ハッピーバースデー・デビルマジン ◆2Y1mqYSsQ.
アスファルトの地面に膝をついて
MS少女バンシィことヒメは正面を睨みつけた。
人間用の街灯に照らされた黒い魔神が殺気を放つ。
日本で知名度が高いスーパーロボットに刺々しさを足したような敵に追い詰められていた。
□
ドン、と家が揺れてヒメは驚いた。何かが爆発したような衝撃だが、自分たちは15cm前後の小型ロボットだ。
そこまでの破壊エネルギーを持つ存在は非常識である。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
獣のような唸り声にヒメは思わず身をすくめる。どうやら表にいるらしい。
それにしてもここまでうるさい状況なのにセシリアは相変わらず眠っていた。
まあ眠らせたのは自分だから文句は筋違いだとわかっている。
そのまま離れるのも悪い気がして、ヒメは表の野獣をほうっておくことにした。わざわざ関わる必要もない。
しかしその考えは覆る。再び爆発音とともに家が揺れたのだ。
「……もしかして近づいている?」
この衝撃は無視しきれない。すぐに逃げるか戦うか選ぶべきだ。
戦いとなるとこの破壊力を持つ相手は厄介だ。
眠っているセシリアに脅威であろうが、置いて逃げるのが正解だろう。
ヒメはため息をひとつ吐き、玄関へと向かう。
せっかくの捕虜を失うのが惜しい。そう自分に言い聞かせ、ドアを開けた。
ヒメが民家を出てすぐマジンガーに似た黒い破壊者と出会った。
全身が黒く刺々しく、まるで悪魔のようだ。
「ちょっと、あなたうるさいわよ。近所迷惑……」
圧倒的プレッシャーを前に言葉を途中で切り、思いっきり後方に跳ぶ。瞬間、二筋の光線が襲ってきた。
間一髪だった。発射元を探ると、黒いロボットの目元から煙があがっていた。
機体を画像から特定している暇はない。すぐに装甲を展開、金色のサイコフレームをむき出しにする。
そのままセシリアが眠る民家が攻撃に巻き込まれないよう離れた。
「敵……敵か! ルスト、トルネェェェェド!!」
嵐としか表現のしようのない風の塊が襲ってきた。
アスファルトや塀を溶かしながら瓦礫をまき散らす。
ヒメは必死にブーストをふかすが避けきれず、風圧に飛ばされて地面へと叩きつけられた。
「かはっ……!」
「トドメだ! ターボスマッシャーパンチ!!」
マジンガーの代名詞であるロケットパンチが唸りを上げて飛んでくる。
酸によって脆くなっている胸部アーマーへと狙いを定めていた。
だがヒメにとっては都合がいい。さっそくサイコミュ・ジャックを行う。
「なにこれ……重い!」
ターボスマッシャーパンチは威力がありすぎて軌道を変えるのが困難であった。
あの兜甲児が苦労したじゃじゃ馬の拳である。腕力は関係ないはずだが、ヒメにはとても操作しきれるものじゃなかった。
思念を強めて狙いを自分から外すのが精一杯。どうにか拳をやり過ごし、反撃へと転じた。腕のないマジンガーなどただの的だ。
そう判断してアームドアーマーBSを向けようとしたが、甘かったと思い知る。
魔神皇帝は腕がなくても止まらず、両耳の角を倒して空気を凍らせている。
「冷凍ビィィィィィィム!」
氷の道を作りながら冷気が襲ってくる。
ヒメは瞬時に回避運動へと移るがアームドアーマーBSの先端が凍りついた。
仕方なくパージし、ビーム・マグナムを転送して腕を装着している相手へと構える。
「お前も……お前も俺を、『兜甲児』を否定するのか! マジンガーのように!!」
ヒメは眉間にしわを寄せる。マジンガーに似たロボットは、マジンガーに否定されたと確かに言い放った。
不安が膨れ上がる。
「誰にも否定はさせねえ! 俺が……俺こそが『兜甲児』だ!!」
再びターボスマッシャーパンチが撃たれた。サイコミュ・ジャックで逸らしながら、ヒメは不安の種を無視できずにいた。
なぜならマジンガーに、同型機に否定される。それは自身にも訪れかねない事態だからだ。
雪菜姉様、とヒメが小さくつぶやく。
彼女は雪菜を姉だと認定し縋った。家族だと思っている。
だが雪菜が自分のことを同じように想っているかはわからない。
原作の関係で言えば操縦者によるとは言え、ユニコーンとバンシィの仲は良好と言いがたい。
敵と思われている可能性だって高いのだ。
この場にいるかもわからない姉。だが自分の全て。
そんな大切な相手に否定されるのはどんなに辛いだろうか。
たまらずヒメは
マジンカイザーに尋ねる。
「あなた……否定されたの?」
相手の肩がかすかに跳ねる。
同時にマジンカイザーが発するプレッシャーが強くなった。
「……違う。俺が否定をするんだ! 俺が……」
「強がらなくてもいいよ。だってあなた、泣いているもの。涙は見せなくてもわかるよ」
原作のサイコフレーム及びサイコミュ・ジャックを再現した結果、ヒメや雪菜は感受性が強くなる傾向があった。
まるでニュータイプのような能力だが、相手の電子頭脳の流れを大雑把に受け止める程度でしかない。
だからこそ余計にマジンカイザーを刺激した。
「うるせぇ! わかったようなことを言いやがって……全部消し飛べぇ!」
相手は大きく胸をそらし、赤い放熱板を向ける。
悪魔の羽を思わせる胸部が輝き、熱で空間が揺らめいた。
「ファイヤーブラスター!!」
莫大な熱エネルギーがマジンカイザーから放たれる。
16cmサイズの小型ロボが発するとは思えないほどの熱波がアスファルトを溶かし、塀を消滅させ、電柱の根元を削る。
ヒメも視界が赤く染まるが、慌てず跳躍した。
「ふきとべええええ!」
マジンカイザーの叫び声に呼応するようにファイヤーブラスターのエネルギーが爆ぜる。
膨れ上がる光が二人から視界を奪った。
「ハア、ハア、ハア……」
マジンカイザーは黒焦げになった爆心地を視界に収めながら、人間のように息を荒らげた。
敵を撃破したのに心が晴れないゆえの行為だ。
ぐっと拳を握りこみ、彼女の言葉を思い出す。
『あなた……否定されたの?』
『強がらなくてもいいよ。だってあなた、泣いているもの』
マジンカイザーはいらだちに任せて壁を殴った。
破片が身体を跳ねて虚しく地面に落ちる。
「あいつは……マジンガーは俺のカマセだ……。ただの前座なんだ……」
自らに言い聞かせるように吐き捨てるが、虚しさが増すだけだ。
このざらついた気持ちはなんなのだろうか。魔神皇帝の名を持つ存在は答えが見つからない。
「俺こそが『兜甲児』……」
マジンカイザーが迷いを持ったままつぶやいたため、気がついた。
地面は熱に溶かされ煙が登っている。
削岩機で破壊されたようにアスファルトはえぐれ、爆発によって瓦礫が散らばっていた。
そうまでして砕いた相手は、幼い少女だった。
「兜甲児は……ここまでして女の子ひとりを殺すのか……?」
彼の語気が弱まり、膝が折れ、焦点がぶれた。
自分が知っている兜甲児は、神を超えて悪魔を倒し仲間を守る強いやつだ。
弱そうな少女に八つ当たりをする無様な存在では決してない。
「『兜甲児』はこんなことをしない。俺じゃなかったのか……本当の兜甲児は……あっち……。
じゃあ、じゃあ俺は? 俺は誰なんだ……」
エネルギーは底をつきかけている。
だけどマジンカイザーは充電をする気になれなかった。
このまま朽ちてしまいたい。
折れた心は脆く、永遠の眠りを望んでしまう。
「……すまねぇな」
それは本物の『兜甲児』に対してなのか、殺した少女に対してなのか。
本人さえわからない。マジンカイザーは意識を闇に閉ざそうとした。
「しっかりしなさい!」
叱るような高い声に目が覚める。
黒い装甲をまとった少女が自分の肩に手をおき心配そうに見つめている。
顔がすす汚れているが、大きな傷は見当たらない。無意識にマジンカイザーは安堵する。
「あれだけ大技を連発するからエネルギーが切れかけるのよ。
あたしが近くの家で充電させるから肩につかまって」
「生きていたのか……?」
「あたしの能力なら大雑把な攻撃範囲と向けている方向がわかるもの。
まあさっきのあなたみたいに感情がむき出しじゃないと無理だけど……ってそんな場合じゃないわ。
ほら、いくわよ」
「いやいい。放っておいてくれ。俺は君を殺そうとした。
そんな大馬鹿野郎は死ぬべきだ。兜甲児にも迷惑をかけたしな……」
マジンカイザーは力なくヒメの手を外そうとした。
だが彼女はこちらの腕を掴み、無理矢理を肩に回す。
「いやよ。あたしが掴まれって言っているのよ。おとなしく助けられなさい」
「君を殺そうとしたのにか?」
一瞬ヒメは顔を伏せてから、目を合わせてきた。
吸い込まれそうなほど澄んだ青い瞳は真剣だ。
「……あたしにも同型機の姉様がいる。雪菜=シュネーラインという、白いユニコーンのMS少女。
大事な家族だと思っているわ」
そうか、とマジンカイザーは羨ましそうに相槌を打った。
彼女はゆっくりと民家に向かって足を進める。
「何もない空っぽなあたしを満たしてくれる存在。だから会いに行くし守りたい。
姉様の脅威となる存在は破壊するわ。
けれど……雪菜姉様があたしを否定したら……?
あなたの話を聞いてそれに気づいたから、泣いているのを放っておけなかった」
そう言われてマジンカイザーは納得してしまった。
暴走状態にあった自分を容赦なく叩きのめし、飛び去った
マジンガーZ。
その後姿に抱いた感情は憎しみだと思っていた。兜甲児である自分を否定された怒りだと考えていた。
しかしあの感情はどちらとも違う。
「きっとあたしが雪菜姉様に否定されたらあなたと同じように感情をぶつけまわっていたと思う。
なにもかも破壊して、全部無かったことにしようとする。だけどそれは、好きって気持ちは……なかったコトにしちゃダメなんだよ。
空っぽのあたしたちはそれをしちゃうと壊れちゃうから。
だからあなたが壊れる前に止めたかった。それだけよ」
純真な彼女のおかげで、ようやく本当の気持ちを知れた。
「……ありがとうよ。そうだな、俺は『兜甲児』が……マジンガーが好きなんだ」
だからZモード(ひとのこころ)で泣いたのだ。
すべてが腑に落ちたマジンカイザーは彼女に身を委ねた。
□
ヒメはセシリアの隣にもう一つクレイドルをセットした。
金髪の少女はあれだけの戦闘が起き、轟音も鳴ったのにまだ起きていない。
そろそろ充電も終わりだろうにと思わず呆れてしまう。
「なんだ、仲間がいたのか?」
「ただの捕虜よ。それより早く充電に入って」
「捕虜……? まあそういうことにしておくか。よっと」
こちらの言うことに従い、マジンカイザーは寝そべって充電の体勢に入る。
素直でありがたい。
「先に使わせてもらってすまねぇな。君もたいしてバッテリー残っていないだろ?」
「あ~わかっちゃうか。次の見張りをお願いしていい?」
彼は首を縦に振り快諾する。
もう死ぬ気はないようだ。ヒメはほっとため息をつく。
「寝る前に一つ聞くけどあたしの充電が終わったらどうする?」
「そうだな……とりあえずマジンガーを探すさ。会ってどうするかはわからねえし、敵と思われているだろうけど……自分のことに決着はつけたい」
「そうね。自分の兄弟だもの。ちゃんと話をした方がいいわ」
ん~、とヒメは背筋を伸ばす。一段落ついて安心したのだ。
「それじゃあたしの充電が終わったらお別れか。ちょっと寂しいけどお互い探し相手に会えるといいわね」
「なに言っているんだ? 俺は君の姉探しに付き合うぜ。マジンガーと再会するのはその後だ」
え、と呟きながらヒメは目を見開いた。しかしすぐに冷静になる。
「変なことを言っているのはあなたの方よ。あたしのことはいいから、自分の目的を優先しなさい。
雪菜姉様探しに付き合う暇はないでしょう? 一度会ったならあたしと違って再会しやすいんだし」
「そうは言ってもマジンガーと会った時は半分正気じゃなかったから、どこに向かったかわかりやしねえ。
それに君のお姉さんにも興味があるし、借りを返したいんだ。たのむ」
大柄の身体を丸め、両手を合わせて拝む魔神皇帝の姿はどこかおかしかった。
しかしヒメはクスリともせず、表情の消えた顔で冷たく告げる。
「あなたは兜甲児が、正義の味方である彼が好きなんでしょう?
あたしはあなたは助けたけど、変わらず雪菜姉様の障害は排除するわ。
悪いことは言わないから、あたしと別行動で正義の味方をするべきよ」
「な~に、とっくに暴走をしてタガが外れちまっているんだ。
俺は兜甲児とはもう別物さ。恩を返すために正義を捨てるくらい覚悟してらぁ」
だからな、とマジンカイザーは続けた。
「『兜甲児』とは違う、マジンカイザーである俺をその娘と同じように仲間にしてくれ。お願いだ」
静寂が室内を包んだ。時間は十秒も経っていないのだろうが、二人には永遠にも思える長さだった。
ふぅ、とヒメは根負けしたようにため息をつく。
「ヒメ=スカーレット、ヒメでいいわ。足を引っ張らないでね、マジンカイザー。
それとこいつは捕虜だって言っているでしょ! 間違えないで」
ヒメはツンと明後日を向いて吐き捨てたが、照れくささゆえだった。
マジンカイザーは気分を害する様子もなく歓迎する。
「ああ、たのむぜ、ヒ……メ……」
ようやく彼は眠りにつく。
まったくとひとりごちながらも、ヒメは自分が優しく微笑んだことを自覚していなかった。
眠りにつきながらマジンカイザーは決意を固めていた。
戦ってわかったが、ヒメは優しいのだ。
姉の脅威となる存在を破壊すると言っているが、本人にできるかは疑問だった。
ナイーブすぎる彼女のCSCは、自分以外の相手とも共感できる点を見つけ、情けをかけるだろう。
だから一人にしておけない。
相手がヒメに感謝をして協力を申し出るお人好しだけなら問題はない。
だが彼女の優しさを利用しようとする者はいるだろう。
戦闘力の高さを脅威とし、倒そうとする者も現れるだろう。
だからこそ自分は覚悟を決めるべきだ。
彼女がかぶるだろう汚れも、脅威も全て自分が請け負うと。
絶望した心は、捨てた命は彼女に拾われた。
今さら惜しくもない。
マジンカイザーは神を超えず、悪魔を倒さず、ただ一人の少女を救う鬼となった。
【早朝/エリアJ(民家内・一階システムキッチン)】
【MS少女バンシィ@アーマーガールズプロジェクト】
【電力残量:30%】
【装備:アームドアーマーVN】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(ビームサーベル×2、ビームマグナム、ビームジャベリン)、
アイスラッガー(ウルトラセブン)@ULTRA-ACT、拡張パーツ×1】
【状態:損傷軽微】
【思考・行動】
基本方針:雪菜を傷つけるものは全て倒す。
1:セシリアの扱いを思案中。
2:マジンカイザーとともに雪菜を探す。
※サイコミュジャックは付近に存在する遠隔操作系の武装やパーツのコントロールを奪取できますが、
パーツの所有権自体を奪うことはできず、またデストロイモード終了と同時に解除されます。
※雪菜=シュネーライン(MS少女ユニコーンガンダム)を姉妹機として認識しています。
なお雪菜側の人格データに同様の設定が存在するかは現時点では不明です。
【マジンカイザー@スーパーロボット超合金】
【電力残量:3%(回復中)】
【装備:カイザースクランダー】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(カイザーブレード、カイザーブレード(パース付き)、)、拡張パーツ×1(未確認)】
【状態:両腕に細かい傷あり。睡眠中】
【思考・行動】
基本方針:ヒメを守り、 汚れ役は引き受ける。
1:ヒメの姉、雪菜を一緒に探す。
2:できればマジンガーZと決着。殺意はない。
※セシリアをヒメの仲間と認識しています。
【
セシリア・オルコット@アーマーガールズプロジェクト】
【電力残量:100%】
【装備:なし(ISスーツ)】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(ISブルー・ティアーズ、スターライトmkⅢ)、約束された勝利の剣(セイバー)@figma、拡張パーツ×1】
【状態:損傷軽微、睡眠中】
【思考・行動】
基本方針:???
1:???
最終更新:2014年11月28日 01:57