間合いの一歩手前で俺は足を止め両手を胸の前に構え、俺と藤本は構えながら睨み合う、
その様子に少し驚いたのか熱血男は川の中へといったん非難するように逃げる。
「お前は逃げないのか?」
「ニートニートって言われるのは癪なんでね、数発で終わらしてやんよ」
余裕の笑み……とは言わないもののその自身有り気な表情を浮かべ藤本は一歩右足を前に出す。
一体どんな攻撃を繰り出してくるのかは分からない、……だがこの自信たっぷりの笑みを歪ませたい。
その思いが俺に力を与えてくれた。
「はぁっ!!」
「!?」
先手必勝!俺はまず相手の懐へと潜り込み下から顎へと殴りこみを入れる。
俺の長い腕に力が通じ見事相手の顎にクリーンヒット!!確かな手ごたえを感じた。
しかし藤本は自ら後ろに飛びダメージを緩和しているようだ。
「やるな!白髪っ
次はこっちから行かせてもらうぜっ!」
「!?」
その瞬間、藤本は視界から一瞬消える、
速さは申し分ないようだが周りの空気が雑念漂う藤本の動きと共に俺に居場所を分かりやすく教えてくれた。
「甘い!」
「!?」
俺は後ろに回んできた藤本の蹴りを受け止めてそのまま軸足を浮かし倒れこませる。
倒れこんだところに俺は必死の踵落とし!しかし今度は俺が油断していたようだ。
「巻き込みローリングを食らえ!」
藤本は倒れこんだ体勢から一気にこちらの足をめがけ転がりこんでくる、
これには俺も反応が出来ず思わずよろめき地に手を着けてしまう。
その間に藤本は体勢を整え再び突進してくる――が。
「タックル上等!」
「何ぃ!」
俺はタックルしてきた藤本の勢いをそのままに受け止めそのまま後方へと共に吹き飛ぶ姿勢となる。
そして空中で体を回転させ飛ばされる勢いを利用し藤本を地面に叩きつけた。
「だてに毎日タックル食らってねぇぞ!」
「くそっ!!」
形成逆転!そのまま寝技に入り関節を決めようとしたその時、
後方から声が聞こえてきた――
「はこみんさん! その人を離してあげてください!」
「三幅くん……」
俺が掻き分けた茂みを通ってきたのか三幅君や由姫ちゃんらがここにやってきていたようだ。
ちょっと未成年が見るにはショッキングな喧嘩だったかな?俺は藤本から身を引く形で立ち上がる。
そこに三幅君が急いで倒れている藤本の方に駆けつけた。
「大丈夫ですか!? 章正先輩!」
「いでぇよぉ~、釣りしかやってねぇんだから喧嘩なんか出来るわけねぇよぉ~」
え?先輩――? ってか三幅君、コイツと知り合いなの?
そんな中、倒れこむ藤本を見て川の中で傍観していた熱血男が藤本を指差して言う。
「諦めんなよ! どうしてそこで諦めんだよそこでぇ!!」
「うるせえ! 先輩だって川で怯えてた癖に!」
「違う! 僕だってこの-10℃の中シジミが取れるって頑張ってるんだよ!」
「この季節に-10℃なんていくか!しかもシジミ取れねぇよぉ!」
二人が言い争っている中、俺は三幅くんから彼らの事を聞く。
「あの釣りの人が
藤本章正先輩で俺が一年の時の主将でした。
昔は三塁手として有名で黄金三大三塁手の一人でした。技の煉条、秀の進藤に次ぎ“力の藤本”とも呼ばれた
名選手です、そしてあの熱い方は野々上 大海(ののうえ ひろみ)さん、章正先輩とは幼馴染なようです
強豪高校の野球部出で今でも大学野球でセンターとして活躍してるみたいです」
「解説乙!」
成程、そう言う事なのか――
しかしこれはなんと言う好都合好機会、これは利用させて貰わなくては。
そう思った俺は再び藤本へと近づき始めた。
それを見て藤本が再び構えるのを右手で制し俺は彼に対して諭し始めた。
「聞いたぜ? “力の藤本”さんよぉ……
元黄金三大三塁手がこんな所で油売ってていいのかよっ!」
「うるせぇ! 貴様には関係ない――ぐふっ!!」
その瞬間、由姫ちゃんのタックルが彼の無防備な腹を襲う。
「はこみんに対してそんな口調許さないぞ!」
「なんていう威力だ……」
由姫ちゃんのタックルの威力に怯えたのか、藤本は急に大人しくなる。
そりゃあ今見ただけでも軽く6メートルは吹っ飛んだもんな、野々上さんも相当ビビッてるし……
何はともあれ藤本君が落ち着いてくれた、俺は由姫ちゃんにⅤサインをしながら再び藤本に対して語り始める。
「今日はお前に頼みがあって来た、
今巷で話題の山塚裕樹っていう奴が俺の大切な人を攫って行ったんだ、分かりやすく言えば誘拐事件の犯人なんだ」
「え? あの今期№1右腕と呼ばれているあの山塚さんが!?」
藤本は驚きを隠しきれていないようだ、それはまた後ろにいた野々上もそうであった。
世間的に有名な投手が誘拐事件を起こしているのだから、驚いても無理は無い。
「警察には言うなよ、俺はそいつに野球で勝てなきゃ――あの子たちは殺されちゃうんだ
だから俺は三大さんrしy……三塁手のお前に手伝ってもらいたいんだ!ついでにそこの外野手も!」
「噛んだね」
「噛んだな」
「はこみん噛んだ~」
上から三幅君、戒君、由姫ちゃんと次々に俺の心を抉るコメントを呟く、
うわーん、いいところなのに噛んじゃったよーっ!!
しかし藤本と野々上は意外にも感動していたようだった。
「そ……そのために俺を……」
「そうだぞ、章正――お前はそれだけ凄い奴なんだよ!!
イワナ見てみろよ!」
そう諭す野々上の手には川で取ったと思われるイワナを掴まれている。
待て待て、イワナがなぜこんな河川敷を普通に泳いでいる、そして何故捕まえられる。
「イワナはなぁ……余計な味付けいらねんだよ、自分に中身がある……ダシが凄い付いてるんだよ!
昔のお前はそんな感じだったんだぞ{!“イワナ見習って生きろ!”中身で勝負だ!
今からだってまだ間に合う! これからダシのある人間になれ!}」
「!!――はい!」
その返事を聞いた野々上はまるで水を得たイワナのように生き生きとしていた。
「ようし!じゃあそのステップとして俺たちはこの人たちについて行って人助けだ!」
「はい!」
あらら?俺が説得する間もなく勝手に仲間になっちゃったぞ?
経験者二人が入った事で守備がさらに堅くなるだろう――あとはたっちゃんの知らせを待つばかりである。
「よっしゃぁ!! みんな練習するぞ!」
「おー!!」
こうして、俺は皆を引っ張りながら練習を再開した。
最終更新:2010年02月10日 12:35