113オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2021/03/28(日) 21:52:52.00ID:NuARB5/f0
AM 07:12 アクシズ外縁
キラ「シャアさーん、もういい加減出てきてくださいよ」
シャア「拒否するゥ!」
ファラ「音がしなくなったんで出てきてみたら……なにやってんだいアンタたち」
キオ「あ! ファラ先生!」
避難していたアクシズ内部からひょっこり顔を出したファラ。
彼女をめざとく見つけて、キオは嬉しそうにやってきた。
キオ「見て見て! これ、ナイチンゲールとストライクフリーダムの首! 僕が狩ったんですよ!」
ファラ「ほう、上手に狩れたじゃないか。よかったねキオ」
キオ「えへへ」
ファラ「……で、今はいったい何をやってるんだい? 首を狩ったってことはシャアは倒したんだろ?」
キオ「そうなんですけど」
言いながらキオはちらと後ろを見た。
そこでは、アクシズの坑道に向けて呼びかけを続けるキラの姿があった。
キラ「シャアさん、アクシズはあと2時間ちょっとで
日登町に落ちるんですよ? わかってます?」
シャア「構わん! 私はこのままアクシズと一緒に燃え尽きるのだ!」
ファラ「大変だね、ひきこもりがひきこもり相手に説得かい」
キラ「あ、ファラ先生」
ファラ「キオから聞いたよ。シャアのヤツ、日登町に帰りたくないってアクシズに引きこもってるんだって?」
キラ「そうなんですよ」
キオとキラの話をまとめるとこうだ。
ナイチンゲールを撃破し、シャアをコクピットから引きずりだした二人。
『ヅダエール』の含まれたパイスーを脱がし、冷静にシャアにこれまでのいきさつを話したまではよかったのだが……
キラ「自分がやっちゃったこととか僕らに言ったことまで話したら、急にアクシズに逃げ込んじゃったんだよね」
ファラ「なんだいそりゃ。いい大人が何を言ったっていうんだい」
キオ「そうですよね。せいぜい
“アムロ・レイは、私のズッ友になってくれるかもしれなかった男だ!”って言ってたくらいなのに」
ファラ「うん……まあ、確かに30超えた男がそれ言っちゃうのはなかなかキツイものがあるな」
キラ「恥ずかしくなってひきこもりになっちゃったんですよね、わかります」
そう言って3人は生暖かい目でシャアが潜む坑道を見た。
ファラ「で、これからどうするんだい? このままシャアを見捨てるつもりじゃないんだろ?」
キラ「さすがにそれは後味が悪すぎますからね」
キオ「僕がMSで無理やり連れだそうかとも思ったんだけど、奥に逃げ込まれたらいよいよどうしようもなくなるし……」
キラ「だからこうして説得だけは続けてるんですよ。おーいシャアさん聞こえてます~?」
シャア「聞こえている! というか何勝手に人の恥を話してるんだ! ますます出る気がなくなってしまうだろ!」
キオ「あ、逆ギレした」
114オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/03/28(日) 21:53:21.16ID:NuARB5/f0
ファラ「まったく、いい年した大人がなにバカやってるんだい! こんな子供に心配させて!」
シャア「その声、
ファラ・グリフォンか? 君にはわかるまい、私がどれだけの愚行を犯してしまったのかを!」
ファラ「愚行って、アムロ大好き発言かい? 心配しなくても、アンタがツンデレなのはみんな街のみんな知ってるよ!」
シャア「誰がツンデレだ!」
キラ「いや、ツンデレだよね」
キオ「ツンデレだね」
シャア「ゴホン……まあそれはいい。君たちさえ黙っていてくれれば済むことだ」
キオ「うん! 僕たち絶対黙ってるよ!」
キラ「ちなみに匿名でネットに流すのは?」
シャア「即、開示請求の上、莫大な額の損害賠償請求させてもらう!」
キラ「うわ~大人の戦い方……」
ファラ「まったく……じゃあ何がそんなに許せないんだい?」
シャア「それは、このアクシズを日登町に落とそうとしたことだ!」
キラ「いやいや……何言ってんの。アクシズを落とそうとしてるのはフル・フロンタルで、シャアさんはあくまでCCAごっこしてただけでしょ」
キオ「そうだよ。それにそのCCAごっこだって、パイスーに含まれた『ヅダエール』のせいでナチュラルハイになってたからでしょ!」
シャア「違う!」
二人の慰めを、シャアは即座に否定した。
シャア「確かに、行動に移したのはフロンタルに仕組まれた薬のせいだったかもしれない。だが」
そこで一度、苦しそうに唇を噛んだ。
シャア「だが、“日登町にアクシズが落ちても構わない”私の心の奥底に、そういう思いがあったのは確かだ」
ファラ「!」
キオ「ど、どういうこと? 日登町には、
ネオジオン社だってあるじゃないですか」
シャア「そのネオジオン社が、私の重荷になっていたといっても?」
キオ「重荷?」
シャア「こう見えて、社長業というのはパイロットより大変でな。社員とその家族を食べさせるため、多少気に喰わないことも受け入れなくてはならない」
自嘲気味に彼は言った。
シャア「その上ナナイは口うるさいしクェスは小生意気だしギュネイは勝手にライバル視してくるし
ヨーツンヘイム社は妙な商品でリコール出すしシャア軍団は私の手伝いとイタズラが5:5だし
コマンダーサザビーはたまにこれみよがしに
私を見てため息をつくし
マフティーは社長室にだけ狙ってテロを仕掛けてくるしヨーツンヘイム社は妙な商品をリリースして株価悪化させるし……」
ファラ「うーん、相当溜まってたねこりゃ」
キラ「しかもヨーツンヘイム社だけ2回も出てきてるし」
キオ「よっぽどシャアさんに恨まれてるんだね、マイ兄ちゃんたちって」
シャア「だがそれでも、私の大切な人々のいる日登町にアクシズを落とすはずがない、そう思っていた」
キラ「思っていた?」
シャア「『ヅダエール』を仕込まれ、CCAの
シャア・アズナブルになりきっている瞬間、私は満たされていたのだ。
一切のしがらみから逃れ、生涯のライバルと戦える喜び。そしていずれはアクシズでネオジオン社ごと……」
キオ「シャアさん……」
シャア「
認めたくないものだな。全てを破壊してリセットしたい、そんな気持ちが私にあったということを」
115オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/03/28(日) 21:53:59.45ID:NuARB5/f0
ファラ「やれやれ。分裂したシャア・アズナブルのうち、一番歳をとったシャアは一番生活に疲れたシャアでもあったってことかい」
キラ「まあ実際逆シャアってそういう話だからね、仕方ないんじゃない?」
キオ「そうだっけ?」
キラ「そうそう。家系のしがらみとか腐敗した地球連邦とか一切合切めんどくさくなったシャアが
『最後に派手な舞台でアムロと決着つけて全部終わらせてー』ってアクシズ落とす話だからね、逆シャアは※」
キオ「そんな話だったかなあ……?」
※注 あくまでキラ個人の感想です。
シャア「何がネオジオン社の社長だ。今の私には、到底社員のみなと会わせる顔がない。ならばこのままアクシズと運命をともにする!」
キラ「あ~あ、完全に拗ねちゃった」
ファラ「仕方ないね。時間もないし、キオ、アンタのガンダムで無理やり引きずり出して……」
キオ「ちょっと待って! この宙域に熱源反応が近づいてくるよ。この大きさ、戦艦……?」
「ま~~~~~~~ったく、なに落ち込んでるのさ大佐」
シャア「この声……まさか、クェスか!? どうしてここに!?」
ナナイ「あなたを笑いに来た、そうお答えすれば満足ですか?」
クェス「なにツッケンドンにしてんのさ、ナナイ。さっきまで大佐が無事か不安でずっとオロオロしてたくせに」
コマンダーサザビー「我々はマスター、あなたを迎えに来たのだ」
ギュネイ「わざわざネオジオン社の社員全員をそろえてな」
驚くシャア。そこに現れたのはネオジオン社所有の戦艦、レウルーラだった。
ナナイたちだけではない。ブリッジには、他のネオジオン社の社員も勢ぞろいしていた。
ナナイ「さ、もうすぐアクシズが阻止臨界点を迎えます。その前に早く船へお戻りください」
シャア「い、いや駄目だ! せっかく来てもらって悪いが、私はお前たちのところへは戻れない!」
ナナイ「なぜですか?」
シャア「私は……私は薬のせいとはいえ、自ら望んでアクシズを落とそうとしたのだ!
お前たちや、お前たちのいる日登町に!
そんな情けない人間が、今更どうしてお前たちのもとへ戻れるというのだ……!」
だがそのシャアの嘆きを、ナナイはフッと一笑に付した。
116オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/03/28(日) 21:54:26.81ID:NuARB5/f0
ナナイ「はあ、今更そんな話ですか」
シャア「え?」
ギュネイ「アンタが情けないことなんか俺たちみんな知ってるんだよ」
コマンダーサザビー「すべてが面倒になったマスターがアクシズを落とす可能性があることもな」
クェス「いつ大佐がトチ狂ってアクシズ落とししても大丈夫なよう、会社の地下に地下シェルター作ったりね」
シャア「ち、地下シェルター!? そんな話私は知らんぞ!」
ナナイ「ええ、社長には黙って建設していましたから」
シャア「」
クェス「下手に伝えると“私がアクシズを落とすだと!? そんなに私が信用できないのか! よし、ならばアクシズ落としだ!”とか言い出しそうだったしね」
シャア「( ゚д゚)」
ナナイ「
その他にも、大佐のアクシズ落としを止めるための準備は万端です。あまり私たちを舐めないでください」
ギュネイ「まあ、つまり。俺たちはずっとアンタを止める覚悟はできてたったことだ。刺し違えたってな」
シャア「な、なぜ……なぜだ? なぜお前たちは、私の情けない本性をわかってまで、私を迎えにきてくれたのだ?」
ナナイ「それは……」
クェス「そんなの、みんな大佐のことが好きだからに決まってるじゃん!」
シャア「!!」
ギュネイ「まあ、ハッキリ言われると居心地が悪いけどな。それでもアンタには俺の目標でいてもらわないと」
シャア「クェス……ギュネイも……」
ナナイ「私たちが好きなのは、格好のいいCCAのシャア・アズナブルではありません。
いい年して初恋の人の面影のある少年を追い回しては
ミンチにされ、
ライバルとケンカして町に迷惑をかけ、トラブルメーカーの子会社の珍発明に胃を痛める、そんなあなたなのです。
だから……帰ってきてください、大佐」
レウルーラから届くナナイたちの声。アクシズの坑道で俯いたまま、シャアはその声を聞いていた。
シャア「くっ……まだ私には帰れるところがあるというのか……。こんな嬉しいことはない」
そう呟きながらフラフラとアクシズから出てきた彼を、AGE-FXのセンサーが捉えた。
キオ「あ、見つけたよシャアさんだ!」
ファラ「感動のシーンにほだされてほいほい出てきたね」
ナナイ「今です! また逃げ出さないうちに急いで確保を!」
キオ「うん!」
シャア「し、しまった!」
キラ「しまったじゃないですよ。いい加減観念してください、面倒くさいな」
ガンダムの手の中から逃れようとじたばたもがくシャア。
キラはそんな彼をあきれ顔で見つめていた。
???「ご苦労だったな諸君、シャアを連れて君らもレウルーラへ来てくれ」
キオ「あれ? この声……シャアさん?」
キラ「いや、それにしては……ともかく行ってみよう」
首をかしげながらもキオはガンダムをレウルーラに着艦させた。
117オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/03/28(日) 21:55:02.78ID:NuARB5/f0
AM 07:20 レウルーラ:ブリッジ
ブリッジに通されたキラ、キオ、シャア、ファラの4人。
そこではナナイたちネオジオン社の社員に加え、意外な人物が彼らを待っていた。
???「やあ、久しぶりだなシャア社長。本来はここは君の椅子なんだろうが、勝手に座らせてもらっているよ」
艦長席の隣に座る長髪の男は、不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
シャア「この声……この人を妙にイラつかせる小馬鹿にしたような喋り方は……貴様か、ギルバート・デュランダル!!」
デュランダル「そう、私だ」
ブリッジにいたのは紛れもなくギルバート・デュランダル。
この事件の初期にレイとともにシンのデスティニーガンダムと戦い、そのまま姿をくらませていた男。
そして一早くフル・フロンタルの企みに気づき、
東方不敗やクロスボーンバンガード、フロスト兄弟たちに密かに指示を出していた男だ。
そして、シャアにとってはもっとも憎らしき商売敵でもある。
デュランダル「いや、なかなか感動的なシーンだった。社長想いの社員をもって幸せだな、あなたも」
シャア「わかったぞ……レウルーラが来るタイミングが妙に良すぎると思っていたんだ。この絵を描いたのは貴様かデュランダル!」
デュランダル「ふっ、随分ケンカ腰だなシャア社長」
ナナイ「おやめください社長。確かに事件のことを聞いたのはデュランダル様からですが、ここに来たいといったのは私たちの総意です」
クェス「アクシズで社長が暴れてるっていうから、私たちみんなで止めようと思ったのよね」
コマンダーサザビー「そのためにMSも用意してきていた。もっとも、到着した時には戦闘はすでに終わっていたようだったが」
ギュネイ「せっかく社長をブチのめして取って代わるチャンスだったのにな、惜しかったぜ」
デュランダル「だが、本気の赤い彗星を相手にすれば、我々とて勝てるかどうかはわからなかった。君たちには礼をいうぞ、ガンダム兄弟」
そう言ってデュランダルは深々と頭を下げた。
キラ「あ、どっかで聞いた声だと思ったらやっぱりデュランダルさんだったか」
キオ「すごいねキラ兄ちゃん。僕ぜんぜんわかんなかったよ」
キラ「聞き分けるコツがあるんだよ。デュランダルさんは重いけどシャアさんはもう少し軽いっていうか」
シャア「誰の頭がデュランダルより軽いだ貴様!」
コマンダーサザビー「声の話だ、マスター」
クェス「ほらほら、バカやってないで他に何か仕込まれてないか検査するっていってんだから行くよ」
抗議の声を上げつつ、シャアはコマンダーサザビーらに引きずられていった。
118オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/03/28(日) 23:27:45.62ID:NuARB5/f0
キラ「ところで一つだけ聞いていいですか? レウルーラが現れてからずーっと気になってることがあるんです」
デュランダル「どうやって我々がここにたどり着いたか、かね」
キオ「あ、それ僕も気になってた! アクシズって今、どこの宙域にあるかわからないって兄ちゃんたち言ってたよね?」
ファラ「確かに。私だって宇宙漂流刑を喰らってたところをたまたまアクシズにたどり着いたワケだしね」
キラ「だから僕たちは日登町上空のワームホールからここまで来たけど……あなたたちはどうやってここに? まさか同じようにワームホールを潜ってきたわけじゃないでしょ?」
ナナイ「その通りです。私たちは昨日からすでに宇宙で待機しておりました」
デュランダル「フロスト兄弟の功績だよ。彼らがもたらした情報のおかげで、我々はここまで来ることが出来たのだ」
キラ「フロスト兄弟?」
デュランダル「フル・フロンタルがワームホールを使ったアクシズ落としを企んでいるところまでは掴んでいた。
アクシズに人質をとり、ワームホールを閉じさせないようにすることもな」
ナナイ「その人質を救出する人員として、私たちに打診があったのです」
ギュネイ「日登町でも宇宙に出られる戦艦をもってるとこは早々ないからな」
クェス「社長に黙ってろっていうのは理由がわからなかったケド……まさか騒動の中心になるからとはね~」
デュランダル「しかし闇雲にアクシズを探しても時間の無駄だ。
そこでフロスト兄弟にアクシズの座標を調べてもらっていたのだ。
もっともフロンタルも相当に用心深い。
仲間になったフリをして懐に潜り込んではみたが、アクシズの座標のデータは一切消去されていたそうだ」
そこで彼は愉快そうに微笑んだ。
デュランダル「だがフロスト兄弟もただでは転ばない。鹵獲した
スターゲイザーを秘密裏に修理し、
機体に積まれた観測装置でワームホールからアクシズの正確な座標を特定したのだ。
それで彼らから送られてきた情報を基に、我々はここまでやってきたという訳さ」
キラ「フロスト兄弟がそんなことを……」
キオ「僕たちの知らないところでみんな色々頑張ってたんだね」
デュランダル「当然だ。日登町は私たちにとっても大切な町だからな。
特に私はシャア社長と違ってパイロットではないのでね。その代わりこうして搦手を使わせてもらったという訳だ」
ファラ「搦手って、あのメンタル攻撃がかい?」
デュランダル「ふっ、実際呆れるほどに有効だっただろう?」
ファラ「まあ、あのシャアが泣きながらほいほい出てきたわけだからね」
キラ「じゃあ、もしかしてアムロ兄さんの方にも……」
デュランダル「ああ、今頃
ラー・カイラム社の諸君がアムロ・レイを迎えに行っているはずだ」
AM 07:18 アクシズ:後部パルスエンジン付近
ブライト「アムロ、今は日登町が大変な時なんだ。なのにおまえは何やってんの!」
チェーン「正気に戻ってください、アムロ!」
ベルトーチカ「あなたの力が必要なのよ」
ラー・カイラムのブリッジから呼びかけるブライトをはじめとするラー・カイラム社の社員に加え、
チェーン、ベルトーチカ、アリョーナ、カニンガムらアムロの彼女たち。
アムロ「みんな……ハッ! お、俺はいったい何をしていたんだ!?」
νガンダムのコクピットで正気に戻るアムロ。
ヨナ「ぐ、が……ハッ……」
その無傷の機体の足元には、ボロボロになって倒れ伏すナラティブガンダムの姿があった――
アクシズ:後部パルスエンジン付近での戦闘結果
νガンダム……無傷でナラティブガンダムを撃破。
パイロットのアムロは『ヅダエール』の支配を脱し、正気に戻る
ナラティブガンダム……νガンダムとの戦闘によって中破
link_anchor plugin error : 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ
最終更新:2023年05月10日 11:29