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第四話 らしい

 ――午前の授業が終わって、園児、そして俺たちは昼飯時を迎える事となるお昼時。
各クラスを受け持つ先生たちが園児たちと仲良く食事をする中、俺とたっちゃんだけは職員室で食事をすることとなる。
 俺たちアルバイトは園児たちの遊び相手や安全管理、
体を動かす時のアドバイス係や相談係などの担当をすることになっているが、それ以外ではあまり触れあう機会はない、もっぱら会計仕事や電話対応の為に職員室での待機が基本だ。
 だがこの仕事、やりがいのある仕事だと俺は思う、
運動神経や気配りなら野球部時代から培ってる俺だ、
他の先生からも期待されてるぜ☆
 ――まあ、たっちゃんのが人生経験が長くて気がきくから俺よりずっと行動が早いんだけどね、テヘッ☆
それはいいとして、この日もたっちゃんと一緒にお弁当で昼飯を取る。

「お前のその弁当ってたしか芦原亜樹さんに作ってもらってんだろう?いいよなぁ……」
「ん?、まぁな、亜樹さんの手作り料理は他の誰にも負けないのぜ!」

 俺の弁当は基本亜樹さんが作る手作り弁当だ、
タコウィンナーにうさぎ風のリンゴ、卵焼きに塩味のブロッコリー、ひじき煮、
そしてご飯には芦原家特製の甘鮭のフレークがたくさん掛っていた。
たっちゃんは羨ましそうに俺の弁当を覗いてくる、ったく、しょうがねぇなぁ……

 俺はたっちゃんの市販の弁当のご飯の上に2つある卵焼きを1個、ポンと乗せてやった。

「亜樹さんの卵焼きだ、1個あげるぜ!」
「はははっ、いいのかぁ? サンクス!」

 そんなこんなで、俺たちは適当に弁当の話題で一通り盛り上がると、
次にたっちゃんが野球の話題を俺にふってきた。

「あ、そういやこの前の由姫ちゃんの試合見たぞ~力を抑えてあの投球はすげぇなぁ」

 力を抑えて……か、まあ合ってるっちゃあ合ってるけどな、
俺はたっちゃんに力を抑えての投球の意味を教えてあげた。

「どうせ“あの球”を投げても由姫ちゃんが自滅するだけだし使わないようにさせてるだけだ」
「あ~、なんだ、 あの球をコントロールできるわけじゃないんだな」

 たっちゃんは納得した表情を浮かべ、首を縦に振りながら「はいはいはい」と頷く。
俺がさらにそれについて説明しようとすると、ふと後方から園長せんせーが語りかけてきた。

「おや、楽しそうですねぇ~、何の話をしてるのですか?」

 そういやこの人が俺たちを雇ったんだよな~、どうやら大の野球好きらしい。
俺たちが野球の会話をしているとどんな状況でも会話に参加してくるのだ。
 きっと、今日も俺たちが野球の会話をしているのをチラッと耳にして来たのだろう、
園長せんせーに俺たちは今話している事を軽く説明した。

「いあ、昨日俺の居候先の由姫ちゃんが中学生相手に完封しちゃったんですよ
 確か由姫ちゃんもこの幼稚園出身だったのですが……」

 その発言を聞き突然閃いたかのような表情を浮かべた園長せんせーは嬉しそうに話す。

「ああ~、あのリボンの子ですか~
 昔から体力と運動神経抜群だったもんね~」
「全くだ、
 由姫ちゃんはとてつもない体力だよな~、うちんところの弟子にも分けてもらいたいよ」

 弟子……? そいえばたっちゃん最近有名になった事で近所の子が野球を習いに来ているって言ってたなぁ。
 ま、たっちゃんがどんなに育てても俺が教えてる由姫ちゃんは才能の塊みたいなものだし、
絶対敵わないよね~、えっへん!☆









 その後、俺ら三人は昼飯を食べつつ最近あった話で盛り上がった。
それが終わり、午後の授業も終えて、園児たちがバスへと乗り帰宅すると、
俺たちバイト勢の勤務は終了となる。
 今日も無事、何事もなく過ごせたことに感謝、
そう思いながら俺とたっちゃんは正面玄関から出て行く。

「はこみん先生!たっちゃん先生!また明日ね~」
「おぅ!また明日な~」

 親の事情で帰りの時間でも園内に残る園児たちに見送られながら、俺とたっちゃんは正門の方から外に出た、
俺とたっちゃんはここからしばらくは同じ道を辿って帰る事になる。
バイトをする中で、俺とたっちゃんは朝、昼、帰りに話す時間があることになる。

 ――でも話したい事はほとんど昼飯の時に言っちゃったからなぁ、何について話そうかな。
そう思っているとふと先ほどの会話の事が頭に浮かぶ。

 ちょうどいいや、さっき言ってた話でも聞いてみよう。
俺はそう思いながら同じ帰り道を行くたっちゃんに声をかけた。

「なぁ、昼に言ってたたっちゃんの弟子ってどんなの?」
「ん、そういえばお前には話してなかったかぁ」

 たっちゃんは笑みを浮かばせながら自分の弟子について語り始めた。

「お前の弟子ってたしか由姫ちゃんと……たしかもう一人いたろう?
 俺も弟子を2人程とっていてな、2人とも結構面白いんだぜ?」

 ったく、どいつもこいつも……
俺は教えているだけであって由姫ちゃんは弟子にした覚えはないっちゅうねん!

 そんな事を思いつつもたっちゃんは話を続ける。

「そん中の一人なんだが、ずば抜けた奴がいてな
 由姫ちゃんより4歳上の女の子だが、とにかく今度あってみろよ」
「説明できないのか?」

 俺がそう聞くとたっちゃんは首を横にふりながらニヤリと笑う。

「いや、あって打席で体感すればわかるのさ……
 特徴?そりゃあ俺並みの制球力を持つ、ってことさ」

 たっちゃんはニヤリと笑うと、分かれ道で最後にこう告げた。

「名前は南千晴(みなみ ちはる)ってんだ、由姫ちゃんも呼んでくればいい刺激になると思うぞ~」

 こうして、俺とたっちゃんはその場を別れ、それぞれの家へと戻る、
それにしても――南千晴……どっかで聞いたことある名前、だな……


 そんな事を考えながら、俺は家の玄関を開け、自分の部屋へと駆け込んだ。

最終更新:2010年06月08日 13:02