白坂小梅&バーサーカー ◆lHaWUMA7LM
初めは、それがおかしなことだと思っていなかった。
両親のことが好きであることが当然であることように、その『子』が大事な友達であることも当然なことだった。
そして、大事な人と大事な人が仲良くなれば嬉しいと、当然のように思っていた。
「ね、ねえ……あの子も、連れて行っていい……?」
少女『
白坂小梅』が優しい心を持った子供であるように、小梅の両親もまた優しい人たちだった。
ただ、問題があるとすれば、両親は優しいだけの『ただの』人間だった。
両親は意味を理解できないように、困った顔を作る。
鏡写しのように、小梅も困ったように首を傾けた。
なにせ、小梅には見えているのだ。
小梅の前で、両親へと向かっておどおどと頭を下げる『友達』の姿が。
なのに両親は、無視とも違った雰囲気を出しながら、小梅を見るだけだ。
何を言っているのかと、両親は小梅に問いを投げかける。
何を言っているのかと、小梅は両親に思いながら問いに応えた。
「……………ッ?」
その意味を、両親はたっぷり十分はかかって理解した。
両親は一度顔を紅潮させ、しかし、怒鳴りつけるようなことはしなかった。
大きく息を吸い、大きく息を吐いた。
病院に行こうか、と。
両親は言った。
小梅は、幼心に理解した。
両親は、小梅の大事な友達と友達になれない人なのだ、と。
それから、口数が減った。
この時点では、『病院』という意味は、分からなかった。
ただ、『友達』のことは喋ってはいけないことだということが、分かった。
「……お、おはよう」
それでも、小梅は両親に対して不満を持つことはなかった。
両親のことは変わらず大好きだったし、
両親の教えを守っていた。
人と会えば、挨拶をする。
人に挨拶をすれれば、挨拶を返す。
それは礼儀だ。
そう言った行為をしないことは、ひどく、失礼なことで、人間として恥ずかしいことなのだ。
失礼なことは、自分だけじゃなくて、自分の周りにいる好きな人も恥を晒してしまう。
だから、小梅は挨拶をした。
『みんなには見えない友達』に、毎日、毎日、挨拶をした。
『みんなだって見える友達』にも、毎日、毎日、挨拶をした。
誰としゃべっているの、という問いかけにも、無視をしたら失礼だから、と、隠すことなく応えた。
そんな生活を続けていると、あんなに優しくて逞しかった父親が、見る影もない顔で酒を浴びるように飲んでいた。
そんな生活を続けていると、あんなに穏やかで綺麗だった母親が、見たこともない醜い表情で怒鳴りつけてきた。
そんな生活を続けていると、友達がいっぱい居た土地から離れることになっていた。
両親に連れて行かれた『病院』の意味を理解した時には。
小梅はすでに、自身の異常性も理解していた。
同時に、分からなくなったことも生まれていた。
自分の頭がおかしいのだろうか。
そう思っても、小梅の目にだけ映る存在は確かな現実だった。
小梅にも、他の人に見える友達が出来た。
両親はそれを安堵してくれたし、小梅としてもその友達は、親や世間体のために無理矢理に作ったものではなかった。
小梅が友達になりたいと思い、小梅と友達になりたいと思ってくれた友達だ。
ただ、悲しかった。
友達と友達は、絶対に友達になれない。
皆から見える友達も、皆には見えない友達も、いっぱいいるのに。
友達と友達が触れ合うことがないことが、何よりも哀しかった。
◆
なんの変哲もない、映画館でのこと。
作業をしていた店員は、突然臭いだした腐臭に顔をしかめた。
何か、問題が起こったのだろうか。
フロアの責任者として、奥で行っていた作業を中断して、表に出る。
「あ、あの……そのぉ……」
「ウォッカだ」
すると、そこには一人の異形が立っていた。
異形と向かい合っているアルバイトの女子学生は、可哀想なほどに顔を恐怖に染めている。
異様だった。
ボロにさえ見える黒いカソックコートを纏い、
同じくボロボロの包帯で顔と体を包み、
用心深く顔を隠すようにウエスタンハットを目深に被る。
「……ッ!」
「……お、お客様」
「あぁん……?」
振り返った女子学生バイトの縋るような瞳を前にして、店員は一歩前に出た。
異形の怪人は喉を震わせて、問の続きを促す。
不快の念も、怒りの情もない。
ただ、店員の言葉にゆっくりと応えただけだ。
なのに、店員はもう逃げ出してしまいたいほど恐怖を感じていた。
「ウ、ウォッカは、当店では販売しておらず……」
「…………じゃあ、なんでもいい。
ショーチュでも、サケでも……なんなら、薬用アルコールでもいい」
「な、生ビールでよろしいでしょうか?」
「ビールなら、瓶だ」
店員の後ろで神父姿の男の言葉を聞いていたアルバイトは、脱兎の勢いで瓶ビールを持ってくる。
そして、勢いをそのままに瓶ビールを神父へと差し出した。
蓋を外すことなく、差し出したのだ。
店員は顔を青くしたまま、客前だということを忘れて叫んだ。
「お、おい!王冠、王冠!」
「あっ!」
「別にいい」
カソックコートの怪人はそう言うと、瓶ビールの先端部分を包帯に包まれた指でひねった。
すると、まるでキャップのように瓶ビールは蓋が空いた。
破損したと、言い換えてもいい。
カソックコートの怪人は瓶の先端部分を軽く投げ渡し、片付けておいてくれ、と短く言った。
「ほ、他にご注文は?」
店員がそう尋ねた瞬間だった。
再び、地の底から響くような不気味な音が鳴ると身構えていると。
「ぽ、ポップコーンを……た、単品と、セットで……一つずつ……
ドリンクは……コーラ、で……ポップコーンは、塩……」
ひょっこり、と。
小柄な少女がカウンターに手をついて顔を出した。
150cmにも届いていない、あどけない童女だった。
染めているのか地毛なのかはわからないが、ショートカットの金髪は目を刺すほどに煌かしい。
サイズの合っていない、ブカブカのアウターは袖があまり小さな手を隠している。
片目を長い前髪に隠しているが、露出している片目は人懐っこいネコのように店員を眺める。
「えと、び、ビールの分を含めて……おいくら、ですか?」
少女は、白坂小梅。
そんな名をした少女だった。
ポカン、と呆気に取られる。
「……どうした……ポップコーンもないのか?」
「あっ、は、はい! ただいま!」
呆気にとられていた店員に対して、不意打ちのように低い声が投げかけられる。
店員は普段と同じように手早く動き、商品を用意する。
瓶ビールとポップコーン単品、そして、ポップコーンセットの会計を行う。
意外なことに、財布を取り出したのは小梅だった。
店員はとにかく早く済ませたいと思いながら会計を済まし、小梅は長い袖に隠した手で商品を受け取る。
鼻につく異臭を周囲に撒き散らしながら、酒気を帯びた神父は小梅の後ろを歩いていく。
異様な二人組だった。
共通点と呼べるものが欠片も思い浮かばない。
まさか、あの異臭を放つ不審者としか言えない神父は、あどけない少女の父だとでも言うのだろうか。
まさか、誘拐犯?
それにしては、主導権を握っているのは小梅のように見える。
「……な、なんだったんでしょうか」
「……あの女の子は、やんごとなきお方なのかもしれないな」
「……え、えと、何言ってんですか?」
店員の間抜けなつぶやきに、アルバイトは言葉を返した。
店員は自分がバカなことを言っていると思ったのか、顔を紅潮させ、事務室へと戻っていった。
そんなことは露知らず、小梅は劇場の席につくと、パクリと、小さな口にポップコーンを放り込んだ。
映画が始まるまでの僅かな間、カソックコートの怪人と隣り合って座して待つ。
小梅は流れる宣伝を眺めながら、怪人に語りかけた。
「ば、バーサーカー……さん……」
「あん?」
「ご、ごめんね……わがまま、い、言って……」
小梅の問にカソックコートの怪人、『バーサーカー』のサーヴァントは『構わん』と応えた。
すでに読者諸兄はこの異様なアトモスフィアによって薄々と気づいていただろうが、この怪人はサーヴァントである。
そして、このバーサーカーのサーヴァントの召喚主こそが白坂小梅なのだ。
「文句はなんもねぇよ……好きにやりゃいいさ」
事実、バーサーカーは歩きまわることに否定をしなかった。
率先して戦闘を起こすとなると何かしらの提案あるいは反論をしたかもしれない。
しかし、映画を見るだけならば、否定をするつもりはなかった。
映画自体は騒がしいが、空間は静寂だ。
嫌いな空間ではなかった。
「……しかし」
それでも、不明瞭なことがあった。
小梅は、バーサーカーと隣り合って映画を見ることを求めた。
なぜ、自分が実体化をして席を隣り合って見ることに拘るのか。
別に、霊体化のままでも問題はなかった。
「お前は、俺が鬱陶しくないのか?」
「な、なんで?」
「臭いだろ、まず、第一に……アァ、気持ち悪いってのもあるな」
包帯に包まれた指を折りながら、バーサーカーは問いかける。
バーサーカーの言葉は事実だ。
腐臭とアルコール臭は鼻が曲がるほどだし、現に、周囲の客は顔をしかめている。
それでも不満が飛び込んでないのは、バーサーカーの研ぎ澄まされた刃物のような異常性のためだ。
不満はあるが、表に出さないだけ。
そして、恐怖しているだけだ。
なのに、小梅にはその恐怖がないようだった。
「そ、そんなに、気にならない……かな……他の『みんな』でも、見たことあるし……」
「……『みんな』?」
「『みんな』は、わ、私しか……見えてないの……でも、居るよ……?」
『みんな』という言葉が、バーサーカーには今ひとつ理解できなかった。
不特定多数を差す言葉ながら、その不特定多数の集まりがどのような集合体なのかがわからない。
「ただ……と、時々……」
小梅は、顔を俯かせた。
長い前髪で隠れていた片目だけでなく、露出している目もバーサーカーから見えなくなった。
「ほ、本当は……私の頭が……お、おかしいだけじゃないかな、って……思ったりも……
だから……バーサーカー、さんが……見えてるのも、私だけじゃないかなって……
じ、実際……さっきまでは、見えてなかったし……」
『さっきまで』とは、霊体化していた時のことだろう。
普通は、通常は、ただの人間にはバーサーカーを認識できないのだ。
「だから、一緒に……遊んだら、他の人も……み、見えてるのかな……って……
わ、私だけじゃ……ないのかな……って……
お、おかしいね……私の、頭……」
小梅が笑った。
初めて見せる、弱々しい笑みだった。
バーサーカーはビールを呷り、呟いた。
「おかしかねえよ」
その言葉に小梅を目を丸くする。
そして、バーサーカーは何かを確かめるように手を握り、開いた。
バーサーカー――――ジェノサイドが視線を落とした際に、ふと、ウェスタンハットがずれた。
小梅はバーサーカーの真名を聞いたのはこれが初めてだったことに気づいた。
小梅は顔を上げ、『ジェノサイド』という存在を見た。
緑色に濁った瞳を。
剥ぎ取られた頬を。
露出した腐肉を。
言葉を話す死体を。
自身の頭を優しく撫でてみせた骨の露出した手を。
白坂小梅が目撃した。
同時に、隣にいる小梅が目撃したということは。
「ア、アイエッ……?」
逆隣の他人もまた、目撃した可能性があるということだ。
事実、逆隣の客は顔を蒼白に染め、震える足取りで席を立っていた。
小梅には不思議だった。
確かに、ジェノサイドは通常の人間ではない。
でも、『どこにでも居るような特徴』に過ぎないというのに。
しかし、そんな疑問もどうでも良かった。
そうだ。
屍体が、『生きているはずのない存在』が、確かに『存在』するという『事実』。
その『事実』を、白坂小梅は、生まれて初めて、『他者と共有』したのだ。
「俺は、ジェノサイドだ……俺は……ここにいる……
他の誰でもない、『俺』が、ここにいるんだよ……」
グビリ、と。
ジェノサイドは、喉を鳴らして酒を呷った。
その言葉は、自分に自身を喪失しないための、確認の言葉であり。
その言葉は、他者に自身を知らせるための、威嚇の言葉であり。
その言葉は、小梅に他者と世界を共有していることを教える、慰めの言葉であった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ジェノサイド@ニンジャスレイヤー
【パラメーター】
筋力:A- 耐久:C- 敏捷:D- 魔力:B 幸運:E 宝具:C++
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
狂化:D-
スキル『生ける屍』の影響で、痛覚を完全に遮断しており、痛覚による干渉を無視する。
ステータスを向上させない代わりに、理性を多く残している。
が、ジェノサイドはズンビー・ニンジャであり、常にニューロンが腐敗していっているために前後の記憶が定かでないことが多々ある。
理性を壊すスキル『狂化』すらも、ニューロン腐食の影響でスキルランクを大きく低下している。
【保有スキル】
生ける屍:B+
ジェノサイドは、屍体にニンジャソウルを植え付けられることで蘇ったズンビーニンジャである。
生ける屍であるため、あらゆる感覚が鈍く、痛覚に至っては完全に遮断されている。
サーヴァントという存在を喰らわなければ、例え魔力が十分に供給されていようとも、ジェノサイドは消滅する。
また、消滅まで行かずとも、長期間サーヴァントを捕食しなければ、睡眠にも似た突発的な意識停止状態に陥る。
自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
ジェノサイドは他サーヴァントを捕食することで魔力と肉体を回復させる。
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
すなわち、カラテである。
【宝具】
『蒼ざめた死獣(ゼツメツ・ニンジャ)』
ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
『第四の封印を解いた時、第四の生き物が「来たれ」と言うのを聞いた。
そこで見ていると、見よ、青白い馬が出てきた。
そして、それに乗っている者の名は「死」と云い、それに黄泉(ゲヘナ)が従っていた。』
第四の災厄のニンジャであり、ジェノサイドに憑依したニンジャソウルそのもの。
このニンジャソウルが憑依したことの影響で、死していた体はズンビーとして蘇り、ジェノサイドは超常の力を得た。
ジェノサイドの力の源であり、この宝具が失われることはジェノサイドの真の死を意味する、常時展開型の宝具。
【weapon】
鎖付きバズソー(丸鋸)
【人物背景】
屍体にニンジャソウルを憑依することで誕生する、超常の力を宿した生きる屍、『ズンビーニンジャ』である。
ズンビー化によるニューロンの腐敗によって、ジェノサイド自身も自身の記憶を失っているため、謎に包まれている。
醜く腐蝕した身体を隠すためにボロボロのカソックコートを纏い、腐肉の覗く顔を隠すためにウエスタン帽を被ってsいる。
かなり大柄な体であり、室内で立つと大凡の家屋では天井に届くほどである。
ズンビーとしての腐臭を隠すために酒を常に飲んでおり、また、頬が腐敗して破けているために酒を床に零すことが多々ある。
【サーヴァントとしての願い】
生ける屍体である自身に安息を。
【基本戦術、方針、運用法】
瞬発力はともかくとして、敏捷にすぐれない局所的広範囲での戦闘を得意とする。
とにかくサーヴァントを捕食しなければ、何もせずとも消滅してしまうという最悪の事態を回避するのが最優先である。
【マスター】
白坂小梅@アイドルマスター シンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
【weapon】
【能力・技能】
いわゆる、『見える』人。
霊体化しているサーヴァントが見えるかどうかは不明。
【人物背景】
ホラー好きで霊感が強く、普通の人には見えないものが色々見えるらしい。
特に『あの子』と呼んでいる友達(?)がおり、仕事に度々ついて(憑いて?)来ている。
ホラー・スプラッタ映画鑑賞、心霊スポット巡りなどが趣味のホラー好き。
見た目は根暗そうで話し口調もたどたどしい。
が、台詞の端々からは仕事に対する前向きな姿勢が見て取れ、歌が得意であるらしい発言もある。
また勉強については以前はあまりやる気がなかったようだが、特訓後に「やっぱり勉強も……頑張ろうと思う……」とプロデューサーへ教えを請いに来る。
一方で13歳にして金髪(染めているのか生まれつきなのかは不明)にピアスという外見。
心の中で「(爆発すれば…いいのに…)」と考えていたり(何が?)、
LIVEの際には「スプラッターショーの…始まり?」「悪夢…見せて、あげる」と煽ったり、過激な一面も。
【方針】
不明
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登場キャラ |
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| Happy Birthday! |
白坂小梅&バーサーカー(クロメ) |
000:前夜祭 |
最終更新:2015年05月30日 22:13