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Battle Of Emperor ◆7Ju4MZPjio



夜道を女性が歩いている。女性形フィギュアと書き表したほうがこの場合は正しい。
ダルそうにまったりと歩き肩を回す。関節部分に問題は感じられない。
肩を回す姿は本来ならありえない程強引に回しているがフィギュアならば可動の言葉で納まる。


「唯でさえオリジナルだのフィギュアだのワケの分かんねぇ存在だってのによ」


レヴィ、それがこの女性フィギュアの名称。
本来の姿は世界にしがみついている一人の女性、殺し屋そして人間。そのフィギュア。
彼女自身も自分自身がフィギュアと呼ばれる存在だと理解しているし拒んでいるわけではない。


「煙草が吸いてぇ気分だぜ……チッ、火もなけりゃブツもねえ」
「人形【アンティーク】のあたしが言う台詞じゃあねぇが人形同士で殺し合え、なんざ頭が湧いてやがる」


聞き覚えのない声。記憶が無くなる程昨夜に酒を浴びた記憶もない。
夢、存在自体が夢【アブノーマル】な状況だがこれは彼女で表わす現実。
バトル・ロワイアル――籠の中に閉じ込められた鳥達が空を夢見て殺しあう宴。
ぶっ飛んだ連中が好みそうな香りが漂うこの言葉に今、レヴィは巻き込まれている。


「あたしは何処でもあたし、例え舞台が別でも渡される台本は同じって事かい」
「関係ないね、捨てても問題ねえお伽話かもしんねえが、指咥えて震えるほどガキじゃあない――」


何故か響く金属音と硝煙の匂い。
納得させるように、自分自身に何か言い聞かせるかのように言葉を吐くレヴィ。
フィギュアだろうが関係ない、邪魔する奴はバラす、使えねぇ奴は切る。
銃を指で回しながら再度歩き始め当てなき旅を始める、終着は何処?
それは役者【ドール】が飽きるまで。


「おいおいおい……無機物な音鳴らすと思ったら古代の遺産【アンティーク】、それもミルクが好きそうな甘ちゃんにお似合いの」


これはフィギュア同士の殺し合い、ならば参加者がフィギュアなのは必然。
例え目の前に機械が現れても驚くことなど何もない、それが当然。

レヴィが瞬時に放った弾丸は標的に命中した、それも右肩奥深くまで。相手が人間、人型と仮定していた場合の話だが。
暗い深夜と言ってもレヴィにとっては見慣れた風景、光度であるため視界は常人と比べれば視えている。
その証拠に相手に弾丸を喰らわせたのだが手応えは無いようだ、相手が機械ならば。


「こんなイカれた事に関しちゃ日本って国はオリンピックでも表彰台独占出来るって前にロックやベニーが漏らしていたの思い出しちまった――ぜッ!!」


拳銃じゃ装甲板は貫けない、まだ姿もハッキリと見えていない無機物に新たな獲物を打ち込む。
グレネードランチャー、立派な人形であるレヴィに付属されている玩具【獲物】だ。
「機械の出番なんざ過去か未来で充分なんだよ、そうさ、充分なんだ。
居場所がねえから黙ったスクラップになっとけッ!」
追い打ちにもう一発。着弾し爆風に包まれる中の追い打ち、威力は生身なら木っ端微塵と表わすだろう。
打ち込んだレヴィはグレネードランチャーを降ろしカトラスに装備を切り替える。
理由は唯一つ。


敵が攻めて来たならば動きやすい方が殺りやすいからだ。


「shit!」


場所がコンクリートだろうと構わず大きく飛び込み身を低くするレヴィ。
数秒前にレヴィの頭が存在していた空間に一筋の閃光が走り、通りすぎて間もなく遠くで爆発が起きた。
「糞ったれ……マッド野郎が作った兵器なんざお呼びじゃねえんだよてん……!」
身体を起こしたレヴィの視線には相手の姿がハッキリと視える。


黒き身体、赤い翼――その姿は神か悪魔か。


今のレヴィには触れてはならない禁忌が自ら歩み寄ってくるようにしか視えなかった。


「デビル何てのは古臭えジジイと夢しか見えねえ米国野郎の頭ン中で充分なんだよ」


横に走りながら銃弾を計三発標的である黒い機械に打ち込む。
自分は近くの隠れられそうな岩陰へ、対する機械は片腕で銃弾を薙ぎ払う。
小さな傷は与えているが、鉛球では機械は止まりそうにない。先ほどのグレネードランチャーならば少しは深い傷が与えられそうだが。
銃弾を薙ぎ払った機械の目から何かが集まる感覚が視えたレヴィは本能がヤバいと告、再度走りだした。


黒い機械はそのまま己の瞳からビームを、ビームを発射したのだ。
「どっかの国の科学力は世界一じゃねぇのかよ、ナチ公共め……ッ」
そんな事を言っても誰も責任など取ってはくれない。取ってくれるとすればバラされた自分の遺体だけだろうか。
先ほどの爆発の正体はこの光と見て間違いない、レヴィが隠れていた岩が爆発で消し飛んだのだ。
再度屈み爆風をやり過ごすも黒い機械は己の掌を飛ばし攻撃してきた――信じられない。


「テメェの掌はモーターでも付いてんのかァ!?クルクル回して鬱陶しい、床にキスしてな!!」


グレネードランチャーを発射、宙で衝突するターボスマッシャーパンチ、結果は特に無し。
爆風が晴れると黒い機械の元に掌は戻っており、傷も目立たない。
「ケッ!核でもスクラップに出来ないってか?」
冗談交じりに言葉を吐き出す、これが冗談と言い切れない所が夢【理想】を現実【地獄】に引き寄せる。
「帰ったらクソ尼の所で『かみさま』って奴に祈りを捧げるか?金と銃と酒えお寄越せ、ってよォ!!」
やってられるか。そう言わんばかりにカトラスを撃ち込むも再度薙ぎ払われる。
(人形だと銃の取り替えは楽だが……ジリ貧もいい所だぜ。絶頂に何時までタッても辿り着きゃしねぇ)


「なぁそろそろ口を動かしたらどうだ?吹き替えじゃねえ本場の声ってのを聞かせろよ」


「マジン……カイザー」


レヴィは一度表情を緩めると、実験体を殺すような瞳で銃弾を放っていた。


常人ならば予備動作なしに放たれた銃弾に気づく事なくこの世に別れを告げているだろう。
しかしマジンカイザーと名乗った機械【ドール】は簡単にそれを弾いたのだ。
弾いた銃弾は弾丸となりレヴィの頬を掠った。レヴィの頬から静かに流れ落ちる血液、それを舐めとる。
いや、この場合は塗装が剥がれた、と言うべきか。


「最高にイカれてやがるぜ……こんなの体験しちまったら壊れちまう、それも永遠にイキっぱなしでよォオ!!」


本体【人間】の記録【メモリー】にはこんな出来事が記されてあった。
『銃弾を刀で斬ったイカれた日本人が存在する』
だが目の前の存在は何だ?銃弾を弾き返し、本人に当てやがった。たまんねえ。
これ程狂っている標的は初めてだ、夢でなきゃありえねえ、人形様だからこそ起こった奇跡。
最高だ、もう二度と味わえることはない、だからじっくりと堪能した後に殺す。


糞食らえ、こんな悪夢はハリウッドで充分、脳がイカれる程薬に溺れた記憶はない。


怒号と共にグレネードを、着弾と同時に本体を投げ捨て、カトラスに切り替え二丁拳銃を乱射する。
美学が感じられない戦法だが戦法何て関係ないのだ。


「テメェが有機体ならバラす、機械でもバラす!!」


走りながら、弧を描く様に銃弾を放つレヴィ。
進路先にあるグレネードランチャーを足で引っ掛け宙に浮かせる、それを引き寄せ再度自分の手元へ。
爆風が晴れるまでにリロード、終了。追撃を試みるもあのビームが飛んでくるが不発、これを回避。
「マジンだぁ?あたしはテメェを呼び出すためにご汚いランプを擦った記憶はねえ」
強気な言葉、しかし現状が危険なのはレヴィ、打開策はこれから惹き寄せる。
「皇帝なんざくだらねえ位だ。不釣合いな地位ってのは古今東西全員殺されてんだよ」


「……俺は正義の、デビルマシン……マジン……神にも悪魔にも……うごおおおおおおおおおおおおおおお」


兜甲児――それがマジンカイザー本来のパイロット。
正義感溢れる他人のために本気になれる優しい戦士――絵に書いた正義の味方。
ならばマジンカイザーの人形であるこの存在にも記録が記されているはず――それは記されている。
魔。今のマジンカイザーはただの破壊の魔人となってしまっている。
この状態は対象を破壊するまで止まらない、対象は悪、目の前に居るのはレヴィ。
正義の魔人が心を取り戻すには時間が掛かってしまう。


「あぁ!?ヒステリックな叫びを上げても同乗する奴はただの偽善野郎……っても此処にいるあたしはそんな事はしねえ。苦しんで死ね……っておいおい」


レヴィの言葉に怒りを表した、かどうかは本体にしか分からないが剣を取り出す魔神皇帝。
銃に剣で立ち向かう――英国や日本が好みそうな絵面がレヴィの眼前に広がっていた。
そして初めて魔神皇帝はその脚で大地を走る、その重量感、その迫力、どれも最高傑作。
笑うしか無い、嗚呼笑ってやるさ。これは現実だ、受け入れよう。どうしようもないロクでもない現実だ。


(普通に噛ましても意味が感じられない……なら関節か?だがあの作りは人形のあたしよりも頑丈と見て間違いない。
なら顔だ、顔を吹き飛ばしてやる。カメラが何かがモニターに繋がってんだろ機械ってのは。
機械の中に人が居るのか、単純に機械なのか、遠くで操作しているかは分からねえ、けどよ)


「首を跳ねれば止まるってのがこの世で信じれる数少ないルールだろ?少なくてもこの眼で見てきたぜ」


グレネードランチャーを再度装備する、本来ならばRPGでも欲しい所だが時間も猶予も無い。
迫り来る魔神皇帝を視界に捉える、レヴィから攻める気は無い、珍しく。
斬り掛かる瞬間――そこを狙い顔を吹き飛ばす。両腕が無防備になった瞬間が最高で最悪の好機。
当たれば天国、外れれば地獄。解りやすい――世界は簡単に出来ている。


「――!?」


飛翔。マジンカイザーは空を飛んだ。赤い翼――カイザースクランダーは飾りではない。
意表を突かれたレヴィはほんの一瞬ではあるが思考が止まる、つまり死ぬ。


「ファイヤーブラスタアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


胸から放たれた脅威の熱線はレヴィではなく遠くから飛んできたレーザーと衝突。
レヴィには何が起きたか分からない。閃光と爆風に包まれる瞬間に振り向いた先に紫の機械が目に見えた。
それが最後の記録――。


「女も黒いレプリロイドも逃げたか」


屋根の上から爆発後を見つめVAVAは一人言葉を漏らす。
フィギュアと言え流石は魔神皇帝と言った所か。コンクリートが所々崩れているのが深夜でも分かる。
VAVAはレヴィを助けた訳ではない、寧ろ二人まとめて処分しようとしていた。しかし爆風と閃光が晴れる前に離脱されていた。
まぁいい、そう呟くと歩き始めたVAVA。
此処にエックスやシグマがいるかはどうかは分からない、だが必ず倒さなければならない。
それはオリジナルの記録、だがフィギュアである彼にも変わらない。
彼らを破壊するまで、彼が活動を停止する事は本人自身が許さないのであった。



【深夜/エリアE(屋外)】


【VAVA@D-Arts】
【電力残量:95%】
【装備:肩キャノン】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(同梱装備一式)、拡張パーツ×1(未確認)】
【状態:損傷なし】
【思考・行動】
 基本方針:待っていろよエックス
 1:邪魔をする奴は壊す


マジンカイザーは閃光と爆風が晴れる前にそのまま戦域を離脱していた。
あのまま戦闘を行っていたら銃の女性を壊していただろう。それは出来なかった。
いや、今のマジンカイザーなら壊してしまう。彼の最後の良心がそれを止めたのだ。


「俺は神にも悪魔にも……ぐ、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


【深夜/エリアJ(屋外)】


【マジンカイザー@スーパーロボット超合金】
【電力残量:75%】
【装備:カイザースクランダー】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(同梱装備一式)、拡張パーツ×1(未確認)】
【状態:両腕に細かい傷あり】
【思考・行動】
 基本方針:???
 1:???


爆風と閃光が吹き荒れる中、レヴィはそのまま離脱、置き土産にグレネードを一発放ち戦線を離れていた。
あんな常識を外れた奴と殺り合っていれば先に此方が活動を停止してしまうのは分かっていた。
次にあのマジンカイザーを完全にバラすには装備が足りない、火力不足だ。
最低限RPG――それでも効くかは分からないがやられっぱなしも癪だ。


「フィギュアだとか人間だとか関係ねえ、そうだ、関係ないんだ……バラす」


【深夜/エリアE南(屋外)】


【レヴィ@リボルテック】
【電力残量:60%】
【装備:ソード・カトラス】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(同梱装備一式)、拡張パーツ×1(未確認)】
【状態:右頬に傷あり(塗装落ち)】
【思考・行動】
 基本方針:邪魔するならバラす
 1:次に会ったらマジンカイザーをバラす


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最終更新:2014年06月13日 22:15