「アミロペクチン第二章-28話 ~月曜日~」


 週間WorldWeekを読み終わったシュルツと私はいつものように飯を喰い、
ベルツベーカリーへ向かった。
我々の務めているベルツベーカリーは店長のクラウス・ベルツさんとその奥さんがやっていた
小さなパン屋である。米粉パン販売については早くから了承してくださった方々だ。
そこで私は米粉パンをシュルツと共に作っているわけだが、何故か他のパンも作らされている。
確かに男二人が米粉パンだけを作るというのはもったいない。うむ。
              ◆
 ヴァルとエシスシルの宗教、天教では毎週月曜日が休みとなっている。
月曜日の正午には町の人のほぼ全員が町の中央にある“礼拝塔”の前の広場に集まり、
祈りを捧げる。そして祈りが終わった後に家へ戻る際に通るのが南リム街道なのである。
南リム街道沿いにあるこのパン屋は儲かるというわけだ。
 え?店の人も祈りにいってるんじゃないのかって?
何をおっしゃる。店長と奥さんは祈りに行っているが、
天教信者でない私とシュルツは行かなくてもよいのだ。
 そして今日がその月曜日である。
正午。礼拝塔の方角から鐘の音が聞こえる。
「静かだな~、誰もいない」
「うむ。淋しすぎる。淋しさは冬に十分に味わったからもう味わいたくない」
「お前淋しがり屋だな」
「別に、そういうわけではないぞ」
「淋しいのなら行ってくればどうだ、たまには他宗教に触れるのも大切だ」
「う~む。いいかもしれない」
「やっぱり淋しがり屋なんだな」
「なっ」
「行ってこいよ、ホラホラ」
「店はどうするんだ、お前一人じゃ出来ないだろ。なら俺は行かない」
「店は大丈夫だから」
しつこい男である。
そのとき鐘が鳴った。祈りの時間が終わったのである。
「終わったぞ。よかったな、これで賑やかになるぞ、淋しがり屋さんっ♪」
「むう。ホラ、これから忙しくなるぞ、準備準備」
「はい、はい」



用語
  • 礼拝塔・・・フリュア中心部にある高い塔。“天ノ神”が祀られている。


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最終更新:2011年03月16日 21:33