U.C.0079、11月30日。
ブラックハウスのジャブロー入港から1週間が過ぎていた。
アフリカ以来相次いで補給されたアリーとナノハの機体も今ではすっかり格納庫に馴染み、すべての機体の整備も完了していた。クルー達はいよいよ迫ってきた宇宙への旅立ちに期待を募らせ、一刻も早く命令がくることを待っていた。
だが、地上で戦うジオンは、まだ戦意を喪失した訳ではさらさらなかった。
シャア大佐率いるマッドアングラー隊は、木馬ことホワイトベースがジャブローに入港する瞬間をレーダーではっきりと捉え、最大の入口である戦艦用ドックの場所を割り出していた。水中戦用MS数機でさらなる捜索を行った結果、マッドアングラー隊は他にも幾つかの侵入路を発見していた。これらの貴重な情報はキャリフォルニアベースにただちに届けられ、ついにこの日、ジオンは出来うる限りの総戦力をもってジャブロー侵攻作戦を開始した。
作戦はまず、南ブロックにおける毎週恒例となった定時爆撃から始まった。すでに連邦軍のジャブロー防衛司令部では、アマゾン川を行き来しながら探索を行うジオンのゴッグを発見していた。しかし、敵にこちらの位置を教える必要はないという司令官の判断により、攻撃はしなかった。
「そろそろ定期便がくるころだ。第一警戒体勢に移項しろ!西ブロック、そちらの様子はどうか?」
引き締まった表情の司令官が冷静に事態に対応している。だが、ジャブローでは日常茶飯事となった敵の定期便、つまり定時爆撃部隊を警戒する兵士は、今では少なくなっていた。
「こちら西ブロック、敵の定期便が来ていますが他は異常なし。敵もこんなへんぴな所まで、よくやるよ。」
南ブロック監視塔につめる二人の兵士はだらけきっていた。爆撃はいつも行われるが、それがジオンの侵攻作戦の前触れとなったことはない。
「敵も給料貰うためにやってんだろ。さっさと降伏すりゃあいいものを。」
「まったくだ。だがまぁ、このジャブローにいれば安全だし、そのうち戦争も終わ…」
「おい見ろッ!」
「えっ?」
監視塔の目の前に、一機の敵MSの姿があった。その機体は断末魔をあげる二人の声に耳をかさず、腕で塔を叩き潰した。その背後からでてくる一群のMS、そしてKMFの姿があった。
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06/16 09:55 W51S(e) [250]エルザス
249
「ご苦労ジョシュア。ここから先は
黒の騎士団が先行する。途中で接触した敵はすべて排除せよ。本隊の降下開始まであと一時間だ。それまでにジャブローへの突入口を確保する!」
愛機の
蜃気楼で混成任務部隊を指揮するゼロが言った。口調も今日は一段と自信に満ちているようだった。
「ゼロ、カレンと僕が先行する。ゼロはアサヒナ達と一緒に援護を頼む。」
奇跡的な速さで復活をとげたスザクが言った。ゼロの自信の元は彼の存在であった。スザク黒いガンダムに重傷を負わされて以来、ゼロはいつもその復讐の機を伺ってきた。今日こそがその日だ。
「待ちに待った時が来たのだ。黒の騎士団こそが、敵のガンダムを抑えうる部隊であることを証明するための。
ジャブローよ!私は帰って来た!!」
闘志をむき出しにするゼロを横目に、グラハムも自分の体内から熱が沸き上がってくるのを感じていた。
「感じるな、ガンダム。間違いなくここにいる…!」
グラハムの脳裏にオデッサで死んだハワードの顔がよぎった。そうだ、自分はハワードの英霊に誓ったのだ。この
フラッグに乗って、必ずガンダムを倒すと!
まさに士気旺盛、精鋭無比の混成任務部隊は前進を開始した。定期便の爆撃を隠れ蓑にしつつ、途中で発見したトーチカや対空砲を次々に破壊していく。シャアのマッドアングラー隊MSも今頃南ブロックから侵攻しているだろう。ジオンの起死回生を賭けた哀しい戦士達、その戦いの火蓋は、切って落とされたのである。
ジャブロー防衛司令部では、遥か北方に接近してくる敵のガウ編隊を捉えていた。
「少なくともガウ12機、ドップはそれに3機ずつついているようです。」
オペレーターの報告を受けて、司令官は思わず唸った。
「むぅ、かなりの大部隊ではないか。各ブロックに警報を。定期便は目くらましの可能性があるぞ。」
「司令はこれが敵の侵攻作戦だと?」
「そう見るべきだろう。とにかく、敵編隊の追尾を続けるんだ。」
「了解。」
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06/16 10:15 W51S(e) [251]エルザス
† † † † †
わたしとナガモンは、補給部隊のノドカと話していた。ノドカの表情は暗い。
「その話、本当なの?」
わたしはノドカにきいた。ノドカは小さく頷き、重い口調で喋り始めた。
「さっき、ウッディ大尉から聞いたの…マチルダさんは、オデッサ作戦の最中に戦死したって…ムギに確認とってもらってるけど、間違いないみたい…」
「そのウッディ大尉って言うのは?」
ナガモンが必死で気持ちを抑えている様子のノドカに尋ねた。もっとも、それをきいたってどうしようもないのだけど。
「マチルダさんのフィアンセだったの。マチルダさんがジャブローに戻ったら式を挙げる予定だったのに…」
「なんてこと…」
わたしは天を仰ぎたい衝動にかられた。隣のナガモンは怒りに肩を震わせていた。
「許さない。マチルダさんを殺した奴ら、ジオン…!オレは許さないぞ…!」
ナガモンの躰全体を怒りのオーラが包んでいる。溢れる殺気にノドカも思わずあとずさる。その時、戦闘配備を命令するサイレンが鳴り響いた。
「敵襲?!」
「待って、多分定期便の空襲よ。ここは大丈夫だから対空砲部隊に任せましょう。」
さっそく駆け出そうとしたナガモンをノドカが止めた。聞けば、ジャブローにはほぼ毎週決まった日にち、決まった時間帯に、ジオンの爆撃機がやってくるのだそうだ。間もなく、爆弾の破裂する音が聞こえてきて、洞窟内に不気味にこだました。
「あの天井、崩れてくるなんてことないよね?」
わたしは思わずノドカにきいていた。定期便にしては規模が大きいように思われた。
「それは大丈夫だけど、確かにいつもよりマメな爆撃ね…情報を集めてくる。あなたたちはブラックハウスに戻っていて。」
「了解。」
ノドカが小走りに去っていき、わたし達もブラックハウスへと急いだ。爆撃の音はどんどん大きくなっているようだ。生身でいるよりもはやくMSに乗りたかった。ブラックハウスの足元まで来たとき、船の中からタチバナと彼の部下が疾走してきた。
「タチバナ!どこ行くんだ?」
ナガモンが叫んだ。タチバナはあっと言う間に迫ってきて、すれ違い様に言った。
「
セイバーフィッシュで迎撃に出ます!定期便にしては様子が変なんです!」
タチバナ達はそのまま戦闘機用カタパルト区画へ走っていった。いよいよただ事ではないらしい。
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06/16 17:34 W51S(e) [252]エルザス
251
格納庫に駆け込むと、MKⅡが大声で叫んでいた。
「いつ出撃になるかわからないよ!整備中の機体は後回しで
レイジングハートと
ブラックサンから優先して発進準備!SOS団にはBlackCatの準備急がせて!」
レイジングハートというのは先日着任した
ナノハ・タカマチの機体だ。尋常ならざる火力と圧倒的防御力を兼ね備えた射撃特化型の機体。だが、この狭い洞窟内や地上の見通しの悪いジャングルでは分が悪いんじゃないだろうか。そのことをMKⅡに意見具申してみた。
「そりゃわかってるけど、他のパイロットがまだ戻ってないんだよ。阿部さんは乃人の精密検査に同行してるし、アリーとシンはどこ行ったかもわかりゃしない!ついでにトレインと京大尉も見当たらないんだよ!」
状況は大混乱になりつつあった。半舷上陸が許可されていたからみんなブラックハウスから出払っていたのだ。まずい時に敵が来たな。
「とにかく出撃準備を。ブラックサンはすぐに出られるから!」
「わかった。ご苦労様MKⅡ!」
「頑張りな!」
パイロット用のロッカールームではナノハがすでに着替えを終えていた。栗色の綺麗な髪をリボンでツインテールに結んでいる。
「あっ、黒猫さん、ナガモンさん。出撃命令はまだ出ない?」
「まだだけどいつ出てもおかしくないよ。パイロットは機体で待機してたほうがいいみたい。」
「そっか、わかった。じゃあ後で。」
「うん。」
ナノハがロッカールームを出て行って、わたし達も急いで着替え始める。
格納庫へ戻った時、ちょうどナノハのレイジングハートがカタパルトから飛び出していく瞬間だった。轟音と共に火花を撒き散らしながら、「白い魔王」と称されるその機体がジャブローの洞窟に繰り出していく。爆撃が激しさを増しているんだろうか、地鳴りのような音も聞こえてくる。
MKⅡがこちらに気づいて、叫んだ。
「出撃命令が出たよ!地上に出て迎撃しろって!敵は空挺作戦をやるみたい!ガウの編隊が接近中!」
「了解!」
わたしはブラックサンのコックピットに潜りこみ、ハッチを閉めた。いよいよ戦闘だ。宇宙に上がる前の最後の戦いになるだろう。わたしはいつもより意気込んでいた。マチルダさんを殺されて哀しいのは、ナガモンやノドカだけじゃない。
「黒猫、ブラックサン、イキます!!」
† † † † †
ついに決戦の時が来た。キャリフォルニアベースからのMSを積んだガウ攻撃空母がジャブロー上空に飛来し、猛烈な対空砲火の嵐のなかで空挺作戦は開始された。
ガウの前部が口のように開き、ザクが、グフが、あるいはドムが、南米の密林の中へと落ちてゆく。熾烈な対空砲火は視界を埋めつくさんばかりに荒れ狂い、自由落下するMSを次々に射すくめてゆく。
「お、降りられるのかよ!」
一機のザクのパイロットが叫んだのも無理はない。これまでに遭遇したこともないような見事に統制された弾幕。ザクのパイロットにはその全てが悪意を持ってこちらに飛来するように思われたのだ。一機のザクは握っていたマシンガンを破壊され、また別の一機は腹部を切り裂くような砲弾を受けて爆散した。頑丈な装甲をもつグフですら、ひと度狙われてしまえば損傷は免れなかった。ドムも空中ではその機動力を発揮することはできず、一機があっと言う間に穴だらけにされた。
それでも幸運なMSは次々にジャングルに降り立った。機体の足を抉るような衝撃のあと、今度はトーチカ群が射撃を開始してきた。正面の砲台を攻撃しようとしたザクの頭部を、真横からの弾丸が一気に貫通した。そばにいたグフのヒートロッドがしなり、砲台を叩き潰す。そのグフに
61式戦車が攻撃するが、新たに降りてきたザクにそのまま踏み潰された。今やジャングルは敵味方入り乱れる狂気のような十字砲火の庭と化していた。
ジャブロー防衛司令部では、ゴップともう一人の将校が戦況を見守っていた。
「28機のMSが降下したようです!」
オペレーターが報告をあげる。
「かなりの大部隊だな。」
ゴップが言った。
「あぁ。だがジャブロー全部を攻撃するには少なすぎる。」
「狙いは戦艦ドックのあるNブロックか。」
「ホワイトベース、つけられましたな。」
「あぁ…永遠に厄介ものかな。あのホワイトベースは。」
ゴップはそう言うと、後ろに立っているツムギを振り返った。
「君の後輩の船はどうかね?ブラックハウスは?」
「MSが迎撃に出たようです。きっと守りきってくれるはずです。」
「そうか。」
ゴップは再び正面に視線を戻した。ツムギはそっと指を組んで、あずにゃんとブラックハウスクルーの無事を祈った。
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06/17 08:32 W51S(e) [254]エルザス
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ジャングルでは戦士たちの命をかけた激闘が続いていた。その中で獅子奮迅の戦いを繰り広げる一団がいた。黒の騎士団と
ツィマッド社特務隊の混成任務部隊である。
「このまま200m前進!そこにMSが通れるゲートがあるはずだ!」
ゼロが全体に命令を与え、混成任務部隊は素早く行動した。紅蓮弍式と、スザク共々復活した
ランスロットの両KMFが一気に駆け抜け、途中の戦車や砲台の注意を引き付ける。その直後に他のKMFや特務隊のMSが続き、次々に敵を無力化してゆく。あっと言う間に前進した混成任務部隊は、ゲートを守る連邦軍のGM 数機を発見した。
「ここからは我々のフラッグが先行する!ダリル、私に続けッ!」
グラハムが言うな否や、フラッグ二機が颯爽と踊り出る。グラハムは敵がフラッグに気づく前にすでに一機のGMを仕止め、後続のダリルがさらに一機を撃破する。ついでフェイト、アルフらがゲートに取りつき、ジャブロー内部への侵入路を確保した。
「我々もいくぞ!アサヒナが先頭、カレン、スザクは後方を警戒しつつ最後尾につけ!前進!」
ゼロが命じ、黒の騎士団のKMFもゲートに向かう。さらにその後方、ガウから降下したキャリフォルニアベース所属部隊が突破口に殺到した。基地内部への血路は開かれた。
ブラックハウスから出撃したナノハは、黒猫やナガモンの発進を待たず、単身ジャングルへと飛び出した。ジムスナイパーをベースにした彼女の機体、レイジングハートの勇姿は、思わぬ苦戦を強いられていた連邦軍兵士を元気づけた。
「見ろ!白い魔王だ!極東戦線のエースオブエースだァ!!」
対空砲を操っていた兵士が手を止め、レイジングハートを指さして叫んだ。周りの兵士たちからおぉっ!というどよめきが起こり、拳を突き上げる者もいた。
「ジオンの奴らに一発かましてくれ!頼んだぞ!!」
兵士がそう叫んだ次の瞬間、ザクマシンガンの弾丸が対空砲座を直撃し、彼らたちの体は吹き飛んだ。
「なんてことを!」
ナノハは現れたザクに瞬時に狙いを定め、トリガーを引いた。実弾型のスナイパーライフルが火を噴き、マシンガンよりはるかに初速のはやい弾丸がザクのモノアイを撃ち抜く。ザクが地面に倒れたところに、ナガモンのBlackCatが現れた。
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06/17 11:43 W51S(e) [255]エルザス
254
「すぐに黒猫がくるから、ブラックサンとレイジングハートでここを守ってくれ!オレは他のゲートを見てくる。」
「了解だよ!気をつけて!」
BlackCatと入れ違いにブラックサンがやって来た。珍しいことに素手ではなく100mmマシンガンを携行している。
「珍しいね、飛び道具なんて。」
「ないよりマシと思ってね。チーズバーガーもあるよ。」
黒猫はそう言ってブラックサンの片手に持ったハンドグレネード、通称チーズバーガーを見せた。次の瞬間、そのチーズバーガーがブラックサンの手のひらから弾けとんだ。すぐさまザクマシンガンの弾幕が襲ってきて、ブラックサンに射撃が集中する。ナノハはガーディアンシールドをかざして射線上にわって入り、ブラックサンをかばった。隙を見て反撃し、大木の向こう側に隠れていたザクを倒すと、ナノハはブラックサンを振り返った。
「大丈夫?黒猫さん?」
だが、心配は無用だった。黒猫は攻撃を察知し、バイタルチャージをシールドのように展開して身を守っていたのである。
「大丈夫!ありがと!!次がくるよ!」
黒猫の言葉通り、今度は二機のグフがゲートに向かって走ってきた。グフはブラックサンとレイジングハートを無視するように疾走していたが、黙って見逃す二人ではなかった。
「援護をお願い!」
黒猫がグフの前に踊り出て、両手を広げて通せんぼの姿勢をとった。それでもグフは止まろうとせず、スピードを保ったまま肩を突き出し体当たりしてきた。
「ッ!?」
黒猫の表情がさっと緊張する。よけられない!
重いグフの機体がブラックサンに激突し、凄まじい衝撃とともに機体が吹っ飛ばされる。
「にゃあああッ!」
ブラックサンは大木を2、3本なぎ倒してから地面に叩きつけられた。脳震盪をおこした黒猫の表情が苦痛に歪む。
「黒猫さん!」
叫ぶナノハの前に、もう一機のグフがゆらりと立ちはだかった。敵は接近戦用、苦手な相手だ。そのグフがヒートサーベルを抜いてとびかかって来た。だが、ナノハはあくまで冷静だった。瞬時に狙いを定めたスナイパーライフルで、グフのヒートサーベルを持つ手を撃ち抜き、続けて多弾頭ミサイルを発射する。
「ディバインシューター!!」
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06/18 08:15 W51S(e) [256]エルザス
255
ナノハ得意の攻撃であるディバインシューターは、発射直後から弾頭を分離させ、5発の小型ミサイルのうち2発が目の前の敵に直撃した。だが、驚くべきはその後だった。見事に調整された残りの3発は、ブラックサンに襲いかかろうとしていたもう一機のグフに吸い込まれるように飛翔し、その先端をグフに埋め込むようにしながら爆発した。エンジンを破壊されたグフは大爆発を起こし、爆風がジャングルを駆け抜けた。
爆風がおさまると、ブラックサンが身を起こした。
「危なかった~。ありがと、助かったよ。」
黒猫が言った。
「どういたしまして。怪我はない?」
「うん、大丈夫みたい。」
そこへ、ナガモンのBlackCatが帰ってきた。
「他のゲートが突破された。あの戦闘機型とKMFって奴だ!内部の応援に行くぞ!」
「ここの守りは?」
「GMが来ることになってる。戦いの主戦場は中に移ってるみたいだ。急ごう!」
「了解!」
三機のMSが連れだってゲートに入ってゆく。
「敵のKMFはどのエリアに?」
ナノハがナガモンにきいた。
「よくわからないが、敵の狙いが戦艦ドックにあることは確実みたいだ。一度ブラックハウスの所まで戻ったほうがいいかもしれないな。母艦をやられたら話にならない。」
「そうだね。」
「ストップ!」
突然黒猫が叫んだ。MSが足をとめ、足音だけが洞窟にこだまする。
「なんだ?」
ナガモンが黒猫に言ったが、黒猫はただ一言叫んだだけだった。
「…左ッ!」
言うや否やブラックサンのマシンガンが左手に向けられ、弾丸がばらまかれる。次の瞬間、弾丸をかいくぐるようにして紅いKMFが岩の陰から飛び出してきた。
「紅い奴か!」
ナガモンもビームライフルを撃つが、当たらない。オデッサで会った時より機動力が上がっている。
「もう一機来たよ!」
ナノハが後方にスナイパーライフルを撃ちながら言った。見れば、白いKMFがこれまた俊敏に動き回って接近してくる。
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06/18 08:37 W51S(e) [257]エルザス
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驚くべきことに、KMFはスラッシュハーケンを駆使して側壁すら駆け回っていた。洞窟内を文字通り縦横無尽に跳ね回るKMFに、黒猫たちは命中弾を与えることができなかった。紅いKMF、紅蓮弍式が間合いを詰め、レイジングハートにとびかかった。
「下がって、ナノハ!」
黒猫のブラックサンがレイジングハートを押しのけ、右腕を突きだした。紅蓮弍式も同様に右腕を突きだす。バイタルチャージと幅射波動砲、ほぼ同じシステムの二つの兵器がぶつかりあう。刹那、強烈な閃光がほとばしり、薄暗い洞窟内が一気に明るくなった。双方の機体が後ろにのけぞり、離れた腕はどちらも粉砕されていた。
「黒猫ッ!大丈夫か?」
ナガモンが援護射撃をしつつブラックサンに近づく。そのBlackCatにスザクのランスロットが接近してくる。
「こいつ!」
トンガリコーンが一閃するが、ランスロットはその上を飛び越えた。ランスロットのソードがBlackCatの肩を斬りつける。だがその堅い装甲はそう簡単には壊れない。ランスロットは着地して紅蓮弍式と合流し、洞窟の奥へ逃げていく。
「逃がすかっ!」
黒猫が追撃しようとするが、ナノハのレイジングハートがそれを止めた。
「今はブラックハウスの防衛が優先だよ。侵入した敵があのKMFだけって訳じゃ、このままドックに向かおう。」
「オレもナノハに賛成だ。あのフラッグとかいう機体も入り込んで来てるはずだ。ドックに入ったブラックハウスは陸地に上がった魚みたいなもんだ。逃げようにも逃げられない。オレたちが守らないと。」
ナガモンもナノハに同意する。
「うん、わかった。行こう。あずにゃんたちきっと待ってる。」
三機のMSが先を急ぐ。
最終更新:2010年11月02日 22:29