304悪魔の争奪戦 1/122017/05/02(火) 15:49:07.55ID:9KjngwfG0
☆注意☆
  • ちょっと真面目な話
  • シーマ様がちょいワル
  • 独自設定と独自解釈
  • 強引な展開とご都合主義
  • 万能セーフティシャッター

以上に注意したうえでご覧ください。

305悪魔の争奪戦 1/122017/05/02(火) 15:50:41.60ID:9KjngwfG0
ついに俺にも運が向いてきた。クロッカはそう思っていた。ひょんなことから廃棄された工場を見つけ、探索したら偶然ガンダムを発見したのである。
近くにあった資料にはどこぞの悪魔の名前が書いてあった。悪魔の名前を冠したガンダム。最近ウワサのガンダム・フレームとかいう奴かもしれない。どちらにしろ珍品だ。
乗れはしないが高く売れる。クロッカは小躍りしたが、面倒なことに非人道的であるという理由で阿頼耶識システム搭載の機体は販売が禁じられているので地球では売れない。
少し調べれば阿頼耶識システム搭載機ということなど簡単にバレるから、正規の方法で宇宙に上げることは難しい。どうするかと考えた末、ある人物のもとを訪れた。

「シャトルを借りたいって?」
裏社会でも一勢力を築いている女傑、シーマ・ガラハウだ。彼女なら、地球から秘密裡に抜けさせることもできると聞いたことがあった。
「わざわざ火星くんだりまでMSを売りに行くとは、よっぽど商売熱心なんだねェ」
「え、ええ。偶然ガンダムを見つけたんですが、俺には動かせないシロモノだと思いまして…」
「ま、あんたが何を運ぼうが知ったこっちゃない。アタシはあんたを宇宙に上げて、あんたは決まりに従ってアタシにカネを払う。シンプルだろ?」
「それじゃあ…」
「シャトルと宇宙港は手配してやるよ。宇宙に出てからのことまでは面倒見切れないけどね」
「あ、ありがとうございます!」


「火星…か」
おおかたの契約を済ませ、クロッカが出て行ったあとでシーマは渋面を作った。引き受けてはみたが、少し面倒なことになるかもしれない。
訳アリの積み荷の入ったシャトルを打ち出す。まあこれは今までさんざんやってきたことなので別に問題ではないし、問題になど"させない"。そのための宇宙海賊稼業でもある。
気がかりなのは積み荷と行先だ。火星にガンダムを売りつけに行くとか言っていたが、それが"同業のあいつ"の機嫌を損ねる――どころか、激怒させるような代物だった場合。
彼を敵に回すような事は避けておきたい。

「保険は用意しておくかね…」
こちらのビジネスも大事だが、それはそれ。何事も保険は大事なのである。

〇 〇 〇

「ここだな…」
クロッカがシーマと面会した、ちょうどその夜。
ダーツバー<アロウズ>の看板を確認したオルガは店の中へと入っていった。

「よう、ケナフ」
「来たな」
最近、裏社会で有名になっている噂があった。それは『悪魔の名前を持ったガンダムを拾ったバルチャーがいるらしい』というもの。
その真偽を確かめるべく、最近知り合った情報屋のケナフの話を聞きに来たのである。
「何にします?」
「水道水」
「………」
オルガが即答するとバーテンダーは特に顔色も変えずに水を出してきたが、なんとなく機嫌が悪そうに見えるのは気のせいではあるまい。
「バーに来て酒の一つも頼まないのか?」
「金がない。…そういうお前だってコーヒー牛乳じゃねえか」
しかも肴はチョコレート菓子の詰め合わせときた。このバーのメニューにあるのかケナフが自分で持ち込んだのかは知らないが、見るだけで口の中が甘くなりそうだった。
「違うぞ、これはカルアミルクと言ってだな…」

306悪魔の争奪戦 2/122017/05/02(火) 15:51:43.02ID:9KjngwfG0
「いや、そんなことはどうでもいいんだよ。…あの噂、本当なのか?」
「おそらく。噂の主は情勢不安定な場所でMS使って好き放題してるクロッカというバルチャー。あまりお行儀はよくないようだがね」
「そんな奴の話なんて、アテになるのか?」
「それも考えているさ。だが最近は周りに同じことを言って自慢して回っているようだし、妙に羽振りがいいという」
「…売り上げをアテにしてるってことか?」
「可能性はある」
「可能性、ね…それだけで判断するのか?」
「そこで、今日手に入れた最新情報が生きてくるのさ。そのクロッカが、シーマに火星行きのシャトルを手配してくれって頼み込んできたらしい」
「シーマ?」
「シーマ・ガラハウ。この辺りじゃ有名だよ。火星から来てまだ日が浅い君では知らないのも無理はないが…派手な火遊びをするなら彼女に一度は顔を通しておいたほうが良い」
「…で、そのシーマとクロッカに何の関係があるんだ?」
「焦るなよ。…シーマは私用のシャトルとヒミツの宇宙港を確保していてね。訳アリの連中や荷物を宇宙に上げている。…という噂だ」
「はぁ…」
「いまいち理解できていないような顔だな。いいか、地球では阿頼耶識システム搭載機を売ることも宇宙に上げることも禁止されているんだ。
 密売するにしたって足はつきやすいわ需要は低いわとろくなことがない。だが火星なら欲しがる金持ちも、使わせるのにうってつけな奴もいるから需要がある。
 ついでに足もつきづらい。そして、シーマに頼めばこっそり宇宙に上げてもらうこともできる。ここまで言えばわかるだろう?」
「つまり…地球で売れねえから火星で売り払うってことか!?」
「しッ。声が大きい」
「わ、悪い」
「…そういうことじゃないか、と私は推測しているわけだがね。後は実際に確認しなければわからない」
「ところで、そいつはいつ宇宙に出るんだ?」
「シーマの宇宙港の使用状況を見るに、明後日の正午ごろだろう。…何をする気かは知らないが、いちおう座標は送っておく。ここで張り込めばまず捕まるはずだ」
「…随分、詳しく調べたもんだな」
「私を誰だと思っている? この日登町…いや、世界で一番の情報屋ケナフ・ルキーニだぞ。そこらの情報屋と一緒にされては困る」
「それじゃ、こいつは礼だ」
オルガは数枚の紙幣を置いて、その場を立ち去ろうとして――ふと思い立った。
「…そういや、そのバーテン…俺たちの話聞いてたんじゃないか」
「ふむ。…なあリヴァイヴさん。私たちが何を話していたか、聞いていたかな?」
「それが最近ストレスが耳に来ているようで。何か話しているのはわかりましたが、内容はさっぱりです」
バーテンダーの言葉を聞いてケナフは満足そうにうなずき、どうだと言わんばかりに得意げな顔をオルガに向けた。
「まあ…いいけどな」
「変なことを聞いてすまなかった。特に関係ないが火星産のよく効く胃薬とアムロ・レイ・ガンダムの情報はきちんと送っておくよ」
「アムロさんの情報は要らないんですが…」
「君のところの家長に頼まれてるんだよ」
「………はァ」
それを聞いてリヴァイヴというバーテンダーは大きなため息をついた。なんだか苦労しているらしい。
「なんつーか…いつか良いことあるさ」
なんとなく他人事でないような気がしたので、慰めの言葉などかけてオルガは店を出て行った。


店を出たオルガは携帯端末を取り出し、ある男へのメッセージを作成する。

「火星の団長からチョコの人へ…と」
そう件名に記した後本文を完成させて、今日手に入れたデータとともに送信。
「(これでなんとかなってほしいもんだが…)」
引き受けてくれるかはわからないが、パイロットを破壊する非人道的なシステムを抱えた、火星に混乱を招くもの。
そんなものを火星に送りたいと思わないのは、『チョコの人』だって同じはずだ。半分の不安と半分の期待を胸に抱きながら、オルガは自分の家へと戻っていった。

307悪魔の争奪戦 3/122017/05/02(火) 15:54:12.75ID:9KjngwfG0
ギャラルホルン。増加の一途をたどる宇宙海賊の被害と、情勢不安定な火星絡みの犯罪の対策を行うために日登町警察に元から存在した宇宙海賊対策課と統合され生まれた組織である。
オルガが情報屋と話した翌日、そのギャラルホルンの本部の会議室である重大な報告がなされていた。
「新たなガンダム・フレームが発見されたらしい」
マクギリスがもたらしたその情報に、所員たちがざわめいた。
「…本当なのか?」

「ある筋からの情報だ。どこかのバルチャーが火星に持ち込もうとしているらしい」
マクギリスは昨夜、個人的に交流を持っている鉄華団の団長オルガからあるメッセージを受け取った。
いわく、『ガンダム・フレームらしきMSを火星に持ち込んで売ろうとしている奴がいる』という。ご丁寧に日時や出没する場所まで調べて一緒に送ってきた。
「その筋とは?」
「私独自のネットワークだ」
鉄華団はギャラルホルンでは要注意団体としてマークされている。
表向き貿易会社を営んでいるが、裏で海賊と通じていたりマフィアまがいの行為を行っているとの疑いがかかっているためだ。
貿易会社という割に、ガンダム・フレーム三機をはじめとした過剰な戦力を抱えていることも疑念を生む要因となっている。

この程度は日登町では珍しくないのだが、創設して間もなく経験も浅いギャラルホルンのメンバー達は疑いの目を向けている。
オルガが自分でやらず、マクギリスに情報を流してギャラルホルンにやらせようとしているのは自分たちが疑われていることに気付いているためだろうか。
「言えないというのか? 信用できんな」
そう言ったのはイオクである。出所不明の情報など信じがたい。そのあたりはほかのメンバーも同じようだ。
「そう言いたいのも理解できるが。厄介なのは、これが事実だった場合だ」
「犯罪組織に渡ると厄介…と言うわけか?」
「ああ。余計な騒乱の種になる。ガンダム・フレームの脅威は我々が一番よく知っているはずだ」

「…その情報は、本当に信頼できるの?」
「裏社会ではそれなりに広まっている噂らしい。拙いながら調べたが、いくらか似たような証言も手に入った。クロッカというバルチャーが、そんな話を周囲にしていたと」
「証拠は?」
「裏ルートで宇宙に上がろうとしているらしいことは掴んだ。何かを運び込むつもりなのは間違いない。
 それに、噂を信じた海賊やならず者がガンダムを狙いに現れる可能性もある。――いかがでしょう、ラスタル長官」
「ふむ…まあ最近は海賊の活動も落ち着いているし、ある程度であれば人員は割けるだろう。メンバーはどうするかね?」
「私に選定させていただきたいのですが」
「いいだろう。頼むぞ」
「はい。万全の態勢で臨みます」

308悪魔の争奪戦 4/122017/05/02(火) 15:57:38.68ID:9KjngwfG0
会議が滞りなく終わって、明日の作戦のことを考えるマクギリスのそばにやってきたのはギャラルホルンの重鎮であるセブンスターズの面々だった。
ガンダム・フレームが関わっているかもしれないとあって、興味が湧いたらしい。
「結局、メンバーはどうするんだ?」
そのうちの一人――ガエリオが聞いてきた。
「十体ほどのグレイズを連れていくつもりだ」
「それで大丈夫か? 海賊が乱入してくるかもしれないんだろ」
「バエルがいるから問題はないさ」
「あるでしょう。もし逃げられでもしたらギャラルホルンの恥になるじゃない。…私も行く」
「俺もだ。ガンダムが二体いれば失敗なんてあり得ないだろ?」
「…助かる」
カルタに続いて、ガエリオも立候補。これだけでも十分すぎる戦力だ。マクギリスは満足げに頷いた。
「ふ、ならば私も立候補しようではないか! 君のもたらした情報が真実かどうか、この目で見極めてやろう!」
そして、手を挙げた人間がもう一人。ギャラルホルン一のトラブルメーカー、イオク・クジャンであった。
「………」
「………」
沈黙が場を支配する。お前は要らない。三人は声をそろえてそう言いたかったが、相手は一応、セブンスターズの一員。そう粗末に扱うわけにもいかないし
何より彼の背後にいるジュリエッタの視線が痛かった。言葉にはしていないものの『お願いだから連れて行ってください』という想いだけは痛いほど伝わってきている。
「…ああ、わかった。よろしく頼む」
通常勤務になるであろうジュリエッタとしては、頼りにしているメンバーが三人も抜けるのだ。そのうえイオクのフォローまでさせるのは酷である。
マクギリスは固い表情で首を縦に振った。カルタが非難がましい目を向けてきたが、もはや仕方がない。ガエリオに至っては諦めたような笑みを浮かべていた。



〇 〇 〇

当日。グレイズ十体とガンダムバエル、ガンダムキマリス、グレイズリッター、レギンレイズで編成されたMS部隊はシャトルの現れるポイントを遠目から眺める形で待機していた。
「本当に来るのか…」
来ないのなら、それはそれでいいさ」
マクギリスは地球を見据えながら、ガエリオの疑問に答える。
「無駄に人員を使うのは褒められたことじゃないだろう」
その時だ。地球から、うっすらと小さな黒い影が現れた。クロッカのシャトルだ。
「…本当に来た」
まったく想定通りに現れたシャトルを見て、ガエリオが驚きの声を上げた。
「よし。しばらく待機し、もう少しこちらに近づいたら一気に近づいて相手を囲む。タイミングは私が判断する。いいな?」
『了解』
マクギリスの指示に対して、部下たちが返答する。イオクとカルタとガエリオも下手に動き回ることはせず、おとなしく待機していた。
激しやすいカルタや無駄にアクティブなイオクが暴発する危険性はあるが、イオクはシャトルから一番遠い位置に配置してあるし、カルタも自分のそばに置いているので
いざとなれば止められる。そんな中、一機のMSがシャトルに近づいていることに気が付いた。
「あれは…なんだ?」
レーダーを見れば、味方は全員自分の指示通りに待機している。ならばあれは?
「あのMSは…」
「!」
モニターに拡大されたその姿を確認し、一同は大きくどよめいた。
黒いボディ、胸の特徴的な髑髏マーク、そして右腕に備えられた巨大な槍。
かの宇宙海賊ビシディアンの頭領キャプテン・アッシュの愛機。"ダークハウンド"の名で知られるMSがそこにいた。

309悪魔の争奪戦 5/122017/05/02(火) 15:59:33.68ID:9KjngwfG0
宇宙海賊やならず者の類が来てもおかしくないとは思っていたが、まさか宇宙海賊ビシディアンのリーダーが一人でやってくるとは。その場にいたギャラルホルン一同は驚愕していた。
「まさか、あんな大物が釣れるなんて…」
「焦りは禁物だ。まずは気付かれないように奴を包囲して集中攻撃を…」
「一人を相手に大勢でかかるなど主義に反する。奴は私一人で捕らえてみせる!」
「カルタ!」
突撃していくカルタのグレイズリッターにつられて、ほかの隊員もアッシュを包囲すべく移動を開始。マクギリスのバエルとガエリオのキマリスも仕方なくそれに続いた。
今までさんざん逃してきた大物宇宙海賊、ビシディアンの頭領を捕らえる絶好のチャンス。マクギリスとしては焦らず確実に捕らえたいところだったのだが。
「下賤な海賊め。どうせガンダムを利用して暴れるつもりなのだろう…許せん!」
「待て。奴は我々が叩くので、クジャン公は積み荷の確認を――」
「イシューにばかりいい顔はさせん! うおおおお!」
しかもカルタに釣られてイオクまで突撃する始末。
「邪魔をするな、イオク! 奴は私の相手だ!」
変なスイッチが入ってしまったカルタが叫ぶ。配属されてから今までずっと逃げられていたキャプテン・アッシュとの"決闘"に、カルタの騎士道精神が暴走したらしい。
このまま割って入れば自分たちまで巻き込まれかねない。実際、彼女らの間に突撃したイオクは撃墜されないまでも接近を試みてはダークハウンドとグレイズリッターの双方に蹴り飛ばされていた。
「………」
「………愚痴は帰ってから思い切り話そう」
遠距離支援用の機体で接近戦を挑むなとか、大物相手だから慎重に確実にやるべきだとか色々と言いたいことはあったが、言っても無駄だろう。
盛大な溜息とともに、マクギリスはガエリオとともにシャトルのチェックを始めたのだった。


「ギャラルホルンがなぜここにいるんだ…!?」
キャプテン・アッシュ――アセムは非常に驚いていた。警察が信憑性に乏しい噂を信じて動くわけがないと高をくくり単機でやってきたのは失敗だった。
シーマからガンダム・フレームらしきMSを火星に売りつけようとしている男の情報を受け取ったのが、おとといのことだ。
ガンダム・フレームの危険性を身内の三日月を見て痛いほど知っていたアセムは、新たなガンダム・フレームが火星に持ち込まれることを防ぐべくやってきたのである。
「キャプテン・アッシュ、覚悟!」
「く…」
カルタの駆るグレイズリッターの怒涛の攻めを受け流し、戦術的に理解不能なタイミングで飛び込んでくるイオクのレギンレイズを蹴っ飛ばしながら、アセムは分析する。
今戦っているグレイズリッターを倒せたとしても、敵の背後にはまだ二機のガンダムと十数機のグレイズがいる。対するアセム側の戦力はダークハウンド一体だけ。
こんな状態で目標の達成は不可能だ。態勢を立て直して出直すしかないが、むこうも簡単に逃がしてはくれないだろう。
「隙あり!」
「しまった…!」
思考に引っ張られて集中力を鈍らせたか。グレイズリッターのナイトブレードにダークハウンドの左腕を飛ばされ、体勢が崩れる。すぐさま次の一撃がくる。防御も回避も間に合わない。
「勝っ――!」
敗北を覚悟したアセムだったが、勝利を確信したカルタの歓喜の声はグレイズリッターの真横から飛んできた巨大な光の柱に飲み込まれていった。

311悪魔の争奪戦 6/122017/05/02(火) 21:18:43.45ID:9KjngwfG0

「何が起きた!?」
ガエリオが叫ぶ。どこからか飛んできた巨大なビームが、カルタ含む周囲に展開していた部隊を飲み込んだのだ。
ビームも実弾も防ぐナノラミネートアーマーといえど、あまりに威力の高い攻撃は防げない。周囲にはMSの残骸が散らばっていた。
無事なのは、シャトルの点検をしていたガエリオのキマリスとマクギリスのバエルだけだった。
ちなみに、シャトルを動かしていたクロッカは手錠をかけられた状態で小型艇に乗せられ、地上のギャラルホルン本部に送り返されている。

「各員、無事か?」
「ふっ、当然だ」
そんな状況で、冷静に呼びかけたマクギリスの問いに一番に答えたのがイオクだった。一応彼も直撃を受けて機体が吹き飛んだはずなのだが、どうやら無事らしい。
得意な顔が見えるようだ。ギャラルホルンに所属するMS全てにセーフティシャッターを導入させたのが功を奏した。
カルタも他の隊員も、モニターは死んでいるが回線は生きている。わずかだがうめき声のようなものも聞こえるので、生きているだろう。その事実は二人を安堵させた。
「ビシディアンめ、あんな隠し玉を持っていたとは…!」
「………」
怒りに震えるガエリオに対し、マクギリスはいくつかの疑問を覚えていた。――下手をすればダークハウンドを巻き込みかねないような砲撃を、あの状況で使うのか?
そもそも、キャプテン・アッシュは自分たちがここに展開していることを想定していなかったように思う。想定していれば一機だけでここには来ないはず。
捕まりかけたアッシュごと自分たちを排除するつもりだったのかもしれないが、ビシディアンがあんな兵器を持っているなど聞いたことがなかった。
「キャプテン・アッシュ…見つけたぞ!」
「待て、ガエリオ!」
マクギリスの静止もきかず、隕石の影に隠れていたダークハウンドを補足したガエリオが、キマリスを高機動形態に変化させ突撃する。
そのキマリスのグングニルをダークハウンドのドッズランサーが防ぎ、火花を散らせた。

「ビシディアン、よくもあんな汚い真似を!」
「あれは俺たちじゃない!」
アセムとしても大いに戸惑っていた。ビシディアンにあんな威力のある武器などなかったはずだ。
自分もギリギリで範囲から外れたから助かっただけで、もう少しずれていたら自分も巻き込まれていただろう。

「嘘をつくな!」
だがあの砲撃、どこかで見たような…アセムはそう感じたが、怒りのままに攻めてくるキマリスの攻撃を避けることに意識を集中する。
「く…」
片腕を失ったダークハウンドと、万全な状態のキマリスとバエル。キマリスのパイロットは頭に血が上っているおかげで攻撃を読みやすいが、それでも不利なことに変わりはない。
「だが!」
負けられないのだ。高機動には高機動で対応する。急加速させて距離を取る。疲れで頭に靄がかかったようだったが、アセムは靄の中に確かな光を感じていた。

「これが奴の本気…!」
手負いの獣ほど恐ろしいとはよく言ったものだと思う。時間が経つごとに動きが鋭くなり、こちらのわずかな隙も見抜いて的確に突いてくる。
そんなダークハウンドを見てガエリオは驚嘆していた。機体ごしであっても感じる強烈な気迫を受けて、こちらも本気でかからねば負けると本能が告げていた。
「海賊でなければいいライバルになれただろうに!」
相手が本当に優れたパイロットであると認めたガエリオは声に悔しさをにじませた。
ガエリオは今まで収集したビシディアンとの交戦記録から、ダークハウンドにナノラミネートアーマーを貫くほどの威力を持つ射撃武器はないと推測していた。
実際その通りのようで、ダークハウンドが使ってくるのは右腕のランスのみ。それしか対抗手段がないのだろう。だが遠距離戦が苦手なのはキマリスも同じ。
「ちィ…!」
何度目かの交差。お互いの槍は機体をわずかにかすめる形となり、再び離れる。これではらちが明かない。

312悪魔の争奪戦 7/122017/05/02(火) 21:20:01.84ID:9KjngwfG0
「あのビシディアンを率いるだけはあるということか…!」
手負いでありながらもこちらと互角以上に立ち回る男。その脅威をガエリオは改めて認識した。今までとはくらべものにならない強敵とのギリギリの戦い。
精神の負担もかなりのものだ。これ以上長引かせるのはまずい。
「次で…決める」
一方でアセムもガエリオに脅威を感じていた。ダークハウンドにここまで食いついてくるとは。あのガンダムの性能もさることながら、パイロットも一流だ。
「あいつらへの認識を改めければならないな…」
最近結成された日登町警察の付属組織ギャラルホルン。金持ちの面子と道楽のためにだけ作られたお飾りの組織だなどと一部で囁かれていたが、とんでもない。
アセム自身そんな話を頭から信じていたわけではないが、このレベルの相手がいるというのは想定外だった。戦いが長引いたこともあり、疲労も機体ももう限界だ。
「次が勝負…だな」

二機のMSが、己の槍を携え再び接近する。
「「うおおおお!」」
両者とも、これで最後のチャンス。喊声とともに突撃する。

「なんだ…!?」
接近してくるキマリスの動きに違和感を感じたのはアセムだった。先ほどまでと動きが違う。まるで、こちらの攻撃を受けることを前提にしているようだ。
「刺し違えてくるつもりか!?」
「お前は強い…だから、刺し違えてでも!」
両者が接近。お互いの槍が触れ合う、その直前。
「今!」
ダークハウンド胸部の髑髏が発光。ガエリオは閃光に視界を奪われ、照準がずれた。その結果。
ダークハウンドのドッズランサーはキマリスの腹部を、攻撃がずれたキマリスのグングニルはダークハウンドの右肩をそれぞれ貫いた。

やられた。落胆するガエリオに一本の通信が入る。
「…今回は、こちらの負けだな」
聞き覚えのない声。映像もないが、この状況で通信できる人間など一人しかいない。
「まさか…キャプテン・アッシュか?」
「そうだ」
驚いた。彼がわざわざ通信を送ってくるとは。
「冗談じゃない…勝ったのは貴様だろう」
「これでは目的が果たせそうにないからな」
そう言われ、ガエリオは本来の任務をすっかり忘れていたことに気付く。シャトルに積まれたガンダムを回収することがお互いの目的なのだ。
今頃、ガンダムはマクギリスが回収しているはず。それに相手は致命傷こそ避けているものの、機体はボロボロ。今からマクギリスを追えるような余力はないだろう。
「悔しいが、今回はそちらに譲る。だが、もしそれが原因で火星の人間を悲しませるようなことがあれば全力でギャラルホルンを叩き潰す。覚えておけ」
「なに?」
その言葉にガエリオは戸惑った。火星近辺に出没し、輸送船などを狙う悪逆非道の宇宙海賊。それがガエリオの持つビシディアンのイメージだったからだ。
自分で火星の人々を脅かしているのに、今度は彼らを思いやるようなことを言う。まったく意味が分からなかった
「…さて、最後に一つ、聞いていいだろうか」
「なんだ」
「君の名前を教えてほしい」
思いもよらぬ問いにガエリオは面喰らった。何のつもりだろうか。疲れた頭では全く考えが回らない。
「………ガエリオだ。ガエリオ・ボードウィン」
答えてなどやるものか。そう思っていたのに、口から出たのは自分の名前だった。
「ギャラルホルンのガエリオ・ボードウィンか。覚えておく」
アッシュは楽し気にそう言った後、ダークハウンドは自ら右腕を切り離し、そのままどこかへと消えていった。
「………完敗だな」
結果的には相打ちだったともいえるが、そもそもが有利な状況で始まった勝負。相打ちと認めるわけにはいかなかった。
だがあのキャプテン・アッシュと互角に戦いあと少しのところまで迫った上、本人から名前を覚えておくとまで言われた。
不思議な充足感を感じながら、疲労のピークを迎えたガエリオは気を失った。

314悪魔の争奪戦 8/122017/05/02(火) 21:26:03.16ID:9KjngwfG0
キマリスとダークハウンドが激戦を繰り広げる中、本部に救援を要請したマクギリスはシャトルの回収作業に入ろうとしていた。
できるなら助太刀に入りたかったが、キマリスとダークハウンドの超高速戦の間に入ったところで、余計な混乱を招くだけ。
それにガエリオとキマリスならば、いかにキャプテン・アッシュ相手といえども問題なく戦えるだろうとも思っていた。
ならば自分がやることは、任務の遂行。ガンダム・フレームの回収だ。バエルを動かし、シャトルの貨物コンテナを掴もうとして――すぐに飛びのいた。
長く伸びたMSの腕が、先ほどまでバエルが居た場所を貫いていた。
「意外と勘が良いな」
通信。伸ばされた腕が戻されていく。その先には、紅に彩られた一体のMSの姿があった。
――ガンダムヴァサーゴ・チェストブレイク。それがこのMSの名前だった。

ヴァサーゴとバエル。悪魔の名を冠した二機のガンダムが相対する。
「まずは自己紹介が先かな? 私はシャギア・フロスト。――フリーのMS乗りだ」
ヴァサーゴからの通信。慇懃な口調だが、声はマクギリスが思っていたより若かった。
「私は日登町警察・ギャラルホルン所属のマクギリス・ファリドだ。…貴様、何者だ」
「何度も繰り返させないでほしいな。言っただろう、フリーのMS乗りだと」
「フリーのMS乗りが、なぜこんなことをするのかと聞いている」
「ある人に頼まれたのだよ、そのシャトルの積み荷を回収しろとね。邪魔者はほとんど消し飛ばしたつもりだったが…」
邪魔者を消し飛ばした。その言葉に、マクギリスは先ほどの砲撃を思い浮かべた。
「まさか、あの砲撃は…」
「ご明察。全滅させるつもりで撃ったのだが、君らが残ってしまったというわけだ」
あの規模の砲撃をそう何度も撃てるはずがない。わざわざ姿を見せて襲い掛かってきたことから考えて、あのビームはもう撃てないのだろう。
「ならば、今すぐMSを放棄してこちらの指示に従え。――公務執行妨害、器物破損その他の罪で君を逮捕する」
「この状況で、私が大人しくそちらの要求を受け入れるとでも思っているのかな?」
「要求が受け入れられないのならば、このバエルで捕らえるまでだ」
その言葉を最後に、通信は切断された。沈黙の中、ヴァサーゴもバエルもしばらく動きを止めた。
――そのまま何分経ったか。両者が動いたのは同時だった。

ヴァサーゴが両腕のストライククローで攻撃をかける。バエルは持ち前の機動力でそれをかわし、バエル・ソードを携えてヴァサーゴの懐目がけて突っ込ませる。
「ほう…?」
対するシャギアも少し驚いたようだったが、それだけ。ヴァサーゴの腹部を展開し、メガソニック砲で迎え撃つ。
「くッ…!」
威力が低めな腹部の砲門での攻撃ということもあって、ナノラミネートアーマーの助けで切り抜けたものの光ばかりは防ぎようがない。
そうして怯んだ隙を突き、伸ばしたストライククローをバエルの両肩を目がけて打ち込もうとするが、バエルは真上に飛んで回避。再びヴァサーゴに迫る。
最初はビームの光でひるまされたが、二度目はない。
「捕った!」
バエル・ソードで一撃を与えようとして、バエルは動きを止めた。近くで爆発を感知したのだ。それだけならいい。――キマリスの反応が消えていた。
「まさか、ガエリオ…」
「よそ見はよくないな」
倒されてしまったのか?
一瞬の動揺で生まれた隙を狙い、再びヴァサーゴのストライククローが迫る。これを回避し、反撃に移ろうとした瞬間。大きな振動とともにバエルの動きが止まった。
「なに…!?」


何が起きたのか。確認すると、いつの間にやら背後に現れた蟹のようなMA――ガンダムアシュタロンのギガンティックシザースがバエルの胴を掴んでいた。
どうやら、シャトルの影に隠れていたようだ。ヴァサーゴが敵を追い立て、本命のアシュタロンで捕まえる。これが敵の狙いだったのだ。
「注意力散漫だね」
「仲間がいたのか…!」
アシュタロンのギガンティックシザースが、音を立てながらバエルの装甲に食い込んでいく。どうにか抜け出そうと試みるが、凄まじい力で掴まれた機体は全く動かない。

315悪魔の争奪戦 9/122017/05/02(火) 21:33:12.49ID:9KjngwfG0
「暴れたって無駄さ。アシュタロンのギガンティックシザースに捕まって自力で抜け出せたMSなんていないんだからね」
「悪いがマクギリス・ファリド。あの積み荷は我々が頂いていく」
「貴様ら…ガンダム・フレームを奪ってどうするつもりだ」
「ガンダム・フレームだって?」
アシュタロンのパイロット――オルバが、驚きと嘲笑を含んだ声を上げた。
「予想の通り勘違いをしていたらしいな」
「なに?」
「あれはガンダム・フレームなどではない」
ヴァサーゴにあっさりとそう告げられ、マクギリスは愕然とする。
「嘘をつくな。悪魔の名を冠したガンダムなど、ガンダム・フレーム以外に…」
「あれはガンダムベルフェゴール。まあ悪魔の名前ではあるんだけどさ。ソロモン七十二柱の悪魔にベルフェゴールなんてのはいないだろ? …まったく関係ないのさ」
「それに、悪魔の名を冠したガンダムはガンダム・フレームの専売特許ではない。ここにウァサゴとアスタロトがいるのが、その証拠だ」
「真似されたみたいで、良い気持ちはしないよね。どっちが先に作られたかなんて知らないけどさ」
マクギリスにとって衝撃的な事実を次々告げられる。つまり、自分たちは無関係のMSをガンダム・フレームと勘違いして追っていたわけだ。
全身から力が抜けるような感覚だった。密輸犯であるクロッカは逮捕できたので全くの無駄骨ではないとはいえ。
「じゃ、そういうわけだから。これで仕事は終わり。じゃあね」
「それなりに楽しい戦いだったが、これで幕引きだ。ではマクギリス・ファリド、機会があればまた会おう」
そう言い残して、二機のガンダムは離れていった。アシュタロンのギガンティックシザースによってコックピットのギリギリまで挟み切られたバエルは、そのまま放置された。
「まだ、強くならなければな…」
ガンダムバエルの力を出し切れなかず、自身の油断と気の緩みがこの敗北を招いた。マクギリスはそう考えていた。やはり、自分はまだまだだ。
悔しさと自嘲が混じった笑みを浮かべながら、マクギリスはバエルとともにしばしの宇宙遊泳を楽しむこととなった。
半壊したバエルとキマリス、そして壊滅的な被害を受けた部隊はしばらくしてやってきた応援の部隊に回収されたが、シャトルが運んでいたコンテナはすでに持ち去られていた。


〇 〇

場面は変わり、ビシディアンの母艦。どうにか帰還したアセムがクルーに説教を受けていた。
「まったく…どれだけ心配したと思ってんですか!」
「すまん…まさかこうなるとは思わず」
シャトルの襲撃くらい一機で十分だと思っていたし、出撃の目的にアセムの私情も絡んでいたからクルーには何も言わずに出撃したのだが
まさかギャラルホルンとかち合うとは思っていなかった。
「しかもガンダムまでボロボロにして! うちだって資金繰り苦しいんですから気を付けてくださいよ!」
「わかった、わかった…それより、他のクルーや海賊にも通達を頼みたい」
「なにを?」
「ギャラルホルンに所属してる槍を持ったガンダムとグレイズのカスタム機。どちらも強敵だから注意するようにと」
今回戦った強敵を思い出し、にやりと笑う。いずれまた戦ってみたいものだ。特に、あのガエリオという男とは。
「何笑ってんですか。整備員たちの前に突き出しますよ」
「それはちょっと勘弁してほしいな…」
今回の反省や分析より、まずは怒っているクルーたちをなだめるのが先だ。休養もそこそこに、アセムはブリッジへと歩いて行った。

316悪魔の争奪戦 10/122017/05/02(火) 21:41:47.83ID:9KjngwfG0
数日後。
ギャラルホルン本部では、セブンスターズの四人が憤怒の表情をたたえたラスタルの前に並ばされていた。
「別に誇りやこだわりを持って職務に当たるのは構わん。構わんが…それで敵を逃がした挙句、目的も達成できないとはどういうことか!?」
「お言葉ですが長官。我々は悪くありません。卑怯なあちらが悪いのです」
「今回ばかりはクジャン公に同意します」
力説するイオクに、不機嫌そうに同意するカルタ。勝利目前で死角からの攻撃を受けてリタイアしたことがよほど悔しかったらしく、頬には悔し涙の跡が見て取れた。
「ふざけるな!」
対して、ガエリオとマクギリスは大人しく叱咤を受けていた。
「ラスタル所長がここまで怒るのも珍しいな…」
「事実上の任務失敗。しかもガンダムをボロボロにしたんだ。仕方がない」
それに加えてガンダム・フレームと思っていたものが実は普通のMSでした、というオチまでついた。
これほどの大失態である。作戦を提案したマクギリスにしてみれば何を言われても仕方ないと思っていた。
「これはこれで貴重な経験だと思うしかない」
実際キャプテン・アッシュとの戦闘データが収集できたことや、自分たちの実力や弱点を確かめるいい機会だった。こうして叱られるのも、彼らからしてみれば貴重な経験と言えないこともない。
「そこの二人もだ! 聞いているのか!」
「はい!」
「失礼しました」


なお、クロッカがどうやって管制に気付かれずに宇宙に上がったのかは結局不明なままだった。シャトルは自分で用意して自分で飛ばしたと言っていたが
辺境の一バルチャーである彼にそんなことができるとは思えない。しかしどうやってもそれ以外のことを話さないし、周辺を調べても何も出てこないのだからそれで納得するしかなかったのだが
他にも、奪われたベルフェゴールの所在やフロスト兄弟の依頼人など、様々な謎を残しながら
この事件はフロスト兄弟の一人?勝ちという、ガロードが聞けば大変驚愕するような結果で幕を閉じた。



かに思えた。

317悪魔の争奪戦 11/11(計算間違えた)2017/05/02(火) 21:44:46.35ID:9KjngwfG0
それからさらに数日が経過したある日のこと。
「久々に悪役をやれた上に大勝利なんて実に気分がいいよね、兄さん」
「そうだな、オルバよ…む?」
日登町の街角。何をどうやったのか地上に降りたフロスト兄弟であったが、その二人に近づく複数の人影があった。
そのうちの一人がシャギア達に声をかけた。
「シャギア・フロスト、それにオルバ・フロストだな?」
「そうだが、それが?」
男の一人は懐から手帳を取り出し、二人に開いて見せた。日登町警察の警察手帳。そこにはギャラルホルンの紋章と、見覚えのある名前があった。
「日登町警察、ギャラルホルン所属のマクギリス・ファリドだ。器物破損、公務執行妨害その他の容疑でお前たちを逮捕する」
「…これは油断したね、兄さん」
「まさか地上まで追ってくるとは。公権力の執念とは恐ろしいものだな」
そんなわけで、二人はあっさりと逮捕された。

逮捕された二人は、そのまま取り調べを受けることになったのだが。
「ええと、お二方の容疑について…」
「ギャラルホルンの部隊が展開していたところにサテライトランチャーを撃ったよ」
「あと、マクギリスという男がガンダムを回収するところを妨害したな」
「兄さんと交戦してたガンダムをアシュタロンのギガンティックシザースで真っ二つにしようとしたんだけど、あのセーフティシャッターだっけ?
 それが引っかかったせいで中途半端になっちゃってさ。無力化はできたから放置して、ガンダムを回収して依頼人に引き渡したよ」
「そ、そうですか。それでは…」
「「依頼人は新連邦社社長のブラッドマン」」
「………」
とまあ、こんな感じで。捕まった二人は呆れるほど素直に犯行を認めた。しかも聞いていないことまでペラペラと喋ったため、尋問を担当したジュリエッタは大層困惑したという。
ここまであっさり自供されると逆に疑わしく思う者もいたのだが、新連邦社の捜索と聞き込みの結果、間違いなくあのガンダムが搬入されていたことが判明。
そのころにはベルフェゴールはすでに解体されており修復もできない状態となっていたが、余計なことに使われる心配もなくなったと言える。
実行犯の二人と、それを指示したブラッドマンはそれぞれ留置場送りとなった。


ちなみに留置場に入れられたフロスト兄弟は三日で脱獄した。オルバの独房には代わりに気絶したイオクが放り込まれ、
その額には『食事が思ったよりまずかったので出ていきます』と書かれた紙が貼りつけてあった。
何らかの手段でイオクを独房に呼び寄せて牢を開けさせ脱獄したとみられ、週に一度イオク除くギャラルホルン職員に配布される『イオク様に絶対やらせてはいけないことリスト』に
『イオク様を絶対に囚人に近づけさせないこと』という項目が付け加えられたという。

そのうえ、イオクのチョロさが囚人たちに露呈してしまったことで留置場にはイオクとの面会を求める囚人が大量に発生するという珍事が発生。
一躍囚人たちのアイドルと化したが、その理由に全く気付いていないイオクの対処に周囲は頭を抱えたという。
最後の最後まで周囲を振り回した挙句、平然と逃亡したフロスト兄弟はまだ日登町慣れしていないギャラルホルンのメンバーに色々な意味で恐れられることとなり
関わりたくないけど何かの拍子に関わりかねない、とても面倒くさい要注意人物として伝えられていくことになるのだった。

おわり



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最終更新:2017年10月18日 23:05