しかし、
島田愛里寿は敗北した! 自分が背負っているものの大きさに気が付かずに。それは大学選抜を巻き込み、島田流を巻き込み、役人たちを巻き込み、特殊殲滅戦を巻き込んだ。渦中の学園艦も高校戦車道参加者たちすべてが渦の中、途方もないほどの大敗北だった。
彼に辞令が届いた。聞いたこともない部署の室長補佐に任ぜられた。
もはや完全に欠陥品と見なされて、廃棄される直前となった歯車は考える。
高校生の混成集団に負けた大学選抜チーム──海外大会までこなした経験豊富な人員(10回前後対外試合をこなしただけの高校生集団に負けた)豊富な予算により取り備えられた最新鋭の車両(八十九式中戦車に撃破される)、これからを見越して盛り上げてきた評判(レギレーション違反まがいの行為)。彼女たちの将来はどうなるのか。
西住流姉妹に撃破された次世代の島田流──派手で技量が要求される戦術(アヒルに騙される忍者)、大学戦車道全体へ広まりつつある戦法(高校生に負けるお遊び)、『神童』
島田愛里寿隊長(島田流のままごとは豪華だな)
──そして敗北の深刻性を全く理解していない島田千代! 今回の試合を主導していないからといって、家元であるお前が責任から逃れられると思うな! 敗北したのはお前の娘だぞ!
──わだかまりのない試合をしたいとか抜かしていたな、そんなものあるわけがないだろう。その浅い認識の報いを必ず受けさせてやる。
段ボールの中の書類を人気のない部屋で彼はぶちまける。ブラインドの隙間の光が舞い上がる埃を照らす。しばらく暴れたが、もはや彼と嚙み合ってきた部品は彼のことを認識すらしていない。隣室のうらぶれた老人がうるさそうに机を叩いた。彼は頭をかきむしるように抱えた。
廃艦予定の学園艦が存続。もはや関係各所と連絡がついており住民説明会も行われていた段階での中断。波及する影響は計り知れない。利害関係者が負うダメージ、経済信用資材すべて並大抵のものではない。あんな小規模な学園艦を存続させることで、そんな迷惑を彼らにかけてしまう。そのことを考えると、首を搔き毟り千切り取りたくなるほどだ。
そして、特殊殲滅戦。成果物である三人の少女たち。彼女たちの価値にも大いに疑問符がついている。
学生数十名の命と引き換えに戦場に十分に適応できる人材を育成する。彼女たちはまさに一騎当千。ひとたび投入すればたちまち戦局を転回させるでしょう。この体たらくで? そんなことが可能なのか。
そしてそれはそのまま特殊殲滅戦、それ自体の評価に帰ってきている。そもそもあらゆる面から廃止が囁かれていた機密事業なのだ。この程度の成果しか出せないのであれば、関係者たちにいくら思入れがあろうとなおのことである。
──なぜ、こんなことに。
西住みほの当て馬になった黒森峰学園を除き、西住流の動きはすべて抑えたつもりだった。
いかなる陰謀も見逃さない完全な警戒態勢を敷いていた。そして並行して高校戦車道全国大会において、西住流が仕掛けたであろう策謀の証拠集めを行った。決定的な証拠が見つかれば西住流を支配できる。全国大会での劇的な勝利には必ず裏があるはずだ。学生の青春を流派の権勢争いに使うことは許されないのだ!
そんな陶酔したようなあざけるような調子で。
──何も、何も見つからなかった。
辛うじて見つかったことといえば、
西住みほが対戦校の生徒と気安い様子で話していたことだけ。不正行為に結び付けるにはまったくもって足らないものばかり。大洗女子学園への戦車援助も戦術指導も西住流では行われていなかった。まるで、本当にすべての戦車が学園艦内から発見され、すべての人員がすぐに全国クラスの能力を身に着けたような。
──…………。
彼は頭を抱えた手を外し、簡素なデスクの上に組んだ。そのまま中空を睨みつけるようにして思索に浸った。
大学選抜チームとの戦いにおいてもおかしなことばかりだった。大洗女子学園から没収するはずの戦車は一回戦敗北という屈辱を受けたはずのサンダースが保護。その後聖グロリアーナの隊長の呼びかけから同じく大洗女子学園に敗北したはずの各校が集結。
そして試合では統制を取ることができないこともなく、唯唯諾々と
西住みほの指揮に従っている。裏にある西住流の威光ではないのか? 次女に時期家元の座を脅かされている長女すら、反発することなく協力している。
もはや勝つことが出来ない妹に必死に媚びを売る、そんな負け犬根性かと思っていたが……。それにしては彼女の下にいる黒森峰の隊員たちは意気軒高の調子で試合に臨んでいた。それは各校の副隊長以下も同じだ。全員がまるで使命感に燃える様子で、戦っていて、カール自走臼砲の撃破時等何度も息を呑まされた。
いまだ成人しない小娘たち、感情に振り回される高校生が、あれほどのパフォーマンスを出せるだろうか。西住流に便宜を図ってもらうなんて利益だけで? ……そもそも彼女たちに全員に利益供与するほど西住流は考えなしか?
不正は関わる人数が多ければ多いほど暴かれる可能性が高まる。ましてや高校生の集団。一人二人が安易な正義感で告発する危険も無視できないはずだ。ならば西住流は何をしたのか。どのようなからくりで彼女たちを駆り立てたのか。いかなる裏工作の証拠も見つかっていないのに。どうやって。
まさか、西住流は関係がなく、彼女たちが自発的に協力したのは、試合を通じて友情が芽生えたから。そんな青臭い理由であるなどということは……。
──まさか。
まさか、本当にそうなのか?
彼女たちはただ青春と戦車道だけで、学園艦の廃艦を阻止したのか?
ありえない。大洗の参加者は全員がほぼ素人同然だったのだ。彼女たちが優勝するには西住流のバックアップが必要なはず、そして明らかな贔屓を受けている大洗女子を他校は蔑むはず、そしてそれは高校全国大会優勝の西住流の工作で頂点に達したはず、しかし、大学選抜との試合に協力したということは西住流の工作を受けていたはず、しかし、何一つ証拠は見つかからない。西住流がなければ大洗女子学園の優勝は不可能である。裏工作があれば他校からの献身的な協力は受けられない。そして証拠はない。
ならば……本当に?
彼はそれから、大洗女子戦車道の戦いを一つ一つ見返した。彼女たちが学園のために歩んだ軌跡を丹念に辿っていた。何度も何度も繰り返し再生し、彼女たちの名前をはっきりと認識としたとき、彼は理解した。
彼を負かした彼女たちの見せつける青春と──
大洗女子学園の優勝はまぐれでも裏工作でもなく、彼女たち一人一人が持つ力と繋がりを発揮した結果。
だからこそ人々は彼女たちを見て心揺さぶられた。対戦校の少女たちも彼女のもとに集い、そして考えた。彼女たちのように戦いたいと。
ひたむきな思いを持って、仲間たちと心を一つにし、自分にできる役割をこなし、相手への敬意を忘れない。言葉にすれば陳腐なものだが、実行するのがいかに難しく実現すればいかに魅力的なのか、皆が彼女たちを見て理解した。
そして、彼も理解した。──特殊殲滅戦の価値を。
特殊殲滅戦へ思い入れを持つ長老たちを彼は内心馬鹿にしていた。結局のところ少女たちを殺し合わせる趣味の悪いショーだと思っていたのである。しかし、彼は、大洗女子学園の少女たちを見た。彼女たち一人一人がそれぞれ生きていることを正面から見つめた。
そして、特殊殲滅戦という祭儀を彼はようやく正しく認識できた。
生きたいという思うことほど、ひたむきな思いはない。互いに死なせたくないことは何より強固な絆。
あの人の代わりに殺すこと、意地でも誰かを殺さないこと、誰もが皆使命を持っていた。そして殺すこと。集団戦であるが故にサイコパスは生き残れない。生存者は殺した相手を一生背負うだろう。
これは──まったく戦車道と同じだ。彼は思った。特殊殲滅戦という青春をかけた少女たちの生きざまは、見る者の心を引き付けて離さない。──だからこそ、だからこそ特殊殲滅戦なのだ。
彼女たちの戦車道を知覚していないものは、ほかの凡百の者たちの戦車道と特殊殲滅戦ではまるで異なると意見するだろう。しかし、大丈夫なのだ。大洗女子学園の戦車道はそれさえも内包しているから。
特殊殲滅戦へ抗うことは、及びもつかない巨大な力へ抵抗しなければならないということである。
つまり、特殊殲滅戦参加者は生存権を他の経験者と争うとともに、もう一つの闘争への参加権を得る。運営、つまり国家的規模の権力による支配と戦う権利だ。
以前の参加者たちにそのような経験はない。彼女たちの戦車道は競い合い切磋琢磨する、それまでの水準である。その程度だから試みられた反逆はことごとく頓挫してきた。育成される人材もあの大学選抜の三人程度のレベルで留まっている。
しかし、大洗女子学園の、彼女たちの戦車道は違う。まったくまるで違う。すでに彼女たちは巨大な権力に抗い、そして打破した経験がある。彼女たちはもう特殊殲滅戦のリハーサルを終えており、彼と彼の背景と戦う備えを済ませているのだ。
彼女たちで実施される特殊殲滅戦は以前とは比べものにならない催しになる。
生きざまは知るものの心を引き付け、死に様は知るものの心から何かを奪う。
祭儀が終わり生き残る三人。彼女たちは今後の戦車道の未来を担い、より高く遠く飛躍するための素晴らしい人材となるだろう。
その一方で、祭儀に抗おうとする犠牲の羊たち、彼女たちとの闘いもまた熾烈を極め、ややもすれば特殊殲滅戦が破綻しかねないものとなるだろう。しかし、それが良い。抗えばあらがうほど特殊殲滅戦の価値は上がり、より人々を引き付ける。単なる見世物と思う人々も、感じ入って心奪われるほどに。
この特殊殲滅戦は廃止論を吹き飛ばし、特殊殲滅戦を永遠のものとするだろう。
彼は、彼女たちと闘うつもりである。彼女たちと闘うこと──特殊殲滅戦を実施すること。
以前の自分のままでいれば、今度こそ破滅するだろう。催しは打破される。自分は今度こそこの国を巻き込み破滅する。
しかし、実施によって得られるものは大きい。ささやかな復讐心を満たすこともさることながら、彼自身の能力を再度評価する機会が与えられること、必ず関わる全ての人々の心をつかむことが出来ること。
だからこそ、乗り越えねばならない。彼女たちを支配する、つまり勝利することで再び浮上して見せる。
これは崇高なる責務である。決してこの矮小な身の復讐心を満たすためだけのものではない。
彼の熱意は、多くの人々に伝わった。特殊殲滅戦に郷愁を持つ長老、前回の成果に不満を持つ実力者、自らが主流になり替わろうとする島田流の関係者。少女たちを踏みにじりたい業を持つ者。それはやがて、大きな力となった。
木っ端役人一人の脅迫では潰されてしまっても、脅迫と懐柔を折り交えた同調ならば組織全体を動かせる。
綱渡りで、彼がいつ首をくくらされてもおかしくはなかった。しかし、彼はわたり切った。
短期間での特殊殲滅戦の実行は可能となった。また参加対象者もまた拡大へとと相成った。
紛れもなく彼の能力によるものである。しかし、ここまでの町一つを貸し切ったうえでリスクも段違いの演習へと仕立て上げることが出来たのは、それ以上に今までの彼にはない何かがあったからである。それが多くの人々を動かしたのだ。彼の意志。この特殊殲滅戦で上へと昇りつめてやる。何が何でも。つまり、愚弄を恐れず言えば、彼の戦車道によるものに違いなかった。
名前も知られず回っていた歯車。噛み合わないで変えられる歯車。
彼はエリートだった。知恵も行動力も運もあった。野心もやる気も向上心もあった。中央省庁という伏魔殿で局長にまで出世する才能があった。彼が敗北した理由を挙げるとするならば、自分への過信、それから、人間を根本的になめていたこと。だが、敗北は彼を変えた。彼は曇った眼で人間を見定めるようになり、過信は歪み認知は狂い、関わるものすべてを破滅に導きかねないものとなった。
彼は信じている。戦車道と特殊殲滅戦を。勝利が自分を高みへと連れて行ってくれることを。そして出る死体の山がちょっぴり彼の溜飲を下げるだろうことを。
※ ※ ※
……土屋と愛里寿は去っていく麻子の背中を見送ることしかできない。
彼女がとても冷静ではいられない精神状態(冷泉だけに)であることは二人にも分かる。
しかし、数時間だけの付き合いに過ぎない愛里寿も、別に深い関係でない土屋も、彼女を止めるだけの言葉を持たなかったし、気休めに過ぎない言葉で彼女の時間を奪うこともできなかった。ただ、スマホのメッセージ機能で気遣う言葉を送るだけで精一杯。
それでも土屋は、どうか現実が彼女の繊細な感性を傷つけてしまうことがないように祈る。
「良かった、良かった!」
涙ぐみながら愛里寿ちゃんに抱き着くこの人も、がさつに見えて大概繊細だよねえ──。あっさりと
河嶋桃と合流できた土屋が、ぺたんと椅子に腰を下ろしてのコメントである。
先ほどの放送で呼ばれた大勢の名前、伴った凄まじい緊張と衝撃が一時的にどこか彼女から現実感を奪っている。内外問わず戦車道でできた友人たちが死んいるのに。ふわふわした生存バイアスが収まらない。
心の中の日常が、平穏の中にいたい気持ちがそこかしこから吹き出ている。
もっと前なら泣き叫んでいたかもしれないけど、この人、全国大会の後から少し頼れるようになってる。愛里寿ちゃんも何となく安心しているように見える。かーしま先輩、怪我はしているけど、元気そうでよかった。
「愛里寿、すまない。私の頬を張ってくれ!」
うん、心配にはなるよね。錯乱しちゃったのかな。「かーしま先輩、その、突然変態になっちゃったんですか?」「なっとらんわ!」「いたいけな少女にほっぺたを叩かせるなんて、えーっと、豪が深い性癖だな、というか」「違う、違うからな!」ああ、かーしま先輩である。土屋は安心した。
何というか、自分たちのために気を張ってくれるのは嬉しいが、だからこそ今が異常な状況であることを意識してしまうというか、もちろん危機感がないとはわかってるけれど、何人も何人も友人たちが死んでいることはわかっているけれど、ちゃんと生きてきた日常が自分たちにはあることを彼女は感じたかった。自動車部の仲間が、ホシノが死んでいないからだとはわかっているが。それでも、土屋夢頓、彼女の取り柄は明るくふるまえること。
「愛里寿、お前のことを、その、不安だったから、チラリと疑ってしまった」
お前は疑う私をこんなに気遣ってくれたのに──言いながら落ち着かないように愛里寿と土屋に視線をふらふらさせる河嶋。土屋は私のことは気にしないでくださいと言わんばかりに軽く上げた手をふらふらさせて離れていく。
顔を半ばぼんやりと微笑ませて。メロスですね~。かーしま先輩。天然でやってるかもしれないけど。
「お前はきっと許してくれるだろうが、それでも自分で自分を許せない」
だから迷惑かもしれないが、叩いてくれ。さすがに面喰った愛里寿が助けを求めるように土屋を見る。外を警戒しながらちらちらと二人を見ている土屋。「叩いてあげればいいと思うよ。副隊長こうなったら意固地だから~」愛里寿が河嶋に視線をやる。口を一文字に結んだ河嶋が涙ぐみながら首を何度か縦に振る。愛里寿が土屋に視線を戻す。「大丈夫、大丈夫。おもいっきりやっちゃえ」投げやりなツチコメ。また桃ちゃんに視線。おずおずと頬を差し出す桃ちゃん。「あ、やっぱりちょっとは手加減した方がいいかも。思いっきりやったら歯と─か─」拷問ビデオ。言葉を切って頬を掻く。「突然暴走して七色の光を出して周辺を溶かしだすかもしれないし~」「おまえ、私を何だと」
愛里寿が覚悟を決めて河嶋を見た。前に見学した時はわからなかったが、確かな矜持を持った、誠実な人なのだな。若干尊敬を込めた目で。何処かボコに似ているかもしれない。そう、ボコだ。この人もどこかボコなんだ。箱入り娘の
島田愛里寿、彼女もやっぱりどこかずれている。
「行くよ」「ああ、来い」
愛里寿の繰り出される手──小さな白い手から、島田流の技巧の限りを尽くされたビンタが繰り出される。肩から肘、手首に至るまでの骨格の動き。肝心要の手首のスナップの聞かせ方。打ち付ける手の形。まさに計算され尽くしたビンタである。
「────!」
ピシッっと張りのいい音が周辺に広がる。横目に見ていた土屋が痛い、と呟く。声も出さず顔が叩かれた方向に流れた河嶋はゆっくりと正面の愛里寿に視線をやる。頬にはピンク色の紅葉ができていた。「痛い、いや割とマジに痛くないか?」ぼそりと声が漏れる。
「河嶋さん」
島田愛里寿が
河嶋桃の眼をモノクルごと覗き込む。「あなた、ボコみたい」
「あ、ああ……おお?」河嶋はぱちくりとした。「いつもボコボコにされて、それでも立ち上がるの」「いや、それほどボコボコにはされてな──」「私もいつもボコに勇気をもらうから」「そ、そうか」
河嶋が土屋に助けを求める視線を送る。土屋は無粋なことしないのと言わんばかりに首を振る。そもそも桃ちゃんから始めたことである。今更梯子を外すような真似をするんじゃない。
河嶋を真摯に見つめる愛里寿は続きを言う許可を求めていた。促すように頷く。
「いつも立ち上がってまたボコボコになる。でも私は、ボコを叩くより応援したいの」
「もらってきた勇気を返してあげたい。互いに励ましあって、いつかは代わりに戦いたいから」
「だから、今は戦うわ。河嶋さん。立ち向かっていくあなたみたいに」
河嶋は呆然としていた。目を見開いてその言葉を聞いていて、ぽたりと理由がわからない涙が流れた。彼女は杏と柚子のことを思い出した。その後、両親のこと。自分を認めてくれて、甘えさせてくれた人たちのことを思い出した。
島田愛里寿のことを考える。彼女の背景と彼女の姿のことを考える。この悲惨で強い少女のことを。大学選抜の隊長で、島田流の後継者として育てられた神童。身一つで殺し合いの舞台に放り出された眼前の少女。
そんな彼女が、自分のことをかっこいいと言ってくれたのか。大したこともしてやれなかったのに。それでも、カッコいいって。また流れそうになる涙をゴシゴシとこすって止めた。これ以上情けない姿を見せたくなかった。
「ああ、戦おう。今度は肩を並べて、この傷だってへっちゃらだからな!」
無理しないでくださいね。私もできるかぎりのことはしますから~。土屋が自然体で話しながら河嶋に肩を貸す。微笑ましいものを見るような顔に若干羞恥と腹立たしさを河嶋は感じたが、それでも口角が上がっていた。戻ろうか、愛里寿ちゃん。頷く幼い声がして、立ち上がる。
彼女たちの心の中に優しい炎がちらりと立った。それは彼女たちが生きてきた軌跡の証だった。
安心感を覚える心中の温かさを抱えて彼女たちが動く。それでもきっとどうにかなるって。
三人の中には希望とも楽観ともつかない小さな灯が宿っていた。
【B・6 ゴルフ場・クラブハウス/一日目・昼】
【☆河嶋桃@チーム・ボコられグマのボコ】
[状態]健康、疲労(小)、右の腿に刺し傷(無いよりまし程度の処置済み)
[装備]大洗女子学園の制服
[道具]基本支給品一式、不明支給品(ナイフ、その他アイテム)、スポーツドリンク入りの水筒×2
[思考・状況]
基本行動方針:みんなで学園艦に帰る
1:生き残ることが最優先。たとえ殺し合いを止められなくても、その助けになれる時のために
2:愛里寿とともに戦う。自分を信じてくれた彼女とともに。
3:共に支え合う仲間を探す。できれば杏と合流したい。
4:今は土屋と愛里寿とともに集団に合流する。
5:プラウダ戦の時のことを、学校の皆に謝りたい
6:冷泉を追いかける。
[備考]
※スマートフォンに「アキに対する拷問映像」が入っています
【ツチヤ@青い鳥チーム】
[状態]健康、疲労(中)、恐怖、浮遊感。
[装備]ツナギ
[道具]基本支給品一式 不明支給品(ナイフ・銃) 『傍受権』
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗るつもりはない。首輪を外して脱出をする
1:ミッコに協力する。乗りかかった車だしね~
2:河嶋先輩と一緒に戻る。
3:
ダージリンは生きているみたい。どうしようか。
3:河嶋先輩を保護した後は、ミッコ達と合流する。ミカの態度は少々気に入らないが
4:首輪を外すために自動車部と合流して知恵を絞る。船などがあればそれで脱出を試みる
5:冷泉さんは大丈夫だろうか。余裕があれば彼女を追いかけたい。
[備考]
※C-4、C-6での爆発音を聞きました
※スマートフォンに「アキに対する拷問映像」が入っています
【
島田愛里寿@チーム・ボコられグマのボコ】
[状態]健康、疲労(中)
[装備]私服、デリンジャー(2/2 予備弾:6発)
[道具]基本支給品一式、不明支給品(ナイフ、その他アイテム)、イチゴジュースのペットボトル、スポーツドリンク入りの水筒×1
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない。立ち向かう。
1:殺し合いには乗らない。誰も殺したくない。
2:河嶋さんと一緒に行動する。彼女を支える。
3:桃を救助したのち、
ダージリンを助けに行く。これが役目だというなら、絶対に果たしたい。
4:あの人(冷泉麻子)は大丈夫かな。
5:特殊殲滅戦のことは気になるけど……
[備考]
※H&K MP5K(0/15)は A-7水族館の三階に投げ捨ててあります。
※スマートフォンに「アキに対する拷問映像」が入っています。
スマートフォンから二度、無機質な電子アラームが鳴る。
それはある人が信じる人が罪を犯した音であり、ある人が愛する人が永遠に世を去った音だった。
【B-5・北東・路上/一日目・昼】
【冷泉麻子@青い鳥チーム】
[状態]健康、疲労(中)、軽い恐怖
[装備]大洗女子学園の制服
[道具]基本支給品一式、不明支給品(ナイフ、銃器、その他アイテム)
[思考・状況]
基本行動方針:みんなで学園艦に帰りたい
1:沙織と何としてでも合流する
2:沙織を死なせたくない。あの優しい少女に幸せになってほしい。
3:ああ、華が死んだ。
4:西住さんに家族の死を報告するのは、辛い
5:人間、すぐに死んでしまうのに。どうして忘れていたんだ。
[備考]
※五十鈴華の死体の位置を見て、近くに武部沙織がいるのではないかと推測しています
※水道が生きていることを把握しました
※C-4、C-6での爆発音を聞きました
※スマートフォンに「アキに対する拷問映像」が入っています
※アキを殺した犯人(=
ノンナ)は、カルパッチョではないと考えています
【☆辻康太(文部科学省学園艦教育局長) @殲滅戦運営チーム】
[状態]健康
[装備]???
[道具]???
[思考・状況]
基本行動方針:殲滅戦を完遂させる。戦車道の少女たちに勝利する。
1:今度こそ、自分の思い描いたプランは狂わせない。狂わせてなるものか。
2:この殲滅戦がより多くの人を惹きつけるものとなるように管理する。
3:復讐心を満たす。
4:状況報告を“上”へ行う。
登場順
最終更新:2023年09月15日 19:54