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X―シルシの所在― ◆7Ju4MZPjio



「フフフ……ハハハハハハハハハッ!!」


両腕を大きく開き周囲に声を響かせる男――フィギュアが一体。
刻まれたシルシの所在はX。それを表す機体、名をターンX。眠から覚めた直後だと言う事を感じさせない程の笑い声。


眠から覚めた直後。


始まりの儀式で告げられた実験の開始、他の規格の存在。
『この世界に存在するアクションフィギュアは、武装神姫だけではありません』――無論ターンXは武装神姫ではない。
フィギュアであるターンXには本来のパイロット、機体が存在していた媒体のパイロットの記録が記されているのが定石。
そして【記録を持ったフィギュア】として可動しているのがフィギュアの世界。


しかしこのターンXには【フィギュアとしての記録】は持っていない。
オリジナルは元々封印――言わば活動を停止していた古代の遺産だったのだ。
それが発掘されMS――モビルスーツとして運用され、とある世界線とそれを含む平行世界で暴れていた。
黒歴史。触れてはならない禁忌の遺産。その権化が今此処に【フィギュア】といて降臨したのだ。


「小生の記録に黒歴史が――幾つもの黒歴史が刻まれているではないか!」


宇宙世紀と記された人類の進化と可能性、ニュータイプ達の過ちと成長の記録。
バルマー戦役と呼ばれた銀河を巡る大いなる争いと文明の終局。
数多の多元世界を巻き込んだ時空を震撼させた運命分岐点の選択と奪還。
彼の中に記された黒歴史に共通することは絶えない争いと大いなる戦争。
惹かれるは宇宙、導かれるは新人類。伝説の決戦、意思の光、サイコフレーム……。


「この小生の行く先にはどうやら戦いしかないみたいではないか!面白い、ならば思う存分この戦に身を赴かせるのみッ!!」


フィギュアとしての生活は零、覚醒めたばかりの禁忌の遺産。
記録されているのは多くの黒歴史、戦いの歴史のみ。ならば彼は好きなだけ戦う。
この実験に終止符を撃つのか、それは止めるなんて優しいものではない。
長年封印されていた鬱憤を晴らすためだけに大地を戦火に包もうとしているのだ。
装備も充分――同梱されている一式の装備は揃っている。
主に遠距離を扱う武具が多いがターンXは元々高スペックな機体のため戦闘能力は高い。
月光蝶――禁忌が禁忌を名乗る故の兵器が使えるかは、今語る必要はないだろう。


ビームライフルやバズーカは残念ながらサイズ比で表すとオリジナルよりも小さく感じる。
「ふん」
だが威力は本物だ。試射と題して前方のコンクリートに放つが大きく凹み消滅している。
ギンガナム――ターンXに刻まれている本来の搭乗者人格も納得しているようだ。
「颯爽登場……って訳でもないけど今の爆発はもしかして貴方ですか?」


ターンXがビームライフルを発射した音と光が原因なのか。
それとも大きく笑っていた行為が問題だったのか。
それか惹かれ合う運命だったのか。一つのフィギュアがターンXに接触を図ってきた。


その規格は同じROBOT魂だがサイズは未確認フィギュアの方が大きい。
全体的に細いフォルム、赤と白を基調としたカラーバランス、胸には青いコア、頭には特徴的なクリアパーツ。


「突然ごめんなさい、僕はツナシ・タクト……じゃなくてタウバーン?」


サイバディ。それがタウバーンと呼ばれる人型兵器の総称。
ツナシ・タクトとはタウバーンに刻まれた搭乗者の記録であり、此処に居るのはフィギュアのタウバーン。
無機物に生命を込められた本来ならば存在しない玩具、それはターンXも同じである。
そんなタウバーンは爆発の所在をターンXに尋ねる、犯人はターンXだ。
手に持っているビームライフルがそれを物語っているが暴発かもしれない、ならば理由を問うべき。
タウバーンは実験で不幸なフィギュアが出るなら、困っているフィギュアのために動ける心優しいフィギュアだ。
もしターンXが実験に怯え震えているフィギュアならば、彼は救いの手を差し伸べる。


しかしターンXは実験に怯える存在ではない、寧ろ喜び、意気揚々と戦火を拡大させる。


ビームライフルを無言でタウバーンに発射、胸のコアに吸い込まれるようにタウバーンに直進。
機体を撚るように躱すタウバーン、そして声を出す。


「こっちは手を出す気はないんだけど?」
「構わんッ!黒歴史に刻まれていない機体よ、小生と戦えェいッ!!」


ビームライフル本体をタウバーンに投げつけるターンX。
武器を放棄するターンXに驚き、反応が遅れるがこれを腕で大地に叩き落とす。
「フハハハハハハハ!!」
直進し拳を突き出すターンX、腕を交差させ防ぐタウバーン。ミシッ。フィギュアと言えど力は油断できない。
直撃こそしていないが数センチ後退するタウバーン。数センチもフィギュアにしてみれば人間の数メートルに値する。


「マトモに会話もしてないけど……仕方ないッ!タウ!ビームッッ!!」


胸のコアに腕を重ね出力を集中、其処から発射されるは一筋の青い閃光。
「フンッ!!」
ターンXは迫る閃光を避けることはなく、右腕一つで対抗を始めたのだ。
突き出された右腕と閃光は互い同士空中でぶつかり合い均衡している。
溶断破砕マニピュレーター――ターンXの右腕に装備されている兵器を展開しエネルギーを放出。
これによりビーム兵器と生身で正面から対応しているのだ。
「これだけかァ?タウバーンとやらよォ!!小生を満足させるには……ムゥ!!」
タウビームを防いでいるターンXに追い打ちを掛けるべく上空に飛んだタウビーム。
そのまま右腕に握られた剣を振り下ろしターンXに傷を与えようとしていた。


「スターソード、エゥロード!!」


緑に輝くスターソードエムロードがターンXを捉え――ビームと共に爆発。
「出力を上げてビームを爆発……面白いことをするね」
スターソードが機体に当たる前にターンXは溶断破砕マニピュレーターの出力を上昇。
密度高く集約されたエネルギーを掌にて解放、これにより小規模な爆発を展開しタウバーンを退けた。
着地が終了したタウバーンは爆風が晴れない中神経を集中、潜む敵を探る――そこだ。
「手応え……なしっ!?」
背後に存在を感じたタウバーンはスターソードを後ろに突き刺したが……空を切る。


「甘いぞ小僧め!戦いは常に何手先も見据えるものだ!!」


「分解して……動いているのか!?」


確かにタウバーンの予測通りターンXは背後に居たが、全てが居たワケでは無かった。
スターソードが刺さる直前に機体を分裂させることにより回避、そして攻勢に移るターンX。


「イッツァピーンチ……」


「このターンXに名を刻んでやろうではないか!タウバーンよッ!!」
今度はタウバーンの背後にターンXの右腕が迫っていた。
出力は充分、先ほどのビームを誘爆しとき同じように――所謂シャイニングフィンガー、まではいかない。
それでも機体に損傷を与えるには充分過ぎる一撃であることには変わらない。
「さぁ此処で朽ち果てるがいいィ!!」






「僕には見えているッ!スターソード!サフィールッ!!」


左手に握られた蒼天のスターソードがターンXの右腕と衝突。
タウバーンに与えられたスターソードは一本ではない、一対だ。
「分離してくる敵とは一度やったことが……あるんだよねッ!!」
力任せにスターソードを払い右腕を返すタウバーン、返されたターンXはそのまま機体を再度連結させる。

「歴史に記されていないってさ、タウバーンは元々綺羅星十字団も把握してなかったみたいだけど……その機体はサイバディじゃないよね?」
剣を一つ大地に降ろし、一つを肩に担ぎターンXを見つめるタウバーン。
戦闘経験は敵機の方が圧倒的に上だが、そのまま負けるつもりはない。


「それに僕はまだ青春を謳歌している途中…て『黒歴史』認定何てまだ早いってね」
(それと早く終わらせなくちゃ……聞こえてきた悲鳴の女の子を助けに行かないと)


戦闘の合間、本当の一瞬だった。タウバーンがターンXの右腕を払った直後の僅かな静寂。
その時一つの悲鳴が彼の耳に――脳内に響いたのだ。誰かが襲われているならば。


「本来の僕――ツナシ・タクトも助けに行くに決まってる……それが銀河美少年!タウバーン!!」


取る行動は一つしかない。例えフィギュアだろうとこの世に生命を授かっているならば。
見捨てることなんてツナシ・タクトの存在が許さない、守れるものは全て守り通す。
「小生に背を向けるとは何事よォォォオオオ!!」
悲鳴の元へ向かうタウバーンをターンXが見逃す理由も無く咆哮を上げながら追尾を行っていた。


「今はアンタに構っている場合じゃないってこと!!それぐらい分かってくれてもいいんじゃないの!?」


スターソードをコンクリートに振り下ろし瓦礫の弾幕を張るタウバーン。
それを気にせず突撃を止めないターンX。
「それが!小生に!何の関係があると言うのだあああああああああああああ!!」
本能のままに闘争を求める男が逃走を許す筈もなく、己が満たされるまで戦闘を止めないだろう。


追跡を振り切り参加フィギュアを助けたいタウバーン。
しかし彼はまだ「救いの対象が既に活動を停止」していることを知らない、知る由もない。
だが急ぐ、信じて、ただひたすらに――。




【黎明/エリアR(南西)】

【ターンX@ROBOT魂】
【電力残量:80%】
【装備:ビームライフル、キャラバス】
【所持品:クレイドル、基本パーツ、拡張パーツ×1(未確認)】
【状態:右手に損傷(軽微)】
【思考・行動】
 基本方針:気の赴くままに闘争を楽しむ
 1:タウバーンを破壊する


【タウバーン@ROBOT魂】
【電力残量:90%】
【装備:スターソードエムロード、スターソードサフィール】
【所持品:クレイドル、基本パーツ、拡張パーツ×1(未確認)】
【状態:損傷なし】
【思考・行動】
 基本方針:実験何て必要ないね
 1:悲鳴が聞こえたエリア(V・エウクランテ)へ向かう。


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最終更新:2014年08月16日 22:08