834 名前:ブルーローズ騒動1 :2011/11/20(日) 21:49:17.26 ID:???
秋も深まる週末の午後。
授業も終わり昇降口に向かうウッソの背中を叩く気配がした。
ハサウェイ「ウッソ、今帰り?」
ウッソ「そうだけど、どうしたの?」
ハサウェイ「父さんにチケットもらったんだけど相手がいなくて、一緒にどう?」
ウッソ「”青いバラ展”?」
ハサウェイが見せたのは園芸専門コロニーの特別公開園芸展のチケットだった。
ガンダムパイロット一家の少年と、ラーカイラム社幹部の息子。
この二人には同じ学年というだけではないあまり知られていない共通点があった。
園芸部・家庭の菜園の管理者であるウッソ。
植物観察官候補生のハサウェイ。
研修や学校や
ガンダム家の園芸管理を経る中でふたりは共通の「趣味」を持つ友人として親しくなっていた。
ウッソ「確か、どこかの飲料企業の子会社化何かが生産に成功したっていう」
ハサウェイ「アプローズのことかな」
ウッソ「そう。でもそんなのかなり昔の技術でしょ。今じゃそのへんの花屋でも廉価で買えるものだよ」
ハサウェイ「アプローズはね。どうやらザフトの農学者が新しい品種を作ったらしいんだ」
今までのブルーローズといえば、青紫色がかった品種の「アプローズ」のみだった。
バイオテクノロジーを駆使しても本当の「青」はなかなかつくれなかったのだ。
ハサウェイ「それがね、本当に真っ青なんだって。まるで地球みたいだって名付けられたのが―――"the Earth"」
ウッソ「地球?」
ハサウェイ「コロニーに行く時に地球を見たけどさ、本当に青いよね、地球って」
ウッソ「そんな名前を冠したバラ・・・」
ハサウェイ「気にならない?」
835 名前:ブルーローズ騒動2-1 :2011/11/20(日) 21:50:44.43 ID:???
チケットをハサウェイから貰って、当日の乗合シャトルの集合時間を決めた所で、本当に良かったのかとウッソは心配になった。
研修の時やほかの時にもよく一緒にいる緑の髪の少女のことが頭をよぎったのだ。
ハサウェイ「え?クェスのこと?気にしなくていいよ、フラれちゃったし。
それにこういう園芸展は詳しい話ができる方が面白いから」
少し困ったように人のよいたれ目をさらにたれさせてハサウェイが苦笑いを見せる。
ハサウェイの言うとおりかもしれないと、不躾な質問をしたことをウッソは心のなかで謝った。
ウッソだってアニメや同人の話は話のわかるキラやシャクティとのほうが面白い。
植物に関しては、ハサウェイの方が専門的なことを話せるから自分の勉強にもなって面白いのだ。
ウッソ「ということで、ハサウェイと園芸コロニーに行ってきます」
帰宅早々、学校の制服も脱がず、鞄もそのままにリビングに運良く集まっていた兄の前で先のハサウェイとの約束を告げる。
兄たちもそこまで遠い園芸コロニーではないからと、快く外出を許可してくれた。
ロランにいたっては「交通費と食事代ですよ」と臨時のお小遣いまで渡してくれて。
アムロ「そういえばブライトがそんなチケットがあるって言ってたなあ。
俺に誰かと行けといってきたけど、その日はちょうど予定が満杯だったからな断ったんだった」
シロー「兄さんは忙しいですね・・・身を滅ぼさない程度にしてくださいよ
そういえば、その青いバラ、アイナも見たいと言っていたな」
ウッソ「やっぱり、カップルで見に行く事が多いんですね・・・
そんな中で、園芸の話とか植物の生態の話とか・・・浮かないんでしょうか」
シーブック「でも、本来は園芸技術展覧会なんだろ?そう気負わなくたっていいとおもうぜ」
カミーユ「そうそう。ウッソとハサウェイとかの中学生じゃ社会科か理科の宿題かって思われるのが落ちだって」
ウッソ「そうだといいんですけど」
836 名前:ブルーローズ騒動2-2 :2011/11/20(日) 21:52:00.73 ID:???
あのコロニーのそばにはあのホテルがとか、あの温泉地がといいながら
各自のデートプランを立てるのを聞きながらウッソは自室に戻ろうとした。
シロー「そうだ、ウッソ」
ザフトの外郭団体の経営するコロニーの青いバラ、で
恋人のアイナとの約束以外を思い出したシローがリビングを去ろうとするウッソに声をかけた。
シロー「キンケドゥが青いバラを盗むって署に予告状を出していたから―――
シーブック「なんとおおお!!」(そんな予告聞いていないぞ!)
アムロ「どうした、シーブック」
シーブック「え、えっと・・・」
ヒイロ「兄さんも
セシリー・フェアチャイルドとデートの予定があったようだ」(シーブック兄さんこれは偽物だ)
シーブック「そ、そう・・・まだ誘ってなかったんだけど、セシリーといってみたいなって」(すまん、ヒイロ)
シロー「全く、大きな声を出すなよ・・・
でも大丈夫だ、その日はグラハム警視正のフラッグ隊も待機するって言うからそう簡単に盗ませないさ」
アムロ「シローもコウ言ってるんだ、シーブックは早くデートの予定を入れてくるんだな」
シロー「とにかく、キンケドゥが来るかもしれないから気をつけるんだぞ」
ウッソ「はあい」
キンケドゥが出たらMSをおいてシャトルで向かうウッソは逃げるしかない。
ザフトの関連コロニーだから量産型のMSくらいおいてあるかもしれないけれど、
いまだにシローやグラハム率いる警官隊が捕まえることのできないクロスボーン・バンガードだ。
V2があったとしてもウッソ一人じゃどうしようもできないに違いない。
また、園芸コロニーデートプランについて話し続ける兄たちに気の抜けた返事を返すのだった。
ウッソ「という訳でキラ兄さん、今週末はハサウェイと出かけるんで」
キラ「そう?でもあのザフト園芸プラントってことは日帰りじゃすまないよね」
ウッソ「まあ、シャトル泊ですね」
キラ「ふーん。気をつけてね」
ウッソ「キラ兄さんまでキンケドゥがって言うつもりですか?耳タコですよ」
複数のモニターに囲まれた薄暗い自室に戻ると、ウッソは自分のパソコンを起動して
隣に並ぶ半ニートの兄にも一応の外出の予定を告げた。
あまり興味なさそうな兄の、あまり心配のかけらを含まないセリフにお腹いっぱいとばかりにため息をウッソは付く。
キラ「キンケドゥ?ああ、怪盗じゃなくって・・・シャクティに男の子と外泊なんて知られたらさ」
ウッソ「ちょっとキラ兄さん?」
キラ「ウッソ×ハサウェイとか、ハサウェイ×ウッソとか言い出すに決まってるよ。
しかも一緒に見に行くのが 「 薔 薇 」なんて、さ」
ウッソ「おかしいですよ!研修のようなものなんですよ!変な邪推しないでください!
僕はともかく、ハサウェイがかわいそうです!」
キラ「自分はいいんだwww」
ウッソ「諦めました」
838 名前:ブルーローズ騒動3-1 :2011/11/20(日) 22:13:38.43 ID:???
支援ありがとうございます!
案外短く切って書いてたので15より確実に少ないレス数で足りそうです!
****
『当コロニーの特別公開園芸展へようこそおいでくださいました。さまざまな先端技術を駆使したコーディネート・プラントをおたのしみください』
シャトルに乗って半日。
ハサウェイとともにザフト外郭団体の園芸コロニー・ユニウス7に降り立ったウッソ。
ハサウェイ「すごいね、このコロニー全部が植物の研究施設になっているのか」
ウッソ「一日で回り切れそうにないね」
ハサウェイ「今日は青いバラとザラ博士の講演会だけで我慢しよう」
ウッソ「そうだね、長期休暇に研修プランもあるみたいだし」
広大に広がる林や、農園のほかに、複数の温室や研究施設が立ち並ぶこの環境は、
園芸従事者であるウッソや、植物の生態に興味を持つハサウェイにとってはとても魅力的な場所だった。
とても魅力的な場所過ぎて今日来た目的まで忘れそうになって
二人はパンフレットの表紙に青い地球と共に写った「the Earth」の蕾の写真を見つめて苦笑いを見せた。
ウッソ「薔薇は研究棟の方だね」
ハサウェイ「多分あそこかな、警備員おおいし」
839 名前:ブルーローズ騒動3-2 :2011/11/20(日) 22:15:00.26 ID:???
パンフレットに書かれた研究棟の場所を探そうと大きな立て看板の地図を見上げる。
???「えっと、研究棟、研究棟」
その横から聞こえる聞いたことのある声にウッソはハサウェイの体の横から顔をのぞかせて声の方を見た。
ウッソ「あ、トビアくんじゃないですか」
トビア「あ!キン・・・シーブックさんの」
ウッソ「弟のウッソ・エヴィン・Gです。」
ハサウェイ「ウッソ、彼は?」
驚いた声を上げるウッソとトビアに状況を飲み込めないハサウェイが紹介を求めて問いかける。
ウッソ「シーブック兄さんの友達で」
トビア「エアグライダー同好会の後輩のトビア・アロナクスです。よろしく」
ハサウェイ「僕は
ハサウェイ・ノア、よろしく」
名前を名乗り合って握手をする二人。
ハサウェイ(あれ?この感じどこかであったことが?
でも・・・学校でもないし。普通の子だからマフティー関係で・・・なんてないよね)
トビア(どこかであった・・・訳ないよな・・・
植物監察官候補って、優等生なんだし、クロスボーン・バンガード関係でばったり、なんてまさか)
惹かれあう・・・のはスタンド使いで、闇稼業の人間がそうそう引かれ合うはずがない。
どこかあったことのあるような、そんな不思議な感覚にハサウェイとトビアは首をかしげた。
ウッソ「ところでトビアくんはどうしてここに?」
トビア「トビア、でいいって、シーブックさんから聞いたけど、同じ年なんでしょ、ぼくたち。
アルバイトの運送屋のしごとでね・・・ちょっと」
(キンケドゥさんに偽キンケドゥの見張りを頼まれてるのは言えない!)
ウッソ「ブラックロー運送だっけ。こんなとこまで運ぶなんて大変だね」
ハサウェイ「今は休憩時間なの?」
トビア「うん、一応ね。何かあったら無線でよばれるから」
840 名前:ブルーローズ騒動3-3 :2011/11/20(日) 22:16:33.85 ID:???運送屋バイトの休憩中のトビア(実は偽キンケドゥ出没待ち)も一緒に研究棟に向かう3人。
青いバラが飾られた研究棟は長蛇の列だった。
トビア「これが青いバラ・・・」
ハサウェイ「写真どおりだ」
ウッソ「こんな技術が生まれただなんて」
防弾仕様の厚いガラスの奥に飾られた青いバラの花は、本当に地球のような青さを持っていた。
肉厚の花びらはまるでペンキを塗ったように青く、その下のがくの緑がまるで大地を表しているようだった。
トビア「確かに、盗みたくなる気持ちもわからなくはないかな(盗まないけど)」
ハサウェイ「そう?僕は・・・怖いよ」
ウッソ「怖い?僕はけっこう好きだけど。
でもまだ研究室でしか栽培しちゃいけないんだよね姉さんに鉢植え頼まれたけど
アプローズで我慢してもらわなきゃ」
トビア「ハサウェイはどこが怖いの?こんなに綺麗なのに」
ハサウェイ「綺麗なんだけどさ、この青に吸い込まれそうで」
ウッソ「確かに、ずっと見てると地球の引力みたいに引きずられてきそうだ」
トビア「そう、かなあ・・・コロニーからみた地球にそっくりできれいじゃないか
ぼくがスペースノイドっていうのもあるかもしれないな」
薔薇の青を名残惜しそうに見つめながら研究棟をあとにすると、
三人はその脇に設営されたおみやげ売り場を眺めていた。
ウッソ「えっと、これは姉さんに、こっちは兄さんたち・・・
アルとシュウトにはこれと」
トビア「すごい量だな」
ウッソ「兄弟多いからね。旅行なんて行ったら帰りの荷物がパンパンになっちゃうよ」
ハサウェイ「たしか宅配サービスあるって書いてあったよ」
紙袋何個持っているんだというウッソにハサウェイとトビアが驚いた顔をする。
ウッソ「でもあれってかなりの日数かかるって言うから、ダメだよ。兄さんたちはともかく、姉さんが・・・」
トビア「じゃあ、うち使ってくれよ!
どうせ
日登町に帰るだけの便だし。キン・・・シーブックさんにはお世話になってるから!
ハサウェイも、さ!明日には届けるよ!」
ハサウェイ「え?僕はそんな荷物多くないからいいよ」
トビア「でも、ふたりとも鉢植えもあるんだから、そういうのはプロに任せてくれって!」
ウッソ「じゃあ、お願いしようかな」
ハサウェイ「じゃあ、僕も」
トビア「まいどありー!」
どこからともなく「ブラックロー運送」と書かれたカートを引っ張ってきたトビアはソレに二人の土産物を乗せると、
コロニーの関係者にスタッフ証を見せてシャトル発着ポートへ持っていくようにと指示を出していた。
841 名前:ブルーローズ騒動4-1 :2011/11/20(日) 22:18:03.87 ID:???
ウッソ「さて、ザラ博士の公演まで時間あるけどどうする?」
ハサウェイ「そろそろお昼とかどう?母さんが二人で食べろってお弁当作ってきてくれてさ」
ウッソ「僕もロラン兄さんのお弁当があるんだよね、二人で食べてって
でも、いくら男子中学生だからってこの量はおかしいですよ!兄さん!」
ウッソとハサウェイが取り出した弁当は食べざかりの中学男子でも手に余るほどの弁当だった。
ハサウェイ「トビア、まだ時間はある?」
トビア「あ、うん。まだ連絡こないし」
ウッソ「じゃあ、一緒に御飯にしよう。トビアもお腹すいたら仕事にならないよね」
トビア「うん、じゃあいただこうかな・・・・・・・って、なんとお!!」
トビアとウッソ、ハサウェイの三人の前に広げられたのは重箱3段分はあろうかという弁当だった。
ハサウェイ「味は保証するよ・・・でも(もぐもぐ」
ウッソ「量がおかしいんだよね(もぐもぐ」
トビア「余ったら、帰りのシャトルで食べればいいんじゃないかな。(もぐもぐ
僕も夜食分で貰いたいくらいの味だよ」
おいしいけれどおかしな量の弁当を三人で仲良くつついている時だった。
ドカアアアアアアアアアン!!!
さっきまでいた研究棟から大きな爆発音が聞こえた。
爆発音に続いて粉塵を交えた爆風が三人をおそう。
ウッソ「まさか!」
ハサウェイ「キンケドゥか!?」
トビア(違うけど、違うって言えない!)
弁当はさておき、三人は避難する見物人を押しのけて現場へと走る。
そこにはドクロマークのついたガンダムタイプのMSがあった。
トビア(F97-Eだ!カラーリングはキンケドゥさんとそっくりだけど、これは、違う!偽物だ!)
空を見上げてトビアは心のなかで叫ぶ。
シャトル発着ポートに行けば搭乗機体のX3がある。
でも、民間シャトルでやってきた友人二人をここにおいて一人だけ別行動することなんてトビアには出来なかった。
とにかく、ポケットに隠していたキンケドゥやザビーネといった他の仲間とコンタクトをとるための通信機のボタンを押した。
トビア「キンケドゥさん、ザビーネさん、偽キンケドゥ現れました!」
爆発音と逃げ惑うたくさんの人間の叫び声のお陰でトビアの通信は友人二人には聞かれていないだろう。
さて、ここからどうするかだ。
二人をおいて一人X3をかることもできない。
トビア(
どうすれば!)
844 名前:ブルーローズ騒動4-2 :2011/11/20(日) 22:33:59.69 ID:???
ウッソ「トビア、ハサウェイ、MSにはのれますか!?」
ハサウェイ「一応父さんの会社でジェガンに乗らせてもらったことはあるよ」(本当はΞに乗ってテロってるなんて言えない)
トビア「僕も、作業用MSの免許はある」(本当はX3に乗って海賊ってるなんて(ry
ウッソの問いかけに、二人は内心汗を垂らしながら頷く。
ウッソ「園芸コロニーと言ってもここはあのザフトの外郭団体だ。ザクやシグーくらいどこかにおいてあるはずだ!」
トビア「ウッソ、何しようっていうんだよ」
ハサウェイ「いきなり人が変わったように・・・」
おとなしい印象を持つウッソが感情に任せて混乱の現場を走り回っている。
その背中を応用に二人も走りだす。
ウッソ「警察はまだ当分来れないってスタッフが言ってたんだ。
そうこうしてるうちにあの花が盗まれるなんて・・・二人は、いいの?みすみす盗ませる、なんてさ!」
ハサウェイ「・・・・・いやだ。あれは、研究者の人の努力の結晶なんだ。そんな馬鹿なこと考える奴、粛清してやる!」
トビア「僕だって!(元はといえば偽物退治が任務だったんだし)あの青いバラは僕が守りますから!」
混乱するスタッフの目を盗んで三人は関係者用の入り口を進む。
トビア「たしか、運搬業者のポートの横に格納庫があったような」
ウッソ「多分そこに行けば!」
ハサウェイ「トビア、案内おねがいするよ」
非常階段のような金属でできた長く急な階段を駆け下りる。
早くMSを。
薔薇が盗まれる前に!
トビア「ここだ!」
ウッソ「これは、ザクじゃない・・・シグーか!」
ハサウェイ「これで・・・これがあれば!」
並んでいたのはシルバーグリーンに統一されたZGMF-515/シグーだった。
手馴れた様子でコックピットに登る三人。
ハサウェイ「気をつけて!ここはコロニーだ!」
ウッソ「わかってます、それにこんな所でミサイルなんか撃ったら」
トビア「一般人を巻き込まないようになるべく人気のない農場に誘いこむしか!」
メインスイッチを押してOSを起動させる。
PS装甲に改変してあるシグーの外装に段々と色が乗って行く。
ハサウェイ「ハサウェイ・ノア行くぞ!」
トビア「トビア・アロナクス、行ってきます!」
ウッソ「ウッソ・エヴィン、行きます!」
三機のシグーのスラスターが全開になる。
ハサウェイ、トビア、ウッソという順番で格納庫から飛び出し、地上の「偽」キンケドゥに向かう。
青い花を…「地球」のなを冠した一輪の薔薇を守るために。
最終更新:2015年04月30日 19:19