263オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/14(土) 21:47:29.15ID:ZbVUO1IA0
  AM08:06

ロラン「みんな~! 全裸はとってもいいものだぞ~! 早く服を抜いてこ~い!!」

 町の空一面を覆うのは、∀ガンダムの放つオーロラのような月光蝶の光。
 そこから舞い落ちる鱗粉は、少しずつだが着実に周囲の建物やMS、人々の衣服を分解していく。
 50万機いた残存のデビルトミノ軍団は、月光蝶の前に9割以上が全滅した。
 そんな中、日登町の住民たちは、サイコジム――もとい伝説の巨神が展開するバリアの傘の下で、コトの成り行きを見守っている。

ハロ長官「フル・フロンタルくん」
フロンタル「やあ、ハロ長官。また会ったね」
ハロ長官「君をこの事件の主犯格として拘束する。いいかね?」
フロンタル「もちろん。ああ、取り巻きの諸君もご苦労」 
リョウ「抵抗は……しないんだな?」
フロンタル「今更抵抗してどうなる? 私の仕事は終わった。後はロラン君に全てを託すだけだ」

 彼は全裸のまま、自分を取り囲む警察隊へにこやかに微笑みかけた。 
 そこへ、シャアとシャア軍団の面々がやってきた。

シャア「ハロ長官。彼を拘束する前に、少しだけ話をさせてもらってもいいかな?」

 その申し出が許諾されると、シャアは改めてフル・フロンタルに向き合った。

シャア「やあ、散々好き放題に暴れてくれたな、全裸の私よ」
フロンタル「恨み言かい、着衣の私?」
シャア「恨み言も言いたくなる。薬のせいとは言え、私は貴様の計画の片棒をかつぎ、ここまで事態を悪化させたのだからな。
    その途中で呂布の義理の息子になったり、カミーユたちとロボットプロレスの興行をやったり、
    挙句の果てにはアクシズの中心でアムロへの想いを叫ばされたりと、まったく散々な目に遭ったぞ」
赤い彗星のひと「半分くらいは自業自得な気もするが」
実写版シャア「それは言わないお約束だぞ」
シャア「まあそれは今更いいだろう。聞きたいことは一つ。全人類を全裸にする、その目的のためにどうしてこんな回りくどい方法をとったかだ」
フロンタル「簡単なことだ。計画の成功率を少しでも上げたかったから、それ以外に他ならない」

 そういってフロンタルは困ったようにこめかみを抑えた。

フロンタル「確かに『ヅダエール』を使って月光蝶のナノマシンを汚染する。それ自体は非常に容易いことだ。
      だが知っての通り、この町には誰かが何かを企むと、すぐに駆け付けてくる厄介な連中がいる」
シャア「ガンダム兄弟か……」
フロンタル「そうだ。無論、私のネオ・ジオングとロラン君の∀ガンダムが手を組めば、この町のどの戦力にも決しては負けはしない。
      しかしガンダム兄弟だけは別だ。どれほど武力で上回っていても、
      油断しているうちに『絆』やら『愛』やら『想い』といったワケのわからない力で逆転されてしまう」
シャア「よく知っているよ。かつてこの町に現れた数多の悪役たち、そして私自身もまた、それで返り討ちにあった口だからな」
フロンタル「だから私は彼らの力を徹底的に削いだ。おなじみのデビルガンダムはもちろん、ELSやMA、シド、
      それにアムロ・レイとシャア・アズナブルという二大戦力をぶつけることによってな。
      そして最後は私やゾルタンまでもが前線に出て戦った。全ては、彼らを消耗させるためだ」
ハロ長官「そのために、君は何の罪もない町の人たちまでも、事件に巻き込んだのか」
フロンタル「それは謝罪しますよハロ長官。だが、争いはもうすぐ終わる。
      今のガンダム兄弟の戦力では、たとえ奇跡が何重に起ころうと∀ガンダムを倒すことは不可能だ」
コマンダーサザビー「確かに、彼我戦力を分析しても、ガンダム兄弟が∀ガンダムを破壊できる可能性は限りなくゼロに近い」
フロンタル「これで人類は全裸になる。そして人々は分かり合い、世界は破滅から救われるのだ。
      そのためならば、私は喜んで罰を受けよう」
赤い彗星のひと「確信犯だな彼は。まさに正しい意味で」
シャア「フロンタル。君の信念から行った行動に、今更私がどうこう言うつもりはない。ただ覚悟だけはしておいた方がいい」
フロンタル「何の覚悟だ?」
シャア「君が心血を注いで練り上げた計画が、無残に壊される結末をだ。
    なぜならガンダム兄弟は、この期に及んでも誰一人として諦めていない。
    そして……彼らは君が思っている以上にどうかしているのだからな」

 そういってシャアは憐れむようにフロンタルをじっと見つめた。

264オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/14(土) 21:49:09.37ID:ZbVUO1IA0
 その頃、ガンダム兄弟は最後の作戦に向けて急ピッチで準備を進めていた。

ドモン「いいのか、セカイ。本当にバーニングガンダムを返してもらっても」
セカイ「いいんです師匠。このバーニングガンダムのおかげで、俺は友達の親父さんを助け出すことができました。
    だから今度は、師匠の大切な兄弟を救うために、こいつの力を使ってください!」
ドモン「ふっ、少し見ない間に男の顔になりやがって……」

セイ「じゃあビルドストライクも返しますね」
キラ「うん、悪いねセイ」
セイ「OSは僕用にマイルドになってるけど、使い勝手は悪くないはずです。きっとすぐに慣れて……」
キラ「え、(カタカタ)なんか言った?(OS即フォーマットからのリプログラミング)」
セイ「」
シン「コイツこういうとこデリカシーないんだよなあ……」

キッド「う~ん、無理だな。砲身だけじゃなく、リフレクターもダメになっちまってる」
ガロード「そっか、やっぱサテライトキャノンは使えないままか」
キッド「悪いなガロード」
ガロード「いいよ。使えないならその方がいい。いくら∀とはいえ、兄弟に銃口向けるのは気分良くないしな」
ティファ「ガロード、どうしても私は連れていってくれないの?」
ガロード「ゴメン、ティファ。これは家族の問題だからさ。俺たちでケリをつけないと」
ティファ「そう……」
ガロード「でも、次同じことがあったら必ず連れていく。だから……その時までに家族になろう」
ティファ「ガロード……」

アストナージ「言われるままに合体はさせたけど、本当にこれでいいのかい?」
アムロ「ああ、最高だ。この短時間によくここまで仕上げてくれたな」

 アストナージらメカニックの手を借りて組み上げられたガンダム兄弟たちの機体。
 その姿を見て、アムロは満足そうに頷いた。

アストナージ「だが、これじゃあ満足に戦闘なんてできないぞ」
キャプテン「戦う必要などない。そうだな、アムロ?」
アムロ「そうだ。俺たちは、あくまで暴走してバカやってる兄弟を止めにいくだけだ。それには、この姿がちょうどいい」

 そこへ、慌てた様子でマイが走ってくる。

マイ「兄さん! 現在アクシズの67パーセントが分解。『ヅダエール』のあるエリアに月光蝶が到達するまで、あと7分です!」
アムロ「問題ない。こちらも準備は整ったところだ」
シロー「よし、みんな自分の機体に乗り込め!」
イオ「よっしゃ! 最後のパーティーだ。思いっきりイカしたヤツをぶちかましてやろうぜ!」
劉備「おいおい、おまえらも行くつもりか?」
アル「あたりまえでしょ! 僕たちだって立派なガンダム兄弟なんだから!」
シュウト「もう置いて行かれるのはイヤだ! 最後まで一緒に行くよ!」
アルレット「しょうがないわねえ。ならアハヴァの補助シートに座んなさい」
リタ「全員乗り込んだよ、アムロ」
アムロ「よし……起動するぞ!」

265オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/14(土) 21:50:32.69ID:ZbVUO1IA0
 アムロの指示で全員が一斉にレバーを動かし、巨大な『ガンダム』が大地に立つ。
 その巨体を見て、誰もが――連行されゆくフロンタルですら言葉を失った。

フロンタル「なんだ、あれは……」
シャア「言っただろう。貴様が思うより、彼らはずっとどうかしていると」

 その『ガンダム』は、ガンダム兄弟たち全員の機体を悪魔合体させたものだった。
 胸部のアハヴァ・アジール、腰部のビグ・ラングを中心に、
 兄弟たちそれぞれのMSが手足を形成し、頭に当たる部分にはV字型にツインバスターライフルを構えたウイングガンダムゼロが立っている。 
 そのシルエットは異形だが、遠目から見ればギリギリガンダムに見えないことも無い。

ヨナ「よし、“リライジングガンダム兄弟ガンダム”起動完了だ!」
キラ「ね~、そのダッサい名前どうにかなんないの?」
シン「仕方ないだろ、そもそもこの機体自体、刹那のアイデアで無理やり組み上げたんだから」
刹那「ああ。ビルドダイバーズRe:RISEのリライジングガンダムを参考にした合体だ」
キオ「合体というよりむしろ組体操……?」
アルレット「どっちかといえば『怪盗ドラパン謎の挑戦状』の合体ドラえもんズって感じじゃない?」
ウッソ「古っ! というより誰がわかるんですかそんなマイナーネタ!」
ヒイロ「おしゃべりはそこまででいい。ロランが俺たちに気づいたぞ」
ロラン「ぷ、ぷぷ……なんですかみんなその機体は。みんなで合体ロボごっこですか」
アセム「これは“リライジングガンダム兄弟ガンダム”だ! ……リライジングガンダム兄弟ガンダムであってるんだよな?」
シーブック「名前なんてどうでもいいよ。どうせ悪魔合体なんだからさ」
ロラン「そうですよね。そんな機体、どうせすぐにスクラップになるんですから!」

 笑い声をあげながら、ロランはマルチパーパスサイロから地上に向けてビームを雨のように発射した。が

アムロ「バナージ! ヨナ!」
バナージ「はい!」

 その攻撃にリライジングガンダム兄弟ガンダムはすぐに反応。
 左腕に合体したユニコーンガンダムとガンダムフェネクスがサイコフィールドを張り、ビームを防ぐ。

ロラン「なんですって!」
アムロ「ロランがひるんだ! 今の内に上昇するぞ!」

 さらにアムロの合図で全機体が一斉にスラスターを噴射。100メートルを優に超す機体が、徐々に浮かび上がる。

ジャミル「飛べ、ガンダム兄弟!」
リリーナ「ガンダム兄弟ファイヤー!」
エレドア「ファイヤー!」
アリー「ファイヤー!」
スージィ「ファイヤー!」

 そして、日登町住民たちの声を受け、リライジングガンダム兄弟ガンダムは遂に飛翔した。

266オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/15(日) 02:02:59.62ID:vVXhSC1h0
カミーユ「よし、飛んだ!」
セレーネ「合体とは名ばかりで、各機体を無理やりワイヤーで繋いだだけだから乗り心地は最悪だけどね」
ベルリ「構わないでしょ。どんなに不格好でも、要はロランのところまで行ければいいんだ!」
ロラン「こ、来ないでくださーーい!」

 ロランは慌てて月光蝶の散布を強めた。莫大な量のナノマシンが、ガンダム兄弟に襲い掛かる。しかし

ロラン「分解されない? どうして? ターンXとG-ルシファーはすぐにバラバラになったのに!」
コウ「MS一体一体ならばすぐに分解されてしまう。だから僕たちは機体を一つにまとめることでダメージを最小限にしてるんだ!」
フリット「確かに見た目は不格好だしスピードも遅いけど、こう見えて、意外と合理的なんだよねこの合体も!」

 そうこうしているうちにリライジングガンダム兄弟ガンダムは徐々に∀ガンダムへと迫る。
 焦ったロランはビームサーベルを抜くと、最大出力でアクシズを切りつけた。
 するとバラバラになった破片がいくつも地上に向かって降り注いでいく。

マイ「まずい、また破片が……」
ヒイロ「俺が撃ち落とす」
イオ「へっ、焦んなよブラザー」
シロー「お前の出番はまだ後だ。ここは俺たちがやる!」

 そう言ってリライジングガンダム兄弟ガンダムの脚部を構成していた
 Ez-8、フルアーマーガンダム、ガンダム試作一号機、バーニングガンダムが本体から分離。
 降ってきたアクシズの破片を次から次へと撃ち落とした。

イオ「いよし! やったぜ!」
シロー「油断するな! 一番大きいのが来るぞ!」
ドモン「俺に任せろ! 石破! 天! 驚! 拳んんんんんんんん!!」
ロラン「えええええええ!?」

 年長組の働きで、アクシズの破片はすべて破壊された。
 だが活躍はそれまでだった。リライジングガンダム兄弟ガンダムから分離したことで、
 彼らの機体は月光蝶のナノマシンによって分解されていく。

イオ「ちっ、ここまでか。面白くなってきたとこだったのによ」(全裸
ドモン「後のことはみんなに託す!」(全裸
コウ「ちゃんとロランを連れて帰ってきてよ」(全裸
シロー「行け、みんな! 勇気ある誓いとともに!」(全裸
アル「イオ兄ちゃん! ドモン兄ちゃん! コウ兄ちゃん! シロー兄ちゃん!!」

 砂になった機体とともに、全裸で地上へ落ちていくシローたち。
 だが残されたガンダム兄弟に振り返る余裕は無い。上空では、今度は∀ガンダムがビームライフルを乱射しているのだ。
 それをユニコーンガンダムとフェネクスは必死で防御していたが

バナージ「まずい、サイコフィールドが抜かれた!」
ヨナ「月光蝶がモロに浴びせられて……装甲が分解される!」
ガロード「ジュドー!」
ジュドー「おう!」

 そこへ右腕に合体していたガンダムDXとZZガンダムがシールドを構えて防御に加わる。
 そこからはまさに消耗戦だった。
 襲い掛かる月光蝶とビーム、時々ハンマーを必死に耐えながら、ガンダム兄弟はなおも∀ガンダムに向けて突き進む。

267オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/15(日) 02:04:07.38ID:vVXhSC1h0
マイ「リタ義姉さん、装甲が分解されてフレームが露出してます! 撤退してください!」
リタ「まだだよ! ロランのいるところまでもうちょっとなんだから!」
セレーネ「いやフレーム丸出しのリタちゃん見て、刹那が鼻血出しちゃってんの! 出血死する前に徹底して!」
刹那「ガ、ガンダム……!(鼻血」
ヨナ「撤退しようリタ。君の裸を他の男に見られるなんて我慢できない!」(全裸
リタ「わかった……でもみんな、必ずまた元気で会おうね」
バナージ「ユニコーンも限界か……」(全裸
ガロード「へへっ、あとは頼んだよみんな」(全裸
ジュドー「機体がぶっ壊れない程度に頑張ってよね。でないとジャンクが取れないからさ」(全裸
シュウト「ヨナ兄ちゃん! リタ義姉ちゃん! ガロード兄ちゃん! ジュドー兄ちゃん!」
劉備「振り向かねえぞ……あいつらの分まで、俺たちは進むんだ!」
マイ「『ヅダエール』エリアへの月光蝶到達まで、あと3分! ここで止まるわけにはいかない!」

 一方その頃地上では。

グラハム「子供と病人をシェルターへ! 急げ!」
マシュマー「ハ、ハマーンさま、お召し物が分解されて全裸に……」
ハマーン(全裸)「元気な若者が全裸になろうとどうということはない! 弱者を守るのだ!」

 ヅダエールに汚染された月光蝶によって、次々と全裸になっていく人々。
 それでも彼らの顔に絶望感や羞恥は無い。ただ自分たちにできることを探し、精一杯に取り組んでいる。

フロンタル「ふ、ふははは! これだ! 私が見たかったのはこの光景だ!」
クルーゼ「……満足かな、フル・フロンタル」

 警官隊によって拘束されながらも、愉快そうに笑うフル・フロンタル。
 そこへやってきたのは同じく全裸の男――フル・フロンタルの全裸仲間、ラウ・ル・クルーゼだった。

フロンタル「やあ、ラウ。君も来たか。ああ、満足だとも。見ろ、人々はみな全裸だ!
      だが誰もそれを恥じることなく、生き生きとしたあの姿を!」 

 フル・フロンタルは満足そうに、全裸のまま両腕を広げた。

フロンタル「これが私が求めた『In My Dream計画』! これが私の理想郷!
      ありのままの姿を晒して相互理解を深めることで、争いは永遠になくなる! これで世界は救われる!」
シャア「それはどうかな?」
フロンタル「なんだと?」
クルーゼ「確かにこの光景は素晴らしい。世界の全てを恨み、露出に走った私でさえ、思わず人の素晴らしさをもう一度信じたくなるほどだ」
シャア「だが、この光景を産み出したのは、決して貴様の功績ではない」

カミーユ「いい加減に目を覚ませロラン! 服を着ろ!
キラ「やめてよね! 僕ら昨日からあちこち動きっぱなしで疲れてるんだから! ちょっとは手加減してよ!」
キオ「ロラン兄ちゃん、僕今日ストフリとナイチンゲールの首を狩ったんだよ? 見せてあげるから戻ってきてよ!」

イライジャ「よし、そこだ! いけカミーユ!」
ジェリド「俺以外にやられてるんじゃない! 貴様は、俺の!」
ラクス「キラ……今の私はあなたのために何もできない。だからせめて、祈ります」
シャナルア「ああ、またあんな危なっかしい操縦して……でも撃墜されたら全裸のキオが降ってくるかも……いやいや何を考えているんだ私は」

268オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/15(日) 02:04:30.98ID:vVXhSC1h0
アセム「世界を変えたいんなら、こんな強制的な方法じゃなくてもっと別のやり方があるはずだ!」
ベルリ「ここで無理やりなやり方! 後で絶対もめるってことよ!」
シン「『ヅダエール』なんてものに頼らなくても!」
ウッソ「人は変わっていけるはずでしょう!」

酒楽の面々「そうだよ! がんばりな坊や!」
ステラ・マユ・ルナマリア「「がんばれーーー!!」
アリーサ・ユノア・ロマリー「負けるなアセム!!」
ゼハート「踏ん張れベルリ! あんなハーレム状態の連中に負けるな!」
マオ「せや! ベルリはんにはワイら世界一億人の喪男がついてるんや!」
ベルリ「なんか僕だけ声援が野太くない!?」

フロンタル「これは……」

 フロンタルが見たのは、ガンダム兄弟を応援する日登町住民たちの姿。
 彼らは、自分が全裸であること、世界の危機が近づいていることも忘れ、全力で兄弟たちに声援を送っている。

シャア「見たかフロンタル。人々の心を変えたのは、決して貴様の独りよがりな理想論ではない」
クルーゼ「目の前の悲劇を防ごうと必死で戦う、彼らガンダム兄弟の姿だ。
     君は、ただその手伝いをしたに過ぎないのだよ」

 突きつけられた言葉を振り払うように、フル・フロンタルは大きく首を振った。

フロンタル「いいや、まだだ。まだこんなものは予兆に過ぎない。月光蝶によって世界から衣服が消滅すれば、世界は今よりもっとよくなって……」

 その時だった。

カーラ「いけない、サイコジムのゲージが振り切れた!」
マリーメイア「機体が制御できない……! ミネバ、サイコジムを止めろ!」
ミネバ「む、むりだ! サイコジムはいま、勝手にうごいている!」

 制御を離れたサイコジムはミネバたちをテレポーテーションで体外に吐き出すと、
 緩慢にも見える動きでふらふらと浮かび上がった。
 そして、上空の∀ガンダムに背を向け大きく両腕を開く。その様は、さながら宗教画のように荘厳だった。

クルーゼ「なんだ、なにが起ころうとしている?」
フロンタル「『発動』……まさか、発動しようとしているのか巨神は!」
アイン「あ、おい待て!」

 フル・フロンタルは青ざめた顔で呟いた。そして拘束していた警官の腕を振り払うと、全裸のままサイコジムに向かって駆け出す。 

フロンタル「待て、早まるな! もうすぐだ! もうすぐ世界から衣服は消滅し、人々は生まれ変わる! だから発動はもう少し……」

 だが彼の懇願はまったくの筋違いだった。むしろサイコジムはバリアを大きく収束させると、町の住民全てを包み込む大きなバリアを張った。
 そして降りかかる月光蝶のナノマシンを、その巨体で一身に受け止め始める。

プル「わかったよ! サイコジムはわたしたち全員を守ろうとしてくれているんだ!」
プルツー「不思議だ……この力、計り知れないほど大きいのに、なぜか怖くない」
フロンタル「馬鹿な。こんな未来、私は一度も見なかった。巨神が、この町の住民たちを善き存在だと認めたのか? このまま生きるに値する――!」
クルーゼ「よくわからないが、どうやら世界の危機は去ったようだな」
シャア「だがこれで終わりではない。ロラン君を止めてくれ、頼んだぞアムロ!」

269オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/15(日) 18:54:23.52ID:vVXhSC1h0
 舞台は再び日登町上空に戻る。

 月光蝶の奔流の中をたゆたうアクシズは、ナノマシンに喰われ、すでに本来の十分の一程度まで縮んでいた。
 ∀ガンダムはその羽の中でアクシズを守っていたが、
 すぐ下からは、両手足と装甲の半分以上を失った異形の機体が、今まさに蝶の羽に手を伸ばさんとしていた。

ロラン「ウソでしょ……! まさか月光蝶の中を昇ってくるなんて!」

 信じられない、とばかりにロランは眼下のリライジングガンダム兄弟ガンダムを見つめなおした。

セレーネ「ありがと、よくがんばってくれたわスターゲイザー」(全裸
フリット「くっそ、くやしいけどこれが限界か!」(全裸
刹那「あとは頼んだぞ、みんな」(全裸
マイ「月光蝶が汚染されるまで、あと2分です!」(全裸
三日月「じゃあ、あとはよろしく」(全裸

 ここに至るまで、リライジングガンダム兄弟ガンダムの手足を構成していた兄弟たちは、
 その多くが機体を分解され、希望を託して落ちていった。
 だがその犠牲もあり、遂に残されたガンダム兄弟たちは
 ∀ガンダムまであと数キロという高度に至ったのだ。

劉備「ロランのやつ、相当驚いてるみたいだな。こっからでも焦りが伝わってくるぜ」
キャプテン「そのようだ。機体制御にパイロットの心理的動揺を示すパターンが観測される」
アルレット「ま、とはいっても私たちももうボロボロなんだけどね。アハヴァも正直、これ以上はツライし」
ヒイロ「ならば、予定より早いがここで仕掛けるしかない。キャプテン、劉備、頼めるか」
キャプテン「了解!」
ロラン「なんだ? アハヴァ・アジールの陰から何か出てきた。人? いや違うアレは」

 ロランがカメラを拡大しようとした次の瞬間、アハヴァ・アジールのサブアームが、出てきた人影を掴んだ。
 そしてそのままグルグルと振り回し、ピッチングマシンの様にこちらへ向かって投擲する。

 ∀ガンダムへ向かってやってくる、剛速球の正体はもちろん

ロラン「キャプテンガンダム! 劉備ガンダム!」
劉備「ようロラン! 久しぶり!」
キャプテン「ロラン。いくら君とはいえ、これ以上の狼藉はS.D.G.の隊員として許さない!」

 キャプテンの胸に、ソウルドライブの輝きが灯っているのをロランは見逃さなかった。
 咄嗟に∀は全ての攻撃行動をやめ、月光蝶を繭のようにまとい、さらに自身は専用シールドで防御態勢に入る。

シュウト「行け! キャプテン!」
キャプテン「うおおおお!」

 だがシュウトたちの応援を受けたキャプテンガンダムは止まらない。
 凶暴なナノマシンをものともせず、月光蝶の繭を突き破ると、∀のシールドにキャプテンパンチを正面から叩きこむ。
 ぶつかり合うエネルギーの中、拳と盾にヒビが入り、それは同時に砕け散った。

270オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/15(日) 18:55:17.91ID:vVXhSC1h0
ロラン「相討ち!?」
キャプテン「いや、まだだ!」

 キャプテンの合図と共に、続けて背後から現れたのは劉備ガンダムだった。
 劉備はキャプテンの肩を踏み台に大きく跳躍、頭上に双剣を構えると、∀ガンダムの頭目掛けて斬撃を仕掛ける。
 ロランは迎撃のためにビームサーベルに手を伸ばそうとして――すぐにやめた。
 どのみちこの距離では間に合わない。ならば手刀で受けた方が効率的だ。
 腕の一本失ったところで、∀ならばすぐに再生できる。そういう計算もあった。

劉備「だあありゃああああ!!」

 双剣と手刀のぶつかり合いはやはり双剣に分があった。
 劉備の双剣は掌を切り裂き、前腕部まで食い込んだ。だが、それで終わりだ。
 すぐにナノマシンによる再生がはじまり、剣を腕の中に取り込まれた劉備は押すも引くもできなくなってしまう。

キャプテン「私を忘れたか、ロラン!」

 安堵したのも一瞬、視界のすみに映ったのは右腕を失ったキャプテンガンダムだ。
 キャプテンは再びソウルドライブを展開。残った左腕にエネルギーを集め、今度は直接∀のコクピットを狙う。
 ロランはちい、と舌打ちし、手すきの左手でキャプテンガンダムを掴んだ。
 そしてそのまま遠くへ投げ捨てようと試みた、次の瞬間だった。
 突如モニターに表示されたアラートに、ロランは驚愕する。

ロラン「ロックオン!? どこから!」

 考えるまでもない。今、ここで∀ガンダムを狙える機体は一つしかない。
 ロランが下を見下ろすと、そこには、アハヴァ・アジールに支えられ、ツインバスターライフルを構えるウイングガンダムゼロの姿があった。

ヒイロ「……ターゲット、ロック」

 その時ロランは気づく。劉備とキャプテンに気を取られ、肝心のコクピットの守りを疎かにしていたことを。
 キャプテンによって月光蝶の繭とシールドを破壊され、両腕の自由を奪われた今、ロランを守るものはなにもない。

ロラン「さっきの二人の攻撃は、この布石だったの!?」
キャプテン「ようやく気付いたかロラン」
劉備「気づいたところでなにもさせねえけどな!」

 ロランは咄嗟に両腕でコクピットを庇おうとした。だが、劉備とキャプテンは∀の腕をしっかりと掴み、それを許さない。
 ならばと身を翻して回避しようとするも

劉備「だからさせねえって!」
キャプテン「皆が作ったチャンスだ。必ず成功させる!」

 二人は残された力全てを使って∀ガンダムを放り投げ、アクシズに叩きつけた。
 背中から伝わる衝撃に、ロランは一瞬意識が混濁した。
 そしてヒイロはその隙を決して見逃さない。アクシズに磔にされた∀ガンダムのコクピットに照準を合わせ、彼はトリガーをひいた。

271オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/15(日) 18:55:50.16ID:vVXhSC1h0
 目を灼くほどの眩い閃光が消えた時、ウイングガンダムゼロは砂になって崩れ落ちた。
 それは全ての力を使い果たしたキャプテンガンダムと劉備ガンダムも同じだ。
 彼らもまた、全ての武装を失い、アクシズから地上へと落下していく。

アル「どうなった……の?」
シュウト「∀ガンダム……倒した?」

 だが二人の願いもむなしく、煙が晴れた後から現れたのはほとんど無傷の∀ガンダムだった。

ロラン「今のは……ちょっと焦りました」

 荒い息遣いのまま、ロランは言った。

ロラン「ヒイロの狙いは正確でした。ツインバスターライフルのビームは確かにホワイトドールに傷をつけましたよ」

 そういって彼は、ひび割れ、ぽっかりと穴が開いた∀のキャノピーを指さす。

ロラン「でも、それだけです。ホワイトドールはほかにどこも傷ついていない。この穴だって、すぐに再生します」

 そう宣言して、彼は再び眼下のアハヴァ・アジールを見た。
 劉備とキャプテン、ヒイロが倒れた今、残るパイロットはアルレット一人。
 そのMAもぼろぼろで、到底∀の脅威ではない。

ロラン「もういいでしょう。諦めて、みんな全裸になりましょう! そうすればきっと、今よりもっと幸せな未来がやってきますよ」
アルレット「悪いんだけど、私たちガンダム兄弟の辞書に、諦めるって言葉は無いのよね。アンタも知っての通り」
ロラン「ならどうするんです? 残ったのはアルレット姉さんとアル、シュウトだけ。その三人とアハヴァ・アジールで僕と戦いますか?」
アルレット「三人、ねえ」

 アルレットはくすくすと笑った。

アルレット「ねえロラン。アンタ、肝心の人を忘れてなあい? 私たち兄弟の中でも一番に面倒くさくて、あきらめの悪い人を」
ロラン「え……?」
アルレット「アル! シュウト! 頼んだわよ!」
シュウト「うん!」

 アルレットの指示で、アルとシュウトはアハヴァのサブシートから飛び出した。
 そして抜群のバランス感覚で機体の胴体を滑り降り、アハヴァ・アジールの背部まで走ると、
 二人は機体に接続されていたMS用コンテナの扉のロックを解除した。

ロラン「なんだ? コンテナの中にもう一つMSの反応? これは……」

 コンテナから出てくるトリコロールカラーのシンプルなMS。
 その機体を分析し、∀のデータベースが導き出した機体の正体は――型式番号:“RX-78-2”

ロラン「ガンダムだって……!? じゃあ乗っているのは」
シュウト「そんなの、もちろん決まってるじゃんか!」
アル「さあ、出番だよ兄ちゃん!」
アルレット「昨日からずっと迷惑かけたぶん、ここできっちり返してよね」
アムロ「了解だ! アムロ、行きまーーす!!」

アムロ・レイ【ガンダム】
VS
ロラン・セアック【∀ガンダム】開戦!


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最終更新:2023年05月16日 10:54