Todarodes pacificus
ここにいてくれて、良かった
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ここにいてくれて、良かった
●●「今年は3年に1度のビッグイベント、
1泊2日のパーティ&スキー合宿!
すっごい楽しみ!
●●「こんな日なんだから、
午前中の授業なくてもいいのに。
●●「やっと、授業終了!
……ん?
●●(机の中にメモが……
なんだろう。)
メモ「『俺、合宿パスするから。
クリスマスは書き入れ時なんだ。
2日も店、休めない。
メモ「楽しんで来いよ。
じゃあな!
T.S』
●●(T.Sって……
佐伯くんだ。)
●●(そっか、
佐伯くん、参加しないんだ……。
お店があるんじゃ仕方ないよね。)
1泊2日のパーティ&スキー合宿!
すっごい楽しみ!
●●「こんな日なんだから、
午前中の授業なくてもいいのに。
●●「やっと、授業終了!
……ん?
●●(机の中にメモが……
なんだろう。)
メモ「『俺、合宿パスするから。
クリスマスは書き入れ時なんだ。
2日も店、休めない。
メモ「楽しんで来いよ。
じゃあな!
T.S』
●●(T.Sって……
佐伯くんだ。)
●●(そっか、
佐伯くん、参加しないんだ……。
お店があるんじゃ仕方ないよね。)
●●(パーティー盛り上がってるな!
やっぱり佐伯くんも
来ればよかったのに。)
●●(きっと今頃、
お店の中を飛び回ってるんだろうな。
……ちょっと、電話してみよう!)
●●「もしもし?
佐伯くん?
メリークリスマス!
佐伯「ん?
ああ、おまえか。
●●「どう?
お店の方は大繁盛?
佐伯「え?
いや、あ……うん……。
●●「……どうかした?
なんか、おかしいよ?
佐伯「どうもしないって。
こっちのことはいいから。
……じゃあ。
●●「あ、佐伯くん!
●●(何かあったのかも。
佐伯くん、強がりだから……
今ならまだ電車もあるし……よし!)
●●「先生、すみません!
わたし、急用ができて——
・
・
・
●●(フゥ……
間に合った!
まだお店開いてるみたい!)
●●(……あれ?
でも、なんか静かだな……。)
佐伯「だって、じいちゃんだって、
あんなにがんばってたじゃないか!
そんなの納得できないよ!
●●(佐伯くん!?)
マスター「とにかく、もう決めたことだ。
この店は今夜でおしまい。
あきらめなさい。
●●(お店を……そんな……。)
やっぱり佐伯くんも
来ればよかったのに。)
●●(きっと今頃、
お店の中を飛び回ってるんだろうな。
……ちょっと、電話してみよう!)
●●「もしもし?
佐伯くん?
メリークリスマス!
佐伯「ん?
ああ、おまえか。
●●「どう?
お店の方は大繁盛?
佐伯「え?
いや、あ……うん……。
●●「……どうかした?
なんか、おかしいよ?
佐伯「どうもしないって。
こっちのことはいいから。
……じゃあ。
●●「あ、佐伯くん!
●●(何かあったのかも。
佐伯くん、強がりだから……
今ならまだ電車もあるし……よし!)
●●「先生、すみません!
わたし、急用ができて——
・
・
・
●●(フゥ……
間に合った!
まだお店開いてるみたい!)
●●(……あれ?
でも、なんか静かだな……。)
佐伯「だって、じいちゃんだって、
あんなにがんばってたじゃないか!
そんなの納得できないよ!
●●(佐伯くん!?)
マスター「とにかく、もう決めたことだ。
この店は今夜でおしまい。
あきらめなさい。
●●(お店を……そんな……。)
佐伯「!!
●●「あ、佐伯くん!!
マスター「やあ。
どうしたんですか、
こんな夜更けに……
●●「佐伯くんに電話したら、
ちょっと様子がおかしかったから、
それで……
マスター「ありがとう。
瑛の奴を心配して来てくれたんだね。
●●「お店、閉めちゃうんですか?
マスター「聞いていたんですか。
……そう、今日で珊瑚礁は閉店です。
●●「でも急に、どうして……
マスター「年寄りのわがままです……。
これまで一生懸命店を助けてくれた、
瑛にもあなたにもすまないと思うけど。
●●「でも、それじゃ佐伯くんは
納得できないんじゃ……。
マスター「ああ、そうだね……
こんなこと頼めた義理じゃないけど、
ちょっと、瑛を見てやってくれないか。
マスター「甘え方を知らないだけで、本当は、
そんなに強い奴じゃないんです。
店は、僕が閉めておくから。
●●「はい。
・
・
・
●●「佐伯くん。
佐伯「…………。
●●「ねぇ、佐伯くん。
佐伯「……なに?
●●「大丈夫?
何かできることがあったら——
佐伯「べつに、平気。
●●「でも、
あんまり平気には見えないけど……。
佐伯「じゃあ……膝。
●●「膝?
佐伯「膝、貸して。
・
・
・
佐伯「いい気持ち。
●●「……うん。
良かった。
佐伯「俺、わかってたよ。
気づかない振りしてたんだ。
●●「……?
佐伯「口に出しては言わないけど、
じいさん、俺がいっぱいいっぱいなの
見かねてたんだ。それで……。
●●(そうだったんだ……。)
佐伯「なあ……
俺、できること全部、やれたのかな?
●●「佐伯くんは、がんばったよ。
佐伯「そうか。
……もうちょっと。
●●「ん?
佐伯「もうちょっと、このまま。
少し……疲れたんだ。
●●「いいよ。
ゆっくり休んで。
佐伯「うん……メリークリスマス。
おまえがここに居てくれて、よかった。
●●(メリークリスマス。
佐伯くん……。)
・
・
・
君に見せたかった景色へ続く
●●「あ、佐伯くん!!
マスター「やあ。
どうしたんですか、
こんな夜更けに……
●●「佐伯くんに電話したら、
ちょっと様子がおかしかったから、
それで……
マスター「ありがとう。
瑛の奴を心配して来てくれたんだね。
●●「お店、閉めちゃうんですか?
マスター「聞いていたんですか。
……そう、今日で珊瑚礁は閉店です。
●●「でも急に、どうして……
マスター「年寄りのわがままです……。
これまで一生懸命店を助けてくれた、
瑛にもあなたにもすまないと思うけど。
●●「でも、それじゃ佐伯くんは
納得できないんじゃ……。
マスター「ああ、そうだね……
こんなこと頼めた義理じゃないけど、
ちょっと、瑛を見てやってくれないか。
マスター「甘え方を知らないだけで、本当は、
そんなに強い奴じゃないんです。
店は、僕が閉めておくから。
●●「はい。
・
・
・
●●「佐伯くん。
佐伯「…………。
●●「ねぇ、佐伯くん。
佐伯「……なに?
●●「大丈夫?
何かできることがあったら——
佐伯「べつに、平気。
●●「でも、
あんまり平気には見えないけど……。
佐伯「じゃあ……膝。
●●「膝?
佐伯「膝、貸して。
・
・
・
佐伯「いい気持ち。
●●「……うん。
良かった。
佐伯「俺、わかってたよ。
気づかない振りしてたんだ。
●●「……?
佐伯「口に出しては言わないけど、
じいさん、俺がいっぱいいっぱいなの
見かねてたんだ。それで……。
●●(そうだったんだ……。)
佐伯「なあ……
俺、できること全部、やれたのかな?
●●「佐伯くんは、がんばったよ。
佐伯「そうか。
……もうちょっと。
●●「ん?
佐伯「もうちょっと、このまま。
少し……疲れたんだ。
●●「いいよ。
ゆっくり休んで。
佐伯「うん……メリークリスマス。
おまえがここに居てくれて、よかった。
●●(メリークリスマス。
佐伯くん……。)
・
・
・
君に見せたかった景色へ続く