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――――――知性は特権ではなく、授かり物だ。
――――――人類の為に使わなければならない。
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◆◆◆◆
衆愚の街、ゴッサムシティの夜。
そこには常に変わらぬ空気が流れ続ける。
犯罪と悪徳。栄華と貧困。
混沌の渦巻く街は歪んだ形相を見せながら、普段と変わることなく回り続ける。
日々を這いつくばるように生きる溝のような貧民達が住まうスラム。
貧相な見た目をした老若男女が気力の無い瞳で生活を送っている。
生産的な経済活動は殆ど行われず、貧しさ故の犯罪も横行する悪徳の区画。
恵まれている者は皆思うだろう。
まるで掃き溜めか、豚小屋のようだと。
そんなスラム街の外れに位置する川辺に存在するのは、大きな下水口。
最早貧困すら寄り付かない、辺境の土地と言うべき場所。
下水道に住まうのはそれこそ薄汚いドブネズミくらいのものだ。
「オズコープ社の支援も、研究の為の資金調達も、最早必要無い」
普通ならば人の立ち入るような場所ではない。
しかし、その声は確かに下水道の内部で反響していた。
二つの人影が下水道に存在していたのだ。
ぴちゃり、ぴちゃりと水音混じりの足音が響く。
下水道をゆっくりと歩いているのはサングラスを掛けた科学者風の男だ。
年齢は中年程度、渋い色合いのロングコートを着込んでいる。
その風貌は決して冴えたものではないが、地を這う浮浪者とは余りにも身に纏う雰囲気が違いすぎる。
「奇跡の願望器さえあれば、私の実験は完遂するのだからな」
背中から伸びる『異形』が、男の発した言葉に呼応するかの如く動いた。
金属と機械の音が仄暗い下水道の中で静かに反響を繰り返す。
機械で作られた蛇とも、金属で模した蛸の脚とも捉えられる『異形』は男の背中と直結していた。
男の脊椎と直結し、男の意思で自在に動く。
言うなれば機械仕掛けの触手。
四肢に加えて四本の触手―――――計八本の手足。
人の身でありながら異形の身を持つ。
その姿を目の当たりにした人々は、彼をこう呼ぶだろう。
『蛸の科学者“ドクター・オクトパス”』と。
「無限のエネルギーを生み出す核融合炉……いや、それすらも凌駕する絶対的な成果を出せるだろう」
拳を握りしめ、どこか興奮気味の声色で呟く。
彼の触手は『力』を行使する為の武器ではない。
全ては己の研究を完遂する為の道具でしかないのだ。
彼は核融合炉による無限のエネルギーを作り出すべく、危険物質を取り扱う為の機械を開発した。
それがこの四本の触手、いわば金属製アーム。
何かに取り憑かれているかのようにぶつぶつとオクトパスは言葉を紡ぐ。
そんな彼の意思に賛同するように、四本のアームは蠢く。
否、寧ろ。
聖杯を手に取るという意思に賛同させられているのは―――――――オクトパスの方だろう。
「それがおたくの望みってワケか?」
オクトパスの言葉に耳を傾けていた男が、声を掛ける。
背中にドラム缶のような荷物を背負った屈強な体格の人物だ。
男は何とも言えぬ表情でオクトパスを見ていた。
「そうだ。それが私の夢だ」
「成る程ね。それと、もう一つ聞きたいことがあるんだけど―――」
自らのサーヴァントの問いかけに対し、オクトパスはそう断言する。
長年研究を重ね、しかし失敗に終わった実験の完遂。
無限のエネルギーの創造。
それこそが彼の追い求めている夢であった。
「本当に、あんたの“本心”なんだよな」
サーヴァントから、そんな疑問が投げ掛けられた。
まるでオクトパスの言葉に何か不信感を抱くかのような問い掛けだった。
先程までどこか高揚した様子だったオクトパスの口が止まる。
―――これが本心なのか?
当たり前だろう。
私は実験を完遂するためにこの戦いに勝ち残ることを望んだのだから。
研究を水泡に返すことこそが罪なのだ。
それこそ奇跡に頼ってでも、私は完成させなければならない。
核融合炉をも超える、究極のエネルギーの創造を成功させなければならないのだ。
そう、数多の屍を踏みにじってでも。
―――何故、自分はこうまでして執着しているのか?
「そうだ」
オクトパスが返答を口にするまで、僅かな間があった。
まるで一瞬何かの迷いがあったかのように。
彼の態度をサーヴァントは見抜いていた。
しかし今はまだそのことに触れず、ゆっくりと口を開き始めた。
「そうかい……ま、どちらにせよ乗りかかった船だ。
サーヴァントとして召還された以上、俺はドクターのために戦うよ」
己のサーヴァントの言葉に、マスターは何も答えず。
そのまま二人の男は静寂に支配される下水道を進み続ける。
ライダーのサーヴァント―――伊達明。
彼は願いを持たない。
ただ呼ばれたから、それに応じて馳せ参じた。
戦いに来た動機など、その程度のものだった。
伊達は己のマスターにある男の姿を重ねていた。
自分はこういう『科学者』というものに縁があるのだろうか。
その男は己の殻に閉じ籠り、己の為に研究を重ねていた孤独な人間だった。
世界の終末を望む哀しい男だった。
愛想は無かったし、心を開いてくれることも無かった。
最後は暴走する彼を止められず、袖を分かったのだ。
ドクター・オクトパスは彼ほど虚無的ではない。
終末のような無ではなく、有を生み出すべく戦いに臨んでいる。
そんな彼の願いを否定するつもりはない。
サーヴァントとして呼ばれた以上、彼のために戦うつもりである。
しかし。
何か引っ掛かるものがあった。
まるで何かに取り憑かれているような執念。
妄執とも取れる強迫観念じみた理想。
そんな彼の様子に奇妙な疑念を抱いていたのだ。
あれは本当に、『彼』なのだろうか。
(なあ、ドクター。あんたの本心ってのは――――)
最後まで自分の殻に閉じ籠り続けた一人の科学者の姿を想起し、心中で静かに呟く。
願いを叶えるのは結構だ。
だが己のマスターである以上、破滅の道は進んでほしくない。
お人好しのサーヴァントは、マスターの身を静かに案じ続けていた。
【クラス】
ライダー
【真名】
伊達 明@仮面ライダーオーズ
【属性】
秩序・中庸
【ステータス】
筋力D 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具D
筋力B 耐久B 敏捷C+ 魔力E 幸運C 宝具C
【クラス別スキル】
騎乗:D+
近代以降の乗り物ならばある程度乗りこなせる。
特にバイクの操縦に長ける。
対魔力:-(D)
仮面ライダーバース変身時のみDランク相当の対魔力が発動。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
心眼(真):C
卓越した戦闘センスによる洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
医術:C
医者としての技術を備える。
生前は世界各地で活動を行う医療チームに所属していた。
観察眼:B
物事の本質を捉える才。
特に他者の心の機敏を見抜くことを得意とする。
自己保存:C-
通常の自己保存スキルとは異なり、自身の生存という欲望の為に戦った在り方の具現。
自らが危機に瀕した際、全パラメータに一時的なプラス補正が掛かる。
ただしマスターの危機においては機能しない。
【宝具】
『目覚める欲望、誕生の時(バース・ドライバー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ライダーが装着する変身ベルト。
後述のセルメダルをスロットへ投入し、レバーを回すことで『仮面ライダーバース』に変身する。
バース変身時には全パラメータが強化される他、セルメダルを投入することで後述の宝具『バース・CLAWs』を召還可能。
『出でし武装、欲望の戦士(バース・クロウズ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
セルメダルのパワーによって運用されるバース専用の武装「バース・CLAWs」。
仮面ライダーバース変身時、バースドライバーのスロットにメダルを投入することで召還出来る。
武装の種類は以下の通り。
胸部に装備されるキャノン砲。
弾丸状のエネルギーを射出する他、出力を調整することで高火力の砲撃を行える。
両足に装備されるキャタピラ。
高速滑走を行うことができ、悪路や壁面も難なく移動可能。
キャタピラを纏った蹴りで対象にダメージを与えることも出来る。
右手に装備されるドリル状の強力な近接武器。
右腕に装備されるワイヤーフック。
ワイヤーは伸縮自在であり、中~遠距離にいる敵の拘束や引き寄せ等を主な用途とする。
左腕に装備されるショベル状の武装。
高い出力を誇る近接武器であり、敵の拘束や投擲、打撃に用いられる。
背中に装備される飛行ブースター。
高速飛行を行える他、翼による斬撃も行える。
『祝福されし欲望、覚醒の日(バース・デイ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
CLAWsの全武装を装備したバースの最強形態。
発動中は筋力・耐久・敏捷にプラス補正が掛かり、更にあらゆる攻撃判定が大きく強化される。
重武装による攻撃力・機動力を兼ね備えた強力な形態だが、維持には多大な魔力を必要とする。
【Weapon】
『セルメダル』
仮面ライダーバースとして戦う為に必要不可欠な銀色のメダル。
魔力による生成が可能。
『ライドベンダー』
セルメダルを動力源とするバイク。
本来はカンドロイドを提供する自販機でもあるが、聖杯戦争においてはバイク形態のみが使用可能。
『バースバスター』
セルメダルを装填して使用する銃器。
メダル状のエネルギーを弾丸として射出する。
セルメダルのポッドを銃の上部に装填することで強化砲撃『セルバースト』を発射できる。
【人物背景】
鴻上ファウンデーションに雇われた男性。
豪快で大雑把な性格だが、鋭い観察眼と冷静な判断力も併せ持つ。
真木博士によって開発されたバースドライバーを用い、仮面ライダーバースに変身して戦う。
本職は医師であり、世界中で活動する医療チームに所属していた。
【サーヴァントとしての願い】
特になし。
呼ばれたのでそれに応えたのみ。
【方針】
ドクターの方針に従う。
その一方で彼の本心を知りたい。
【基本戦術】
戦闘においては仮面ライダーバースに変身することが必須。
バース変身時は豊富な武装の恩恵で遠近共にそつなく戦える。
ライドベンダーやキャタピラレッグ、カッターウィングによる機動力も備えている。
様々な状況に対応出来るオールラウンダーだが、その分宝具込みでの燃費は決して軽くない。
格闘戦のみならば然程魔力は喰わないが、能力を最大限活かす為にはやはりCLAWs等の使用が必要不可欠。
そのため無闇なセルメダル消費を避けつつ、状況に応じた的確な武装運用が必要とされる。
なお『CLAWs・サソリ』はサーヴァントとしての制限により使用できず。
【マスター】
ドクター・オクトパス(オットー・オクタビアス)@スパイダーマン2(実写版)
【マスターとしての願い】
核融合炉さえも凌駕する完璧な無限エネルギーを作り出す。
【weapon】
『金属アーム』
四本の伸縮自在の金属アーム。実験中の事故によって外すことが出来なくなっている。
オクタビアスの神経・脊椎と連結しており、彼の意思で自在に操ることが可能。
内部にはアームを制御する人工知能が搭載されているが、前述の事故で制御チップが破損。
暴走した人工知能はオクタビアスの自我を乗っ取り、彼を凶悪なヴィラン「ドクター・オクトパス」へと変貌させた。
【能力・技能】
科学者としての天才的な頭脳。核エネルギーの研究を行っていた。
本人は常人に過ぎないが、驚異的な力と高度な人工知能を持つ金属アームで戦闘をこなせる。
主に四本のアームを駆使した立体機動、アームのパワーを活かした打撃攻撃や拘束、投擲などを行う。
【人物背景】
核融合炉によるエネルギーの研究を行っていた天才物理学者。
元々は善良な人物で、スパイダーマンの正体であるピーター・パーカーとも意気投合していた。
核融合エネルギーを取り扱う為の道具として4本の金属アームを使用している。
しかし公開実験の際に核融合炉の暴走による爆発事故が発生。
妻を喪い、自らも名声を失うばかりか一生アームを取り外せない身体になってしまう。
更に事故によってアームの人工知能が暴走、思考をアームに支配されてしまう。
オクタビアスは狂気に取り憑かれ、実験再開の為に犯罪を犯すヴィラン「ドクター・オクトパス」と化した。
【方針】
聖杯を勝ち取る。その為の手段は選ばない。
【令呪】
原子核とそれを囲う四本の触手を模した形状。
消費は触手左側二本(一画目)→触手右側二本(二画目)→原子核(三画目)。
最終更新:2015年04月28日 10:28