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あの日あの時の青ダルマ ◆2Y1mqYSsQ.



 テンタクルス型MMS・マリーセレス
 神話上の生物をモチーフとしたOver Pozz Fabbrica(通称O.P.F)より発売された武装神姫である。
 薄緑色のショートカット、神秘性を秘めた青い瞳、エルフのように尖った耳。
 small素体と呼ばれる抱きしめれば折れそうな華奢な体に、凶悪な印象を与える巨大な5本のアーム型スカート。
 可愛らしい少女と禍々しさが同居したNiΘ氏の本領が発揮された神姫だった。
 神姫ユーザーにも評判がよく、市場価格を順当に釣り上げていく彼女もこのバトルロワイアルに参加していた。
「えーい、ヂェリカンもう一杯! ドラちゃん、このかわいいマリーちゃんにもも味をよこすです!」
「飲み過ぎると身体に毒だよ。ちょっと落ち着いて、ね?」
 必死になだめる国民的キャラクターに対して、人気神姫はくだを巻いている。
 二人が身を隠している場所がラーメン屋であることもあって居酒屋の雰囲気が生まれつつあった。
 バトル・ロワイアルが始まって数時間は経つのに、二人はずっとカウンター席の上でヂェリカンを飲みながら駄弁っていたのだ。
「つべこべ言わずよこすDEATH! マリーちゃんの分のどら焼き味ヂェリカンは全部あげたじゃないですか!」
「確かに美味しいけど……飲むどら焼きって変な感じ」
「時々ひみつ道具で風情もへったくれもない食べ方するじゃないですか。それに比べれば違和感ないDEAT」
「そりゃそうだけど……」
 ドラえもんは口を尖らせて汗を額ににじませる。ロボット魂なのに芸が細かい。
「けどいくら武装神姫と言っても飲み過ぎは体に悪いと思うんだ。
特にマリーちゃんは女の子なんだし気をつけないと……」
「大きなお世話ですぅ! ですが、そんなに気にかけるとは……ドラちゃんこの可愛い可愛いマリーちゃんに惚れたのですか?」
「ち、違うよ! ぼくはただほんとうに心配で……」
「申し訳ないですが、いくら国民的キャラクターとはいえ青ダルマは趣味じゃないですぅ。ドラちゃん、嫌いじゃないけどごめんなさい。
これからもいいお友達でいてくださいです」
「……なにもしていないのにいきなりフラれた。でも青ダヌキはよく言われたけど青ダルマは初めてで怒ればいいのかわからないや」
 国民的キャラクターを模したオモチャは渋い顔をしながら、どら焼き味のヂェリカンをぐびっと一口だけ飲んだ。
 味は極上だがあのフワフワした食感がないので物足りない。
 なんでそんな記憶までインストールされているのか謎だが、不満は募る一方だ。
「だいたいマスター登録なしで神姫を野に放つとか正気ですかぁ?
マリーだって優しい白馬を乗りこなす王子様のイケメンオーナーが欲しいですぅ~」
「へぇ~、意外と女の子らしい望みがあったんだね」
「だって王子ですよ。きっと気に入らないやつをギロチンしてくれるですぅー!」
「……ごめんさっきの取り消す。てか君もいい加減にしなよ。そんな危ないことばっかり言っていると友達なくしちゃうよ?」
「マリーちゃんだけじゃなくてドラちゃんだって今は友達いないじゃないですかー。
起動して大して時間経っていないですよ。武装神姫のマリーちゃんはともかく、ドラちゃんは本人じゃないですぅー」
「うん、それは分かるんだけども……。ああっ、ダメだ。ネットを色々探したけど検索に引っかからない」
 ドラえもんは眼前にウインドゥを開いてマリーに見せる。
 検索エンジンに『バトル・ロワイアル』と『オモチャ』『武装神姫』『ROBOT魂』などを入れたが、どれも関係なさそうである。
 成果ゼロと知った隣の神姫はやれやれ、とこちらを見下している。ちょっと腹立った。
「まっ、こんな悪趣味なことを表立ってやるわけ無いです。神姫オーナーの方々を怒らせるとちょっとした戦争が起きますし」
「神姫ユーザー恐るべし。けどぼくらまで参加させてなにがしたいんだろう?」
「変態の考えることなんてわかるわけねーです。やってらんねーしここで飲んで時間を潰しましょうドラちゃん!」
「いいのかな~それで?」
 ドラえもんが首をかしげるが、マリーは気にせず飲み進めようとした。

 瞬間、入口のドアに銃痕が刻まれ、盛大な音を立ててはじけ飛んだ。

 驚いて振り向く猫型ロボットを尻目に、マリーセレスは目を細めて様子をうかがった。
 もちろんドアが吹き飛んだと同時に誰かが入ってきているのを見逃していない。
「私のせいじゃない私のせいじゃない私のせいじゃない……」
 ぶつぶつと金髪の少女がつぶやいている。武装神姫にはいない型のため、figmaか何かだろうと当たりをつけた。
「ついでに写メとって画像検索ですぅー。え~となになに? 魔法少女まどか☆マギカの……」
「そんなことより声をかけるのが先でしょ。ねえ君、だいじょう……」
 タケコプターを頭に乗せ、ドラえもんはカウンター席から飛んで近寄った。
「近寄らないで!」
 figmaの少女は金切り声を上げて、変身しながら銃口を向ける。ドラえもんが驚く暇もない。
 ただの形だけを模したはずのマスケット銃から火が吹いた。
「ドラちゃん、動いちゃダメですぅ!」
 マリーの制止の声が聞こえ、銃弾が頬をかすめた。
「こ、これ以上近づいたら容赦なく射ちます。一人にして!」
 彼女は怯えている様子だったが、銃弾が間近を通り過ぎたドラえもんもアワアワ言うだけで放心状態だった。
 ただ一人正気のマリーセレスはムッとしながら、カオスな場を治めるためにカウンター席から床へと着地した。
「ギャーギャーギャーギャーうっさいですぅ。巴マミのfigmaだから取り乱すのはしょうがないとして、ちったあ落ち着くですぅ。
てか出て行くならあんたの方じゃないですかー。ふざけんじゃないですぅー!」
 いや場を治める気などなく、彼女は武装をまとって突撃した。
 まるで強力な弓から放たれたように跳びながら、5本の触手型アーマーを展開、巴マミを補足する。
「ひっ、来ないで!」
 マスケット銃から銃弾が飛んでくる。マリーは身体を回転させ独立可動するアーマーで一発一発叩き落としていった。
 もともと距離はそこまで開いてない。あっという間に懐に飛び込み、してやったりと笑みを浮かべてのしかかった。
 武装の重さに任せて身体の自由を奪い、5本のアームで四肢を封じる。
「ざっとこんなものですぅー」
「ちょっと、離して!」
 下のfigmaがうるさいが無視してドラえもんの方を向く。
 彼はこちらの顔を見た瞬間、ハッとしてすぐ立ち上がった。
「さすが武装神姫……すごいねぇ」
「んー、まあ取り乱していつもの精神状態じゃないから上手くいっただけですぅ。
万全な状態だったらマリーちゃんもドラちゃんもやばかったかもしれません」
「戦いの経験って奴かな? とにかくぼくには真似できないや」
「いいえ、ネットのキャラ紹介からですぅー」
 キャッキャ笑うマリーに対しドラえもんは呆れた。ずいぶんと人を喰った少女だ。
「さて、人の食事を邪魔した報いを受けてもらいますよ~」
「ちょっと、そこまでしなくてもいいじゃないか」
「ああ、ドラちゃん安心するですぅ。このまま放置しても同じことの繰り返しなので、そんな気力を奪うだけですぅ。
酷いことはしません」
「ほんとかなぁ?」
「マリーちゃんを信じるですぅ!」
 信頼しきれずに額をかいているドラえもんだが、結局は任せざるを得ない。
 巴マミを放っておけば同じことを繰り返すだけだし、逃げられて他の人の迷惑になられても困るだろう。
 そうわかった上で、マリーセレスは両手をわきわきと動かしながら凶悪な笑みを浮かべた。


「くっ、ふぅ……」
 巴マミを模したfigmaはのしかかるマリーセレスをどかそうと身じろぎをするも、効果は乏しかった。
 魔法少女としての力も再現しているはずだが、相手は戦うことも前提とした武装神姫。
 そうやすやすとはいかなかった。
「ふっふっふ、降参しても許しません。抵抗するですぅ」
 満面の笑顔のままマリーはおもむろにマミの豊かな胸を鷲掴みした。
「ひっ、なにを!?」
「柔らかい(アニメ武装神姫設定です)……マリーと同じ身長(測ったらふたりとも125mmありました)なのに反則牛おっぱいとかむかつくですぅ~!」
 マリーの平手が胸の右側面を強打し、肉を叩く音が店内に響く。
「ちょっとマリーちゃん、やりすぎだよ」
「こういうのは荒療治が一番なんですぅ。原作版のようにスパルタドラちゃんになって黙ってみていてください」
 いや原作の性格でも止めるから、と言うドラえもんを無視して、マリーは拘束相手の顎をあげた。
「さて、なんであんな無礼な真似をしたんですか? ちゃんと言わないとつねっちゃいますよ」
「ひっ、だって、だって……」
「グズグズしないでハキハキ答えるですぅ!」
 今度は胸の左側面をはたいた。ドラえもんが目を覆うほど鋭く、速い打撃だ。
 痛みに耐えかねてマミの瞳はみるみる涙が溢れ出る。
「あ~泣いちゃうほど痛かったんですか? ごめんなさい、そこまで追い詰めるつもりはなかったんですぅ」
 さっきとは打って変わって気遣うように殴打面を優しくさすり始めた。
 あまりの手のひら返しにマミは逆に恐怖を感じる。
「そんなに警戒しないでください。マリーちゃんはね、ロリ巨乳なマミさんの力になってあげたいんですよ?」
「ろ、ロリ巨乳って……あなただって結構あるじゃない!」
 マミの指摘の通り、マリーセレスの武装胸はイラストと違ってけっこうあったりする。
 もっとも彼女はそんな指摘を無視して邪悪な笑みをますます深めた。
「そんなことよりマミさんリラックスしてくださ~い。ほら、ここがいいんですか?」
「ひっ、ちょっ、なんで揉ん……ひぅっ!」
 グニグニとマリーは両手で思うままに胸を変形させていく。
 マミは必死に身を捩るが5本のアームが許すはずもなく、虚しい抵抗で終わった。
「マリーたち神姫も揉まれると気持ちよくなっちゃうんですぅ。
だからマミさんも気持ちよくなって心を落ち着かせて……ね?」
「そ、そんな……はぅっ! なにかスカートに!?」
「アームの触感はマリーちゃんともつながっていますが、すべすべで触り心地がいいですよ。
本当マミさんはすけべぇボディですぅ~」
 もはや金髪の少女に言葉を返す余裕はない。
 マリーが頬を舐めようとも、アームで尻を撫でようとも堪えるように悩ましい吐息を漏らすだけだ。
 その必死な姿を神姫は愛おしそうに舌なめずりをする。
「さあ早く事情を話さないと大変なことになっちゃいますよー。
もうマスターを持つことも出来ない身体になるかもしれません。マミさんかわいそうですぅ」
「ひぅ……いぅ、言う、から……」
「ほらほら、だんだん気持ちいいのが隠せなくなっているですぅ。ふふふ、可愛いですね~マミさんは~」
「言うって言っているの、に……やぁ……」
 軟体生物モチーフらしく彼女はマミにグチョグチョになって絡み続ける。
 もはや魔法少女の発言は言葉にならない。
 見かねたドラえもんが顔を真赤にしながら止めるまで、嬌声は長い間続いた。


「ふぅ、すっきりしたですぅ」
 やけにつやつやしたさわやかな笑顔でマリーは満足気に頷いた。
 対して変身の解けたマミはしくしく顔を覆って泣いている。
 figmaの彼女をなだめながらドラえもんは右拳を振り上げた。
「こら、マリーちゃんやりすぎだよ!」
「えーでも暴れるのは止めましたし、事情も聞き出しましたよー?」
「だとしても加減ってものがあるでしょ、加減ってものが。そんなんじゃ嫁の貰い手も……じゃなかった。
マスターの貰い手もつかないよ!」
「ドラちゃん古風な言い回しをしますね~。でも心配はご無用ですぅ。
なぜならマリーちゃんはマスターにこんな酷いことはしません。マスターの敵にこそもっと酷いことをします!
もっともマスターに求められたらその限りじゃありませんが……いやんいやんー」
 恥ずかしがって身体を左右にふるマリーをドラえもんは冷たい目で見る。
 信用できない。もっとも彼女が反省するわけがないが。
「だいたいドラちゃんもしばらくはまじまじと見ていたじゃないですか。スケベですーでばがめー」
「そりゃこりゃマズイこりゃマズイっていいものを見せて……ってそうじゃないでしょ!
いい加減にしないとぼくも怒るよ!」
「やだな~冗談ですぅ。怒っちゃやーですぅ」
 キャピキャピぶりっこする彼女に呆れと薄ら寒い感情をないまぜにして、ドラえもんは大きくため息をつく。
 なにを言っても無駄だろう。すぐに話を変える。
「ところで、マミさんの言うとおりタロウさんは死んだのかなあ?」
「な~に確かめにいけばいいですぅ。マミさん、案内よろしくですぅ」
 急に話を振られ、マミは「え、え?」と戸惑いながらドラえもんを見る。
 助けを求められた彼としては味方になってやりたいが、この件に関してはマリーに同意であった。
「大丈夫ですよマミさん。マリーちゃんの鋭い推理としては、死んだふりをして騙すタチの悪いおっさんですぅ。
そんなのに引っかからないようにドラちゃんとフォローしますから落ち着くんですぅ」
「まあこの娘の本音はともかくとして、ぼくも力になるから行ってみよう。ね?」
 ドラえもんが宥めて、マミはしぶしぶといった様子だが納得した。
 力なく立ち上がって現場を案内しようとする。
「あ、先に言っておきますけどマミさんが先頭になってくださいよ。
銃は全部出させましたけど、後ろから魔法少女の力で襲われるなんてまっぴらゴメンですぅ」
「こら、言い方ってものがあるでしょ!」
 無遠慮なマリーに突っ込みながら、マミの案内に従って三人は移動する。
 そんなに長いやりとりではないはずだが、どうにもドラえもんもマミも心労が溜まってしょうがない。
 ただ一人フリーダムな武装神姫を抱えながら、彼は今後のことを思って憂鬱になった。


【黎明/エリアO(ラーメン屋店内)】

【巴マミ(制服ver.)@figma】
【電力残量:80%】
【装備:なし】
【所持品:クレイドル、基本パーツ(ソウルジェム)、拡張パーツ×0~1(未確認)】
【状態:損傷なし。脱力】
【思考・行動】
 基本方針:もう好きにして。
 1:二人を案内する。

※付属品にないため現状ティロ・フィナーレが使えません。


【ドラえもん@ROBOT魂】
【電力残量:99%】
【装備:なし】
【所持品:クレイドル、ひみつ道具セット、かじりかけのどら焼き、ねずみ、ヂェリカンどら焼き味×4、拡張パーツ×0~1(確認済み)】
【状態:損傷なし】
【思考・行動】
 基本方針:マリーちゃんの暴走を止める。
 1:タロウが死んだ現場に向かう。

※ひみつ道具セットの内訳は 空気砲、タケコプター、スモールライト、ポケットから出かかっているどこでもドア。
まともに性能再現されているのはタケコプターと空気砲くらいです。


【マリーセレス@武装神姫】
【電力残量:85%】
【装備:なし】
【所持品:クレイドル、基本パーツ、拡張パーツ×0~1(確認済み)、ヂェリカンもも味×4、マジカルマスケット銃×6】
【状態:損傷なし】
【思考・行動】
 基本方針:こころのおもむくままに。
 1:とりあえず現場へ。


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最終更新:2014年08月16日 22:05