五十数年ほども前のこと、リーゼン地方を代表する国々であるデュボール、アルフォート、ミラボア、レガリアの4国は、ムーラ河の恵みを受けた肥沃な平原地帯を開発し、激化する一方の蛮族との戦争で消費されていく食糧の大増産を計画した。
そのため、平原地帯に深く浸透していた蛮族や魔物の掃討が各国共同により行われ、数年がかりの戦いの末、ついに歴史に燦然と輝く大勝利を収めた。平原地帯の蛮族を束ねていた族長が討ち取られた地には記念碑が建立され、その地を中心に小さな町が建設された。
そのため、平原地帯に深く浸透していた蛮族や魔物の掃討が各国共同により行われ、数年がかりの戦いの末、ついに歴史に燦然と輝く大勝利を収めた。平原地帯の蛮族を束ねていた族長が討ち取られた地には記念碑が建立され、その地を中心に小さな町が建設された。
百万の道が交わり
百万の人々が出会い
百万の富が生み出される場所
百万の人々が出会い
百万の富が生み出される場所
そうした願いを込められて町は『ミリオン』と名付けられ、これが後の交易都市の始まりである。
4国から募られた移住希望者が町に定着した後は、各国はミリオン周辺の平原で収穫された農産物を安く譲り受ける代わりに毎年一定額の補助金を交付することとし、それ以上の政治的干渉は禁ずる旨を記した文書に調印した。
同時にミリオンには4国のうちのいずれかの国に対して依怙贔屓をすることを禁じて、もしその禁を破った場合には、双方に厳しい罰則を適用することも定めた。これは国の存亡にさえ影響を及ぼす食糧の供給が関わる問題だけに、各国とミリオンがより公正な立場を貫くためにこそ定められた決まり事ではあるが、後年、逆に大きな影を落とすことになる。
この都市は急激に発達したために『守りの剣』の不足が深刻な問題となっており、多くの人々が行き来することもあって、蛮族が紛れ込む隙は大きい。そのため、冒険者に『守りの剣』かそれに相当する力を持った魔法の物品を集めることを奨励しており、もしも首尾良く持ち帰れたなら莫大な報奨金を約束するという布告を出したことから、魔物退治などを日々の糧とする者たちだけでなく、いわゆる迷宮探索の熟練者たちも都市に集まることとなった。
都市そのものの危険が逆に人を呼び集め、多くの人が集まるが故に商売が盛んとなり、大きな富を蓄積したことで大規模な盗賊や蛮族たちからの標的となり――まさに事象はループして交易都市ミリオンを形成している。
4国から募られた移住希望者が町に定着した後は、各国はミリオン周辺の平原で収穫された農産物を安く譲り受ける代わりに毎年一定額の補助金を交付することとし、それ以上の政治的干渉は禁ずる旨を記した文書に調印した。
同時にミリオンには4国のうちのいずれかの国に対して依怙贔屓をすることを禁じて、もしその禁を破った場合には、双方に厳しい罰則を適用することも定めた。これは国の存亡にさえ影響を及ぼす食糧の供給が関わる問題だけに、各国とミリオンがより公正な立場を貫くためにこそ定められた決まり事ではあるが、後年、逆に大きな影を落とすことになる。
この都市は急激に発達したために『守りの剣』の不足が深刻な問題となっており、多くの人々が行き来することもあって、蛮族が紛れ込む隙は大きい。そのため、冒険者に『守りの剣』かそれに相当する力を持った魔法の物品を集めることを奨励しており、もしも首尾良く持ち帰れたなら莫大な報奨金を約束するという布告を出したことから、魔物退治などを日々の糧とする者たちだけでなく、いわゆる迷宮探索の熟練者たちも都市に集まることとなった。
都市そのものの危険が逆に人を呼び集め、多くの人が集まるが故に商売が盛んとなり、大きな富を蓄積したことで大規模な盗賊や蛮族たちからの標的となり――まさに事象はループして交易都市ミリオンを形成している。
○評議会
ミリオンはその成り立ちから世襲貴族が存在せず、同業者組合や神殿、市民代表(都市の各区画の代表者を意味する)などを評議員とした議会が都市を運営している。
まだ小さな町だった頃は数名の評議員が細々と議会を運営していたに過ぎなかったが、周辺の国々の王都にさえ匹敵する規模となった今では、百名もの評議員がそれぞれが属する組織の利益を代表して喧々囂々と議論を繰り広げている。
評議会に名を連ねることは大変な名誉であると同時に、大きな権力と利益を得るきっかけとなり得る。なお、評議員の任期は二年間で、再任を妨げないこととされている。
ミリオンはその成り立ちから世襲貴族が存在せず、同業者組合や神殿、市民代表(都市の各区画の代表者を意味する)などを評議員とした議会が都市を運営している。
まだ小さな町だった頃は数名の評議員が細々と議会を運営していたに過ぎなかったが、周辺の国々の王都にさえ匹敵する規模となった今では、百名もの評議員がそれぞれが属する組織の利益を代表して喧々囂々と議論を繰り広げている。
評議会に名を連ねることは大変な名誉であると同時に、大きな権力と利益を得るきっかけとなり得る。なお、評議員の任期は二年間で、再任を妨げないこととされている。
○著名な冒険者の店
1.有袋類
臨時的にしか営業をしない奇妙な店。
しかし、リーゼン地方各都市には必ずどこかに存在し、その名はある程度以上の力を持つ冒険者にとっては大きな意味を持つ。この店はリーゼン冒険者組合の拠点であり、権力者などと対立せざるを得なくなった冒険者(犯罪者という意味ではない)を守り、支援したりもする。
どの店もこぢんまりとしているが、よく見れば守るに易い造りをした小型要塞にも似た建物ばかりだ。
1.有袋類
臨時的にしか営業をしない奇妙な店。
しかし、リーゼン地方各都市には必ずどこかに存在し、その名はある程度以上の力を持つ冒険者にとっては大きな意味を持つ。この店はリーゼン冒険者組合の拠点であり、権力者などと対立せざるを得なくなった冒険者(犯罪者という意味ではない)を守り、支援したりもする。
どの店もこぢんまりとしているが、よく見れば守るに易い造りをした小型要塞にも似た建物ばかりだ。
2.緋色の狐
交易都市ミリオンに最近オープンした冒険者の店で、エンブレムは、燃え盛る炎のような尻尾を振り上げた二匹の狐が向かい合っているバッヂ。
店舗は、食堂と店長の私室があるだけの平屋で宿屋は併設されていない。
登録されている冒険者数名、専属冒険者は1グループと規模はまだ小さい。
「小さいことからコツコツと」をモットーに、小さな規模の依頼でも手堅くこなし、着実に名声を得てきている。
“深緑の狸”亭とは姉妹店ということになっているが、実はそちらの方が歴史が古く、規模も大きい。
交易都市ミリオンに最近オープンした冒険者の店で、エンブレムは、燃え盛る炎のような尻尾を振り上げた二匹の狐が向かい合っているバッヂ。
店舗は、食堂と店長の私室があるだけの平屋で宿屋は併設されていない。
登録されている冒険者数名、専属冒険者は1グループと規模はまだ小さい。
「小さいことからコツコツと」をモットーに、小さな規模の依頼でも手堅くこなし、着実に名声を得てきている。
“深緑の狸”亭とは姉妹店ということになっているが、実はそちらの方が歴史が古く、規模も大きい。
3.深緑の狸
交易都市ミリオンの大手冒険者の店の一つで、エンブレムは、緑色の透かしが入った黒の歪なフレームの眼鏡で、かけると「狸の隈」が出来たように見える。
実店舗と、50人宿泊規模の宿屋兼食堂が併設されており、中でも中庭にある天然温泉を利用した温泉は好評である。
専属冒険者グループは3グループと少ないが、一般登録された冒険者にも分け隔てなく仕事を斡旋するため、登録にくる冒険者は多い。
“緋色の狐”亭とは姉妹店。そちらで受け持つことの出来ない規模の仕事を受け持つことが多い。
交易都市ミリオンの大手冒険者の店の一つで、エンブレムは、緑色の透かしが入った黒の歪なフレームの眼鏡で、かけると「狸の隈」が出来たように見える。
実店舗と、50人宿泊規模の宿屋兼食堂が併設されており、中でも中庭にある天然温泉を利用した温泉は好評である。
専属冒険者グループは3グループと少ないが、一般登録された冒険者にも分け隔てなく仕事を斡旋するため、登録にくる冒険者は多い。
“緋色の狐”亭とは姉妹店。そちらで受け持つことの出来ない規模の仕事を受け持つことが多い。
○花街
都市が大きくなり、都市の表向きの部分が光り輝けば輝くほど、暗部もまた大きく膨れあがり、陰は濃さを増していく。
娼館そのものは都市建造の時点から存在していたが、ミリオンの花街が爛熟し、妙なる芳香を放って近隣から人々を引き寄せ始めたのは実は近年になってからのことだ。都市が巨大に成長したことで貧富の格差は拡がり、莫大な富をその手に握った者は欲望を満たすためにその金を色に、食にと注ぎ込み、彼等を満足させるために花街は受け皿をより大きく華麗なものへと変化させていった。
ここには大陸全土から美しい娘たちが集められ、持たざる者には想像もできないような世界を形成するに至っている。
都市が大きくなり、都市の表向きの部分が光り輝けば輝くほど、暗部もまた大きく膨れあがり、陰は濃さを増していく。
娼館そのものは都市建造の時点から存在していたが、ミリオンの花街が爛熟し、妙なる芳香を放って近隣から人々を引き寄せ始めたのは実は近年になってからのことだ。都市が巨大に成長したことで貧富の格差は拡がり、莫大な富をその手に握った者は欲望を満たすためにその金を色に、食にと注ぎ込み、彼等を満足させるために花街は受け皿をより大きく華麗なものへと変化させていった。
ここには大陸全土から美しい娘たちが集められ、持たざる者には想像もできないような世界を形成するに至っている。