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ジャブローに散る!その2

そのころ、グラハムとフラッグ隊は、発電施設を破壊してジャブロー全体を混乱に陥れようとしていた。かつてゼロとカレンが潜入して集めたジャブローの情報は未だに有効だった。大型のタービンが唸りをあげるエリアに見事に侵入したフラッグ隊は、その場で迅速な破壊活動を開始した。発電施設は次々に破壊され、ずっと鳴りっぱなしだった警報も止んだ。非常電源が他にあるらしく照明は落ちなかったが、その他のあらゆる基地機能は麻痺状態となった。公国軍のMSがバラバラに降下してしまったことも、連邦軍により一層の混乱をもたらす結果となった。降下したMSは正確には28機だったが、それを把握していたのは一部の上級司令部だけで、実際に攻撃の矢面に立たされている守備隊にはそんな情報は届かなかった。彼らは四方八方からやってくる公国軍MSを必死でくい止めようとしたが、その結果敵の規模を実際よりかなり多く見積もっていた。あいまいかつ相互に矛盾する報告が各部隊を飛びかい、ジャブローの防衛機能は一時的にではあるがかなり低下した。
そして、グラハムはこの機を逃がそうとはしなかった。発電施設を完全に破壊した彼とフラッグ隊は、ブラックハウスの停泊する戦艦ドックエリアに一気に突入しようと試みた。
「ダリル、ジョシュア、アルフ、フェイトは私に続け!戦艦ドックに突入するぞ!ランディは残りを率いて黒の騎士団に連絡しろ!脱出路を確保するんだ!行くぞ!」
グラハムは命令を飛ばすと自分が真っ先に移動し始めた。四機のフラッグがそれに続く。狭い洞窟内では戦闘機形態をとることはできない。MS形態のまま浮遊して素早く移動する。
「2時方向に友軍の反応!フェンリル隊だ!」
ダリルが叫ぶと同時に、三機のザクが通路に出てきた。
「こちら、フェンリル隊のニッキ少尉です。この先は連邦軍の新型MSが固めてます!」
先頭のザクから通信が入る。危険を知らせてくれたのだが、グラハムは意に介さなかった。フラッグ隊はスピードを落とさずザクの横をすり抜けていく。
「戦果を拡大するチャンスってやつだぜ!」
ダリルがニッキにそう叫んで飛び去った。無謀とも思えるフラッグ隊の進撃に、若いニッキは一瞬呆然とした。自分たちとは戦う相手が違う。そんな雰囲気さえ漂っていた。
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06/18 22:08 W51S(e) [259]エルザス
258
ブラックハウスのいる戦艦ドックには、すでに黒猫、ナガモン、ナノハの三人が戻ってきていた。さらに、精密検査を終えて修理が終わったばかりの WhiteCatに飛び乗った乃人と、ヤラナイカに乗った阿部さん、マスパの魔理沙が戦列に加わった。シンはコアファイターで地上に出て戦っているらしい。アリーの行方は未だにわからなかった。
ブラックハウスの守りが固まったところへ、ジャブロー防衛司令部からの命令が届いた。あずにゃんが電文を読み上げる。
「ブラックハウスのMS隊は、半数を現在位置に、残りをGブロックの格納庫の防衛に当たらせよ、ですか。こっちの都合はお構いなしですね。」
「誰を派遣しますか?」
アークがあずにゃんにきいた。
「黒猫さんとナガモンさんと魔理沙さんを。アリーさんが戻り次第、彼にも格納庫へ向かってもらいます。乃人さん、ナノハさん、阿部さんには引き続きブラックハウスの防衛をお願いします。」
「了解。」
アークが各機にあずにゃんの命令を伝える。その間に、あずにゃんの手元の艦内通信が鳴った。声の主は対空機銃班のナンジだ。
「こんな狭い洞窟じゃ対空砲は役に立ちません!自分もホーバークラフトで出撃したいのですが、許可願えますか?」
あずにゃんはちょっと考えてから言った。
「戦力が増えるのはありがたいんですけど、無茶なことはしないでくださいね。必ず生きて戻って。」
普段なら吹き出してしまいそうなセリフだが、あずにゃんの表情は真剣そのものだった。
「大丈夫です艦長。任せてください!では。」
あずにゃんがナンジとの通信を終えると、カントーが報告をあげた。
「敵のMSが急速接近!発電施設を破壊した奴らです。正面に来ます!」
「主砲砲撃準備!こちらの施設をできるだけ破壊しないようにお願いします。」
モニターでトレインが黙って頷き、主砲のレールガンが旋回する。
「右の通路からも敵が接近!ザク三機、バズーカを装備しているもよう!」
カントーが新たな敵をキャッチした。
「乃人さんと阿部さんは右翼の敵を頼みます!前進守備でくい止めてください!正面はブラックハウスの砲だけでなんとかしてみます!」
「こちら乃人、了解しました!行こう、阿部さん!」
WhiteCatとヤラナイカが慌ただしく右側の通路に入っていく。レイジングハートは万一に備えて残した。これほど頼りになるボディガードはいないだろう。

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06/19 13:47 W51S(e) [260]エルザス
259
「正面の敵来ます!フラッグです!速いぞ!」
カントーが興奮した様子で叫んだ。そのとたんにレールガンが射撃を開始し、轟音が洞窟内に響き渡る。猛烈な連射だ。ドックの姿勢はあっと言う間に粉々になった。
「トレインさん!人の話を聞いてないんですか?!」
「レールガンはモノを壊す兵器だ。壊さないってほうが無理なんだ!」
射撃を続けながら、トレインが答えた。
「まったく…」
あずにゃんが呆れてため息をついたその瞬間、ブラックハウスの背後にある地上連絡用ハッチが突然爆発した。そしてそれを突き破るようにして火だるまになったグフが転がりこんできた。
「なッ?!」
あずにゃんは一瞬身を強ばらせたが、グフはブラックハウスのすぐ手前で止まった。本来ブルーのカラーリングであるはずのグフの機体は、燃え盛る炎の熱で真っ赤に焼けていた。そして何よりあずにゃんを震撼させたのは、その煉獄のようなの機体から、焔に巻かれもがき苦しむ乗組員が飛び出してきたことだった。喉と肺を焼かれたその乗組員は、叫び声をあげることも、息をすることさえもできなかった。それでも彼は地面をのたうち回り、最後にガクリと力尽きた。それと同時に彼を包んでいた焔も燃え尽きた。
ブラックハウスのクルー全員が、この光景に目を奪われていた。トレインすら、砲撃の手を止めてしまっていた。
そして、グラハムはこの一瞬の隙を見逃さなかった。
「今だ!突っ込むぞ!」
信じられないことに、グラハムはこの狭い空間で機体を戦闘機形態に変形させた。爆発的加速を得た彼のフラッグは部下達を置いて一気に突出した。トレインが我に返った時には、グラハム機は戦艦ドックのすぐ目の前まで迫っていた。ナノハがフラッグを狙い、グラハムはそれを避けるために急旋回してわき道にそれた。オーバースピードど曲がった為に、グラハムには強烈なGが襲いかかった。こみ上げてくるものが堪えきれず、グラハムは吐血した。
「ええい!これしきのことでッ!ダリル!ジョシュア!一度下がるぞ!ガンダムを探す!フェイトとアルフも引け!」
「隊長!大丈夫ですか!?」
ダリルがミサイルをブラックハウスにバラまきつつきいた。
「この程度問題ない!行くぞ!」
グラハムもミサイルを発射し、もと来た道を戻り始める。他のフラッグがそれに習い、ミサイルで弾幕を張って退却する。

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06/19 14:25 W51S(e) [261]エルザス
ミサイルはフラッグにとってはあくまで退却援護の気休めにしかならなかったが、動けないブラックハウスにとっては十分な脅威だった。
「撃ち落として!早く!」
あずにゃんが叫び、主砲副砲、ナンジのいない対空班がいっせいにミサイルを狙う。ナノハもミサイルを狙い、そのすべてが戦艦ドックギリギリで爆発した。洞窟内で逃げ場のない爆風が容赦なくあれくるい、ブラックハウスを激震が襲う。それが抑まったとき、カタパルトからナンジのホーバークラフトがフラフラと現れた。
「危ないとこでしたね艦長!それじゃ俺も行ってきます!」
「ナンジさん、ほんとに気をつけて!」
ホーバークラフトはナガモン達の向かったジャブロー格納庫エリアへ飛んでいく。その時、整備士のアララギから艦内通信が入った。
「はい、こちら艦長です。」
「ナンジをすぐに止めてくれ!ホーバークラフトの調整はまだ完全じゃない!!」
「えっ!」
「武装のロケット弾の芯管がフリーになってるんだ!衝撃を与えただけでも爆発しちまう!」
「そんな!!アークさん!彼を止めてください!」
あずにゃんは思わず立ち上がっていた。
「ナンジ班長、ナンジ班長、応答せよ!こちらアークです!ナンジ班長!応答してください!
ダメです向こうから通信をカットしてます!」
「ナガモンさんに連絡を!ナンジさんが来たらすぐに機体から脱出させるよう言ってください!」
「それもダメです!格納庫エリア一帯にジャミングがかかってます!」
「はちゅねさん!基地内通信は!?」
「発電施設がやられてダウンしてます!通信不能!司令部ともつながりません!」
「なんてこと…」
あじにゃんは艦長席にがっくりと腰を落とした。艦内通信の送話器を取った京がアララギに叫ぶ。
「なぜ彼を止められなかった!貴様はその場にいたのだろう!」
「…なんて失態だよクソ…万死に値する…!」
カタパルトにいるアララギは、がっくりと膝をついた。情けなさに涙が込み上げてくる。ナンジ、どうか無事でいてくれ…!
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06/19 14:25 W51S(e) [262]エルザス
261
黒猫、ナガモン、魔理沙の三人は、既にジャブローの格納庫エリアに到着していた。格納庫にはマスプロの波に乗ったGMが整然と並んでいたが、その中に一機だけ、他とは異なる機体が保管されていた。
銀色に輝く機体は見るものに西洋の甲冑を思い起こさせる。なめらかに湾曲した頭部は連邦軍のMSらしからぬ形態だが、黒猫のブラックサンに似た雰囲気をもっていた。
「この銀色のは?やけに目立つな。」
魔理沙が周辺を警戒しつつ言った。
「よくわからないけど、新型機だよね。なんとなくブラックサンと系列が似てる気がする。」
黒猫が答える。その時、格納庫エリアのゲートにホーバークラフトが現れた。
「ナガモン中尉!敵がすぐ近くまで来ています!」
「あれは、ナンジか?!ここで何してる?!」
「支援に来たつもりだったのに、ロケット弾撃とうとしても発射しないんです!」
ナンジには知る由もなかったが、この故障は彼にとって幸運な出来事であった。もしロケット弾の推進機が正常に起動していたら、その衝撃でフリーになっている芯管が作動し、機体はバラバラになっていたかもしれなかったのだ。
「武装が壊れてるんじゃ戦闘は無理だ。ブラックハウスに戻れ!」
「すぐ近くまで敵が来てるんですってば!」
ナンジが叫んだ瞬間、格納庫エリアの入口で爆発が起こり、その火炎を突き抜けて、白亜のKMF、ランスロットが飛び出してきた。
「またあいつかよ!」
魔理沙が叫ぶと同時にマスパを放つが、ランスロットはバネのように跳ねてこれを回避し、強力なビームは岩石の壁面を砕いただけに終わった。直後にさらに数機のKMFが侵入してきた。暁と呼ばれるKMFで、今や黒の騎士団の主力となりつつある機体だ。その背後から、黒の騎士団を率いる人物、ゼロの乗る蜃気楼が現れた。
「目標はシャドームーンの奪取にある!他の量産型は無視して構わない!スザクを援護しつつ、銀色の機体を目指して前進しろ!」
ゼロが大げさな身振りで命令を下し、KMFが細かく機動しながらナガモン達に迫る。
「相変わらずちょこまかと!魔理沙!十字砲火だ!」
ナガモンが叫び、アームストロング砲を構える。
「了解だぜ!」
魔理沙もマスパをKMF群に向けた。
「ってェェェェ!」
ナガモンの号令と同時に二条のビームがほとばしり、黒の騎士団に襲いかかる。

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最終更新:2010年11月02日 22:32
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