可能性の蟹 ◆6O/b6a0evc
「起き抜けのタバコも酒もねぇ。フィギュアってのはつまんねぇな」
レヴィは身を横たえていたクレイドルから身を起こす。
彼女は
マジンカイザーとの戦闘の後、近くの民家に忍び込み充電を行っていた。
幸い寝込みを襲われた際の対策もあった為、こうして朝まで寝ることができた。
人間がするように伸びを行い関節を慣らしていく。
充電は問題なく行われ、マジンカイザーとの戦闘で消耗した電力は回復している。
ただ、頬の傷だけはそのままだ。
パーツが壊れたらそれまで。壊れたくないなら相手を先に壊せと言う事だろう。
「で…てめぇはそこに突っ立ったままかい。それじゃ働いたのかサボったのかもわかりゃしねぇ」
レヴィはクレイドルの前に立つ『ソレ』に語りかける。
だが言葉は返ってこない。
「相変わらず口もきけないってか。ったく、とことん使えねぇ…」
目の前のフィギュアに吐き捨てるが、やはり反応はない。
二本の足でしっかりと立つオレンジの蟹――本来は金色なのだが――は何も言わずに主を見つめる。
ミラーモンスター・ボルキャンサー。
装着変身シリーズで番外のEXシリーズとして販売されたフィギュア、その第4弾に当たるのが彼だった。
「食えねぇカニなんかどう使えってんだ、シーフードはお呼びじゃねえんだよ。
どうせなら同じパッケージのドラゴンかバッファローをよこせってんだ、クソが」
主からの罵倒を受けるボルキャンサーは無言のまま立ち尽くす。
このボルキャンサー、同パッケージのモンスターに比べるとフィギュアの出来はともかくとして殺しあいの支給品としては大分劣ってしまうのだ。
彼以外の2体はR&Mからの流用モデルであり原作同様、各部位をとりはずしてライダーの武器にする事が出来る。
マグナギガは仮面ライダーゾルダの扱う各種銃器への分割に加え、必殺技エンドオブワールドまで再現まで可能だ。
銃器を得意とするレヴィにとっては相性抜群の支給品となっただろう。
ドラグレッダーも、校舎で
チャリオットに呼び出されたドラグブラッカー同様の性能を持っており戦力として申し分ない。
このボルキャンサーはどうか。
装着変身EXと新規造形されたおかげで各部可動は本家装着変身にも負けない。
なんとあぐらを組む事まで出来る。
だが仮面ライダーの相棒、ミラーモンスターとしては武装として使えるのは背中にある盾のシェルディフェンスのみ。
ハサミ型の武器であるシザースピンチは取り外すことが出来ず、代わりにオリジナルギミックとして肩アーマーが追加されている。
火力を望むレヴィにとって、盾しか使えない彼がきた事は3体の中からピンポイントで"ハズレ"を引いてしまった事になる。
おまけに乗り物や動物型と違い、"人型"の支給品という事で面倒な仕様になっている。
所有者からの指示以外には自律的な行動はせず、電力消費は参加者よりも激しい。
その仕様に気づいたときは思わず蜂の巣に仕掛けたぐらいだ。
だが悪態をつきつつも、レヴィはボルキャンサーを破壊したり、所有権を放棄することもなかった。
なぜならこの支給品が来たことで1つの可能性に辿りつくことが出来たからだ。
ボルキャンサーは支給品という扱いの為、レヴィの持つ他の武器と同じように会場の内と外を行きしている。
曲がりなりにも『フィギュア』であるにも関わらずに。
「…つまりだ、この蟹とあたし達の違い…コアか?CSCか?それともこいつの方に何か仕組んであるのか?
そいつがわかりさえすれば」
自分達参加者も会場の外に『脱出』できるかもしれない。
分解するにせよ調査に留めるにせよ…ボルキャンサーはここから出る為の貴重なヒントだ。
「ったく、頭を使うのは他の面子の仕事だろ? 本物のアタシはしないだろうが…これもドールの神様の仕業か?」
この殺しあいに参加している61体のフィギュアは武装神姫以外も同様の仕様のロボットだ。
元になったキャラの人格とは別に、一体のロボットとして冷静に事態を把握するための計算が可能だ。
故に、本来はラグーン商会の他の面子に任せていた頭脳労働を自前で処理できる。
「だけどそいつは後回しだ。そうだろう、あたし」
冷静に計算を行い導き出した答えに従うかと言えば、それは別だ。
確かにフィギュアであるが故にモデルのキャラクターとは違い、高度な計算も考察も出来る。
だが彼女はマシーンであると同時に、激情に従うレヴィというキャラでもあるのだ。
この身に宿る感情、憤り、怒り、それに抑える道理など彼女にはない。
喧嘩を売ってきた相手を、自分を舐めた相手を放置するなどレヴィにとってはあり得ない事だ。
鉄の城、マジンカイザー。
奴だけは破壊しなければ気が済まない。
脱出よりも考察よりも何よりも…優先される事項だ。
まずは武器を調達する。
あのマジンカイザーをスクラップにするのに自前の装備では火力不足という事は前回の戦闘で判明している。
かといって支給されたボルキャンサーは力不足、せいぜい盾になるぐらいだ。
ならどうするか……持っている者から奪えばいい。
別にその行為に対する後ろめたさも罪悪感も感じる事はない。
元々自分はそういう世界で生きてきたキャラで、ここは殺しあいの場だ。
「待ってろよ…マジンカイザァ! そして…」
このパーティーを仕組んだ人間達。
彼らはレヴィというキャラがどういう性格か理解してたはずだ。
その上でこの殺しあいにレヴィをモデルにしたフィギュアを参加させた。
つまりそれは、レヴィが何をしようとも自分達に刃向かうことは出来ないと高をくくっているのだ。
その事実が彼女の感に障る。
ああいいさ、今はそっちの思う通りにクルクル踊ってやる。
だが魔神をぶっ壊した後は…てめえらの番だ。
ボルキャンサーを引き連れレヴィはステージに戻る。
彼女が彼女であるために、そしてレヴィという存在を侮った者達に報いを与える為に。
【早朝/エリアE西(屋外)】
【レヴィ@リボルテック】
【電力残量:90%】
【装備:ソード・カトラス】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(同梱装備一式)、ボルキャンサー@装着変身(電力残量:60%)】
【状態:右頬に傷あり(塗装落ち)】
【思考・行動】
基本方針:会場を脱出し、外の人間に一発カマす
1:マジンカイザーをバラす
2:他の参加者から武器を奪う。抵抗するならバラす
※パーツの転送技術で外に出られるのでは、と推測してます。
最終更新:2016年06月18日 00:08