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〇〇「あれ、氷室くんまだ来てないのかな?」
男「どうしたの、待ちぼうけ?」
〇〇「え?ああ、はい。今、待ち合わせしてて……」
男「この時間は、速度が低下するからな。キミのツレも、読み込みに時間がかかってるかも……」
〇〇「……はい?」
男「わからない?その方がいい。現実と仮想の区別なんていらないんだ。」
〇〇「えーと?……あっ、氷室くん!」
氷室「ごめん、遅れた。」
男「……おまえ、現実か?アバターじゃなくて?」
氷室「?なに、この人。」
〇〇「えぇと……たぶん、迷子?」
男「あたり。情報の海で迷子になって10年。やっとキミをみつけた。だから早くオレとネットサーフィンへ――」
氷室「君は、これの相手をしてたの?その恰好で?」
男「「これ」って「オレ」のことか?」
氷室「フードとサングラスで顔隠して人をたぶらかすようなヤツは「これ」で十分。嫌なら堂々としなよ。」
男「う……ああっ、ラグがひどいから、帰る!」
氷室「まったく……あんなのがいたら、海の格が落ちる。」
〇〇「あの、氷室くん……ありがとう。」
氷室「べつに。でも、相手にした君も君。それにその恰好じゃ……」
氷室「や、ごめん。遅くなった僕が悪い。」
〇〇「ううん。今度から気をつけるね。」
氷室「うん……そうして。」
〇〇「あれ?氷室くんはまだ来てないみたい……」
男「ねえ、キミは知りたい?知りたくない?」
〇〇「えっ?」
男「キミも、扉を叩いてみたくなったんでしょう?わかってるよ、もう大丈夫。」
〇〇「ええっと……?」
??「相手にしない。」
〇〇「あ、氷室くん!」
氷室「ほら、行くよ。」
男「ちょっとちょっと!?この子は今、オレと新しい世界へ一歩踏み出そうと――」
氷室「一歩でも、そこから動いたら警察を呼びます。」
男「ひぇっ!?」
氷室「意味のない文句を並べて相手を惑わせ、不安を与えるのは迷惑行為。」
氷室「つきまとい、進路に立ちふさがるっていうのは、もう明らかな犯罪行為。」
男「な、なんでよ!オレはただ、この子の扉を開けてあげようと――」
氷室「……もしもし。警察ですか?」
男「あっ、そうだ。今日は扉が開かない日だった。もう帰ろ!」
氷室「ハァ……逃げるってことは、迷惑行為をしている自覚はあるんだ。」
〇〇「氷室くん、ありがとう。」
氷室「いや……僕が遅れたのも悪かったから。」
氷室「もう行こう。また変なのに引っかかる前に。」
〇〇「氷室くん、まだ来てないみたい……」
??「あららっ、あらら~?ちょっと、目線ちょうだい!」
〇〇「……えっ、わたし?」
男「はい来た、ドーン!久々に見つけた、金のタマゴちゃん♪ね、君、デルモにキョーミない?」
〇〇「で、でるも……?」
男「そう!知り合いの友だちの知り合いが有名な葉月珪と一緒に仕事したことあるから。キミもデビューさせちゃうけど?」
〇〇「ええっ!?わたしには無理です……」
男「ああっ、そんなカオもできるんだ?こりゃ女優もイケちゃうなぁ~。」
氷室「明らかに困ってる顔、してますけど?」
〇〇「あっ、氷室くん!」
氷室「遅れてごめん。とりあえず移動しよう。」
男「ちょっとちょっと~?横取りはタブーでしょうよ?」
男「第一線から退いて、早数年……この私が声をかけるなんて、異例中の異例なのに。」
氷室「……だから?」
男「うっ……冷たい言い方。あ、もしかして反抗期?」
氷室「……は?なんで僕が?反抗期?」
男「ひぇっ、もっとおっかない顔!いったんハケま~す!」
氷室「……誰が、反抗期だ。」
〇〇「あの……氷室くん?どうもありがとう。」
氷室「言っておくけど。僕だって、愛想振りまくくらいできるから!ほら、行くよ。」
〇〇(???氷室くん、どうしちゃったんだろう?)
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