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ふたりの『兜甲児』 ◆NXFS1YVsDc



「グゥ……オオオオオオオォォォォ」

獣のような唸りと雄叫びを夜空に響かせる、魔神皇帝の姿。
胸の宝玉は、今もなお「魔」の文字を輝かせている。
倒すべき敵だけを求め、それを滅ぼす破壊の悪魔。
そこには大凡理性と呼べるものは感じられない。
ただ、何らかの苦痛を感じさせるかのような咆哮だった。
それは、破壊と破滅を望まぬ本心の、魂の叫びなのか。
その苦痛も、奥底から沸き起こる破壊の情念に上書きされていく。

魔神皇帝は歩き続ける。
そこに何を求めて歩くのか。
戦いか、それとも救いか。
それとも、見失った自分自身か。



◇ ◇ ◇


「ん……!?」

超合金のロボット玩具のような姿の彼は、何かを感じたように北の空を見上げた。
空には何も見えない。街灯の光が邪魔をして空の細かい様子がはっきりと見えない。
それを抜きにしても、深夜の空に何者かの存在を見つけ出すのは至難の業だった。

(……気のせいか?)

そんな彼に、共に行動していた女の子のフィギュアが声をかける。

「どうかしたの、マジンガーZ?」
「ああ……いや、何でもない。行こうぜ、亜美ちゃん」

そのスーパーロボット超合金の名はマジンガーZ。言わずと知れたスーパーロボットの元祖。
同時に超合金玩具の元祖と言ってもいいロボットであり、スーパーロボット超合金としても第一弾として作られた。

そのS.H.フィギュアーツの名はセーラーマーキュリー。IQ300の心優しき天才少女、水野亜美の変身した姿。
かつて熱狂的ブームを巻き起こした、セーラー服美少女戦士の、一番人気だった娘を模したフィギュアである。

殺し合いが始まってから間もなく遭遇した両者。
お互い殺し合う意思もなければ殺し合いに抵抗する意思も共通し、意気投合。
竹を割ったような熱血漢のZと、温和で冷静な知性の戦士であるマーキュリーの間にはトラブルも発生することなく、
バトルロワイアルの脱出・破壊に向けて、ごく自然に共に行動する運びとなった。

「それで、少しでも仲間を集めようってのはいいとして、それからどうするんだ?」
「……正直、見当もつかないわ。このバトルロワイアル、脱出にしても破壊するににしても、
 何から手を付ければいいのか、何をもって反抗となりえるのか……
 この殺し合いを開催している黒幕の正体すら、全くわからないし……」
「黒幕か……ま、確かにあの変なのがそうである風には見えないよな」
「でも、必ずこのバトルロワイアルのどこかに穴があるはずよ。
 私達が反撃に転じるには、その穴から切り拓いていくしかないでしょうね。
 今は、その時のために少しでも戦いの準備を整えておくしかないわ。情報も、仲間も」

情報が少なすぎる以上、天才少女も漠然とした行動方針しか示すことはできなかった。
ここで敵の正体や打開策を考え続けたところで何かが進展するわけでもない。
今は少しでも自分の足で行動し、情報を集めるしかない。
それは他の参加者との接触であり、この舞台となる街の探索でもある。

「ま、しょうがねぇか。しっかし、人形の体だと移動するにも一苦労だよなぁ」
「そうね。今の視点だと、周りの広さも大きさも人間大の時と比べて、単純に10倍以上になったようなものですもの」
「おいおい、俺なんて元は18メートルの巨大ロボットなんだぜ?10倍どころか、100倍近いぜ」
「ふふっ、そうだったわね」

ふと、少女は横を歩くロボットの超合金に、疑問を抱く。
彼の自我のことだ。原作において、マジンガーZは人が乗り込み操縦するタイプの巨大ロボットである。
特にこれといった人工知能を持っているわけでもない彼には、自我は存在しないはずだ。

「私は、原作における『水野亜美』本人の自我や人格を与えられてるわけだけど……
 原作がロボットであるあなたのその自我は、一体誰の人格ということになるの?」
「もちろん、原作の主役メカにしてスーパーロボット『マジンガーZ』の自我だ。
 原作の俺はマシーンだから喋れないし自我も表現できないけど、ちゃーんと人間達の燃える友情は理解できるんだぜ」
「……まるでメルヘンね」
「人格としては、俺を操縦してた『兜甲児』って奴がモデルになってるんだろうけどな。
 ただ、性格があいつに似てるってだけで……俺はあくまで俺、『マジンガーZ』だ」
「じゃあ、『兜甲児』さん本人の自我を植え付けられた、というわけではないのね」
「一応な。それでもモデルになってる以上は、俺の中にも確かに『兜甲児』は存在してると思うけど」
「……なんだか、ややこしいわね。他のロボットのフィギュアも同じような感じなのかしら」
「どうだろうな。他のロボット連中がみんな俺みたいな奴ばかりってわけでもないだろうし。
 ま、そんな細かい話はどうだっていいさ。けど、あいつの心が俺の中にもあるからこそ、わかる……
 こんな悪趣味な殺し合いなんか許すわけにはいかねぇ。甲児も必ず、同じように思うはずだ」

マーキュリーは、兜甲児のことを語るZがどこか嬉しそうに見えた。
自分を動かす主でありパートナーでもある彼のことを、信じ、誇りに思っているからこそ、できる口調だ。

「そう。あなた、兜甲児さんのことが大好きなのね」
「かーっ、変なこと言うなって!あの野郎、いつも原作の俺を無茶な操縦でこき使いやがってよ!
 もし本人に会うことがあったら、喋れないオリジナルに代わって、いっぺんきつく言ってやりたいくらいだぜ!!」
「ふふっ……」

そしてきっと彼のこの性格も、彼が言うところの兜甲児の人格を色濃く受け継いでいるのだろう。
そんな彼に、マーキュリーは……水野亜美である彼女は、自然と元気をもらっていた。
セーラー戦士のブレーンとして戦いに身を捧げる彼女も、本来なら普通の中学生の女の子である。
この状況下では少なからず不安になっていたからこそ、どこか月野うさぎと通じるものがある彼の存在は、
彼女にとって支えとしても機能していた。

「とにかく公園を出たら、人の集まりそうな場所に向かいましょう……マジンガーZ?」

マーキュリーが振り返ると、Zが足を止め、さっきと同じように北の方角を見据えていた。

「? どうしたの、何か見えるの?」
「何かが……こっちに近づいてくる」
「えっ?何かって……」

目を凝らして、マーキュリーも同じ方向を見てみる。
街灯の光の中、僅かに、黒い影が映ったような気がした。
その影が小さく光り――


「危ないっ!!」


◇ ◇ ◇


Zとマーキュリー、同時にその場を飛び退る。
直後、二人のいた場所を光線が走り抜け、地面に火花が激しく飛び散った。

「いきなり撃ってきやがった……どうやら、殺る気になっちまってる奴らしいな!」
「まだわからないわ。この状況で錯乱してるだけという可能性も……」

二人は光線の放たれた方角に再び目を上げる。
そこには襲撃者の姿。二人の位置からもはっきり視認できる所まで接近していた。
Zはそれを目にして――驚愕する。

「なんだあれは……悪魔、いや……マジンガー、なのか!?」


黒い体、胸の赤い放熱板、広げられた赤い翼に、特徴的な顔。
誰の目にも、それは『マジンガー』だった。
マジンガーZの特徴をそのままに、見た目や装飾を極端に禍々しくしたかのような姿。
悪魔のごときその容姿は、夜の空に不気味なほどに映えていた。


「マジンガーZ、あのロボットは一体?」
「わからねぇ!俺の知らないマジンガー、だと……!?」

ここにいるマジンガーZは、昭和47年より放映された東映アニメ版の世界のそれを模している。
自我も、その搭乗者である『兜甲児』の人格がベースとされている。記憶、そして知識も。
故に、彼は知らない。それから20年の後に新たに創造された、目前の新たなるマジンガーの存在を。
それを抜きにしても、目の前の悪魔の発するただならぬ気は、Zに危機感を与えるには十分だった。

「おい、お前は何者だ!?敵か、それとも味方か!?」
「……おおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

Zの問いに答えることなく、悪魔――マジンカイザーは、天に向かって絶叫を轟かせた。

「ルスト……トルネェェェド!!」
「!! 来るわ!!」

一瞬の溜めの後、カイザーの口にあたる部分から破壊の豪風が吹き出された。
風は竜巻となって、地上の二人に向けて襲い掛かる。
巻き込まれまいと、Zとマーキュリーはそれぞれ左右に大きく跳び、回避する。
竜巻は地面を抉りながら、二人の間を吹き抜け、そのまま背後の石壁に直撃した。
巻き込まれた草は瞬く間に腐食していき、灰となって消えていく。

(あの風……強酸が含まれてる!?あんなのが直撃したら、ひとたまりもないわ……!)

オリジナルのそれは、富士山の山肌をも大きく抉り取るほどの威力を持つ。
それに比べればスケールこそ大幅にダウンしているものの、フィギュアの身には十分すぎる脅威だ。

「亜美ちゃん、下がっているんだ!こいつは俺が相手をする!!」
戦慄するマーキュリーに指示を出すと、Zは敵を迎え撃つ態勢に入る。
マジンカイザーはZへと向けて、弾丸の如く一直線に突進してきていた。

「こいつの狙いは……俺だ!!」

超合金の弾丸が、Zを捉える。
皇帝の右腕が、勢いと力に任せて振り下ろされた。

「ぐぉ……っ!」

右腕は、Zの両腕によってかろうじて受け止められた。
同じ超合金である彼でなければ、防ぎきることは不可能だっただろう。
突進の勢いに超合金の重量もプラスされた重い攻撃は、並のフィギュアならバラバラにされかねない。
(こいつ……なんてパワーだ!?)
圧倒されるパワーと凶悪な面構えに一歩も譲ることなく、Zはカイザーを睨みつけ、叫ぶ。

「おい!てめぇもマジンガーなんだろう!?」

こうして近くで見れば見るほど、マジンガーだ。
だがZやグレートとは違い、その姿は悪魔に身を堕としたような禍々しさに満ちていた。
また、体格もZを一回りほど上回っており、大人と子供ほどの差がある。

「マジン……ガー……神にも、悪魔にも……」
「そうだ、神にも悪魔にもなれるマジンガーの力で……てめぇは悪魔になるつもりか!」
「悪魔、に……グ、ウ……」
「っ……!?」

Zの言葉で、一瞬、カイザーの動きが鈍る。
漏らした呻き声は、何かに苦しんでいるようにも思えた。

「何だ、一体……!?」
「……ち、違う……!」
「なっ!?」

だが、その僅かな瞬間ではZの反撃の糸口にはなり得ず。
すぐに、Zに押し付けるカイザーの右腕に力が戻り――高速回転を始める。
「俺の名は……マジンカイザー……最強の、マジン、ガー……」
「うおっ!?」
ドリルを思わせるその回転に、掴んでいたZの両腕が弾かれた。
バランスを崩しよろめきながら、Zは同じマジンガーとして、次にカイザーが放つ攻撃を瞬時に予測する。

「俺は……神をも超える……」

ロケットパンチ……いや、ドリルプレッシャーパンチか?
倒れかける所をかろうじて踏み止まりつつ、咄嗟に両腕を前面で、その一撃に備える。

「悪魔も……倒す!!」

回る右腕がロケットの如く火を噴きながら『発射』され、Zに叩き込まれた。
マジンカイザーのロケットパンチ……ターボスマッシャーパンチだ。

「ぐ……うおおおおっっ!?」

拳は両腕のガードをものともせず、猛烈な勢いでZの身体を後ろへと押し流し――
1メートルほど吹っ飛ばされて、Zはバランスを維持しきれず地に転がった。
それが幸いして、ターボスマッシャーパンチの軌道線上から外れ、その猛攻から逃れられた形となった。
しかしそのままでは終わらない。即座に態勢を整え起き上がると、反撃行動へと移る。

「ナメやがって!光子力ビーム!!」

Zの両の目から撃ち放たれる、光子力エネルギーの閃光。
それに呼応するかのように、カイザーの瞳からも同じように光子力の光が撃たれた。
両者の中間点で二つの光がぶつかり合う、しかし張り合えたのは一瞬。
出力の差か、カイザーの光子力ビームがZのそれをいともたやすく押し返していく。

「何……ぐわぁぁぁっ!!」

光はそのままZの胸部にまで届き、超合金の身体に爆撃を与えた。
衝撃を堪え切れず、再び地に倒れるマジンガーZ。
カイザーの切り離された右腕が、元の部位に戻る。
そしてZにとどめを刺すべく、カイザーがさらなる追撃に出ようとした、その時。

「こっちよ!!」

側面からの少女の声に、カイザーは振り返る。
既にそこでは水星の名と加護を持つ美少女戦士が、必殺技発射の態勢を整えていた。

「シャイン・アクア――――イリュージョン!!!」

セーラーマーキュリーの両腕から、超低温の水流が放出される。
水は意思を持つかのようにカイザーの全身を包み込むと、その内側に発生する冷気が瞬時に凍り付かせていく。
なす術もなく氷漬けとなり、カイザーの動きは封じられた。

「マジンガーZ、大丈夫!?」
凍結を見届け、マーキュリーは傷ついたZのもとへ駆け寄ろうとする。
しかし、凍結は一瞬。仲間を気遣う余裕は彼女には与えられない。
「……なっ!?」
すぐ直後、カイザーの胸部を中心に、異常なスピードで氷が蒸発し始める。
水星の氷をも溶かす熱量の出処は、カイザーの胸部――放熱板だ。

「ファイヤー……ブラスタアアアアアアァァァァァ!!」

皇帝の絶叫と共に、放熱板から熱光線が発射された。
同時に、カイザーを覆っていた残りの氷も一気に拡散。枷はいともたやすく打ち破られた。

(やられる!?)
一直線に迫る赤の熱光線。
避けきれない――そう判断した彼女の行動は早かった。
マーキュリーは体の周りに、シャボン・スプレーを応用した水のバリアを張り巡らす。

次の瞬間、業火が少女の全身を飲み込んだ。

(く……っ!なんて熱量なの……!?)
熱光線はバリアによって阻まれ、少女の本体まで達することはなかった。
それでも、熱はバリア越しに伝わってくる。これが直撃すれば、彼女の身体は跡形もなく消し炭と化すことだろう。
だが無情にも、魔神の業火はすぐに水を蝕み始めた。
シャボンの水分は徐々に蒸発し、バリアがじりじりと削り取られていく。
熱線の照射は収まる気配を一向に見せず、対するマーキュリーには早くも限界が近づいていた。
彼女を動かす電力が、瞬く間に消費されていく。
(耐え切れない――ッ!)

「いい加減に……しやがれぇっ!!」

Zの叫び声がしたかと思うと、ふいに彼女に向けられていた熱光線の軌道が逸れた。
倒れていたZが回復し、その超合金の重量を武器に、カイザーの横っ腹に体当たりを仕掛けたのだ。
その衝撃に、ファイヤーブラスター照射の反動も加わって、カイザーは派手に転倒した。


「大丈夫だったか、亜美ちゃん!」
「っ……ありがとうZ、助かったわ」
バリアを解除し膝をつくセーラーマーキュリーのもとへと、マジンガーZは駆け寄る。
熱光線が通った後の焼け焦げた地面と噴き上がる硝煙は、業火の破壊力を物語っていた。
あと一歩遅れていれば、少女の身体は炎に飲み込まれ、消し炭と化していただろう。

「この場は一旦退こう。悔しいが今の俺達じゃ、あの野郎には勝てねぇ!」
「わかったわ……!」

力の差は歴然。マジンガーZの性能を、あらゆる面で凌駕している。特に攻撃力は言語に絶していた。
ロケットパンチ、光子力ビーム、ルストハリケーン、ブレストファイヤー……
Zの持つ代表的な4大武器を同じように兼ね備え、その上で全ての威力がZのそれを上回っていると来ていた。
(ちっ……俺に対する当てつけみたいな性能しやがって)
同じ武装を持つマジンガーだからこそ、Zはその性能差と無力さをいち早く察知し、痛感していた。

「私が敵の動きを止める!」
「ああ、頼むぜ!」

転倒していたマジンカイザーが立ち上がる。しかし、まだ態勢は立ち直しきってはいない。
攻勢に移られる前に、少女は自身の手札を切る。

「シャボ―――――ン……」

マーキュリーの両手の間に、エナジーを込めたシャボン玉が形作られる。
標的に向けて狙いを定めつつ、シャボンに破裂寸前までエナジーを注ぎ込み――

「スプレ―――ッ!!」

両腕を広げると同時に――破裂。
エナジーの泡が、カイザーに向けて解き放たれた。

「グ、ウ……?」
冷気が、カイザーの周囲の温度を低下させ、霧と幻影を生み出し包み込む。
殺傷力は皆無に等しい。だがこの技で多くの妖魔をかく乱し、仲間の放つ次なる攻撃へと繋いできた。
今回も繋ぐ。マジンガーZが次なる手札を切るための行動に。

「今よ、マジンガーZ!」
「おう!来い、スクランダーッ!!」

Zの叫びに応じ、紅の翼が上空のどこからともなく姿を現した。
マジンガーZの持つオプションユニット、ジェットスクランダーが転送されてきたのだ。

「よし、来たか。そんじゃ行くぜ、亜美ちゃん!!」
「お願い!」
Zのもとへと真っ直ぐに飛来するスクランダー。
Zはマーキュリーを抱きかかえると、翼の位置とスピードにタイミングを合わせ、地を蹴った。
鉄の城と紅の翼、二つの影が重なり合う。

「スクランダー・クロォォス!!」

ドッキング成功――!
魔神のその背に新たな命が燃え、魔神に大空を駆けるための力を与えた。

「あばよっ!!」

飛行可能となったZは、抱えた少女と共に戦場を離脱。
そしてその場には、霧に囲まれたマジンカイザーのみが残されることとなった――





◇ ◇ ◇


「ったく、初っ端からとんでもねぇ奴とぶつかっちまったぜ」
「今回はやり過ごせたけど、この殺し合いが続けられる以上……いずれもう一度戦う時が来るわ」
「ああ。その時までに俺達も、あいつと十分に戦える態勢を整えておかなきゃな……できるだけ、早く」

二人の口ぶりは重い。それはマジンカイザーを放置せざるを得なかったせいか。
この先、あの怪物が他のフィギュアを襲う可能性は十分にある。
それがわかりながら逃げを打つしかなかった口惜しさと無力さを、二人は噛み締めていた。

「あいつ……一体何だったんだろうな」

ふいに、Zがポツリと呟く。

「マジンカイザー……とか言ってたな。変な話だが、どうもあいつが他人に思えねぇ」
「確かに、まるであなたを参考に作られたかのような感じだったわ。武装も似通ってたし」
「そうじゃねぇ……いや、確かにそれもあるけどよ。なんていうか……まるで自分自身を見てたような……」

Zは思い返す。カイザーが飛来する直前に感じた感覚を。
その接近が、あらかじめわかっていたかのような感覚。
まるでマジンガー同士が呼び寄せ合っているかのような、得体のしれない不思議な感覚だった。
そして、脳裏にこびり付いて離れない。
組み合っていた時、ほんの一瞬だけマジンカイザーの見せた表情を。

(あいつは一体何者なんだ……?)


【黎明/エリアI(公園内)】

【マジンガーZ@スーパーロボット超合金】
【電力残量:60%】
【装備:ジェットスクランダー】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(同梱装備一式)、拡張パーツ×1~2(確認済み)】
【状態:ダメージ中、疲労】
【思考・行動】
 基本方針:殺し合いの阻止
 1:この場を離脱する
 2:対主催のための態勢を整える
 3:マジンカイザーが気になる

【セーラーマーキュリー@S.H.シリーズ】
【電力残量:50%】
【装備:なし】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(ポケコン)、拡張パーツ×1~2(確認済み)】
【状態:ダメージ小、疲労】
【思考・行動】
 基本方針:殺し合いの阻止
 1:この場を離脱する
 2:仲間・情報を収集し、対主催のための態勢を整える


◇ ◇ ◇


「グ……オオオ……」

皇帝を取り囲んでいた霧が、晴れた。
既に魔神と少女は目の前からいなくなっていた。
しかし、皇帝の心は晴れない。
自分の心を見失ったまま、一人苦しみ続ける。

「あれは……あいつ、は……」

最初の魔神との接触が、闇に蝕まれていた自身の記憶を紐解く。
それは彼の中にある『兜甲児』の人格から連なる、オリジナルの記憶。




俺はあの魔神を知っている。
そうだ、思い出した。あれは、マジンガーZ。

マジンガーZ。兜甲児が搭乗し、Dr.ヘルの機械獣に立ち向かう魔神。
その果てに敗北し、破壊された……言うなれば前座ロボット。
Zに代わって兜甲児が搭乗し、新たな戦いに臨む――それが俺、マジンカイザー。

兜甲児の人格が宿り、自我を得た。それが俺だ。
俺の中には『兜甲児』の心が宿っているはず。そのはずだ。

――神にも悪魔にもなれるマジンガーの力で……てめぇは悪魔になるつもりか!

だがあの時響いたマジンガーZの声。
それは同時に、『兜甲児』の声でもあった。

少女を守りながら、共に悪と戦う。
紛れもなく、『兜甲児』の乗るマジンガーZの姿だ。

奴が戦っていた悪とは――



……俺?



なぜ、俺が『兜甲児』と戦わなきゃならない?
なぜ、俺が悪になっている?
『兜甲児』が乗っているのは、俺のはずじゃないのか?

そもそも、どうしてマジンガーZがここにいる?
マジンガーZは敗れたはずだ。

負けた奴が、壊れた奴が、何故いつまでもそこにいる?

マジンガーZ、お前は死んだはずだ。
だから俺がいるんだ。俺が新たなる正義の魔神として、戦うんだ。
『兜甲児』がいるべき場所は、もうお前の所にはない。俺がそうであるはずだ。

駄目じゃないか、死んだ奴がいつまでも居ちゃ。
お前はもう『兜甲児』じゃない。

原作の記憶を振り返る。
奴が破壊されたからこそ、俺は正義の魔神として目覚めた。
奴が破壊されなければ、俺は兜甲児の手に渡らない。……物語は始まらない。

マジンガーZは、破壊されなければならない。
敗北して、悪にその身を蝕まれた果てに、俺の手で破壊される。
俺が俺であるために、奴は惨めに死ななければならない。

『兜甲児』は俺だ。
俺が、甲児の心と共に、悪と戦うんだ。


◇ ◇ ◇


……そう、注意しておかなくてはいけない。

マジンガーZの例と同じだ。
マジンカイザーは、確かに『兜甲児』の人格が、自我のベースとなっている。
しかしベースとなっているだけで、決して『兜甲児』本人の人格というわけではない。
彼はあくまで兜甲児のような性格をした『マジンカイザー』なのだ。

さらに着目すべき点として、彼は『OVA版』マジンカイザーを模した玩具であることにも触れねばなるまい。
当然、与えられた記憶も『OVA版』のそれだ。
だから、今回登場したマジンガーZがマジンカイザーの存在を知らなかったことと同様に、
このマジンカイザーも、自身の原作世界である『OVA版』以外のマジンガーZの存在は、知らない。

つまり現時点において、彼のマジンガーZについての知識は、『OVA版』におけるマジンガーZのことしか存在しない。

では『OVA版』におけるマジンガーZは、どんな存在だったか。


あの作品におけるマジンガーZは――

機械獣達に惨めに叩き潰されて、パイルダーを引き剥がされて。
あしゅら男爵に奪われ醜悪に改造されて、挙げ句仲間達を傷つけて。
最後には、起動したマジンカイザーに一蹴され、破壊されて、全ての役目と出番を終えた。

マジンガーZの過去の活躍も特に語られることはない。グレートのようなフォローも入らない。
だから、カイザーの中では、マジンガーZはただのやられ役であり、自身の引き立て役以上の何でもなかった。
それが彼にとってのマジンガーZの認識だったのだ。

――故に、彼は許すことができなかった。
自分の存在を無視したまま、いつまでも『兜甲児』であり続ける、前座ロボットのことが。



◇ ◇ ◇


闇に囚われた自我が、蘇っていく。
魔神皇帝の自我が、再構成されていく。

その心から『兜甲児』を見失ったまま。

歪んだ形で、彼はその人格を構成する。



胸の宝玉の文字が『魔』から――『Z』に変わった。



これは魔神皇帝に心が宿った証。

ただ、その心は本来宿るはずだった正義の心ではなかった。
何故なら――彼は、本来あるべき自分自身を見失ったまま、その自我を取り戻してしまったから。

「俺は……マジンカイザーだ」

はっきりと意志をもって、己の名を口にする。

「そして……『兜甲児』の心を宿す魔神」

彼の言葉に含まれた――憎悪。

「『兜甲児』は――マジンガーZではない」

マジンガーZへの、強い憎しみ。

マジンガーZの、破壊。

自分の中の『兜甲児』を見失った皇帝は、その在処をマジンガーZに求めた。
マジンガーZが破壊されることで、その心が戻ってくると思い込んで。

マジンガーZ。
マジンカイザー。
この舞台には二人の『兜甲児』の人格の持ち主が存在している。
厳密には元となる世界観が異なる、しかしキャラの方向性的には限りなく近い、二つの世界の似て異なる『兜甲児』の人格が。

故に、今マジンカイザーがマジンガーZに求めている『兜甲児』は、本当ならば彼の求めるものではない。
彼の求める『兜甲児』は、常に彼自身の中に存在するのだが……
それを見失ったまま自我を構成してしまった彼は、そのことに気付かない。
気付かずに、マジンガーZの中にそれを求め――マジンガーZの破壊を求める。


「俺が――『兜甲児』だッ――!!」


彼は自らの足で、さらなる闇の道を歩き続ける。
本来の『兜甲児』とはかけ離れた道を。

【黎明/エリアO(公園入り口前)】

【マジンカイザー@スーパーロボット超合金】
【電力残量:50%】
【装備:カイザースクランダー】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(同梱装備一式)、拡張パーツ×1(未確認)】
【状態:両腕に細かい傷あり。水濡れ】
【思考・行動】
 基本方針:???
 1:マジンガーZの破壊


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  マジンガーZ 次:ひだまりのない世界で
  セーラーマーキュリー 次:ひだまりのない世界で
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最終更新:2014年11月21日 23:29