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第二話 スキンシップ

「あっ!はこみん!」

 試合終了後、俺が奈良少年野球育成機構の集合場所へと向かうと由姫ちゃんが勢いよく俺に向かってきた、
その声を聞いてからなのか辺りにいた由姫ちゃんのチームメイトたちも俺の方へと次々とやって来る。
 一応この近くじゃあちょっとした有名人になっている俺、プチ自慢だぜ、テヘッ☆

「はこみんさぁ~ん、試合見てたなら言って下さいぉ~」
「はこみんさん!俺たちもの凄ぇ頑張りましたよ~」

 俺に駆け寄るなりチームメイトたちは監督を無視して俺に話しかけてくる。
しかし何故か皆に“はこみん”の愛称が伝わってるなぁ……
 ったく、たまには“弾さん”やら“弾選手”やら呼ばれたいものだぜ。
でも“ダンカン”とかは流石に嫌だなあ。
 そんな事を考えながらも俺は冷静モードへと切り替えながら由姫ちゃんを褒めてあげる。

「由姫ちゃんの投球凄かったなぁ~、全力投球で九回投げきるって容易な事じゃないぞ~?
 帰りになんか美味いもんご馳走してやっからな~」
「えへへ……」

 俺はそう言いながら照れ笑いする由姫ちゃんの頭をなでなでしてあげる。
……周りからは何故かとても羨ましそうな視線が飛んできている、おごってやるって言ったのが行けなかったのかなぁ。
ああ――なんか複雑な気分、でもみんなに何かをおごってやるような金なんざ無いしなぁ。
 そこで俺は集まってきた子供たち全員に「お前らも良くやった!」と言いながら頭を撫でてやることにした、
奢る事の出来ない少年達よ、許してくれっ! この貧乏人を!!
 そう思いながら撫でていると、不思議と撫でてあげた子供たちは自然と笑みを浮かべながら嬉しそうにしている。
……もしかしてあれか、ただ撫でられたかっただけなんね、こいつら。

「わーい!」
「はこみんさんに撫で撫でしてもらった~、やったー」

 まるで子供のようにはしゃぐ小中学生、まぁ子供なんだけどねっ☆
しかしこいつらも桁外れな実力を持っているからなぁ、特に野手だけのレベルなら全国でもトップクラスって感じのチーム。
 そこに由姫ちゃんが入ったからもう穴がないよなぁ……
唯一気がかりがあるとすれば由姫ちゃん以外の投手がパッとしないって事だけだった――







 その後、俺は現地解散で帰宅する事となる由姫ちゃんと一緒にレストランへと向かった、
昼ごはんをご馳走するだけのお金なら持ってる! 半分は亜樹さんが俺に由姫ちゃんの食費として渡してくれたお金だけど……
 ともかく!俺は由姫ちゃんに奢ってあげるんだ、偉いだろう!へへっ
しかしこの子、ありえない程食べるからなぁ……1万円で足りるだろうか。

「は~こみん、どーしたのっ?」

 俺が考え事のように若干俯いて金銭面のことを心配してたのを気にしていたのか由姫ちゃんは俺に問いかける、
まさかこんな頑張った日に、金の話などできるわけがない。

「いあ、ちょっと俺の将来の事を考えていたのさ」
「へぇ~、はこみんもそんな常識的な事を考えるんだね~
 私ははこみんにはプロ野球選手になってほしいな♡」

 おいおい、最初の一文が失礼だろう……
でも俺は別にそんな事は気にしない、
今頭に浮かんでいるのはもしお金が足りなかったら、その時は俺が体で払うしかないという事だけである。







「ぷは~っ、おいしかったぁ~」

 物凄く長い時間レストランにいた気がする、
それなのに掛かった金額は予想以上に少なかった――
 理由は飲むのが早い由姫ちゃんの飲み物が無くなり次第、俺はドリンクバーへと向かいジュースを入れに行ったからである。
 そしてひたすら満足するまで飲ませた、今日の試合の話を聞きながら。
ドリンクバーの元はとっただろう、ステーキ・ライスとセットで頼んだドリンクバーで由姫ちゃんはおそらく3・4リットル分は飲んだであろう。

  ――その小さな体にどれだけの水分をため込むのだろうか
俺は少し気にしつつも予想以上に少なかった食費に喜びながら由姫ちゃんの手を取って歩いた。
 ……たまには外食も悪くないなあ。
手を繋ぐ由姫ちゃんの笑みと手の温かみを感じながら、俺はその事を実感した。

「次はノーヒットノーラン目指せよ~、そしたら高級寿司おごってやるぞ!」
「お!言ったなぁ~!? その言葉、はこみん忘れないでよ~?」
「ははは、もちろんさぁ~」

 由姫ちゃんのうれしそうに喜ぶ笑顔は――今の俺には眩しく見えた。


最終更新:2010年02月10日 02:26