使い潰す事ができる。
但し、聖杯の理そのものをねじ伏せて使っている状態なので、魔力の消費が通常の数倍に及ぶという欠点を孕んでいる。
また、このサーヴァントは『かつての聖杯戦争でムーンセルが観測した、その英霊の歪曲状態を再現した』ものに過ぎないため、実際にはムーンセルが観測した範囲内の宝具しか使用することができない。
『射殺す百頭(ナインライブス)』
ランク:C~A+ 種別:不明 レンジ:臨機応変 最大補足:臨機応変
手にした武具、あるいは徒手空拳により様々な武を行使する、言わば流派:射殺す百頭という技能そのものが宝具化したもの。
武具の力を最大限に引き出し、対人から対軍、城攻めに至るまで状況に合わせて様々な形を見せる。
『■■■■』
ランク:EX 種別:■■■■ レンジ:■■ 最大補足:■■■
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【weapon】
『十二の栄光』ほか
【人物背景】
神々や数多の怪物を倒したとされ、名高きギリシャ神話体系においても頂点に君臨する世界屈指の大英雄。
そんな彼が、かつて地上のスノーフィールドで行われた真実の聖杯戦争において、通常のアーチャークラスで召喚されるもマスターにより三画全ての令呪、及び大量の魔力結晶で「人であった頃の自己」「神から課された非道な仕打ちへの憎悪」を増幅させられたところに、聖杯の泥を注ぎ込まれて汚染された結果、歪曲してしまった姿。
泥の汚染によって自身の人生を翻弄し続けた神々への憎悪が表面化し、結果高潔なる精神は歪み果て、外道な行為も意に介さない人物となってしまっている。
幼名である「アルケイデス」を名乗るのも、『神の栄光』という意味の真名を激しく忌避しているため。
憎悪のまま、彼は己を含めた神の血を引くものを蹂躙せんと行動した。
……それはあくまで、英霊という本体の情報から複製されたサーヴァントという分身に起きた変化であり、英霊本体にまで還元される汚染ではなかった。
当然、通常の聖杯戦争では「アルケイデス」を名乗るサーヴァントも、少なくとも最初からその姿で召喚されることはない。
しかし英霊召喚を行うのが地上の聖杯ではなく、その歪曲した事例をも記録したムーンセルであること。此度の聖杯戦争が、通常では召喚されないようなサーヴァントの召喚も可能としていたこと。
マスターである少女(聖杯)が、召喚の瞬間憎悪に染まってしまっていたことと、その瞬間の『彼女の魔力』と最も馴染むクラスが弓兵(アーチャー)であったこと。
そして、サーヴァント・アルケイデスが存在した舞台を再現した箱庭であることが重なって、本来あり得ざる形での再召喚がなされてしまった。
召喚に即して、英霊本体が持ち得ていた彼の記憶は調整された。
本物のスノーフィールドを駆けた体験は取り上げられ、また歪曲した彼の人格を形成する上で不要な過去も希釈された。
それはそもそもの召喚の発端となった、英霊本体が何より強くこの地に駆けつけようと願った根底となる、冬の森の思い出も例外なく――――
故に今の彼は、『神の栄光』の名を冠した大英雄――小さくか弱い、神の奇跡たる子供達の守護者ではなく。
自らの憎悪のために全てを燃やし尽くす、慈悲無き復讐者に他ならない。
【サーヴァントとしての願い】
『神の栄光(ヘラクレス)』という忌み名の抹消。
【基本戦術、方針、運用法】
全サーヴァント中でも最上位に迫る圧倒的戦闘力を誇る一方、神性を捨て去りなお極めて高い魔力、霊格、そして評価規格外の精神汚染により、令呪を用いてもその復讐心を束縛することはできないため、制御は非常に困難。
そのため、マスターであるイリヤの意志にも構わず、あくまで己の目的に即した行動を執り続ける。
とはいえ、現状では彼女の存在が自身の存在を保つ要であることも解しているため、必要以上の危害が及ぶような行為は控えるだろう。よって、早々に監督役から討伐令を出される、もしくは複数の主従に結託して対策されるほど人目を憚らぬ振る舞いは当面は自重するものと考えられる。
もっとも、現在の彼はカレイドステッキによる無尽蔵の魔力供給でイリヤを評価しているが、場合によっては平然とマスターを見捨てることもあり得るかもしれない。
基本的には機会があれば優れた弓術による狙撃や、他者の警戒を緩める子供(イリヤ)を利用しての騙し討ちなどで、効率的に他陣営の間引きを図り、単独優勝を目指して行く。
イリヤの『夢幻召喚』については、本人の気質も含め、自衛手段としてはともかく、積極的に戦法に組み込むほどの価値をアーチャーは見出していない模様だが……?
【出展】
Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!
【マスター】
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
【参戦方法】
エインズワースから美遊を取り戻した後、回収したカードに紛れていた『白紙のトランプ』に導かれ、マジカルルビー及び一部のサーヴァントカード諸共に参戦
【人物背景】
穂群原学園小等部に通う小学生……だったが、カレイドステッキに見初められ、詐欺同然の強引な手口で契約させられ、魔法少女プリズマ☆イリヤとして戦う運命に巻き込まれた一般人の女の子。
以後は、本来のカレイドステッキの契約者だった遠坂凛からの要請により、彼女達の代わりにクラスカード回収任務を行うことに。
戦いの苛酷さに耐え切れず、一度は同じ使命を背負った美遊・エーデルフェルトに無自覚なまま全てを押し付けて逃亡してしまうが、後に改心して彼女の窮地に駆けつけ危機を救い、以後親友となる。
その後、任務中に事故によって分離したもう一人の自分=クロエ・フォン・アインツベルンに命を狙われることになるも、最後は和解に成功。美遊という新しい友人、クロという新しい家族と共に日常を謳歌する。
だが、八枚目のクラスカード回収任務の末、美遊が本来の出身である平行世界に連れ戻されてしまう事態が発生。巻き込まれる形で後を追ったイリヤ達は、美遊を拐ったエインズワースとの抗争に突入。
「生まれながらに完成した聖杯」である美遊の力で滅びの危機に瀕した人類を救おうとするエインズワースの目的を知り、激しく動揺することになったイリヤだが、クロ達の応援もあり、美遊も世界も両方救うという我儘(願い)を貫く決意を固めた。
エインズワースとの二度目の決戦の後、美遊の兄である平行世界の衛宮士郎から彼らの過去を聞いたイリヤ達は、改めてエインズワースに対抗し、平行世界と美遊の共存を目指して作戦を練り直していた最中。
更なる平行世界に存在するムーンセルにより、再現された聖杯戦争の参加者として見出され、イリヤは月に拐われることとなった。
そして死に際、願望機(自分自身)に家族の傍に戻りたいと願ったクロの残滓と再融合したことにより、記憶を取り戻し――――
【weapon】
魔法使い・宝石翁ゼルレッチの制作した愉快型魔術礼装カレイドステッキとそれに宿っている人工天然精霊。愛称(自称)はルビーちゃん。
子供の玩具にあるような「魔法少女のステッキ」そのままの外観でヘッド部分は五芒星を羽の生えたリングが飾っている。羽のモチーフは鳥。
ある程度、形・大きさを変えることができるらしく、使用時以外は手で持つステッキ部分を消して、羽の生えた星型の丸いヘッド部分のみの姿となって、イリヤにまとわりついている。
また、怪しげな薬品(自白剤・鎮静剤・惚れ薬等)を作ることができる。
エインズワースによって作られた魔術礼装。イリヤ達は当初、彼女達の世界の魔術協会が名付けた「クラスカード」の名で呼称していた。
高位の魔術礼装を媒介とすることで英霊の座にアクセスし、力の一端である宝具を召喚、行使できる『限定展開(インクルード)』の能力を持つ。
だが、それは力の一端に過ぎず、本質は「自身の肉体を媒介とし、その本質を座に居る英霊と置換する」、一言で言えば「英霊になる」『夢幻召喚(インストール)』を行うアイテム。
「美遊の世界」の冬木市で開催される聖杯戦争はこのカードの所有者同士の対決によって行われる。
現時点でイリヤが何を保有しているのかは不明だが、少なくともキャスター(メディア)のカードは既に喪失しており、また、バーサーカーのカードを保有している。
【能力・技能】
魔導元帥製のカレイドステッキ及び回収したエインズワース製のサーヴァントカードを利用した、魔法少女(カレイドライナー)としての能力を持つ。
カレイドステッキにより、平行世界から無尽蔵な魔力回収、またAランクの魔術障壁の他、物理保護、治癒促進、身体能力強化といった恩恵を常に受けている。但し、障壁の防御機能は内部からの攻撃には無力である。
ただし、供給量・持続時間は無限でも、一度に引き出せる魔力はマスターの魔術回路の性能に依存する。
クロと分離したことで低下していた魔力量についてはクロの死によって回復したが、これでようやくアルケイデスが満足な戦闘行為に要求する魔力を賄えるようになっただけであり、単独行動スキルを加味しても彼の宝具と『夢幻召喚(インストール)』を同時運用することは困難であり、またカレイドライナーとしての能力値も魔力をアルケイデスの維持に奪われる分、結局はクロとの分離後と同程度にまで落ち込んでいる。
また機能の一つに、魔術ではなく「純粋な魔力」を放出するというものがあり、対魔力スキルを突破し得る砲弾、散弾、ブレード状に固定、といったバリエーションで行使可能。
【マスターとしての願い】
無事に帰りたかった、けれど……?
【方針】
未定。
最終更新:2017年02月17日 23:36