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第十三話 梅雨

「こらこら室内でボールを投げちゃダメだよ~」

「あめでそとつかえないじゃん~」
「やきゅうしたいよぉ~」

 俺の注意で室内でキャッチボールをしていた子は文句を言いながらも投げるのを止める。 
外は雨、ずっと雨、いやな雨、どこに居ても雨の音が聞こえる強い雨なのである。

 季節は6月――、じめじめとした空気と雨の日が続くせいか妙にイライラする。
野球にどっぷりと嵌った園児たちもここ三日降り続く雨のせいで室内でゴムボールをつかったキャッチボールぐらいしか出来ない。
それすら注意しなくちゃいけないのだから子供たちのイライラは募るばかりだろう。
 ハンカチ落としやらして遊ぶのだがやはり中には野球がしたい子も居るらしくいろいろと室内遊びで盛り上がってる子も居た。


 優雨君は室内でスクワット、下半身作りと言って自分からスクワットをし始めたのだ。
明灯ちゃんは鏡に向かってシャドウピッチング、暇があればいつもフォームの練習をしている。
他にもちらちらとそういった行動が見て取れる――この中で何人が野球をし続けるのかなぁと思うと少し楽しい。







「ただいま~」

 そうしてバイトを終え、家に帰る――
すると普段なら家に帰ってきた瞬間由姫ちゃんが迎えに来てくれるのに今日はお出迎えが無かった。
迎えに来てくれた亜樹さんに俺は由姫ちゃんがどこに居るのかを聞く。

「あの子なら明日の試合に向けて戒君と練習しにいきましたよ」
「こんな雨の日に!?」

 由姫ちゃんはどこかに行ってしまったらしい、
いくら6月とはいえ外で野球をすれば濡れて寒いだろう。
俺はとりあえず傘を持って外に出た――由姫の居る場所なんて大体検討がつくものだ。



 ――河川敷、
 雨で水かさの増した川の脇で二人、キャッチボールを行っている二人が居る。
合羽を着ているとは思えないほど二人の動きは素早く本気でやっていることが見て取れた。

「戒君!、明日の試合先発でしょ~? がんばってね~」
「うん、頑張るよ」

 俺はそんな二人を見てゆっくりと近づき声を掛けた。


「やめとけ、風邪引くぞ……」
「あ、はこみん!」

 声をかけると由姫ちゃんは俺の声に反応して振り向く。
その途端何を思ったのか合羽姿のまま俺に抱きついてきやがった――

「冷てぇ!! ……てめぇ!水滴付いてる合羽着て抱きついてくるな!」
「あはははは~」
「いいなぁ、はこみんさん……」

 ったく、無邪気な所がさらに腹が立つぜ……怒りにくい!
俺は由姫ちゃんと戒君に若干強引に傘を渡し別の場所に避難させる。
 ったく、二人とも靴はびしょ濡れだし足は泥だらけ、よくこんな天気なのにこんな所でやる気になったなぁ……
 それだけやる気だったんだろうけど風邪を引いたら意味ないんだから……
 そう思いつつ俺らは一旦芦原家へと避難するように帰る、
帰ってきたころには皆びしょ濡れになっていた。

「あらあら、こんなにまでなっちゃって~」

 亜樹さんが俺らを見てすぐさまタオルを取り出してくれる、
まあ俺は由姫ちゃんにつけられなければ濡れなかったんだけどね。

 暫くした後、俺は二人に一応注意だけしておいた。

「これからは雨の中で無理に練習しようとしないよーに!」
「はーい」

 由姫ちゃんは反省してるのかしてないのか分からないがそう言うとすぐにその場から去っていく。
 俺は自分のズボンと靴下を戒君に貸してあげることにした。
その際、俺は戒君の肩に手を掛けて聞いてみる。

「明日、先発なんだって? まあ頑張れや」
「ハイっ!」

 こうして、戒君は俺と由姫ちゃんに見送られ家へと帰っていく、
明日、ドーム球場で行われる試合―― 俺も見に行こうかな。

 俺はそんなことを考えながら、びしょ濡れになった由姫ちゃんと共に風呂場へと入っていった。



最終更新:2010年02月10日 11:37