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砂糖菓子の朝はほろ苦い ◆E6eHDQp34U


「罠だね。色々と考えたけど、間違いなく罠だよ」

携帯電話に届いた討伐のメールを、クロメは一言で切り捨てた。
学校にいく前の朝。
これまで繰り広げられたお遊びは終わりを告げ、いよいよ開幕の鐘が鳴り響く。
山田なぎさも今まで通り、緊張感のない生活はもう送れないかもしれない。

「仮に罠じゃないとしても。敵がわんさか集まる餌に手を出しちゃうのはどうかと思うなあ。
 私達はまだ、何も準備ができていないんだし」

クッキーをぼりぼりと囓りながら、クロメは投げやりに言葉を続けた。
とは言っても、なぎさからしたらクロメと同意見なので特に反論はしない。
ここで選択肢を間違えれば生命の危機にまで発展するかもしれないのだ。
慎重過ぎるぐらいが、自分にはちょうどいい。

「けれど、ずっと黙って指をくわえて見ている。それはありえないでしょ」
「そだね。それなりのリスクを払わないと、リターンは返ってこない」
「……あたしとしては楽な道を選び続けたいんだけど」
「まあ、今はそれでいいと思うよ。無理に攻めなくても好機はいずれやってくる。
 リスクに懸けるのは、もう少し先の話だね」

正直、戦うと言ってもどうしたらいいのかさっぱりわからない。
戦争とか、殺し合いとか、物騒な言葉を並べ連ねられても、現実味が湧かないのだ。

「そううまくはいかないって顔してるね、あんた」
「うん。だって、私はアサシンだし。正面切って戦うとなるとちょっと辛いかな」
「戦えなくはないんでしょ?」
「だからといって、こんな初っ端から全力全開なんて疲れちゃうよ?
 私達の目的は戦うことでも勝つことでもない。生き残ることなんだから」

だが、それを補うかのようにクロメは淡々と冷静な判断を下してくれる。
マスターに対してもずけずけと思ったことを告げる無神経さが今はありがたい。
戦闘に関してはなぎさよりも圧倒的に智があるクロメに逆らえるはずもなく。


「んじゃ、どうすればいいわけ? …………まあ、大体は察しはつくけど」
「マスターの察しの通りだよ」
「アサシンらしく、暗殺。それも、弱いマスターを狙う」
「正解……って言いたいけど、満点ではないかな」

だが、何も考えないというのも気に入らない。
単なる思考停止は、なぎさの好む姿ではなかった。
例え救いようのない馬鹿でも考えない奴は本当に救いようがない。
考えろ。足りない頭を使って、精一杯考えろ。
その果てで分からないなら仕方がない。
気に入らないけれど、素直に助言を乞えばいい。

「私の宝具、マスターは知ってるでしょ?」

その一言で、なぎさは全てを察した。

「死体繰り、か。協力する、と見せかけて安心した所をずぶり」
「正解。ストックが零だし、玩具を増やしたいんだよね~。ふふ、マスター……顔が強張っているよ? これからやろうとすることに、怖気づいた?」

くすりと蠱惑的な笑みを浮かべるクロメに対して、なぎさは負けじと頬を釣り上げる。
虚像だ。正直言って、痩せ我慢している。
未だ自分は勝ち残る為に他者を蹴落とすことを許容できていないし、クロメに対して完全な信頼を置けていない。
けれど、ただ一つだけ確かなことがある。
諦めたくない。願いを叶えるのは自分だ。

「別に。反吐が出る行為であっても、それが聖杯を諦める道理にはならない」
「マスターらしい答えだね。ま、適当に覚悟を決めちゃってくれた方が私は嬉しいんだけど」

けらけらと嗤う彼女に対して、なぎさは言葉を返せなかった。
所詮は薄氷の上に立つような脆い信頼だ。
利用価値がなければ互いに見捨てる程度の価値で、何を見出だせるのか。
今は、両者現状を良しとしているが何かの拍子で粉々になってもおかしくはない。

「嵐が来る、マスターはそう言ったね。その言葉通り、とびっきりの嵐がきっと来るね」
「嵐ならとっくに来てるよ。その証拠に戦いは始まってるみたいだし」

なぎさがくるりと掌で回した携帯電話の画面には、無数の文字が踊っている。
策謀が渦巻く参加者達の言葉の羅列を見て軽く溜め息。
気が早いことだ、戦争は始まったばかりだというのに。


「ふぅん、成程。水面下ではとっくに始まってるって訳かぁ」
「ま、あたし達には関係ない。地雷原の中に自ら突っ込むバカじゃないんだから」
「言えてるね。とりあえず、臨機応変にいこうか。たのしみだねぇ、マスター?」

勝手に潰し合ってくれたらそれでいい。
なぎさの預かり知らぬ所で――消えてくれ。
幾人もの屍を踏み潰して、なぎさ達は願いへと直走ろう。

「汚く、あざとく、みっともなく。それがあたし達の戦い方だ。わかってるな、クロメ?」
「勿論。願いを叶える為ならなんだってしなくちゃね。うん、ちょっと気分が上がってきたかも」

きっとその先に、少女二人が求めているものが待っているから。


【D-5/山田なぎさの家/一日目 早朝】

山田なぎさ@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]携帯電話、通学カバン
[道具]
[所持金]中学生のお小遣い程度+5000円分の電子マネー
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れて、海野藻屑に会う。
1.とりあえず、今は平常通り過ごす。
2.お人好しな主従と協調するふりをして、隙あらばクロメに襲わせる。
3.ただし油断せず、慎重に。手に負えないことに首を突っ込まないし、強敵ならば上手く利用して消耗させる。
[備考]
※掲示板を確認しましたが、過度な干渉はしないつもりです。

【アサシン(クロメ)@アカメが斬る!】
[状態]健康
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1.現状、マスターに不満はない。
2.アサシンらしく暗殺といった搦手で攻める。その為にも、骸人形が欲しい。
3.とりあえず、機会が巡ってくるまではおとなしくしておく。
[備考]
※八房の骸人形のストックは零です。

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最終更新:2020年06月28日 00:03