Noisy Girl/Machine Maiden ◆ApriVFJs6M
「いいぞベイべー! 逃げる奴はベトコンだ!! 逃げない奴はよく訓練されたベトコンだ!! ホント 戦場は地獄だぜ! フゥハハハーハァー」
道路の上で一人の少女が何やら叫びながら銃を乱射していた。
タタタタタと突撃銃から銃弾が放たれ街路樹に命中し、小さな木片を飛び散らせている。
そんな彼女――三枝葉留佳は支給された本物の銃を使ってのごっこ遊びに夢中になっていた。
もちろん撃っているのは本物なので、ゲームのように弾倉の中に無限に弾が装填された銃ではない。
当然ながらあっという間に撃ち尽くしカチカチと引き金を鳴らす音を響かせて銃は沈黙する。
「アパム! アパム! 弾! 弾持ってこい! アパーーーーム!!」
葉留佳は後ろを振り返り誰もいない所に向かって必死に呼びかける。
が、この周囲にいるのは葉留佳だけ。当然新しい弾薬を持って来てくれる人なんていない。
給弾役がいないことを確認した葉留佳は銃を投げ捨てるとこれまた誰もいない方向を指差して言った。
「来いよベネット、銃なんか捨ててかかってこい! わたしのカンフーのサビしてくれるぜ~! あちょっあちょっほわたぁ~っ!」
シュッシュとボクシングのポーズで素早くジャブを繰り出す葉留佳。
もちろん葉留佳以外に人の影はいない。
「ふははっ! キックの間合いが掴めまい! わたしの縞々ニーソックスが目の錯覚を引き起こし実際のリーチよりも短くお前の目には見えてしまっているのだぁ~!」
高らかに笑い自慢の変幻自在の格闘術の説明を行うが聞く者は誰もいない。
だんだんとツッコミを入れる人間がいないことに寂しさと苛立ちとやるせなさが募る。
そんな観客のいない一人芝居を続けていた葉留佳であるが……
「あーんもぅっ! 誰かツッコんでよおーーーーーー! わたし一人で身体張るの空しくなるじゃんかぁーーーっ!」
ついに一人芝居に限界が生じ現実という名のツッコミが彼女を襲う。
さすがに恥ずかしくなった葉留佳は銃を拾い上げて溜息をついた。
「理樹くんがいたら鋭いツッコミが飛んでくるのにー、ぶーぶーっ――って、あれぇ?」
ツッコミ不在の如何ともしがたい状況を打破したくとも打破できなかった葉留佳であったが背後から妙な視線を感じるのだった。
「ゴゴゴゴゴゴゴ……この気配――ドドドドドド……新手のツッコミ使いかッ!? って誰もいねぇぇぇぇっ!」
新たなるツッコミ役がいたと思い、笑顔で振り向くがそこには誰もいない。
その代わり道路の上にぽつんと不審な段ボール箱が置かれていた。
さっきまでこんな箱はなかったのに――
葉留佳は好奇心と恐れを抱いてダンボール箱に近づく。
「ドドドドド……ゴゴゴゴゴゴゴ……気をつけろ葉留佳……うかつにあの箱に触れるんじゃあない……! ドドドドドドド……!」
愛媛みかん
段ボール箱はそう印字されていた。
なんの変哲のないシンプルな段ボール箱。
「じぃ~~~~~~~~~……」
「…………………………………」
「じぃ~~~~~~~~~……」
「…………………………………」
「ドドドドドドドドドドド……」
じぃっと見つめるも段ボール箱に反応は訪れない。
葉留佳はそれに背中を向けて歩き出した。
すたすたすた。
カサカサカサ。
すたすたすた。
カサカサカサ。
すたすたすたすたすた。
カサカサカサカサカサ。
すたすたすたすたすたすたすたッ!
カサカサカサカサカサカサカサッ!
段ボール箱は葉留佳に付いてくる。
「じぃ~~~~~~~~~~~~~~~~」
「………………………………………………」
「スネーク! 応答しろスネーク!」
「………………………………………」
葉留佳はもう一度ダンボール箱に背を向け歩き出す。
葉留佳はダンボール箱が動いているのを見ると即座に振り返り、右手で顔を覆いつつ左手で段ボール箱を指差し言った。
「スネーク! 貴様見ているなッ!」
「ぴぎっ!」
「かかったなアホがぁっ!」
葉留佳は満面の笑みを浮かべて飛び跳ねたダンボールに近寄る。
彼女は手をわきわきと動かしながらそのダンボール箱を持ち上げた。
「はわわわっ……! その箱返すのれす~~~っ!」
「わおっ! なんとびゅーちほーなお嬢さんが段ボールの中に!」
ダンボール箱の中には妙な耳飾りを付けた金髪の少女が隠れていた。
少女は小動物のような瞳で葉留佳を一瞥すると、再び葉留佳の手から段ボール箱を強引に奪い取ってその中に隠れてしまう。
「ふしゃー!」
威嚇のつもりのような声が箱の中から聞こえてくる。
葉留佳は困ったような表情で箱の中の少女に話しかけた。
「もしもしそこのどこかのアーサー王似のお嬢さんや」
「……わたしはそんな人に似てないのれす。それにアーサー王は男性なのれす」
「そりゃそうだよねー! あははははははは!! ねえねえっわたし何にもしないから箱から出てきてよーーー!」
「らめなのれす。シルファは箱を被らないと人間と話せないのれす」
「えーっそんなぁ! そんな可愛い女の子が箱を被ったままなんてもったいないよー?」
さっ! 葉留佳は箱をどかす
さっ! 少女は箱を被る。
ささっ! 葉留佳は箱をどかす。
ささっ! 少女は箱を被る。
そんなやり取りを数十回繰り返すうちに段ボールはすっかりボロボロになってしまい少女は箱に隠れなくなってしまった。
「ああーっ! わたしの箱がボロボロなのれす……」
「ふふーん、わたしの勝ちぃー! わたし葉留佳、三枝葉留佳だよ。はるちんと呼んでね。キラッ☆」
にっこりと笑って変な決めポーズを葉留佳は取る。
「……シルファなのれす。HMX-17cシルファ。わたしの名前なのれす」
「日本語でおk」
「だ・か・ら! シルファなのれす! メイドロボットのシルファなのれす!」
舌足らずな口調で自分のことを説明する少女――シルファ。
「ほうほうメイドロボのシルシルですかぁー。……なっ、なんだってー!!ΩΩΩ」
「ぴっ!?」
「まさか……世の男子諸君が追い求める浪漫オブ浪漫! その名もメイドロボ! それがシルシルだってーー!? はははそんなご冗談を」
「ほんとなのれす! シルファはメイドロボなのれす!」
「ほんとに?」
「ほんとれす」
「…………触っていい?」
「らめれす。わたしを触っていいのはご主人様だけなのれす」
「えーっ減るもんじゃないから別にいいじゃーーーーん、それ!」
つんつんとシルファの頬に触れてみる。
人間とほぼ変らない質感。
「や、やめるのれす……」
「よいではないかよいではないか。お次はここを――」
むにむに、むにむにとシルファの服の上から胸をまさぐる葉留佳。
特別大きくはないもののしっかりとした弾力と柔らかさを誇っている。
とても機械とは思えない限りなく人に近い感触。
「おおっーー! これはすごい……! まるで人そのものではないか……! くそっー大きさ負けたぁ……」
「あんっ……はるはるっ……らめ、れす……そんなこと……していいいのはご主人様だけなのれす……っ」
胸を揉みしだく葉留佳の手つきにシルファは声をあげて身を捩る。
まさに人間のようなその仕草に葉留佳は感涙極まる。
「ぐああぁっ……すごい事実だ……! 参ったぁぁ! わたしは参ったぁぁぁ!
なぜなら本当にメイドロボにこんな機能を付けるやつがいたからだぁ!
いいのか!? 本当にいいのか、開発者はぁぁっっ!?
こんな機能付けたらご主人様はシルシルに何をするのかわかってるのか!?
こんな機能を世の青少年が黙って見てると思ってるのか!?
法を恐れぬチャレンジャーか? 児ポ法が黙って見てないぞ?
ぐああぁぁっっ無理だぁ!! 青少年がそんな欲望を抑えこめると思えない。自制などきかない!」
感涙極まりすぎてまるで変な薬が決まったかのようにハイテンションで叫び続ける葉留佳だった。
【時間:1日目午後2時ごろ】
【場所:G-6】
三枝葉留佳
【持ち物:89式5.56mm小銃(0/20)、予備弾倉×7、水・食料一日分】
【状況:健康】
シルファ
【持ち物:不明支給品、ボロボロの段ボール箱、水・食料一日分】
【状況:健康】
最終更新:2011年09月06日 17:20