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追記、人工精霊はかく語りき ◆EAUCq9p8Q.





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   ☆★少女性・少女製・少女聖杯戦争とは?

   本邦初公開!
   これが、完璧な少女の作り方!

   材料
   ○砂糖
   ○スパイス
   ○素敵な何か


  「砂糖」
  「スパイス」
  「素敵な何か」
  全てを満たすとき、完璧な少女が生まれる。
  あの日から記せなかった未来の続きが再び刻まれ始める。
  空白を穿つことができず、忘却の彼方へと消えてしまった素敵な物語を、もう一度紡ぎなおせる。

  だから大人は用意することにした。
  「砂糖」
  「スパイス」
  「素敵な何か」
  それが何かはわからないけれど。
  少女の生まれるために必要な物を、彼女なりの方法で。

  これより先は、遥かに深い妄執の海。
  妄執を見つめるものの名は―――



○●


   追記。
   人工精霊はかく語りき。


●○






☆人工精霊

  イレギュラーだ。
  その状況を理解した時、すぐにその判断に辿り着いた。
  大井のサーヴァントと星輝子のサーヴァントが戦った。これはいい。戦うのは非常にいいことだ。
  裏で糸を引くプレシアにとっても、ルーラーにとっても、そいつにとっても、万事オーケー問題なし。
  大井が死んだ。これもいい。戦いに死はつきものだ。
  輝かしい『少女聖杯』をつくり上げるためには、幾つもの犠牲が合ったほうがいい。絵的にも映える。

  しかし、星輝子の消滅。これだけはいただけない。
  マスターの魂の量は決まっている。
  大きいやつ、小さいやつ、多いやつ、少ないやつ、そんなものなく魂は魂。一人に一つだけ。輝く魂がいっこだけ。
  『少女聖杯』は少女たちの魂によって満ち、奇跡を宿すと聞いている。
  だが、星輝子は先ほど、『ばいきんまんの宝具の消滅に巻き込まれて消滅した』。
  すなわち、英霊側に無理やり引っ張り込まれたことにより、強制的に『こちらの世界の者ではなくなった』。
  英霊の持つ宝具の一部として英霊消滅とともに英霊の座に引きずり込まれ、そのまま抜け出せなくなったのだ。
  それが意味するのは一つ。
  魂が一つ減った。
  当初想定していたよりも一つ減ってしまった。
  死して少女聖杯を輝かせるはずだった魂が、ひとつ、この舞台から逃げてしまった。

  だから、そいつは。
  ルーラーの手の中のそいつは。
  ルーラーが握りしめている携帯端末は。
  小さな声でこう呟いた。

  「弱ったぽん」と。


  電子妖精・ファヴが選ばれたのは偶然だった。
  リップルに魔法の国の武器でマスター端末を破壊され、世界に対してちょっぴりも干渉できなくなった後。
  数時間か、数日か、数ヶ月か、数年か、数世紀か、世界からはじき出された彼には理解できない時間が流れ。
  そして、拾い上げられた。

  曰く、『管理者側に向いている』。
  曰く、『現代の魔法と科学に精通している』。
  曰く、『絶対に反旗を翻せない』。

  都合のいいマスコット。
  だからファヴは拾い上げられた。
  そして、ローゼンメイデン第七ドール・雪華綺晶の『人口精霊』として紐付けされ、この聖杯戦争の地に蘇った。
  プレシア・テスタロッサの計画の協力者としてこの地で再び殺し合いに関わることになった。

  仕事はいくつかある。
  掲示板の管理もファヴの仕事だし、電子メールでの通達もファヴの仕事だ。
  ルーラー・雪華綺晶はその可愛らしいビスクドールそのものな見た目の通り、近代機器に疎い。
  マスターであるプレシアも、魔術ならば常人離れした技量を持つが、単純な電子機器を使いこなすことはできない。
  だが、規格を運営する以上は情報端末による情報の錯綜も網羅して置かなければならない。
  そこで白羽の矢が立ったのが、ファヴらしい。

  図書館の運営に携わるクローンヤクザの統制もファヴの仕事だ。
  プレシア・テスタロッサは創りだしたゴーレムへの指揮能力を有さない。それはこの世界でも同じだ。
  ではなぜクローンヤクザは意思を持つように諸星きらりの案内ができたのか。
  理由は単純。ファヴがクローンヤクザに備え付けられたLANの統制役としてプレシアから紐づけされ、各個体に指令を出していたから。
  もちろん、クローンヤクザの大群を率いて反旗を翻すなんてことはできないように、ある種のリミッターは設けられているらしいが、それでも、彼ら全てを操る権利のほとんどをファヴは任せられていた。

  そして今。
  ルーラーが当然のように戦闘の跡地に来れたのも、ファヴのサポートだ。
  ルーラーは瞬時にどこにでも行ける宝具を有している代わりに啓示のような『正確な位置を知るスキル』を有していないと聞く。
  しかしファヴにはその能力がある。
  『魔法少女育成計画』。
  この聖杯戦争の舞台の上に存在する携帯端末全てに仕込まれているアプリだ。
  所有者の意思にかかわらず、『魔法少女育成計画』のマスコットキャラクターであるファヴはそのアプリを通して全ての情報端末に侵入することができる。
  侵入さえしてしまえば、それでもう場所の特定は完了だ。
  あとは、手近な鏡面からルーラーが赴く、という寸法になっている。
  今回もまたその手法で、消防隊員の携帯端末の反応を辿って場所を特定し、赴くことができた。

  懸念は有った。
  英霊として顕現した魔法少女狩りスノーホワイトにその存在を感づかれるのではないかとヒヤヒヤしたものだが、なんと彼女はマスターの携帯端末をへし折ったらしい。
  ファヴは電子妖精なので運なんていう曖昧なものを信じるつもりはなかったが、それでも、そのことを知った時には少しだけその運というやつに感謝した。

  今まではなんの問題もなく動いていた。
  一人脱落者が出たとルーラーが言ったので、戦闘の情報が情報端末間でやりとりされている小学校の大鏡まで移動した。そこまでは良かった。
  ただ、そこからはファヴも、ルーラーも、おそらくマスターすらも想定していない展開が巻き起こった。
  現場に行ってみても脱落者・大道寺知世の姿が見えない。
  もしやと思い場所を確認してみれば、小学校方面から中学校方面へとすごい速さで移動している。
  成程、どこかの主従が漁夫の利を得て大道寺知世を攫ったのだろうと気付き、そしてルーラーにそのことを伝える。
  他の参加者がいるところで魂を回収すれば、『主催者側に企みあり』とバレてしまいかねない。
  『nのフィールド』に連れ込むのはありかもしれないが、危険を犯して攫った獲物を取り上げられれば、参加者は不平を覚えるだろう。
  どうするべきかと考えていると再び戦闘がはじまり。
  それが思った以上の大規模戦闘になったため、そちらの戦闘の近くに赴き。
  そして、冒頭の独白へと繋がった。

「ルーラー」

「なぁに、ファヴ」

「魂って二十は確実に必要って話ぽん?」

  ルーラーは少し立ち止まり、小首を傾げる。
  ルーラーは掴みどころがなく、意思の疎通も難しい。だが、必要なことは喋る。
  ここで黙るということは、ルーラーも魂の量については知らないということだろう。
  ファヴは頭を捻って考える。
  そして、早々にこう結論づけた。

「なんにせよ、さっさと帰って話聞いといたほうがよさそうぽん。
 報告連絡相談を怠ったらあとでどやされるってのは、たぶん、魔法の国とおんなじぽん」

  ファヴとてもともとは公務員だ。上っ面だけだったとはいえ働き方のマナーは心得ている。
  やれやれとつけぬ溜息の代わりにリンプンを散らしながらルーラーの周囲を一度くるりと旋回して。
  ファヴの羽先を楽しそうに追っていたルーラーにあくまで提案という形で行動方針を告げた。

「ルーラー、一旦マスターのもとに帰りたいけど、大丈夫かぽん?」

「……負けた子をお迎えに行くのはどうしましょう」

「ああ、そういや大道寺知世の魂も回収しなきゃだった」

  ふと思い出すのは、ここに来た理由。
  目の前の大事に気を取られて本来の任務すら些事として片付けてしまっていた。

「……まあ、なんの変哲もない人間だから、野放しにしといても問題ないはずぽん。物事には優先順位ってもんがあるぽん」

  順位付けするのならば。
  まずは星輝子の魂。次に彼女と類似の案件が起こりうる主従。その後に大道寺知世だ。
  どうせ力のない少女一人。この街から出られないのだから魂を奪うのが遅いか早いかの違いだ。
  連れて帰った参加者が変な動きをしないかぎりは野放しでも十分だ。
  令呪を奪うなり、キメラに作り変えるなり、洗脳して爆弾を抱えさせて友達に会いに行かせるなり、なんでもすればいい。

「マスターが先ぽん」

「そうなのね。じゃあ、そうしましょう」

  ルーラーは両手を胸の前で合わせ、可愛らしく承諾する。
  数秒後。消防隊の放水で出来た水面が人形を飲み込んだ。




  舞台の上に唯一存在する図書館。
  蔵書にうめつくされた本棚の迷路の中で大きな鏡が掛けられた壁だけが異様な存在感を放っている。
  その鏡が、不意に波打つ。
  そして一体の人形を吐き出した。
  壁掛け鏡からルーラーが飛び出すのを確認して、ファヴもまた携帯端末から飛び出す。
  そして、この館の今の主の姿を探す。ほどなくして、主の姿は見つかった。
  主は、司書用の机に本を積み上げ、そのうちの一冊を手にとってゆっくりとページをめくっていた。

「マスター」

「あら」

  ファヴの声に、主が顔を上げる。
  その顔からは、およそ表情というものは伺い知れない。
  ルーラーともども能面貼っつけたような主従だ、と、ファヴは心の中で何度目かの悪態をついた。

「帰ってきていたの」

「帰ってきたぽん。ファヴたちの一存で決めることはできないくらいの緊急事態だから仕方ないぽん。
 それが駄目ってんなら、まあ、文句言わずに仕事に戻るけど」

「構わないわ」

  主は、席を立ち、ルーラーたちの方へと歩み寄る。
  その挙動は酷く緩慢だ。もしかしたら身体の何処かを患っているのかもしれない。

「話してもらえるかしら」

  少女たちの聖杯戦争には似つかわしくない、一人ぼっちの大人は、開いていた本を閉じてルーラーたちに向き直った。
  大人の名は、プレシア・テスタロッサ。


「まあ、つまりはそういうことぽん」

  口数の少ないルーラーに代わり、無駄口の多いファヴが説明する。
  ただ、報告の中身はとても簡素。要旨だけをかいつまんだ、本当になんともない『報告』だ。
  星輝子の魂が消滅したこととその経緯。
  ファヴの考えるイレギュラーの発展性について。
  プレシアは相槌も撃たずにただぼうっとその報告を聞くだけだった。

  ファヴの説明の後で、沈黙が流れる。
  ファヴはちらりとプレシアの顔を見てみた。
  何かを考えているという顔ではない。心ここにあらずというような顔だ。

「マスター。魂の数が減っちゃったぽん。なにか特別にやることはあるぽん?」

「……魂は、六つでいいの」

  ファヴの言葉に、今度は返事が帰ってくる。

「この舞台の上で争い、輝きを増した魂。
 ちょうど、彼女の器を満たせるような、『不完全な魂』が、六つ」

  その数は、ファヴが想定していたよりも遥かに少ない。
  ならばもう少し参加者を減らしたほうが効率が良かったんじゃないか、とファヴが考えていると。
  プレシアは、そんなファヴの心を見透かしたように、言葉を続けた。

「ただ、あまり減ってしまうのは良くないわ」
「聖杯戦争は、魂に輝きをつけるための儀式……争いの中で、少女たちの魂は、より完全なる不完全へと近づいていく……
 これがなりたたなくなってしまったら、この儀式自体の意味がなくなってしまうの」
「それにもし、六つより少なくなってしまったら……」

  その説明で、ファヴは無い首を使って頷くように上下に揺れた。
  つまり、魂にも、戦争にも、意味がある。
  魂が六つになるまで戦争を続けなければならず、魂同士の研鑽が発生しなければならないので魂も残しておく必要がある。
  そして、戦争の終盤で魂が消滅しては六つの魂が回収できなくなるかもしれない。
  そうすれば、ここまでの苦労は水の泡だ。
  そこまで理解し、ファヴはプレセアにこう返した。

「つまり、手は打っておくべきと?」

「そうね。任せるわ」

  事務報告を終え、再び出発するためにルーラーが鏡を異界につなぎ、鏡の中に消えていく。
  ファヴもその背を追い、鏡をくぐろうとする。
  その時。

「……ファヴ」

  珍しくプレシアが、ファヴに自分から話しかけてきた
  何か気に触るようなことをしただろうかと振り返る。
  プレシアは、いつもの様に胡乱な瞳でファヴを見つめていた。
  ファヴの回路に、小さなノイズが走る。

「なんだぽん」

フェイト・テスタロッサは、居た?」

「あー」

  フェイト・テスタロッサ。
  通達を送る際に目にした名前だ。
  通達に貼り付けた写真にも目を通してある。

「居たぽん。小学校で、顔写真通りの子が」

「そう」

  ありのままに答える。
  プレシアは、尋ねたにしてはそっけなく、相槌のように一言だけ答えるだけだった。
  その様子になんとなくヤキモキしたファヴは、開始以来、ずっと忍ばせていた問いを口にした。

「マスター。結局、そのフェイト・テスタロッサって、マスターのなんなんだぽん?」

  ファヴは、その少女については何も知らなかった。
  ただ、プレシアがとても気にしているということだけは知っていた。
  ファミリーネームが同じだから、ひょっとしたら家族なのではと推測を立てることはできたが、それ以上はなにも分からない。
  人を害した様子はないのに討伐令を敷かれるほどの存在。
  敵か、味方か、それとも別の何かか。ファヴにも知れぬ主催の裏側。
  その部分への興味から、ついつい疑問が口をついて出てしまった。
  その問を聞き届けると、プレシアは、ファヴに歩み寄ってきた。
  それは、電子の海から拾い上げられて以来、それなりに長い付き合いだがようやく二度目だ。

「ファヴ」

「なんだぽん」

「あなたは、聖杯戦争を滞りなく進ませてくれればいいの」

  ファヴの顎に当たるラインを、プレシアの、少し骨ばった指が、優しく撫でる。
  ファヴの中に再びノイズのような何かが走る。

「私からあなたに望むことは三つ」
「聖杯戦争を止めないこと」
「魂を極力減らさないこと」
「私の手を煩わせないこと」
「お願いできるかしら」

  それは、ルーラーの補佐をする人工精霊としての最低限の業務。
  ファヴが拾い上げられた時から何も変わっていない使命。
  続く言葉もよく覚えている。

「できなければ、あなたには、また元の世界に帰ってもらわなければならない。
 悲しいけれどそれが約束だから」

  プレシアの口調だけは柔らかいその言葉を聞けば、ファヴはもう肯定するしかなかった。

「……わかったぽん。フェイト・テスタロッサについては、気にしないことにするぽん」

「それでいいの」

  プレシアの胡乱な瞳に見つめられた瞬間、触れられた瞬間、感情なんてないはずのファヴの回路に嫌なノイズが走った。
  そのノイズは、人間に置き換えるならば、恐怖と呼ぶのかもしれない。


「ったく、ほんと自分勝手なマスターだぽん」

  nのフィールド。
  許可を得ぬ限り誰にも察することのできぬ世界で、鏡だらけの何もない世界で、一体と一個が話し合う。
  話し合うと言っても、声をかけ続けるのは片方だけだ。
  饒舌な方……ファヴは、まだ納得がいかないという声色でリンプンを撒き散らしていたが、数分もすれば冷却がすんだらしく、いつもどおりの電子の妖精然とした振る舞いに戻った。
  フェイトについて詮索するのはやめておいたほうがよさそうだ。
  背景がどうあれ、今のファヴの利益になるようなことはないだろう。

「さて、それじゃあルーラー。会いに行くべき子たちができたぽん」

  プレシアの態度は気に食わないが、逆らうのは悪手だ。
  彼女の気まぐれ一つでファヴはこのnのフィールドからどこともしれない電子の海の水底に贈り戻されることだってありえるのだから。
  ならば無茶ぶりや難題だろうとふたつ返事で了承し、その通りに動かなければならない。
  魂を消滅させるなと言われたならば、魂の消滅を防がなければならない止めなければならない。
  魂を閉じ込め、他者に委ねることの出来る宝具を持つ者。
  その魂の行き先を、有・無問わず変更できる者。
  この会場には、その性質を持つ宝具を有するサーヴァントがまだ二人もいる。
  その二人に会いに行くことこそ、プレシアの望むことであり、ファヴの長生きに必要な出会いの一つだ。

  ファヴの切り出しに、それまで静かにファヴを見つめていたルーラーは、まるでようやく電池が入ったかのように、ファヴの方に歩み寄り、声を上げて答えた。

「誰のお家に遊びに行くの?」

桂たま

  ひとつ目の宝具の名は『そして伝説へ』
  主従共に、その存在を『賢者の石』に変えて他者に譲渡出来る効果を持つ宝具。
  もし、賢者の石が破壊され消滅するようなことがあれば、桂たまの魂は永久に回収不可能となる。

「それと、山田なぎさぽん」

  もう一つの宝具の名は『死者行軍八房』。
  死者をそのまま手駒として操ることのできる宝具。
  こちらは、『魂の消滅』に関する宝具としては白よりのグレーだ。
  死者行軍八房はそもそも相手を殺し、魂が抜け殻になった死体を好き勝手操る帝具が宝具として再現されたもの。
  ファヴの知識に当てはまる魔法少女に置き換えるならば、人形遣い『リオネッタ』に近い。
  万が一魂が残ったままになるといけないので「マスターを躯人形にしないように」と釘を差しに行く必要はあるが、今はまだ後回しでいい。

  ちらりと寄ってきたルーラーの方を見る。
  ファヴとしては、プレシアもそうだが、ルーラーもかなり危険なものだ。
  もともとこのnのフィールドはルーラーの宝具。
  ないだろうが、彼女が癇癪を起こせば、ファヴはプレシアにも知られずに葬り去られることになる。
  これからまだまだ、しばらくは一緒に行動するのだ。いたわっておくくらいは必要だろう。
  好感度稼ぎがてらに、ルーラーに声をかける。

「ルーラーにはいろいろ迷惑かけちゃってるぽん。ごめんぽん」

「気にしないで」

  ファヴの上っ面な労りに、ルーラーは、笑顔と呼ぶにはぎこちない顔で答える。
  そして、ファヴを両手で優しく捕まえ、小さな小さな木製の胸に抱きしめながら、愛おしそうに続けた。

「貴方は、私の最初の一つ。だから何をしても平気。何があろうと、私は絶対に貴方を離したりはしないわ、ファヴ」

「へえ、それは嬉しいぽん」

「私も嬉しいの。ずうっと一緒よ。ずうっと、ずうっと」

  見上げれば、ルーラーの表情は先程からまるで変わっていなかった。
  まるでそれ一つしか表情がない、本物の人形のように、ファヴの方を見下ろしていた。
  ファヴはルーラーの素性はさっぱり知らないが、ここまでベタベタされるのは、正直うざったいという感想しかない。
  だから、身をよじってルーラーの束縛から逃れると、また捕まえられないうちに音頭を取った。

「そうと決まれば、桂たまに会いに行くぽん」

「行きましょう」

  ファヴの提案にルーラーは二つ返事で了承する。
  そして、鏡の世界を歩き出した。
  ファヴは、その耳障りな電子音声で一つ、空間にノイズを走らせて。
  前を歩くルーラーの背を追って、nのフィールドを飛び出した。




【???/nのフィールド/一日目 夕方】

【ルーラー(雪華綺晶)@ローゼンメイデン】
[状態]健康
[思考・状況]
基本行動方針:少女たちの魂を集める
1.桂たまの家に遊びに行く
2.それが終われば山田なぎさのもとへ
3.???

[備考]
※ファヴにささやかな執着があります。が、ファヴに伝えてないこともかなりあります。


【人工精霊(ファヴ)@魔法少女育成計画】
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を恙なく進行して聖杯戦争終了後も消されず生き延びる。
1.他の参加者たちの魂は逃がしちゃ駄目ぽん
2.なんにせよ、さっさと聖杯戦争を終わらせて自由の身になるぽん

[備考]
※ルーラー(雪華綺晶)に与えられた人工精霊です。
※掲示板の管理・クローンヤクザの統制などの電子機器機能方面でのプレシアのバックアップを行っています。
 ただし、反乱などができないようにある種のストッパーは課せられています。
※情報端末を通して人物の位置の特定が可能です。他の機能もあるかもしれません。
※大道寺知世が山田なぎさと接触しているとは知りません。
 今後、二人の携帯端末の位置を確認すれば気づくかもしれません。
※フェイト・テスタロッサについては『プレシアが執着している』程度しか知りません。





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最終更新:2016年01月13日 10:24