少年は誓った。夢半ばで倒れた者達の無念を全て背負う、と。
少年は最強を目指す者。
しかしそれは武に敗れ狂気に堕ち、ただひたすらに魂を狩る鬼――鬼神ではなく。
武の道を進んだ先にある、武神。
少年は誓った。生者を殺す鬼の道ではなく、死者を生かす武の道を進む、と。
少年は武神を目指す者。
◆ ◆ ◆
夜のゴッサムシティの空を一人の少年が駆ける。
ビルからビルへ、屋上から跳んでは軽々と次のビルへ乗り移り、傍から見れば到底人の所業とは思えない動きであった。
少年が下を見下ろすと、ゴッサムシティの都会から発せられる光が夜空を照らしており、まだ昼だと錯覚しそうになる。
下の車道を行き交う車が光りの点となって少年の瞳に移った。
高みから見たゴッサムの夜景には木々が生い茂る自然とはまた違う、アメリカの都会ならではの荘厳さがあった。
少年は周囲の中でも一際高いビルの中腹へ乗り移り、そこから頂上まで駆け上る。
そして眼下に栄えるゴッサムを一望して少年は、
「ひゃっはぁああ!!」
と高らかに叫んだ。
「へへ、どいつもこいつも豆粒みてェだ」
少年は自分が大物だと言わんばかりにゴッサムを見下ろす。
上空であるからか、その身体には風が吹き付け、忍装束めいた服装と星形に尖った髪型が揺れる。
彼の名はブラック☆スター。冗談抜きで神を超えることを目指す武人。
しかしそのための努力は惜しんでおらず、先ほどの人間離れした動きも努力の賜物である。
「今、俺様はこの街の誰よりも上にいる。俺様がBIGな証だな。どんなヤツだろうと片っ端からぶっとばしてやる」
「――はっはっはっ!言うではないか、坊主!何者にも恐れずに挑む者こそ余のマスターに相応しい!」
ブラック☆スターの背後に、轟音と共に二頭の気性の荒そうな牛が牽引する戦車が降り立つ。
それを操る者こそがブラック☆スターのサーヴァント、ライダー。
真名をアレキサンダー大王、もといイスカンダルといった。
「当たり前だ!俺は神を超える男だからな!」
そう言ってブラック☆スターは「ひゃっはっはっは☆」と笑う。
「うむ!今一度ライダーのクラスを得て現界したが、此度はゴッサムシティなる都市か。ここはあの難敵クリントンがいる国。そして何よりも他の英雄がこれでもかと集うと言う!そう思うと一層、胸が高鳴る!」
ライダーは戦車から降り、ブラック☆スターの隣に立つ。
ブラック☆スターに比べて遥かに身長が高いライダーから見るゴッサムシティはもう少し広く見えた。
ライダーは冬木の第四次聖杯戦争にて召喚されたことがある。
その戦場で現代を満喫し、違う時代の英雄と決闘し、ウェイバーという新たな盟友もでき、力の限り駆け抜けた。
冬木での聖杯戦争ではサーヴァントは7騎までと決まっているが、
この電脳空間での聖杯戦争は召喚されるサーヴァントの数に限りがないという。
そのこともあって、ライダーは今まで以上に他の英雄との邂逅が待ち遠しかった。
「ああ。やるからには俺達が一番目立たねぇとな。例えサーヴァントだろうが真っ向から挑んでやる。…椿がいなくてもな」
いつも傍にいるパートナー・中務椿がいないことに少し寂しく思いながらも、ブラック☆スターは自らを奮い立たせる。
ブラック☆スターは死神武器専門学校――通称・死武専の武器職人だ。
武器に変身することができる人間・魔武器の中務椿とペアを組み、お互いに信頼し合っていた。
ブラック☆スターがここに来た発端は、死武専のある任務中のことだ。
どうやら派遣先の遺跡に魔道具があるらしく、それの回収を目的とした任務だった。
椿と共に目的の物を探している途中、ブラック☆スターはそれを見つけた。
シャブティという変な人形。
目的とされる魔道具かと思いブラック☆スターがシャブティに触れた途端。
ブラック☆スターの身体が消え、武器化したままの椿が取り残された。
その瞬間から、ブラック☆スターはゴッサムシティへ飛ばされたのだ。
本来、武器職人はパートナーの魔武器がいないと大きく弱体化する。
ブラック☆スターは持ち前の戦闘能力である程度は戦えるとはいえ、武器――椿がいないとなるとやはり弱体化は免れない。
正直、ブラック☆スターが勝つことは難しいであろう。
…それでも、ブラック☆スターは進まなければならない。
「……ライダー。俺は聖杯なんて別に欲しくない」
ブラック☆スターは、左手で肩を押さえながら言う。
そこには星形の刺青と、その上に痛々しいまでに刻まれた傷痕があった。
ライダーはゴッサムシティの夜景を見ながら静かに聞いていた。
◆ ◆ ◆
死武専と敵対する組織・アラクノフォビアの本拠地のババ・ヤガー城攻略作戦にて、
ブラック☆スターはある男と死闘を繰り広げた。
その男の名はミフネ。
99個分の強靭な魂を持ち、ブラック☆スターは一度惨敗を喫している。
結果からいえば、辛くもブラック☆スターの勝利に終わった。
全てを捨て、互いに死を覚悟上での壮絶な武人の決闘であった。
ブラック☆スターの肩にある傷はその時につけられたものである。
そして、彼はその傷にかけて改めて誓ったのだ。
強さを求めて散っていった者達の無念を背負い、「武神」になると。
「俺は自分の力で武神にならないといけないんだ。聖杯なんてモンに頼ったら散っていった奴らを侮辱することになる」
「つまり、自分の力で夢を叶えることにこそ価値があると?」
ブラック☆スターはライダーの問いかけに頷く。
それはライダーも同じだ。
ライダーの聖杯にかける願いは、受肉。
この世界に再び一つの命として生まれ変わり、「自分の力で」世界を制服するためだ。
この少年もまた、ライダーのようにその身で己の限界を極め、神を超えようとしているのだろう。
「願いがない代わりに…俺は見てみたいんだ。ここって色んな世界に繋がってんだろ?強い奴だっているはずだ。そいつらと戦ってみたい」
「……ふははははっ!気に入った!」
ライダーはブラック☆スターのツンツンと尖った頭を押し付けるようにして撫でてから戦車に再び乗り込む。
ブラック☆スターから「撫でんじゃねェ!」と抗議の声が上がるが、聞いていない。
「そうとなったら出陣だ、坊主!貴様の望む好敵手を探しに行こうぞ!」
手綱を握り、ブラック☆スターを誘う。
ブラック☆スターはそれに応じて会心の微笑を浮かべながら「応ッ!」と返し、ライダーに続いて戦車に乗るのだった。
【クラス】
ライダー
【真名】
イスカンダル@Fate/Zero
【パラメータ】
筋力B 耐久A 敏捷C 魔力D 幸運B 宝具A++
【属性】
中立・善
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。
ただし、竜種は該当しない。
【保有スキル】
神性:C
明確な証拠こそないものの、多くの伝承によって最高神ゼウスの息子であると伝えられている。
カリスマ:A
大軍団を指揮する天性の才能。
Aランクはおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望といえる。
軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
【宝具】
『遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:100人
「神威の車輪」による蹂躙走法。『神威の車輪』完全解放形態からの突進。雷気を迸らせる神牛の蹄と車輪による二重の攻撃に加え、雷神ゼウスの顕現である雷撃効果が付与されている。
猛る神牛の嘶きは通常使用時の比ではなく、静止状態から100mの距離を瞬時に詰める加速力を持つ。
・神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)
ゴルディアス王がオリュンポスの主神ゼウスに捧げた供物であったものをイスカンダルが自身の佩刀「キュプリオトの剣」で繋いでいる紐を断ち切って自らのものとしたというエピソードの具現。
彼がライダーたる所以である、二頭の飛蹄雷牛(ゴッド・ブル)が牽引する戦車(チャリオット)。
地面だけでなく、空までも自らの領域として駆け抜けることが可能。神牛の踏みしめた跡にはどこであれ雷が迸る。
キュプリオトの剣を振るうと空間が裂け、どこであろうと自在に召喚できる。
戦車は各部のパーツを個別に縮小・収納が可能で、走破する地形に合わせた最適な形態を取ることが出来る。
御者台には防護力場が張られており、少なくとも血飛沫程度なら寄せ付けない。
地上で通常使用した場合の最大速度は約時速400Kmほど。
真名解放無しでも対軍級の威力・範囲を持つ。
下記の『王の軍勢』と同時使用することもできる。
『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
召喚の固有結界。ライダーの切り札。
展開されるのは、晴れ渡る蒼穹に熱風吹き抜ける広大な荒野と大砂漠。
障害となるものが何もない地形に敵を引きずりこみ、彼が生前率いた近衛兵団を独立サーヴァントとして連続召喚して、数万の軍勢で蹂躙する。
彼自身は魔術師ではないが、彼の仲間たち全員が心象風景を共有し、全員で術を維持するため固有結界の展開が可能となっている。
要は、生前の軍団を丸ごと召喚・復活させる固有結界。
時空すら越える臣下との絆が宝具にまで昇華された、彼の王道の象徴。
征服王イスカンダルの持つカリスマ性を最大限に具現化したものであり、召喚される中にはライダー本人よりも武力に優れた者や、
一国の王としてBランク相当のカリスマを具える者も複数いるらしい。
これは彼が生前、個人として武勲を立てた英雄ではなく、軍勢を指揮して戦った英雄であることに由来する。
召喚された臣下はそれぞれ英霊として座にあるサーヴァントであり、全員がE-ランクの「単独行動」スキルを持つためマスター不在でも戦闘可能。
なお、聖杯戦争の
ルールに従って召喚されているわけではないのでクラスは持っていない。
また、ライダーの能力の限界として、臣下が自身の伝説で有しているはずの宝具までは具現化させることはできない。
一度発動してしまえば近衛兵団はライダー曰く「向こうから押しかけてくる」ほか結界の維持は彼ら全員の魔力を使って行われるため、
展開中の魔力消費は少なく済む。
ただし、最初に彼が『英霊の座』にいる軍勢に一斉号令をかける必要があるため、維持は簡単でも展開そのものに多大な魔力を喰う。
また、軍勢の総数が減るに従って負担が激増していき、過半数を失えば強制的に結界は崩壊する。
本来、世界からの抑止力があるため固有結界の中にしか軍勢は召喚・展開できないが、
一騎程度であれば結界外での召喚や派遣も可能。
【weapon】
【人物背景】
マケドニアの覇者、征服王イスカンダル(日本で一般に言うところのアレキサンダー大王、またはアレクサンドロス3世)。
大柄な見た目通りの豪放磊落を地で行く人物。
他を顧みるということを全くしない暴君的性質を持つが、その欲望が結果的に人々を幸せにする奔放な王。
征服先で略奪を行ってきた出自の為か盗癖がある。
世界征服を望みとするが、他者から与えられるものではなく、あくまでも自分で成し遂げることを持論とする。
【サーヴァントとしての願い】
受肉し、世界を征服する。
【マスター】
ブラック☆スター@ソウルイーター
【マスターとしての願い】
ゴッサムシティにどんな奴が来ているのかを見てみたい
聖杯に興味はなく、武神になるという夢は自分で叶える
【weapon】
武器(中務椿)はいないので特になし
【能力・技能】
体術はもちろん、パートナーの椿と共に戦ってきたことで様々な暗器と刀の扱いにも優れている。
死武専の職員からは「死武専最強」のお墨付きを貰っているほど。
暗殺者として気配を殺すことができる。
ただし、性格上隠密行動をするのは難しく、今まで暗殺に成功したことがない。
ブラック☆スターの魂の波長を敵へ直に打ち込む。
鎧などの硬い遮蔽物を無視して直接体内にダメージを与えることができる。
耐久無視攻撃。
【参戦時期】
少なくともミフネ戦(3回目)以降
【人物背景】
死武専に所属する武器職人。
殺し屋集団・星一族の生き残りであり、赤ん坊であった頃に死神様によって保護され、死武専に入った。
唯我独尊な目立ちたがり屋で、どこまでも明るくポジティブであり、細かいことは気にしない。
暗殺術の使い手であり、忍者的な要素も強い暗器職人であるにもかかわらず、我が強く何にでも一番になりたがるうえ、とにかく目立ちたがる。
そのせいで、任務よりも目立つことに気を取られてしまい、当初はつねに赤点の落第候補生であった。
短気で喧嘩っ早くもあり、何かにつけて勝負を持ちかける。
そして絶対勝とうとするうえ、負けを認めようとしない意固地な一面もある。
将来は神になることが目標であり、そのために日夜、我が道を突き進んでいる。
そのため、自身の目標のための努力は惜しまず、とことんまで追求する努力家でもある。
また、情に厚く、絆や約束を大切にする人情家でもあり、仲間のために命を賭けることを惜しまない気風の良さもある。
【方針】
他の主従、特に自分より目立っている者へ勝負を吹っ掛けにいく。
最終更新:2015年05月18日 03:53