「はこみんさ~ん、ありがとうございました~」
「おう! 次の試合も頑張れよ~」
夕方、俺と由姫ちゃんは帰りの時間として皆より早く家へと帰ることに、
別に由姫ちゃんだけ先に帰らせてやっても良いのだが、あの性格だからなぁ……
もし由姫ちゃんが途中寄り道でもして夜遅くになって一人で街を歩くのは良くないと思い一緒に帰る事にした。
「はこみん、早くぅ~」
「急かすな急かすな、あの番組が始まるまであと1時間ぐらいあるだろ」
由姫ちゃんは俺の手を引っ張りながら家に帰る、
なんでも日曜六時半頃にいつも由姫ちゃんの大好きなテレビ番組が放送されているらしい。
どうやら戦隊物らしいが、やけに内容が重い話題だったり変な話題だったりするので俺は見ないのだが……
家に帰り、シャワーに入りテレビの部屋のソファーへと座り込む由姫ちゃん、
チャンネルを変えまだかまだかと待っている由姫ちゃんは普通の小学生以外の何者でもなかった。
「あっ!はじまた!」
……どうやら、番組が始まったようである、
野球戦隊
レンジャースナインが始まると、もう由姫ちゃんはテレビに夢中になってしまった。
『フハハ、レンジャースナイン!! 貴様らの墓場はこのグラウンドだ!!』
「ああっ!エースマン!! 負けないでぇ~」
テレビに向かって語りかける由姫ちゃん、
んなもん最終的には勝つに決まってんだろ、ドラマなんだから。
夕食の支度をしていた亜樹さんもその姿を見てニコニコしながら呟く。
「あの子も好きねぇ」
「本当ですね~」
俺と亜樹さんはテレビを見る由姫ちゃんを見て同じことを感じていた。
由姫ちゃんの強さって言うのはこういう純粋な所もあるんだよなぁ――
最近の子供はこういった純粋さが薄れていっている気がする、だから物事が続かないし反発ばっかする。
俺は由姫ちゃんも亜樹さんも凄いと思っている、こんな立派な家族はめったに無いのではないだろうか――
だが、忘れてはいけない。
純粋であるからこそ、人は脆く儚い命を散らしている事を――
『こんな所で負けない!!
スリーボールフィニッシャー!!』
『ぐああああっ!! そんなバカな……あと少しだったのにぃ……ぐあばぁっ』
「やったぁ!!」
敵の悪役がなぜか爆死するのを見て由姫ちゃんは喜んでいる、
何故このコンセプトで爆発するかは分からないが負けると爆死するなら野球を本気でやらなくちゃなあと思うだろうなぁ……
「由姫~、ごはん出来たわよ~」
「うん!いま行く~」
こうして俺らは夕食の時間へと移る――
その直後、俺の持っていた携帯電話が鳴る。
誰かと思い携帯の着信欄を見るが名前は乗っていない、どうやら電話ボックスからのようだ。
「みんな、先食べてて」
俺は電話に出るため一度リビングから出て自分の部屋へと向かう、
そこで静かなのを確認し俺は電話に出た。
「もしもし、弾です」
「久しぶりだなぁ……
弾箱壬」
その声の持ち主は……この前の山塚だとすぐにピンと来た、
また勝負の持ちかけでもするのか?と思い俺は早速聞いてみる。
「勝負の事か?」
「ああ……お前の集めるチームと勝負しろ」
だから無理だって――俺の球なんて取れる奴はそんな試合に出れるほど忙しくないの。
そう思い断ろうとした時、電話の向こうから小さく声が聞こえてきた。
“はこみん先生……助けて……”
「うるせぇ!! 黙ってろこのクソガキめが!!」
受話器に聞こえてきた小さな声、明らかに俺を求めてる叫び声――
おい……、山塚ぁ……。
テメエ一体何をした!!!
「山塚!! そこに居るのは誰だ!!」
「ああん!?知らないねぇ……もっとも、お前の幼稚園の生徒だって事は分かるだろ?」
なんていう事……、山塚は正気なのか!?
平然を失う俺に対し山塚は電話越し笑みを浮かばせながら語る。
「試合は三日後、大丈夫だ――殺しはしないし餌はきちんとやってやる、
ただしテメエが警察に通報とかしたりしたらこいつらの命はねえと思え
ククク……じゃあ、好きなだけ選手を選んでおくといい」
「おい!!」
その瞬間、通話は切れた――
なんていう事だ……この事は親御さんたちにはなんと言うべきなのだろうか……
俺は絶望の淵に立たされたかのように急に体中に悪寒がし始める、
一体、どうなるのだろう……
俺はそう思いながら、由姫ちゃんたちのいるリビングを駆け抜け、外へと向かった――
最終更新:2010年02月10日 11:53