アットウィキロゴ

第十話 スタート

 ――次の日、俺はバイトを6時に終えるとすぐ様由姫ちゃんと戒君の3人で河川敷で長距離走をする事にした、
なんだか今の俺は非常に熱い、とても燃えているようだ。

「由姫ちゃん!俺に長距離走で勝ったら夕飯にお寿司おごってやる!」
「おお~、約束だからねっ!」

 ついつい由姫ちゃんにまで挑戦状を叩きつける始末、
もちろん俺はその時、由姫ちゃんに負ける気はさらさら無かった。
 しかし、だ……毎日ありえない程の特訓を繰り広げてきた由姫ちゃんの体力をこの時舐めきってた事にはじめて気づかされた。

「ハァッ……!ハァッ……!」
「あれぇ?はこみん~ど~したの~♪」

 およそ30キロ、よく正月などに見る箱根駅伝より絶対多く走っている。
タイムも1時間30分を切っている……それなのに何故由姫ちゃんは平気そうな顔をしていられるんだ!!

「もう……ダメェ~」
「も~、なっさけないなぁ、はこみん~」

 ついに汗びっしょりの俺はひざをついて倒れこむ、
由姫ちゃんも汗はかいているようだが肩で息をするほど疲れても無いようだ。
ぶっちゃけ、この少女ならオリンピックで優勝を狙えるとここで断言しよう、ソースは俺!
 仕方ないので夕飯に由姫ちゃんに寿司をおごることにした、
あれ?そういえば佐々原はどこに消えたんだろう――
 その頃、まだ16キロ地点で夕闇に怯えながら一人で走り続ける戒君の事を俺は知る由もなかったのである。






「おいしかった~♪」
「うむぅ、俺も鍛えないとなァ……」

 回転寿司屋を出てきた道を戻りはじめる。
何事も無かったかのように俺たち二人が来た道を戻る中、口を開け、頭をぶらぶらさせながら走ってくる戒君を前に、俺はこの時初めて彼もいた事を思い出す。

「あっ、そういえばいたんだねぇ、戒っち」

 由姫ちゃんが戒君を指差しながら言うと戒君は疲れている中必死に声を出す。

「ブゼァェ!ブゼァェェッ!! ……ひ、ひどい……すよ」
「ってかお前の息切れの方がひどい」

 既に走れそうな状態ではなかったので亜樹さんに車で迎えに来てもらうことになった。



「しっかしお前も情けないなぁ~、それでも男か~?」
「はこみんさんたちが特別なだけでしょう……」

 酸欠を起こしながらも車の座席最後列で横たわりながら話す戒君、
真ん中の列で看病をしながら戒君の愚痴を聞く俺、おそらくだがこいつだけには負ける気がしない――俺が生きてるうちは。


「ママー、はこみんにお寿司おごってもらったー」
「よかったわね~ふふふ」

 一方、座席側の方では親子の会話が流れている、
亜樹さんの運転がただでさえ安定しないのに話ながら運転する為歩道にタイヤをぶつけグラグラと車体を揺らしたのを俺と戒君は若干怯えながらその様子を眺めていた。
 やがて、戒君の家につき車から自分の足で降りた戒君は辛そうに家へと入っていく。

「次やるときはもっと体力つけてから来いよー」
「無理ですって……」

 そんなボヤキを口にしつつ戒君は家の中へと消えてゆく、
さて、俺たちも家に返ろう――

「じゃあ、私たちも帰りましょうか」
「では帰りましょう!」

 こうして、今日と言う一日はあっという間に過ぎて行く、
俺はこれからも一日の月日を楽しく過ごしていく事になるだろう。
自分の為に、そして信頼する仲間の為に、そして由姫ちゃんの為に――

俺はいつでも本気で生きていくだろう。





序章終了



最終更新:2010年02月10日 03:19