英雄VS鬼-POWER BATTLE- ◆NXFS1YVsDc
そいつの姿を最初に目にした時は、正直目を疑った。
俺ともあろう者が、運命だとか宿命だとか、女々しい戯言を一瞬でも信じかけてしまった。
馬鹿馬鹿しい。この舞台にそんなものは存在しない。
俺達は闘うためのみに生まれた擬似生命体(レプリロイド)……いや、殺し合うためのみに自我を与えられた、滑稽な人形に過ぎない。
そいつとの邂逅にしても、この殺人ゲームを仕組んだ人間達の手の上での話でしかないのだ。
結論から言うと、残念ながらそいつは俺の探し求めていた奴とは違った。
だったら、そいつは何者だ?特徴はことごとく、奴と一致していた。
蒼のボディとヘルメット、ヒューマノイド型の出で立ち。顔つきも似ている。
だが奴に比べてその身体は小さく、幼い。
細部も違う。まるで奴のデザインをさらにシンプルに立ち戻らせたような。
いや、逆か?この子供を基に、奴の姿がデザインされたようにも見える。
間抜けな話だ。
そこに奴の影を追いすぎたが故に、俺は気付くのが遅れてしまった。
そいつが、俺の待ち望んでいた存在そのものだということを。
俺のオリジナルは、これまでにいろんなモノを潰してきた。
だが、ひとつだけ潰したことのないものがある。
伝説さ。
◇ ◇ ◇
「僕に支給されていたのは、これくらいか……」
「武器として使えそうなのは、この剣だけのようですね」
メイド服姿のフブニーと共に、ロックは自分に支給されていたパーツを確認していた。
その手に握られているのは、何の変哲もない一本の剣。あるヒーローが使用していた剣、とのことらしい。
「とはいえ、剣はあんまり使い慣れてないんだよなぁ……
ロックバスターをはじめ、今まで使ってきた武器は大半が射撃武器だったし」
「ですが、もしもの時の護身のためにも、使えることにこしたことはないかと」
「そうだね。できればこういうのは使わないに越したことはないけど……そうも言ってられないか」
フィギュアである彼らは、行動一つ一つに内部電力を使用する。
ここでは、普段無消費で使用できていたロックバスターすらも、微量ながら消耗を余儀なくされるのだ。
一旦手元に転送すれば、消耗なく振るうことのできる手持ち武器の存在は、無視できるものではないだろう。
「やっぱり、ラッシュはここにはいないみたい」
ふと、ロックがポツリと漏らす。
「ロック様、ラッシュとは?」
「ああ、僕と一緒に戦う犬型のサポートロボットのことだよ」
「犬の……?」
「装備されたコイルでジャンプ台になったり、変形して空や水中を進んだり……頼りになる相棒さ。
D-Artsの僕のセットにはラッシュも同梱されてたから、もしやと思ったんだけど……」
もっともD-Artsのラッシュには、ジェットはマリンはおろか、基本装備のコイルすらも装備されていない。
仮にこの場にいたとしても、サポートとしては満足に機能できなかった可能性が高いだろう。
だが、ロックにとってはそれは問題ではなかった。
「でも当然か。さすがに支給パーツ扱いはラッシュに悪いよね」
苦笑するロック。
そんな彼に、どこか無理して笑っているような違和感を感じて……フブニーは尋ねてみた。
「ロック様……ラッシュ様がいなくて、心細いのですか……?」
「……まさか。ラッシュがここにいないことは、本当なら喜ぶべきことだよ。
こんな殺し合いに、ラッシュまで巻き込まれてほしくないし」
「……すみません、出過ぎたことを言いました」
「いや、いいんだ。もしフブニーがそう見えたというなら……それはきっと、僕自身の弱さが出たってことだろうし。
もっとしっかりしなくちゃ。僕はロックマンなんだから」
そう言って笑いかけるロックは、弱さを認めつつも、決してそのことで甘えようとはしない。
フブニーはその姿に、ヒーロー・ロックマンとしての強さと共に、どこか得体のしれない危うさが見えたような気がした。
「ロック様……ならば私が、及ばずながらラッシュ様の代わりを務めましょう」
「え?」
「私はこの身も心も、ロック様の牝犬として捧げました。
ならばラッシュ様同様、ロック様のサポートを行うことに何の問題がありましょうか」
「牝犬って、あのね……」
言い回しに突っ込み所こそあれど、彼女の言葉に嘘偽りはなかった。
自分のサポートで、マスターと認めた人が少しでもオリジナルに近づけるというのなら、冥利に尽きるというものだ。
「お望みとあらばジャンプの踏み台にもなってみせましょう!いつでも、私を踏みつけてください!」
「い、いやそこまでしなくてもいいから……ていうか何かおかしな流れになってるような」
「さあ!どうぞ、思いっきり踏みつけてください!容赦なく、踏み躙るように!」
「うわ、こんな所で四つん這いにならなくていいって!ほら立って、スカート短いから中見えちゃうから!」
やっぱりこの子、最初に引っ叩いた時にどっか異常をきたしたんじゃ……
ロックはちょっとだけ心配になりつつも、そのやり取りにどこか安心を感じていた。
自分を慕っている彼女の気持ちが、伝わったからなのか――
不意に、場の空気が一変した。
それと共に、ふざけ合っていた二人の表情が、険しいものへと変わる。
――凄まじい殺気。
人間で言う所の背筋を凍らせるような、刃物の如き鋭さが、二人を突き刺していた。
「いい身分だな。さっそく一人、口説き落としたか」
暗闇の向こうから聞こえてくる、地獄から響くような声。
それが殺気の主であることは疑う余地はなかった。
「だが……最後の一人になるまでこの街で踊り続けるのが、俺達の存在意義だ」
街灯の明かりに、その姿が照らし出される。
右肩に大砲を装備した、紫のロボットのフィギュアだった。
「いくら綺麗事を並べた所で、玩具である俺達には逃げ場も、行き場もない」
見覚えがない……だが全身のデザインが、ロックへと向けて物語っている。
彼がロックと同じ原作か、もしくは近しい世界の存在を模していることを。
「そうだろう?……エックス」
表情の出ない、無機質とすら言える顔立ち。
その変わる筈のない表情は、厭らしく嗤っているかの様に見えた。
「エックス……何を言っているんだ?」
「……成程、やはり別人か。だが、それならそれでいい。お前が何者だろうが……どの道俺のやることは変わらん」
否応なしに、一触即発の緊張感が場を支配する。
「ロック様、この者は……!」
「ああ……わかってる……!」
――こいつは、危険だ。
フブニーのメイド服姿の素体が、元の戦闘形態の素体へと瞬時に変わる。
ロックの左腕が、バスターの形状に変化する。
「お前が何者であるかは、戦いの中で暴き出すまでだ」
「そう言う君は……何者なんだ」
「ならば覚えておけ。お前を潰す者の名を。
俺の名は――VAVAだ」
肩の大砲が、火を噴いた。
◇ ◇ ◇
ロックとフブニーが、左右へと跳ぶ。
発射された砲弾が、二人の間を走り抜け……一拍置いて、後方で爆音が響き渡った。
「フブニー、君は下がっているんだ!」
フブニーに口早に指示を出し、ロックはVAVAを睨み付ける。
VAVAは既に動いていた。
そのキャノン砲は、表情の奥に浮かぶモノ・アイは――明確にロックだけを捉えていた。
そしてロックもまた、左腕のバスターをVAVAへと定める。
「こいつの狙いは……僕だ!」
両者の砲口から、弾丸が連射される。
双方の弾は中間地点でぶつかり合い、爆発を巻き起こす。
爆心地から煙が広がり、その中から複数の砲弾が飛び出してきた。
バスターで相殺しきれなかった砲弾が、ロックの弾幕を突き抜けてきたのだ。
横っ飛びにそれを回避しながら、バスターのエネルギーチャージを開始する。
連射能力こそロックに分があるが、単発の威力はVAVAが上だ。
(正面から撃ち合うと力負けは必至……なら、隙を突いて強力な一撃を叩き込む!)
次々と撃ち出される砲弾に対し回避運動を取りながら、攻撃の機を伺う。
「どうした、エックスもどき。いつまでも逃げ回れると思うな!」
「いや……君の隙は、読めた!」
驚くべきことに、この僅かな撃ち合いだけで、ロックは早くもVAVAの隙を見出していた。
「ガキが……ハッタリを!」
VAVAの砲撃。しかし、今度はロックは大きく動かない。
僅かに身体を逸らすだけで、砲弾はロックのすぐ横を通過していった。
直前の砲身の向き先から、ロックは射線を予測し、紙一重で避けきれる位置を確保していたのだ。
(今だ!発射の瞬間、あいつは動きを硬直させる!)
カウンターで、バスターを撃ち込む。
エネルギー充填を完了し、先程の数倍のパワーを持ったチャージバスターを。
「……っと!」
VAVAの脇腹を掠めていくバスター。
直撃は叶わなかったものの、この瞬間VAVAはバランスを崩し、更なる隙を生じさせた。
そこを見逃すことなく、ロックは追撃のバスターを連射する。
「ちっ……!」
単発のロックバスターの威力は決して高くはない。ここではせいぜい殴りつける程度の威力しか持たない。
それでも立て続けに食らえば、与えるダメージは相手にとって無視できるものではなかった。
追撃の手を緩めず、反撃の暇すら与えず、ロックはバスターを撃ち続ける。
「ロック様、左です!」
フブニーの声が聞こえた。
その刹那、視界の左隅に入った電柱の影に、何かが光ったのを捉えた。
反射的にスライディング――
直後、身を低くしたロックのすぐ上を、ビームが走り抜けていった。
「ぎょっ!?他にも仲間がいたのか!?」
ビームの撃ち出された電柱の影へと視線を向ける。
そこにあったのは――『コ』の字の形に折れ曲がった、細長い板状の物体。
異質な物体の登場に、ロックの意識に戸惑いが混じり……注意が逸れた。
「何だこいつは……ぐぁっ!?」
ボディの前面に砲弾の一撃を受け、ロックは大きく後ろに吹っ飛ばされた。
「そっちばかりに気を取られてる暇はないぜ」
VAVAは態勢を立て直していた。今度は彼が、ロックに追い撃ちをかける――
「――その言葉、お返しします」
少女の静かな声は、VAVAの真後ろから聞こえた。
そこには、手に忍者刀を携え、背を晒したVAVAへと跳躍するフブニーの姿。
「フン……」
しかしVAVAは意にも介せず、身構えようともしない。
その不審な余裕にフブニーは警戒の念を抱き、無意識に突撃の勢いは削がれる。
直後――
無防備であるはずのVAVAの背に、『コ』の字が2基、不意に転送された。
「なっ……!?」
内側部分にエネルギーを収束させ、ビームが撃ち出される。
勢いが削げたのが幸いしたか、ギリギリの所でそれを回避するフブニー。
だが体勢を維持しきれず、地に墜落しその勢いのままに派手に転がった。
「フブニー、大丈夫か!?」
「……雑魚に用はない」
叫ぶロックを尻目に、VAVAはさらに同じオプションユニットを展開させる。
その数は6基。VAVAの周囲に、意思を持っているかのように浮遊する。
ロックとフブニー、双方を視界に捉え――攻撃目標に設定し、指示を出した。
「行け、フィン・ファンネル……!」
◇ ◇ ◇
このフィン・ファンネルが、俺に支給された拡張パーツだった。
νガンダムというロボット兵器、その代名詞とも言える武装らしい。
使用者の念じるままに戦場を自在に動き回りながら、ビームを撃ち出す。
また、複数のファンネルを基点にバリア・フィールドを形成し、使用者を守ることも可能だ。
シンプルながら攻防ともに優れた万能性は、ROBOT魂のパーツであっても変わることはない。
この武器だが、どうやら原作には開発コンセプトが存在していたという。
大型化し個々にジェネレーターを搭載する事で、従来のファンネルより稼動時間を大幅に向上させた……という設定だ。
原作のそうした設定が反映されたか、この拡張パーツのフィン・ファンネルの1基1基にも、それぞれに小型のバッテリーが搭載されていた。
このことは、使用者である俺に大きな優位を与えることになる。
俺達フィギュアは、行動の一つ一つに内部電力を要する。
強力な武器やアイテムを使用するには、相応の代価として命を削る必要があった。
だがこのフィン・ファンネルの場合、内蔵された小型バッテリーが消費電力を賄っている。
つまり、転送以外に電力を消費することなく、使用できるのだ。
無論、ファンネルのバッテリーも無尽蔵ではない。使い続ければ当然消耗する。
回復にはクレイドルが必要になるし、それでも無理に動かそうというなら、本体の電力を要することになる。
だがそれでも、これだけの万能武器を、操作するフィギュア本体への負担なしに使えるというのは大きい。
全くもって、便利な代物だ。
他の連中に支給されたパーツがどうかは知らないが、ランダム支給品にしては、使い勝手としては悪くはない。
それゆえに、俺はフィン・ファンネルの性能に酔ってしまった。過信していたと言ってもいい。
それが少なからず慢心に繋がっていたことは、否定しない――
◇ ◇ ◇
6基のフィン・ファンネルが、戦場を舞い踊る。
3基はロックとフブニーの周囲を飛び回り、あらゆる角度から攻め立ててくる。
残る3基はVAVAの守りを固めるように位置し、そこからVAVA自身の砲撃と共に遠距離射撃を行う。
「くぅっ……!」
ファンネルの撃ち出すビームが、フブニーの横っ腹を掠めた。
振り向きざまにクナイを投げるも、その刃は宙を切る。ファンネルの動きが、捉えきれない。
パターンの読めない変則的なファンネルの動きに、フブニーは対応しきれず、翻弄されていた。
「くっ、速い……私の機動力でも、捉えることが……!」
「焦らないで!君は僕より速い、対応できるはずだ!それに見た目よりも、動きは荒い!」
「は、はい……!」
「あの大きさと形状から、銃口の向きはわかりやすい!冷静になれば、捉えられる!」
一方で、ロックは彼女とは対照的に、的確にその動きを捉え、攻撃を回避していた。
「先に操っているVAVAを倒す!そうすればこいつらも止まるはずだ!」
猛攻を前にしてなお、ロックの判断は冷静だった。
回避運動を行いながら、バスターのチャージも完了している。
攻撃の合間を縫って、最大まで溜めたチャージバスターの一撃を、VAVAに向け撃ち放つ。
「お……っと」
渾身の一撃が、VAVAに届くことはなかった。
VAVAの前面に発生した三角形のバリアが、バスターを阻んだのだ。
そのバリアを展開させているのは、3基のフィン・ファンネル。
――だが。
「バリアにもなるのか……だったら!」
ロックバスターの定める標的が、即座に切り替えられる。
銃口を向ける先は、バリアを構成するフィン・ファンネル本体。
バリアを展開している間、ファンネルは使用者本体を守るために、必然的に動きを制限されることになる。
故に、動き回るファンネルを撃つよりも遥かに容易く、攻撃を当てることができる。
何発ものロックバスターが1基のファンネルに集中的に叩き込まれ――破壊された。
「ッ……なんだと……!?」
◇ ◇ ◇
甘く見ていた。
エックス本人でなかったことへの落胆か、あるいは青臭さの強いガキの見た目が促したか。
俺はこのガキを少なからず侮って、戦いに臨んでしまったことは確かだ。
――戦い慣れている。
武器は腕のバスター一本。
戦いの前に剣を持っていたようだが、戦い方からしてメインはバスターによる射撃戦だ。
神姫も加えて1対2といえど、目覚めたての神姫など物の数ではない。
フィン・ファンネルを含めた総合的な戦力はこちらの方が上のはずだ。
だが、こいつの戦いぶりはその差を着実に詰めてくる。
単純にスピードだけを問うなら、もう一方の神姫のほうが速い。
だが神姫はファンネルの動きに翻弄され、そのスピードを十分に活かしきれないでいる。
ところがガキの方はどうだ。既に動きを見切ったかのように冷静さと余裕を維持し、的確に回避と対処を行っている。
今もそうだ。必殺の一撃を完全に防がれても一切動じることなく、バリアの特性と攻略法を即座に見抜き、反撃に出た。
俺自身、ファンネルの扱いに不慣れである点は否定しない。
だがそれを差し引いたとしても、フィン・ファンネルを初見でここまで完璧に攻略してくるなどと。
単純なスペックだけでは判別できない、圧倒的な技量と経験なしにできることではない。
確信する。
このガキは、エックスやゼロにも勝るとも劣らぬ手練れであることを。
それこそ、あの伝説の継承者とも――
……いや。そうじゃない。
あの神姫に呼ばれていた、ガキの名前。
(――まさか)
聞き覚えのある名前に、VAVAは攻撃を捌きながら、ツールで検索を開始する。
検索ワードは、自分達の世界に伝わる伝説の英雄の名前。
自分達の原作のタイトルにも使用されている、元祖の戦士の名前。
……検索結果は、すぐに出た。
「そういうことか……」
ああ、まったくだ。笑わば笑え、本当に間抜けな話だ。
奴の……エックスの影を意識し過ぎたが故に、俺はその正体に逆に気付けないでいた。
こいつの原作は、高い完成度と、そして高い難易度を誇るアクションゲームのシリーズ。
彼は10回を超える幾多の戦いを乗り越え、困難なステージを制覇し、100体以上の戦闘用ロボットを撃破してきた。
それらの修羅場の記憶を、その中で得た戦闘経験の全てを、あのガキの人工知能が備えているというならば。
このガキは、凄まじい猛者だ。
成程、にわか仕込みのファンネルがこうも容易く見切られるのも納得だ。
「貴様が伝説の英雄……」
エックスに似ている――?
違う、そうじゃない。
エックスがこいつを基に生み出された。
このガキこそが自分達の世界の全ての原点であり、全ての始まり。
かの天才、Dr.ライトが作り出した、最高のロボット。
そう、こいつこそが『伝説』の張本人。
「貴様が……"ロックマン"かッ――!!」
◇ ◇ ◇
(す、凄い……!)
ロックの鮮やかな戦いぶりに、フブニーはただ圧倒されていた。
ファンネルと、そしてVAVAからの猛攻に晒されてなお、ダメージを最小限に抑えている。
猛攻の隙間を掻い潜り、隙あらばバスターをVAVAへと撃ち込む。
最初に彼女が戦った時点で、只者ではないことはわかっていたが……これほどまでに強かったとは。
だが、そんな彼ですらも、あのVAVAを攻めあぐねている。
ファンネルによる攻撃と防御が、VAVAへの決定的な踏み込みを許さない。
「……ッ!」
自分にも向けられるファンネルの砲撃を、回避する。
ロックのアドバイスを受け、彼女もその動きに徐々に慣れ、捌けるようになってきていた。
確かに、ファンネルの動きは荒い。それはVAVA自身が、この武器の扱いにまだ慣れていないせいか。
それでも、この絶対的な手数の差は、VAVAに立ち向かうロックの前に大きな壁として立ち塞がっていた。
(この武器さえなければ……!)
ファンネルさえなければ、ロックの攻撃を阻むものはなくなる。
そうなれば、戦況は一気にロックの優位へと傾くはずだ。
意を決し、フブニーはロックに提案する。
「ロック様、あの武器は私が引きつけます。ロック様はその隙に攻撃を!」
「無茶だ、君一人に任せるわけには……!」
「いえ、お手伝いさせて下さいロック様。ロック様に勝利をもたらすのであれば、この命……喜んで投げ出しましょう」
「フブニー、何を……」
何を馬鹿なと、ロックは彼女の言葉を軽く受け止めることを憚られた。
フブニーの口調には、そして彼女の瞳には、明確な意志が宿っていた。
そこには、ロックが最初に出会った時の、どこか不安定な危うさはない。
――今はもう私のために拳を収めたロック様が全てを捧げるべき主君です。
――例え間違った武装神姫と罵られようとも、このフブニーは満足です。
ロックは彼女の健気な言葉を思い返す。
今、彼女はあの言葉を証明するかのように、命を懸けて道を切り拓こうとしている。
だとしたら、自分にできることは――
「……引きつけるのは、3基でいい。そうすれば、バリアの展開は防ぐことができる」
彼女の認めたマスターとして、応えるのみ。
「さっきも言ったけど、操っているVAVAを倒せば、こいつらは止まるはずだ。
だから、それまで持ちこたえてくれればいい。無理に撃墜しようだとか、考えなくていい」
彼女に相応しいマスターとして、毅然とした口調で、命令する。
「マスターとしての命令だ。ここはまだ、命を懸けるべき時じゃない。だから絶対に……死ぬんじゃない」
「……はい!」
ロックは駆け出した。
倒すべき敵のもとに走る彼を、ファンネルが狙いを定める。
だが、投げつけられたクナイが横切り、その砲撃を挫いた。
「ロック様の邪魔は……させません」
意志と、自信と、確固たるアイデンティティをもって、フブニーはファンネルに挑む。
間違った神姫など、もはやそこにはいなかった。
◇ ◇ ◇
「ちっ、あの女……!」
神姫の動きは徐々に、確実に切れを増している。ロックマンに何かを吹き込まれたか。
あるいはロックマンをマスターと見立てることで、神姫として、自分の在り方を理解したか。
ならば、もうマスターのない不完全な神姫として、軽く扱うことはできまい。
既に戦いの風向きは完全に変わっている。
引き際だ。……いや、判断が遅れたか。
「逃がさないぞ、VAVAッ!!」
英雄様はこちらを逃がすつもりはないようだ。
腕のバスターを連射しながら、真っ直ぐに俺に向けて走ってくる。
それを迎撃すべく、こちらも砲撃。
だが、当たらない。奴は全てを的確に回避しながら、少しずつ、着実に距離を詰めてくる。
狙いが甘くなっていることが、自覚できた。
それでなくとも、この肩部キャノン砲は接続部が甘く、意識して支えないとバックパックから外れかねない。
神姫に対し使用しているファンネルの一部を、ロックマンへの攻撃に回す。
神姫へ向ける砲撃の中に紛れて、1基のファンネルが、ロックマンに向けて撃つ。
だが、そんな背後からの狙撃すらも読んでいたかのように、奴はそれを回避し――
「そこです!!」
直後に、ロックマンを狙ったファンネルが破壊された。
破壊したのは、他ならぬ神姫だ。その手に握られたチェーンソーのような剣が、切り裂いた。
ファンネルがロックマンに意識を向けた、一瞬の隙を突いて。
意識――
この時、俺は自分の意識が思った以上に分散していることを認識した。
自分自身に、キャノン砲の維持に、フィン・ファンネルの各基に。
そしてそのことは――当然、ロックマンもいち早く見抜いていやがった。
「君はあの武器の操作にも、意識を向ける必要がある――!」
「その分、本体の俺にも隙が生じる、か?……ナメるな!!」
そうだ、フィン・ファンネルは使用者の思った通りに動く。
逆に言えば、使用者は少なからず意識を向けなければ、あれは動かない。
その理屈から弾き出される隙に、奴は恐らく俺よりも先に気付いていた。
俺がフロントライナーを撃つと同時に、ロックマンもまたチャージバスターを撃ち放った。
双方の発射した二つの弾丸がぶつかり合い――
爆発する。
光と煙が、視界を遮った。
――しくじった。
このタイミングでの致命的な読み違え。理解した時には、既に遅い。
煙の中から、ロックマンが飛び出してくる。
右の拳を握り締め、俺の懐へと飛び込み――奴が地を蹴る。
俺は膝の――いや、間に合わない。
空へと昇る龍のごとき拳が、俺の顎を捉えた。
身体が宙に浮き、吹っ飛ばされる。
外から見れば、綺麗に弧を描いていることだろう。
それでも、俺は足掻きとばかりに空中で態勢を立て直しながら、着地し――
「君の負けだ、VAVA」
顔を上げた瞬間、眼前にバスターが突きつけられた。
◇ ◇ ◇
フィン・ファンネルの動きが、止まった。
あれほど神姫の命を駆らんと暴れ回っていた殺意の欠片が、静まった。
空中で静止したまま反応を示さなくなったファンネルを見て、フブニーは確信と共にロックに目を向ける。
ロックは、膝をついたVAVAにバスターを突き付けていた。
(ロック様が、勝った――!)
「どうした?殺さないのか?」
「……無意味な破壊はしたくない」
静寂が場を支配する。ロックは、バスターを撃つことを良しとしなかった。
彼の記憶回路の中に過ぎるのは、Dr.ワイリーの繰り出すロボット達との、果てしない戦い。
ここでまで、同じことを繰り返したくはなかった。
同じロボット同士で、同じフィギュア同士で壊し合う、悲しい戦いを。
戦いを望まないその優しさが、とどめを撃つことを躊躇わせた。
「君も考え直すんだ。ここで殺し合って、どんな意味があるというんだ」
「……フン。意味、か……」
――爆音が、轟いた。
ロックの腹に、熱い衝撃が響いた。
攻撃を受けた。エネルギー弾が、腹部に直撃した。
誰が?どこから?
ゆっくり考える余裕もなく、ロックの身体から力が抜け、重力に従い地に倒れていく。
「……甘ぇよ」
VAVAが、嗤っていた。
その左膝からは、仕込まれていたバスターが露出していた。
「切り札は取っておくモンだ」
「ロック様っ!!」
フブニーが、悲痛な叫びを発する。
そんな彼女は、一つミスを犯していた。
ファンネルはあくまで動きを止めただけであり、機能を停止したわけではない。
もしVAVAからの伝達が途絶えたのであれば、その瞬間にファンネルは地に落ちているからだ。
だが、ファンネルは『空中で』静止していた。それはVAVAの意識が途絶えていない証拠。
ロックが倒れたことで、フブニーは動揺し、隙を晒した。
VAVAがそれを見逃すはずがなかった。
動きを止めていたファンネルが、彼女に向けて一斉にビームを放射した――
◇ ◇ ◇
「躊躇わず撃つべきだったな。これはお前の甘さが招いたミスだ」
倒れ伏したロックマンの頭を足で踏み躙りながら、俺は言った。
神姫は向こうで地に倒れたまま動かない。
急所は外してある、機能停止には至っていないはずだ。
それでもしばらくはろくに動けないだろうが、万が一に備えてフィン・ファンネル2基で包囲してある。
「何故だ……何故君はその力を、破壊にしか使わないんだ?」
英雄の口から出た言葉は、実に生温く青臭い戯言だった。
踏み躙る足に力を加える。呻き声を漏らす英雄の姿に、虚しさが苛立ちへと変わっていく。
「何故?それがこの世界のルールだ。最後の一人になるまで壊し合う。
そのために力を使う。全てを破壊するために……そこにどんな不自然がある?」
「君はそれで……本当に満足なのか?納得しているのか?」
「勿論だ。俺のオリジナルは、常に戦いと破壊の中に身を置き、それを良しとしてきた。
そのコピーである俺も、その認識が変わることはない。残念だったな」
「……!」
エックスもどうしようもない甘ちゃんだが、こいつはそれ以上かもしれない。
苛立ちが沸々と煮え滾る。
こいつは勝っていた。勝てた勝負のはずだった。
だが、その甘さが勝利を逃し、俺の逆転のチャンスを与えた。
だからこそ……このままこいつを殺した所で、俺は気が済まないだろう。
「さて、全てを破壊すると言った俺が……何故今に至るまで、あの神姫を殺していないか、わかるか?」
「な、に……」
「お前に現実を教えるためだ。この事態を招いたのは間違いなくお前の甘さであって……
ひいては、あの女を殺す……という現実を」
「!!」
キャノン砲の照準を、神姫に合わせる。
くだらない茶番も、もう終わりだ。
このガキを絶望に染めあげた上で、終わる。
「その記憶回路に刻み付けておけ、あの女の断末魔と、最期の瞬間を。そして後悔しろ――」
茶番を終わらせて……その後、こいつはどう出る?
俺は――このガキに、さらなる何かを期待していたのかもしれない。
◇ ◇ ◇
――!?
何が起きたのか。
当事者たるVAVAにすら、何が起きたのかすぐには理解できなかった。
地面に腰を着き、表情の奥のモノ・アイは、ただ呆然とその姿を映し出していた。
当然、彼の足元には少年の姿はない。
「ロック……様……?」
意識を取り戻したフブニーが、面を上げる。
彼女のすぐ目の前に、彼は――
『ロックマン』は、立っていた。
フブニーの前に、VAVAの手から彼女を守るように。
ロックマンの足元には、フブニーを包囲していた2基のファンネルの残骸が落ちていた。
彼の手には、一本の剣が握られている。
彼に与えられた拡張パーツ……しかし、最初に確認した時と違い、刀身は光り輝いていた。
「光の剣……だと……?」
光の剣を携えるその雄姿に、VAVAはもう一人の宿敵――ゼロの影を見る。
剣の名は、レーザーブレード。
宇宙刑事と呼ばれるヒーローが使う、最強の剣。
集中力を極限まで絞り込み、エネルギーを注ぎ込むことで完成する、光の剣。
その発動には高い精神力を要する。真の戦士でなければ、決して扱いこなすことはできない剣。
「いい、目だ……」
先程までの戦いでみせたものとは段違いだった。
迷いを振り切り、力強さを宿した瞳。
それは『英雄』であり、もしくは――『鬼』にも通じるかもしれない、目。
「それがお前の本気……お前の真の力か」
VAVAは、回路の奥底で起きるはずのない震えが走り抜ける、不思議な感覚を覚えた。
その意味は理解できないものの、彼にとって不快なものではなかったのは確かだった。
「……いいだろう。認めてやる……この場は俺の負けだ」
「!?」
一言、負けを宣言して――VAVAは、跳んだ。
電柱と、公園の壁を交互に蹴り、三角跳びで上がっていく。
そして壁の上まで上がりきると、眼下のロックマンに向き直った。
「待て!!逃げるつもりか!?」
そう言いながらも、ロックマンは追ってくる様子はない。
彼のアクションでは、VAVAのような三角跳びは不可能だった。
いや仮にできたとしても追ってくることはないと、VAVAは踏んでいた。
倒れている神姫を放置することはしないはずだ、と。
ロックマンのこの力を――真の力を引き出したのは、紛れもなく彼女の存在なのだから。
だからこそ、逆に彼女を無視してまで戦うことはあり得ない。
今一度、目の前のロックマンを、エックスの姿と重ね合わせる。
彼の――彼らの強さの源を、その力の引き出し方を、再確認するように。
「……聞け、ロックマン。これから俺はこの殺し合いに乗る。
この街にいる他のフィギュアは、全て破壊する」
VAVAははっきりと宣告した。
全ての破壊。それはロックマンの、殺し合いを否定する意志に真っ向から対立する、悪意。
「VAVA……ッ!」
「お前の真の力を引き出すには、これが一番……そうだろう?」
何かを『守る』ために強くなれるロックマンにとって、これ以上の引き出し方はない。
そしてまた同時に、これ以上に彼を煽る手段はないというものだ。
「あばよ。再戦を楽しみにしてるぜ」
そう言い残して、VAVAは壁の向こう側に消えていった。
◇ ◇ ◇
VAVAの姿が完全に見えなくなり、静寂が戻った。
糸が切れたかのように、ロックはその場に倒れこんだ。
「ロック様!!」
フブニーは慌てて、彼の身体を支える。
しかしロックは、無理にでも身体を起こし、VAVAを追おうとした。
「行かなきゃ……僕の甘さが招いた事態だ。あいつが破壊を始める前に、止めないと」
「いけません、今の状態では無茶です!電力ももう余裕はないはずです」
「わかってる、だけど……!」
あいつは、VAVAは撃たなきゃならない存在だった。
同じ好戦的と言っても、フォルテとはう。彼の中には純粋に、悪意に満ち溢れていた。
放置しておけば、さらなる破壊と殺戮を生むだろう。
それを見抜けず、甘さを晒しミスを犯したことに、後悔が押し寄せてくる。
「あれだけの行動の後です、VAVAも相応に電力を消耗していることでしょう。ならば、すぐには行動は起こさないはずです」
説得するフブニーは、メイド服の姿に戻っていた。
「今はクレイドルで御身体をお休めください。その間の護衛は、私が務めてみせます。まだ電力的には余裕はありますので」
「ごめん……君のダメージも、決して小さくないだろうに……」
メイド服姿に戻ったのは、ロックを少しでも安心させる意味もあった。
先のファンネルの集中砲火により、彼女の戦闘形態の装備はボロボロだった。
VAVAの言った通り致命傷こそなかったが、その身に受けた傷跡は傍目には痛々しく映るだろう。
もしその姿を見たなら、ロックはその心を痛め、より後悔に苛まれるかもしれない……そう考えたからだ。
「ごめん、フブニー……君が応えてくれた期待に、僕自身が報いることができなかった……」
「いけません、マスターたる者が簡単に頭を下げては……」
「はは……そう、だね……ごめん……」
ロックの意識は遠ざかり、眠りにつく。
彼の身体を、フブニーはクレイドルの上へと運んだ。すぐに、充電が開始される。
ダメージこそ大きいものの、素体そのものへの致命的な損傷はないのは幸いだった。
しばらく休めば、すぐに回復することだろう。
「今はゆっくりお休みください、ロック様……この身に代えても、貴方は私が守ります……」
眠るマスターの手を握り締め、彼に従う神姫は、その忠誠をより一層強めていた。
【黎明/エリアD北部(道路)】
【ロックマン@D-Arts】
【電力残量:10%(回復中)】
【装備:なし】
【所持品:クレイドル、レーザーブレード(宇宙刑事ギャバン)@S.H.シリーズ】
【状態:腹部ダメージ大(素体の致命的な破損はなし)、疲労大】
【思考・行動】
基本方針:
フブキ弐型にふさわしい人間のマスターを探す。
1:戦いはなるべく避ける。
2:できれば脱出したい。
【フブキ弐型@武装神姫】
【電力残量:60%】
【装備:1/12ミニ丈メイド服、SWIMWEAR EDITION素体(
アーンヴァルMk.2用)】
【所持品:クレイドル、拡張パーツ×1(確認済み)】
【状態:ダメージ中。SWIMWEAR EDITION素体への損傷はなし】
【思考・行動】
基本方針:ロックマンに従う。
1:ロックマンを守る。
2:ロックマンの命令なら人間のマスターを持つ。
※SWIMWEAR EDITIONの(アーンヴァルMk.2用)は商品名で専用の素体というわけではありません。
また素体交換は外装のみを転送交換方式とします。
◇ ◇ ◇
損害も、決して小さくはない。
フィン・ファンネルを4基を失った。チュートリアルの駄賃にしては手痛い代償だ。
これで残るファンネルの数は8基……3分の1を失ったことになる。
……ああ、言い忘れていたか。
俺に支給されたフィン・ファンネルはνガンダム本体の6基に加え、拡張フルセットの追加分6基……計12基存在する。
まあ、そんなことはいい。
元々試運転を兼ねていたとはいえ、フィン・ファンネルの性能に頼りすぎた。
便利な武器だが、過信した結果が今回の有様だ。
同時運用は6基が限界か。それぞれに意識を分散させる必要があるのもひと手間だ。
生憎、こちらはニュータイプなどと呼ばれる人種とは違う。
ファンネルと、そして本体である俺自身を含めた全てに完璧に意識を宿すことは難しい。
コントロールの甘さも、問題だ。
いずれにせよ完璧に使いこなすには、まだまだ練度が不足している。
今後、ハッキング等でコントロールを奪うような敵が現れる危険も考えると、安易に乱用するのは考え物だ。
せめて腕にバスターの一本でも付いていれば、もっと臨機応変に動くこともできるだろうが……
俺のD-Artsのセットには付属されていない。
今後のためにも、多少は取り回しのきく手持ち武器も、どこかで手に入れておきたくはある。
何にせよ、反省点は山積みだ。
そして俺自身、まだまだ力不足だ。
もっと強くならなければならない。
そうでなければ、越えられない。潰せない。
『伝説』を――
公園の植え込みの木に、拳を叩きつける。
――完敗だった。
この場は負けを認める、などと生易しい話ではない。
あのガキは、ことごとく俺の上を行ってみせた。
俺の繰り出した手札を全て、完璧に攻略してみせた。
これ以上ないほどの、完全な実力負けだ。
膝の銃だけは読み切れなかったようだが、そんなものはフォローにもならない。
もしあの時撃たれていれば、切り札を切る猶予すらなくこちらが破壊されていたからだ。
ファンネルの操作に慣れていないことなど言い訳にならない。
それを理解した上で立ち回り方を誤ったのは、俺自身の迂闊さに他ならない。
最終的にあの形に漕ぎ着けられたのは、あくまでロックマンの甘さの隙を突いただけの小賢しい痛み分け。
だから、奴を追い詰めた時、俺はすぐにはとどめを刺さなかった……いや、刺せなかった。
あのまま躊躇わず撃っていたところで、満足を得られるとは思えなかったからだ。
そういう意味では、俺にはロックマンの甘さを偉そうに指摘する資格もない。
そして最後に見せた、奴の『本気』。
逆に言えば、その前に俺を完封した奴の力すら、まだ本気ではなかったということでもある。
「ククッ……」
これほどの屈辱は初めてだ。
ここまで自身を惨めに感じたことは、オリジナルだってあるまい。
「フ……フフフ……」
電子頭脳がそのままショートしそうなほどに、怒りと憎しみが煮え滾る。
「……ハハハハハハッ……!」
それでも、俺は笑いを止めることができなかった。
まるで、これを期待していたかのように。
これが笑わずにいられるか。
奴の『本気』は紛れもなく、俺がどこかで待ち望んでいた『伝説』そのものだった。
そして同時に、宿敵エックスそのものでもあった。
……ああ、逆だったな。エックスがロックマンそのものだったと表現するのが正しいのか。
オリジナルの自分は、エックスと――英雄の影を背負った男とずっと戦い続けてきたというわけだ。
そんなVAVAの模造品である自分が、英雄本人の模造品とこの世界で巡り会う。
なんと痛快なことか。
伝説を、伝説そのものをこの手で叩き潰す。
オリジナルでは決して叶うことのない最高の機を、最高の快楽を得る権利を、この地で与えられた。
自分がフィギュアだとか、紛い物の玩具だとか、そんなことは些細な問題に過ぎない。
仮にエックスやゼロがこの地にいないとしても、十分に足る楽しみが生まれた。
だからこそ、まだ足りない。
半端な英雄を倒すことなど、俺は望んではいない。
奴が最後に見せた本物を叩き潰してこそ、意味を成す。
484 :英雄VS鬼-POWER BATTLE-
◆NXFS1YVsDc:2014/06/10(火) 06:48:30 ID:exI5v8hc0
だから、俺は宣言した。奴を本気にさせるべく、次の戦いの時までに少しでもお膳立てを整える。
この舞台を死と殺戮に、裏切りと悪意に満ちた空間に仕立て上げて。
その時もお前は、甘っちょろい綺麗事を口にして、『伝説』を演じ続けられるか?
それとも、お前も――『鬼』(イレギュラー)と化し、修羅の道を歩き出すか?
『伝説』でも『鬼』でもいい。俺はそれを叩き潰す。
そのためにも、俺は今以上に強くならなければならない。
そうでなければ、勝てない。伝説を潰すには、今のままでは到底足りない。
強くなれ、ロックマン。
本物の輝きにも負けないほどに。
俺も今以上に、もっと強くなってみせる。
俺の名はVAVA。
伝説を潰す男だ。
【黎明/エリアD(公園内)】
【VAVA@D-Arts】
【電力残量:60%】
【装備:肩キャノン】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(同梱装備一式)、フィン・ファンネル×8(νガンダム)@ROBOT魂】
【状態:ダメージ小】
【思考・行動】
基本方針:ロックマンの『伝説』を叩き潰す
1:さらなる強さを得る
2:ゲーム煽動
最終更新:2014年07月12日 16:26