──自分に力が無いことなんて分かっていた。
2Bさんもリンクさんも凄く強くて、かっこよくて、この二人と一緒にいれば大丈夫だって心のどこかで安堵していた。
けどそれは甘えでしかなかった。だって現に今、必死に走る私の後ろで2Bさんが命を懸けて戦っているんだから。
2Bさんは強いけど無敵じゃない。アニメや漫画のヒーローなら負けなんてないけれど、これは現実なんだ。もし2Bさんが負けてしまったらきっと──殺されてしまう。
「はッ、はッ、は……ッ! げほ、ッはぁ……!」
そんなの嫌だ。
2Bさんは私を守る為に戦ってくれているんだ。私が原因で友達が死ぬなんて絶対に駄目なんだ。
私は確かに弱い。きっとここに呼ばれた人達の中でも遥かに下の立場にいる。
けれど、けれど──!
力が無くても、友達を守ることは出来るはずなんだ!
「私、が……ここにいる、理由は──!」
走る、走る、走る、走る。
来た道を真っ直ぐに走る。
伝えなければならないから。
2Bさんの危機を彼らに伝えられるのは私だけなのだから。
■
「──お、おい……大丈夫、なのかよ?」
震えた声の主、久保美津雄。
彼の視線の先にはリンクに上体を起こされ先程完成した回復薬を少しずつ飲まされているザックスの姿があった。
ゆっくりと嚥下を繰り返すザックスはお世辞にも"大丈夫"とは言い難い。けれどその問いから暫く、回復薬を飲み終えた頃にはザックスは歯を見せて笑いこう言った。
「大丈夫だ、元気元気!」
そんなザックスを見て美津雄は呆れたように溜息を吐く。その溜息に安堵のものが含まれていることも知らずに。
グレートでもない回復薬の回復量などたかが知れている。今のザックスの怪我の具合を考えると動くことが出来ない状態から辛うじて歩く事ができる状態になった程度だろう。
勿論そんなことはハンターでもない美津雄には分からず、それを察したリンクも余計な口出しを控えザックスの笑顔を崩さぬようにしているのだから彼の空元気を指摘出来る者はここにはいなかった。
「とりあえず、今できることはした。他にも薬がないか探したいけれど、君達を置いていく訳にはいかない。2B達が戻ってくるまで辛抱してくれ」
「……そ、そうか、わかった。聞いたかザックス!? お前、絶対安静にしてろよな!!」
「はいはい……ったく、耳元で怒鳴らなくたって聞こえてるよ」
リンクという頼れる大人から指示を受けた為か、ザックスに怒鳴り散らす美津雄にはどこか生気と希望が宿っていた。
まだ問題は山積みだ。さっき走り去って行ってしまった雪歩のこともあるし、その原因を作ってしまったのは自分にある。
状況が状況だったとはいえ、あの時の美津雄は冷静じゃなかった。リンクやザックスが自分に対してそうであったように、まずは落ち着いて話をしなければならない。
今まで自分中心に世界が回っているという思考を持っていた美津雄がそんな風に省みる事が出来るのはひとえにザックスとの出会いに他ならないだろう。
「ザックス」
「んー?」
「ああ、その……えーっと……あ、ありがとな。庇ってくれて」
それは美津雄の口が初めて紡いだ感謝の言葉だった。
他人に感謝するなんて考えたこともなかった。そんな機会も二度と訪れないと思っていたし、そうならないように生きるつもりだった。
ゆえに彼がそれを発するには彼が思う以上の勇気が必要で、それを言い切っただけでも言いようのない感情がせりのぼり泣きそうになった。
「はは、ガラじゃねぇな」
「なっ……お前なぁ!!」
しかしそれは半笑いで返される。
思わぬザックスの反応に赤面しながら怒りをぶつける美津雄。そんな彼と目線を合わせたザックスは静かに、けれど感情の隠せぬ声色を風に乗せる。
「けど、嬉しいぜ。 まさか美津雄からそんなこと言われるなんてな」
「え……いや、まぁ……こんな状況なんだから、仕方ないだろ」
「照れるなって。可愛いやつだな~」
相変わらずふざけた口調を崩さないザックスに美津雄は再びなんとも言えぬ表情を作り、すぐにむくれたように顔を背ける。
そんな彼らのやり取りをどこか微笑ましく思いながらも、リンクの心中は不安に溢れていた。
(……2B達、遅いな)
2Bが雪歩を追ってから決して短くはない時間が経過している。杞憂で終われば良いが、どうにも嫌な予感が拭えない。
果たして自分はこうしていていいのか?
何度目になるかも分からない疑問に突き動かされ、休息を拒む身体に従い立ち上がったその時。
「──リンクさんッ!!」
「雪歩!?」
2Bが向かった先からまるで入れ違ったかのように此方へ走り寄る雪歩の姿が映る。
その様子はとても穏やかなものではない。こんな時、勘のいい自分をリンクは恨んだ。
「助けて……ください……!! 2Bさん、がっ、2Bさんが……っ!!」
「──!!」
事情も聞かず、状況が未だ掴めず困惑する美津雄とザックスを置いて雪歩の元へ駆けるリンク。
2Bに何かあったのだということは察した。そして雪歩の必死な様子からして自体は深刻、一分一秒すら無駄にすることは出来ない。
しかしリンクの脳に一瞬の迷いが生じる。その原因は彼の向けた視線の先にあった。
「リ、リンク……何があったんだよ?」
震えた声でそう聞く美津雄の顔は恐怖に歪んでいた。当然だ、雪歩が戻ってきたということは近くに危険人物がいるということ。
もしリンクがここを離れたら美津雄と瀕死のザックスを守る存在はいなくなる。それはつまり二人を危険に晒すということだ。
目に映るもの全てを守るつもりで生きてきた英傑は足を止める。しかしその背中を押すようにザックスが穏やかな顔付きでリンクと視線を交わした。
「行け、兄ちゃん。大丈夫だ、こいつは俺が守るからよ」
なっ──と驚愕の声を上げる美津雄。
一切冗談の混じらない本気の言葉にリンクは迷いを捨て、強い頷きと共に雪歩の手を引いて山岳地帯へと奔走する。遠ざかる背中に美津雄は焦燥を、ザックスは安堵を覚えた。
■
戦況は絶望的だった。
一度打ち合う度に2Bは思い知らされる。自分はこの男には勝てないと。
アンドロイドを凌ぐ怪力と二メートルに達する得物のおかげで打ち合いという体裁を成すことでさえ精一杯だ。
刀身が衝突し、刀が手元から離れないように柄を握り直す。これが先程から何度も何度も続いている。
拮抗の糸はとっくに解けている。そうして遂にギリギリの綱渡りは終わりを迎えた。
「──ッ!!」
幾度と打ち合い限界を迎えた手から陽光が弾き飛ばされ、続く二振り目で右の太腿を深く斬りつけられた。
舞う血飛沫と火花に力が抜けるのを感じ、右足から崩れ落ちる。しまった、と思う頃にはもう遅かった。
理不尽じみたリーチは2Bの間合いの遥か遠くからでも届いてしまう。仮に今の状態で逃げに徹しても両断されるのがオチだろう。
正宗を持ち直し振りかぶる死神、カイムの狂喜が鮮明に映し出される。次の瞬間には首が飛んでいるだろう。
(──ごめんなさい。雪歩、リンク……9S)
そうして振り下ろされるはずの刃はその役目を果たさずに終わる。
その原因を目にした2Bはまさかと驚愕の表情を宿し、今しがたカイムの手を打ち抜いたブーメラン状の枝が半円を描きながら持ち主の手に収まるのを目で追う。
木漏れ日に民主刀の白光を際立たせ、疾風のようにカイムと2Bの間に割り込む金髪の青年。思わぬ乱入にカイムの表情が警戒のものへと変わった。
「リンク……!?」
2Bの声と同時、リンクの振るう剣戟によりカイムが後方へと飛び退く。
互いに間合いの外へと出た状態。殺意を滲ませるカイムの睥睨に決意を込めた双眸を返しながらリンクは高らかに宣言した。
「お前の相手は俺だ」
【D-2 山岳地帯/一日目 朝】
【リンク@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:胸上に浅い裂傷、決意
[装備]:民主刀@METAL GEAR SOLID 2、デルカダールの盾@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて ブーメラン状の木の枝@現実
[道具]:基本支給品(残り食料5/6)、ナベのフタ@現実 残ったアオキノコ×2
[思考・状況] :ゼルダはどうしているだろう?
基本行動方針:守るために戦う。
1.2Bを守る。
2.美津雄、雪歩を守る。
3.ゼルダや他の英傑に関する情報を探す。
4.首輪を外せる者を探す。
※厄災ガノンの討伐に向かう直前からの参戦です。
※ニーアオートマタ、アイマスの世界の情報を得ました。
※美津雄の調合所セット(入門編)から薬に関する知識を得ました。
【ヨルハ二号B型@NieR:Automata】
[状態]:両腕に銃創(行動に支障なし)、右太腿に深い裂傷、決意
[装備]:陽光@龍が如く 極
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いの破壊。
1.リンク……!?
2.D-2、765プロへ向かう。
3.雪歩を守る。
4.首輪を外せる者を探す。9S最優先。
5.遊園地廃墟で部品を探したい。
※少なくともAルートの時間軸からの参戦です。
※
ルール説明の際、9Sの姿を見ました。
※ブレスオブザワイルド、アイマスの世界の情報を得ました。
【カイム@ドラッグ・オン・ドラグーン】
[状態]:ダメージ(小)、魔力消費(中)
[装備]:正宗@FINAL FANTASY Ⅶ
[道具]:基本支給品 エアリスの基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、マナを殺す。
1.目の前の敵を殺す。
2.自分よりも弱い存在を狙い、殲滅する……つもりだったが?
3.雷を操る者(ウルボザ)のような強者に注意する。
4.子供は殺したくない。
※フリアエがマナに心の中を暴かれ、自殺した直後からの参戦です。
※契約により声を失っています。
※正宗に自分の魔力を纏わせることで、魔法「コメテオ」が使用できます。
■
(リンクさん、2Bさん……)
カイム達が居る場所から少し離れた茂みの中、そこには震える身体を懸命に縮める雪歩がいた。
2Bの元へリンクを連れていくという役目を終えた雪歩は当然戦いの場に赴くような真似はできない。ゆえにここで待機するように、とリンクから指示された。
幸い緑の多いこの地帯で、茂みの中ならばそう簡単に見つかることはないだろう。リンク達の状況を確認できない不安やもし見つかってしまった場合の恐怖を考えるとキリがないが。
(きっと、大丈夫……ですよね……?)
それでも雪歩は信じる。
すぐにまたリンクと2Bが自分を迎えに来てくれると信じている。
そうすることが彼女にとっての戦いなのだから。
そんな彼女の腰元にて、提げられた赤と白のボールが揺れる。
まるで自分の活躍を待ち望むかのように。
【D-2 山岳地帯 離れの茂み/一日目 朝】
【萩原雪歩@THE IDOLM@STER】
[状態]:不安、恐怖
[装備]:モンスターボール(リザードン)@ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー
[道具]:基本支給品、ナイフ型消音拳銃@METAL GEAR SOLID 2(残弾数1/1)
[思考・状況]
基本行動方針:自分の無力さを受け止め、生きる。
1.D-2、765プロへ向かう。
2.2Bとリンクへの信頼。
3.協力してくれる人間を探す。他に765プロの皆がいるなら合流したい。
※ブレスオブザワイルド、ニーアオートマタの世界の情報を得ました。
【モンスター状態表】
【リザードン ♂】
[状態]:健康
[特性]:もうか
[持ち物]:なし
[わざ]:エアスラッシュ、フレアドライブ、りゅうのはどう、ブラストバーン
[思考・状況]
基本行動方針:???
1.そろそろ暴れたい
最終更新:2021年01月02日 18:00