ふたば系ゆっくりいじめ 513 ネリアン

ネリアン 18KB


観察 理不尽 実験・改造 加工場 現代 独自設定 うんしー 人間がとても不幸になります

※独自設定垂れ流し
 今回は特に注意
※餡子んぺに触発されて書いたのですが
 内容があまりにもアレなので出展はやめました
※人間がとても不幸になります


せわあし やしーむ やしーむ

それは、この世ではないどこからから響く声。

せわあし やしーむ やしーむ

それは、満たせない空虚の消滅を願う声。

せわあし やしーむ やしーむ

それは、世界を終わりへと導く、破滅の声。




ネリアン




「みんな! ゆっくりでてきてね! とってもだいじなおはなしがあるんだよ!」

群の中心で、ゆっくりまりさの声が響いた。
何事かと木の下の穴や地面に掘られた穴などのおうちから姿を現すゆっくりたち。

「ゆ? まりさ、どうしたの?」
「わかるよー、なにかそうだんしたいことがあるんだねー」
「むきゅ! それならけんじゃのぱちゅのでばんね!」
「とかいはなありすがそうだんにのってあげてもいいわよ!」

時間は夕方に近い。群れのゆっくり達はほとんどがおうちに帰ってきており、まりさの呼
びかけでその大半が集まってきた。
いくつもの疑問の声と問いかける視線を集め、当のまりさは落ち着きなくそわそわしてい
る。

「あ、あのね! じつは……」
「みんな! おにいさんたちと加工場に来てね!」

言葉とともにまりさの後ろから二人の人間が現れた。
近くの木に隠れていただけだが、まりさの呼びかけに安心して集まったゆっくりたちは全
く気がついていなかった。

「ゆわあああ!? に、にんげんさんだあああああ!!」
「ままままりさあああ!? どういうことなのー!?」
「かこうじょ!? かこうじょはゆっくりできないいいいい!!」

蜂の巣でつつかれたように騒ぎだすゆっくりたち。混乱のあまり逃げ出すことすら忘れて
喚き散らすあたり、ゆっくりの愚かなところだった。
まりさはゆっくりと振り向くと、人間に問いかけた。

「ま、まりさやくそくまもったよ! だからまりさだけはにがしてくれるんだよね!?」
「すまない、あれは嘘だ」

まりさが驚く暇もなく、男が取り出したのはメガフォンのような機械。
かちり、とそのスイッチが押された。

「ゆ!?」
「ゆぴ!?」
「ゆ……!? ゆ……!?」

ぶん、という低いうなりとともに、あたりの木々がざわめいた。
ゆっくりたちは一声上げると動かなくなった。
目を見開き震え、「ゆ! ゆ!」と時折うめくだけだった。

「たいしもんですね、さすが加工場特製。ゆっくりども、きっちり麻痺してますよ」

二人の人間のうち、若い方の男がゆっくりを軽く蹴った。ゆっくりは蹴られた衝撃にころ
ころ転がる。踏みとどまろうという気配すらない。目をキョロキョロと動かすばかりだ。

「おい、やめろ。ゆっくりを無傷で捕獲するためにわざわざこんなものを持ち出したんだ」

年輩の男が諫めると、若い男は肩をすくめた。
先ほど使われたメガフォンのような機械。これは「対ゆっくり音響兵器」という仰々しい
名前を持つ。
ゆっくりは耳がない。全身の皮膚で空気の振動を感じて音を聴く。そのため、実は大きな
音に弱い。
この「対ゆっくり音響兵器」はゆっくりがもっとも苦手とする周波数の音を大音量で放出
する。この音を浴びたゆっくりは皮が麻痺して動けなくなるのだ。ゆっくりにとって皮は
外骨格のようなもの。それが麻痺するのだから、まったく動けなくなり完全に無力化する。
「兵器」と呼ぶに相応しい恐るべき威力だが、ゆっくり以外にはほとんど害のない周波数
の音であり、実にクリーンな機械なのである。

「さあ、仕事を始めるぞ。ゆっくりを傷つけないよう細心の注意を払え」
「はいはい、わかってますよ先輩」

二人の男は加工場の職員だ。今日は野生のゆっくりを捕獲しに来たのだった。






「先輩。どうして俺たち、こんなに野生や野良なんか集めるんですかね?」

トラックを運転しながら、男は助手席に座る先輩へ問いかけた。
あのあと、ゆっくりたちの捕獲は滞りなく終わった。「対ゆっくり音響兵器」で動けなく
なったゆっくりは容易につかまえることができたし、巣穴に残っていた子ゆっくりなども
問題なく捕らえられた。
まったくもって簡単な仕事だった。
捕まえたゆっくりたちは今はトラックの荷台の中だ。みっしりと詰め込まれているものの、
緩衝材を適度にはさんでいるためゆっくりが傷ついたり潰れたりすることはない。
通常の野生ゆっくりの捕獲ならここまではしない。袋に適当に放り込み、何匹かつぶれて
もかまわない、という大ざっぱなやり方が一般的だ。
野生のゆっくりをなるべく傷つけず、大量に集める。それがここのところ続いている、男
たちの仕事だった。
やることも奇妙だが、理由も知らされていなかった。
男はこの奇妙な仕事に前々から疑問を持っていたのだ。

「俺は知らんな。与えられた仕事をただこなすだけだ」

堅物な先輩の、いつも通りのまじめな様子に、男はため息をつく。

「でも気になりませんか? たかがゆっくり、加工場なら高品質なものをいくらでも生産
できます。それなのに、わざわざ野生のゆっくりまで集めるなんて、変じゃないですか。
しかも連日連夜ですよ。理由もなしにこんな仕事ばっかりじゃ納得いきませんって」
「仕事に余計な疑問を持つな。俺たちはただ与えられた仕事を……」
「おもしろい噂を聞いたんです!」

言葉を遮られ、むっとした様子の先輩にかまうことなく、男は自分のペースで話を続ける。

「先輩は『ネリアン』って知ってますか?」
「ねりあん……練った餡のことか? 確か第三課で新製品が……」
「違います! 『ネリアン』ですよ『ネリアン』! 現代の魔法、錬餡術(れんあんじゅ
つ)!」
「……おまえはなにを言っているんだ?」

怪訝そうな先輩に、男は再びため息を吐く。

「本当に何も知らないんですか?」
「わからん。お前が何を言おうとしているのかすら想像がつかん」
「先輩が知らないのなら、やっぱりあれは噂なのかな……」

「それなら、いいんだけど」と、こっそりつけ加え、男はその噂について語り始めた。





ゆっくりは、食べたものを何でも餡子に変換する「餡子変換能力」を持つ。
これはゆっくりを知るものにとって常識であるが、同時にもっとも不思議な点でもある。
人間の消化の仕組みは各臓器の機能や酵素の化学反応などで説明が付く。だがこの不思議
饅頭のこの機能については誰もが論理的にな説明ができない。
「なぜかそうなる」
問いつめられれば、誰もが最後には匙を投げそう答えるしかなくなる。
だが、それでもなお研究しつづけるものたちはいた。
加工場のある研究員もその一人だった。
彼のアプローチは通常のそれとは少々違った。
誰もが「ゆっくりが食べたものをなんでも餡子に変換する」ことに注視する中、まったく
逆方向から考えたのだ。
ゆっくりは食べたものを餡子に変える。
そして、餡子を消費して活動し、成長する。活動するための運動エネルギー。体内の餡子
を包む皮。お飾り。なにもかも、餡子で賄っていると考えられる。
ゆっくりは食べたものをなんでも餡子に変える。
これは裏を返せば、「ゆっくりは餡子をなんにでも変えることができる」のではないだろ
うか?
もしこの力を自在に使いこなせれば、ゆっくりをいくらでも生産できる加工場は無限に近
い富を得られることになる。まさに現代の魔法、よみがえった錬金術。
その研究はいつしか錬金術にちなんで錬餡術(れんあんじゅつ)と呼ばれるようになった。






「錬餡術……読みをもじって『ネリアン』って言うんですよ」
「くだらないな。お前、そんなことを信じてるのか?」

男の熱の入った説明を、先輩は一笑に付した。しかし、男はまるでひるまずに話を続ける。
まるで、何かに追い立てられているかのように。

「確かにバカバカしい話ですけど……見てるんですよ、俺たち。その研究の一部」
「なんだと?」
「ほら、あの! うんうんがとまらなくなったれいむ!」
「……ああ、覚えている。あれが、か……?」

男の言葉に、先輩は思いだしていた。確か男とともに、研究フロアを通りかかったときだ
った。

「おにいいいざああああああん! れいむのうんうん! うんうんどめでえええええ!!」

加工場でゆっくりの悲鳴はありふれている。うんうんが止まらなくなったゆっくりだって
珍しいものではない。
下品な音とともにもだえ苦しむクソ饅頭――醜悪だが、加工場ではありふれた光景だ。
異様だったのは、それを調べる研究員だった。

「いいよおお! れいむううう! さあ、もっと見せておくれえええええ!」
「みないでええええ! ゆああああ! とまらないいいい! うんうんさんとまってええ
ええ! どぼじでとまらないのおおおお!?」
「もっと! もっと! もっとだ! れいむのうんうん、もっと見せるんだあああ!」
「いやああああああ!」

とびちらされる液状のうんうんが体にかかるのも気にせず、鬼気迫る表情でゆっくりのあ
にゃるを見つめる研究員。
醜くおぞましい光景だった。

「あれがどうかしたか? 胸糞悪くなる研究だったが、ゆっくりの研究してるやつなんて
どいつもどっかおかしいんだ。ごくありふれた、ただの変態だ。珍しくはあるまい」
「あれが『ネリアン』の研究だったんですよ」
「……どこが?」
「人間にはほとんど違いなんてわかりませんが、ゆっくりにとってうんうんとふつうの餡
子は全くの別物です。だからうんうんは、ゆっくりにとって『餡子を餡子じゃないものに
変える』、もっとも基本的な行動なんです。研究員が調べていたのはそれなんですよ!」

先輩は天井を仰いだ。完全にあきれた様子だ。

「暇つぶしのバカ話にしても限度ってものがある。お前はもう黙って運転に集中していろ」
「こんな一本道で事故ったりしませんって。それよりここからが重要なんですよ……」

男の話はまだまだこれからのようだ。
先輩はもう諦めたのか、大きくため息を吐いた。






「ネリアン」の研究は進められた。
その結果、ゆっくりが餡子を消費してあらゆる活動をしてることがわかった。
餡子を熱エネルギーに変換して体温を得る。
餡子を運動エネルギーに変換して動く。笑う。しゃべる。
餡子を皮に変換する。皮ばかりでなく、あの体の成長とともにお飾りが大きくなるのにも
餡子を消費している。
そしてどすまりさの「どすすぱーく」のエネルギーすら、餡子の消費によって産みだして
いるのだ。
これらの成果は素晴らしい未来を予感させた。かねてからゆっくりの餡子をバイオ燃料と
するなどの研究は進められていた。だが「ネリアン」はその先をいく。
どすすぱーくの高エネルギーが容易に得られたとしたらどうだ? なにしろ加工場だ、餡
子は低コストで大量に得られる。人類の抱えるエネルギー問題を解決できてしまうかもし
れない。
研究成果はその先をも垣間見せた。エネルギーだけではない。ゆっくりは、餡子からなん
でも生み出せる。研究員はそう確信した。
ゆっくりの秘密を解明できれば、人類史上に革命だ。
だが、その研究はやがて頓挫する。約束された袋小路と言えた。ゆっくりが食べたものを
餡子に変換する仕組みだって解明されていない。その逆からのアプローチもまた、壁にい
き当たるのは必然だった。結局のところ、ゆっくりはわけのわからない不思議ナマモノな
のだ。

多くの者が諦めを背を向ける大きな壁。それ前にして、研究員は進むことをやめはしなか
った。研究を始めたときと同じように、常識とは異なるアプローチをとった。






「それで、研究員は禁断のゆっくりを生み出してしまったんです……って、先輩、聞いて
ます?」

一人で一気にまくし立ててしまった。その間、先輩は押し黙ったままだった。信号にさし
かかりトラックを止め、男は先輩の方をちらりと見た。
息をのんだ。
先輩は真剣に男の方を見つめていたのだ。どこか怒っているようにも思えた。

「せ、先輩……?」
「いい。続けろ。そしてとっととそのバカ話を終わらせろ」
「は、はい……」

男の声は震えていた。
顔が青ざめていた。手も震えていた。何かにおびえているようだった。
それは先輩を恐れて、ではない。まるで自分の中にある恐ろしい何かに耐えているかのよ
うだった。
でも、話すことをやめようとはしなかった。






「ゆっくりしていって……ね……?」

胎生型にんっしんをしたれいむは、自らが生み出した赤ゆっくりに声をかけようとして固
まった。
そこには想像していた赤ゆの姿も、期待していた笑顔もなかった。
真っ黒な餡子の固まりだけだった。
それを眺め、成功だ、と研究員はほくそ笑んだ。
胎生型にんっしんをしたゆっくりへの薬剤の投与、超音波による干渉。それらで生み出さ
れたのがこの餡子の固まりだった。
研究員はこれは「反転ゆっくり」と名付けていた。
その名前の通り、すべてが反転したゆっくりだった。
皮も髪も、目も歯もおかざりも。すべてを体の中心に置き、それを餡子で包み込んだ異形。
中身と外見、なにもかもが反転したゆっくり。
それが、反転ゆっくりだった。
研究員は独特な思考法を持っていた。
それは、「何かわからないことがあったら、逆に考える」だ。今までの人生、問題に当た
ったときはまずこの思考で解決を図ってきた。
餡子の変換能力の研究も通常とは逆のアプローチを行った。その研究が息詰まったとき、
彼はやはり同じ考え方で当たった。
普通のゆっくりをいくら調べてもわからない。それならば、普通ではないゆっくりを調べ
ればいい。すなわち、何もかもが反対のゆっくりを人工的に生みだし、調べれば活路が開
けるかも知れない――研究員はそう考えたのだ。
そこで反転ゆっくりを生み出した。
もっとも別にこれですべてが解き明かされると、そこまで安易に考えたわけではない。体
内を直に見ることができるゆっくりがいれば研究しやすいかもしれない、という考えの方
が大きかった。
いざ作ろうとしたが、当然、そのほとんどが失敗した。皮という守りなくして胎生型にん
っしんの衝撃に耐えられるはずもない。大抵は出産時に破裂・飛散した。かと言って植物
型にんっしんはすぐに実ゆっくりができるので、にんっしん後に干渉して反転させること
ができない。
失敗が続き、研究員がそろそろ別のアプローチで研究しようと考え始めた頃。こうしてた
またまうまくいったのだ。
今までのゆっくりとどう違うのか。どうして生まれることができたのか。薬の影響で通常
の餡子より堅くなったのか。研究員は目の前の奇跡に知的好奇心をくすぐられた。
そして、反転ゆっくりに触れた。






トラックは止まった。目的地に着いたのだ。
そこは、かつて加工場だった場所。今は高い塀で囲われ、そればかりかドーム状の巨大な
天井もつけられており、外から中は見ることはできない。
二人の加工場職員は、ここにゆっくりを運びに来た。
捕まえたゆっくりを所定の門で受け渡すと、塀の中へと運ばれる。
二人は、その中のことを知らない。中に何があり、何が行われているかを知らない。知ら
されていない。聞いても誰も答えない。ただ、噂だけがあった。

「……それで、研究員はどうなった?」

先輩がゆっくりと問う。
男はトラックを止め、反転ゆっくりに触れる下りまで話してから、話を止めた。そしてこ
こについた途端、ハンドルに突っ伏してしまったのだ。
重苦しい沈黙の中、男はようやく口を開いた。

「……先輩は、ゆっくりの定義を知っていますか……?」
「ああ、加工場の職員が知らないわけがない。人の生首を模した形をしていて、稚拙なが
ら人語を操る不条理ナマモノ。そして……」

男がビクリ、と震えた。
まるでその先の言葉におびえるように。

「中身は餡子。饅頭だ」

男は突っ伏していたハンドルか身を起こした。目は血走って、体中恐怖に震えていた。

「そう! 饅頭! 中身は餡子! それがゆっくりだ! それが定義! どんなに不条理
でもそれが絶対! 食べたものが餡子になるのも、餡子が別のものに変わるのも、すべて
その中で起きていた! 割って中を取り出すのはいい! つぶしたってかまわない! で
も、でも……反転だけはさせてはいけなかった!」
「おい、落ち着け……!」
「反転ゆっくりは奇跡的に誕生した! 完全すぎた! ねえ先輩、本当は知ってるんでし
ょう!? この中でなにが行われているか! 本当は知ってるんだ! 知っているからこ
そ僕の言うことを否定できないんだ! バカ話と決めつけて、ごまかしてる!」
「っ……!」
「反転ゆっくりが生まれた……中が外に、外が中に! だからこの世界は、ゆっくりの中
身になろうとしている! この塀の向こうには今でも反転ゆっくりがいて!」

先輩は男を殴った。
それでも男は黙らなかった。

「世界のなにもかもを! 餡子に換えてしまおうとしている!」

先輩はもう一度、男を殴った。
男は気を失った。






ゆっくりは不思議かつ不条理な存在である。
ゆっくりの定義。ゆっくりは不思議饅頭。中身は餡子でできている。食べたものを餡子に
換え、餡子を別なものに換えて活動する。
反転ゆっくりは、すべてが逆になって生まれた。
生まれた後に加工されたのなら、そうはならなかっただろう。ゆっくりの中から外へでた
餡子は、ただの餡子に過ぎない。なにかを餡子に変換したり、餡子をなにかに変換したり
はしない。
しかし、生まれたときからそうだったら? 初めからそうだったら、どうなるのか? 反
転ゆっくりはこの世に存在していて時から中が外で、外が中だった。そしてその概念は完
結し、固定された。
外が中へ。中が外へ。
内側に閉じこめられていた不思議が、外側にあふれた。

反転ゆっくりに触れた瞬間、研究員はどうなったか?

ゆっくりの定義。ゆっくりは不思議饅頭。中身は餡子でできている。
触れた瞬間、その定義に従った。必然的に研究員は餡子と化した。
触れるものの何もかもが餡子と化した。加工場は崩壊した。地面も壁も設備も職員さえも、
なにもかもが次々と反転ゆっくりに触れ、餡子へと換えられていった。ゆっくりの不思議
に世界が書き換えられていった。
ゆっくりは大きくなるためにはなにかを食べなければならない。逆説的に、大きくなった
ゆっくりはそのぶん何かを食べ続けなければならない。
反転ゆっくりの中心には皮と歯と髪とおかざり。しかし本当の意味での真ん中には、何も
ない。無だ。反転ゆっくりの食べるられものなんてなにもないはず。
だが、反転ゆっくりは食べ続ける。餡子が増えるのなら何かを食べなくてはない。矛盾し
てしまう。
だからきっと反転ゆっくりは「無」を食べているのだ。「無」はもともと無いのだから、
尽きない。
普通のゆっくりなら、皮の大きさが成長の限界を決める。皮の成長には大量の餡子を消費
する必要がある。しかし、反転ゆっくりにはその制限がない。

大きくなるのに邪魔になる枷がなにひとつない。
したがって、反転ゆっくりは無限に大きくなる。

ありとあらゆるものを餡子に換え、時間をかけてゆっくりと、世界のなにもかもを飲み込
んでしまう。
なにしろ触れるものすべてが餡子になる。だから抵抗するすべはない。爆弾で吹き飛ばす
こともできない。普通に燃やすには大きすぎる。核兵器すら通用するかわからない。
だが、その概念に飲み込まれないものたちがいた。
加工場で唯一死滅していない存在があったのだ。

ゆっくりたちだ。

身体の内側に同じ概念を有するゆっくりだけが、反転ゆっくりに取り込まれることはなか
った。元々世界から浮いた存在だ。
そして、ゆっくりたちは、外からお飾りの見えない反転ゆっくりをゆっくりと思わない。
ただの餡子の固まりとしか認識しない。
ゆっくりは反転ゆっくりを食べ始めた。
だがそれでも地を喰らい増殖する反転ゆっくりの増殖する速度の方が速い。
だから他の加工場ではフル回転でゆっくりを生産し、生まれたそばから反転ゆっくりを喰
らわせるべく加工場跡へ送り込んだ。
それでも手が足りず、職員は野良や野生のゆっくりを狩り集めることになった。

それが男の知る、現在の仕事にまつわる噂だった。






「う……」

男は目を覚ました。トラックのシートに寝かされていた。

「起きたか?」
「あ、先輩……」
「ゆっくりの搬入は終わった。今は次の捕獲ポイントへ向かっているところだ。

トラックは先輩の運転によって走っていた。

「先輩、俺、俺……!」
「忘れてしまえ。あんなデタラメ、あるわけないだろう……」
「でも、先輩だっていつも聞いているでしょう、あの……!」
「お前の言ったことが嘘だろうとデタラメだろうとホラだろうと……仮に、万が一、本当
だと、しても。俺達のやることは変わらない。与えられた仕事をこなす。それだけだ……!」
「だって、先輩だってあの声を……!」

男はそこで言葉を止めた。
気づいたのだ。先輩が震えていることに。
誰だって恐いに決まっている。受け入れられるはずがない。
ゆっくりを狩り集める。そんなことが、自分たちの当たり前にしていることが、世界の存
亡に関わる重要なことだなんて。
荒唐無稽な話だ。馬鹿げている。普通なら語るにも値しない与太話だ。
だが、男は笑い飛ばすことができない。
連日の、理由の語られないゆっくり集めが噂に真実味を与える。あの塀で囲まれた、加工
所跡の実在が完全な否定を許さない。
なにより、耳に残るあの声が、目を背けることすら許してくれない。
加工場だったあの場所に、ゆっくりを届けるとき。門にさしかかったところで、いつも、
聞こえるのだ。
分厚いコンクリートの壁から地鳴りのように響く、無数のゆっくりの声。
それが「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」の連なりであることが、ゆっくり加工場の
職員なら聞き分けられてしまう。
そして、何より聞こえてしまうのだ。
その地鳴りのような叫びの中に潜む、異音。
地の底から聞こえるようなくぐもった、それなのにゆっくりの発しているものだとわかる、
不思議で不気味なあの声。
あの噂とぴたりと一致してしまう、異形の反転ゆっくりが無を喰らう、歓喜の声。

せわあし やしーむ やしーむ

反転した、その声が。


by触発あき

・過去作品
ふたば系ゆっくりいじめ 163 バトルゆ虐!
ふたば系ゆっくりいじめ 172 とてもゆっくりした蛇口
ふたば系ゆっくりいじめ 180 ゆっくりばけてでるよ!
ふたば系ゆっくりいじめ 181 ゆっくりばけてでるよ!後日談
ふたば系ゆっくりいじめ 199 ゆっくりたねをまいてね!
ふたば系ゆっくりいじめ 201 ゆっくりはじけてね!
ふたば系ゆっくりいじめ 204 餡小話の感想れいむ・その後
ふたば系ゆっくりいじめ 211 むかしなつかしゆーどろ遊び
ふたば系ゆっくりいじめ 213 制裁は誰がために
ふたば系ゆっくりいじめ 233 どすらりー
ふたば系ゆっくりいじめ 465 おぼうしをおいかけて
ふたば系ゆっくりいじめ 469 おぼうしをぶん投げて
ふたば系ゆっくりいじめ 478 おぼうしのなかにあったもの


上記以前の過去作品一覧は下記作品に収録
ふたば系ゆっくりいじめ 151 ゆっくりみわけてね!



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感想

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  • ゾクゾクする -- 2015-08-24 13:49:55
  • いいよおお!でHUNTER×HUNTERのヒソカを思い浮かべてしまった('・ω・`) -- 2012-12-03 11:45:53
  • 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!
    おそろしーしー漏らしちゃうって!
    リアルで起きたら怖いよ!?

    せわあし ゃしーむ ゃしーむ

    -- 2012-10-31 22:57:30
  • すごい面白かったです
    読んでて少し寒気がしましたw

    触発さんの作品は文章力もあってけっこう好きです

    -- 2012-06-19 21:55:19
  • テメーらケンカしてるとハイパーミラクルタイナミックジャスティスアトミックメガビックパンチ(ジャブ)食らわすぞオラ! -- 2012-03-27 02:08:23
  • ああ!面白い!
    こういうラブクラフト的クトゥルフゆっくりホラーはとってもゆっくりできるよ! -- 2012-01-17 19:47:28
  • ↓3 みなさん こういった人をゆとりと言うんですよーw -- 2011-07-10 19:52:10
  • ↓2 どうみてもゲスの逆ギレです
    つーか草生やしすぎ
    壺からのお客さん?
    -- 2011-07-07 03:33:17
  • この話面白かったですw -- 2011-06-04 08:29:09
  • ↓あらあらwそう興奮なさらずに知恵遅れさんw
    なるほどねw知恵遅れさん的には難しい言葉で話しているつもりだったんだww
    知恵遅れさんに1つアドバイスをあげますよ
    人に何かを言ったり書きこんだりする前に知恵遅れさんのお母さんに
    おきゃあしゃん!きょれかいちぇいーい?って聞いてごらんなさい
    そしたらきっと駄目ですよ知恵遅れ・・・って優しく諭してくれますからw
    これで安心ですね知恵遅れさん! -- 2011-03-09 12:22:49
  • ああ、馬鹿だとは思ってたけどベタに馬鹿なんだこの人。義務教育中退者とはいえ…驚いた。普通に日本語でのコミュニケーションが不自由なレベルだったんだ。
    難しい言葉で話しちゃってごめんね。あと、自己紹介は普通一回でいいんだ。おぼえておくといいよ。 -- 2011-03-08 18:05:14
  • ↓比喩どころか類似も知らないんだw困った知恵遅れだぜww -- 2011-03-08 08:32:47
  • 比喩?これのどこが?知らないのかな、ある程度類似した事柄でなきゃ比喩は成立しないんだよ?やっぱり中学出てないんだな。
    知恵遅れ…ああなるほど、自己紹介ね。 -- 2011-03-07 22:32:21
  • ↓比喩って知ってるかい知恵遅れw -- 2011-03-07 09:13:47
  • ↓×4
    ビッグバンってのは何も無かった無の状態からいきなり起こり、そこから宇宙が生まれて始まるきっかけになった爆発のことだぞ?餡子の無限変換と一体なんの関係があるんだ?中学でてる?
    どうしてそう、正しい知識も無いのに物事を無理矢理厨二な方向に関連付けようとするのかな? -- 2011-03-06 11:56:37
  • ↓ゆっくりが食べた物を餡子に変換する能力のことを言ってるのではないですか?一応変換できる量は無限と言えなくもないのが通説ですし。
    なんでそれがビッグバンと関係あるのかは自分にはちょっとわからないですが…。 -- 2011-02-24 02:01:37
  • ↓どこにw -- 2011-02-23 19:24:22
  • ↓え?あるじゃん。何言ってんの? -- 2011-02-17 21:19:35
  • ↓無限に餡子に変換できるビッグバンパワーなんて設定はないね
    -- 2011-02-17 20:57:00
  • ↓↓↓ゆっくりの全てを餡子に消化変換する能力はすでに固まってる設定であって、今さらそれを俺設定とは言えない。だからあなたの言ってることは筋違いだと思う。
    このSSはゆっくりの特性のアンコントローラブルな側面を上手に利用した出来のいいSFだと自分は思います。 -- 2011-02-11 18:14:57
最終更新:2009年11月26日 19:19
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