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ヘタレ少年とクール少女の生死を越えた出会い ◆5ddd1Yaifw




「おいおい、何だよこの殺し合いってやつは」

深い深い森の中。そびえ立つ木々が陽の光を遮って、大地に光をあまり通さない。
お陰で昼だというのに辺りが少し暗い。そんな世界に異質の存在がいた。

(冗談ならいいんだけどね……)

ここにいるのは地面に座りこんでいる一人の少年。
金髪に中肉中背の体型。
黄色のブレザーの制服と紺のスラックスで身を包んだ春原陽平。
彼はついさっきまでいつも通りの日常を過ごし、そして部屋で就寝したはずであった。
そう。“はず”だったのだ。

(いつのまにかに変なところに連れ去られて殺し合いをしろって? 挙句の果てに女の子の首が飛んで……
 そして扉を開けたらこんなとこにいた、と。奇想天外にもほどがある)

昨日はベッドの上で自分は寝ていた。間違いなくぐっすりと。
それにどうやってさっきまでいた部屋まで運んだ? これは誘拐というものではないだろうか。
だとしたら警察に連絡するべきなのか。
わからない、こんな状況でどうすればいいのか。
というか普通は混乱して当たり前だ、と陽平は自問自答する。

「……もういいや。こういう頭使うのって僕向きじゃないんだよ」

ため息を吐き、よっこらせと呟きながら重い腰をあげる。
陽平は頭をそれなりに使って疲れたのか表情は冴えない。

(ああ、もうイライラするなぁ。訳わかんないんだよ、あの野郎……)

頭を掻きむしりながら陽平はデイバッグに入っている支給品の確認を行う。
まず最初に名簿をパラパラとめくる。自分の名前はあるのか、と探しているうちにとある名前を見つけた。

「岡崎……!? それに芽衣まで……」

他にもないかと確かめたところ、自分の知り合いがほとんどいた。
陽平にとってこの場に知り合いがいるということは嬉しさ半分悲しさ半分だ。

「みんな揃ってこんな馬鹿らしい催しに巻き込まれているのかよ、畜生」

嬉しさはこの会場に知り合いがいて、一人ではないということ。
悲しさは自分以外にも命がなくなるという危険が常に伴っていること。
陽平としては特に妹である芽衣のことを考えると頭がいたい。
口ではぞんざいに扱ってはいるものの大切な妹なのだ。
兄として心配しないはずがない。

(心配してもしょうがないか…………あいつは僕より人づきあいその他諸々がうまい。きっと生き残ってくれるさ……)

ひとまずは妹についての思考を打ち切って残りの支給品を確かめるためにデイバックを漁る。
そして出てきたのは。

「ヒッ……!? これって……」

黒色の物体。拳銃だ。
陽平は知る由もないが、この拳銃はベレッタM92といい、
撃つときの反動も少なく軽量なうえ、排莢不良も起こりにくいいわば当たりの拳銃なのだ。
当然ごとく拳銃が支給品ということだけで充分当たりなのだが。

「本物なんだよな……この重さ。御丁寧に説明書までついてる。そこまで殺し合いをさせたいのかよ」

考えれば考えるほど手詰まりな気がする。それにやることは山積みだ。

「はぁ、めんどくさい」

思わず悪態をついてしまうほどめんどくさい。
それに陽平は。

(まだ僕は、この自体を現実と捉えきれていない。その証拠に今も冷静だ)

いつも通りの思考。いつも通りの表情。
そう全てが“いつも通り”だ。



――――ホントウニソウナノ――――



嘘と欺瞞に塗り固まれたこの島で狂わないということはおかしいのではないか。
そうだ。現に。



――――モウスノハラヨウヘイはクルッテイル―――――



ここに存在するのは“春原陽平”の残りカス。だってそうだろう?
春原陽平はこんなに冷静であっただろうか。もっとわめき散らしてヘタレるのが本当なのではないか。
いつもどおりの三枚目な脇役が春原陽平の役目であろうに。


「僕は……まだ正常だ、冷静でいられることの何が悪い」

何かの歯車が狂い始めている。現実と夢の境界線に立っているかのように今の自分は半端者だ。
殺し合いを止めようと息巻いているわけでもなく、乗ろうと決意するでもない。

(僕は――)

思考カット。今、そんなことを考えるよりも重要なことが陽平にはできた。

「誰だ!」

陽平の耳に入ったのは誰かが枯れ木を踏みしめる音。誰かが後ろにいる。
身体は自分の想像よりも早く動いた。
腰にぶら下げていたベレッタM92を素早く抜き放ち、音のした方向へ構える。

「驚かしてすいません。こちらに敵意はないのでどうかその拳銃を下ろしてはいただけないでしょうか」

そう言って一人の少女が姿を現した。
長い金色の髪を右左の両サイドでしばっている、いわゆるツインテールというものだ。
着ているのは一般的なセーラー服であり特に目立つ部分は存在しない。

「そんな言葉だけで信用できると思うかい、悪いけど後ろからグッサリなんていやだからね」
「そうでしょうね、ですのでここは信頼の証明として服でも脱ぎます」
「へ?」

遊佐が無表情で服に手をかける。
セーラー服のタイをとり上着を脱ぎ、そしてスカートを下ろし、タイツも――

「待って!!! もうわかったから!!!! もういい、もういいよ!!!」
「え? ですが不安でしょうし……」

そんな問答をしているうちに遊佐はタイツも脱いでしまった。
今の遊佐の姿は下着を着けているのみ。足が汚れないように靴を履いているのだがまたそれもいい。
実に素晴らしいと陽平は心のなかで歓喜をあげる。だが、今はそんな場合じゃないと頭を切りかえる。

「十分です!! ホントにもう十分だからぁ!!!!」
「ですが、私の裸を見たところで別に興奮するわけでもないですし」

いいえ、興奮します。下の息子が大きくなりはじめました、とは言えない。
もし気づかれでもしたら軽蔑ものだ。

「お願いします、もう信用するから……」
「そうですか、感謝します。申し遅れました、遊佐といいます。これから情報の交換をしたいのですがよろしいですか」

陽平はうなだれながら拳銃を下ろす。それを見て遊佐が陽平の元へ歩いてきた。

(普段なら可愛い子と一緒だ、半裸姿も見れてイヤッッホォォォオオォオウ! とかなるんだけどなぁ。今の僕じゃ無理か。
 それになんか気が抜けちゃった。……でもこれでいいんだ、僕は信じてみようこの女の子を。とりあえず今の最優先事項は――)



「服を着てくれ!!!」



 【時間:1日目午後1時ごろ】
 【場所:D-3】

 春原陽平
 【持ち物:ベレッタM92(16/15+1)、予備弾倉×3、水・食料一日分】
 【状況:健康、冷静?】

 遊佐
 【持ち物:??、水・食料一日分】
 【状況:半裸、健康】



050:少女綺想曲~そして全てはゼロになる~ 時系列順 003:パンドラ・といぼっくす
000:オープニング 投下順 002:少女が見ている ~ Pure Eyes
GAME START 春原陽平 046:ある日、森の中
GAME START 遊佐 046:ある日、森の中


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最終更新:2011年08月26日 19:09