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第二十二話 足立原くん

 ――翌日、大学に通っている野々上さん以外が皆が学校から帰ってきた頃を見計らい合同練習を開始する。
今日はたっちゃんが何人か連れてやってくるらしい……果たしてどんな奴を連れてきてくれるのか。


 午前中は俺と藤本が感を取り戻す為のキャッチボールを行っていた。
意外な事に藤本は半年近く練習してないと言っていた物の守備もそこそこ上手く、
さすが“三大三塁手”と呼ばれただけはあると思ってしまう。

「俺はともかく、今じゃあ他の二人は凄い選手になってるぜ?」

 話によると藤本だけでも高校に通えば一年生とは思えない動きなのにそれを凌駕する力を持つらしい、
いつか対決する日が来るのであろうか――



「はこみん!来たよ~」
「遅れてすみません~はこみんさん」

 由姫ちゃんらが到着すると河川敷は急ににぎやかになった気がした。
今日は俺は三幅君にたっちゃんとバッテリー練習を組んでもらう事にしていた。
たくさんの投手の球を受ける事は捕手の成長には良い事だろう。

 それに彼の投球を受ける捕手はその美しい投球に惚れ込んでしまうと言われてるし、
それほどまでにアイツの投球は雰囲気を変えるんだ――そんな投手を見させてあげないなんて勿体無ぇじゃん?



「ようし! たっちゃんらが来るまでノックするぞ!」
「お~!!」

 そして俺はバットを持ち各自の選手達に近距離ノックをする。
若干由姫ちゃんは危ないから遠ざけておいたけど野郎にはとことん厳しいノックをお見舞いしたぜ。


 そんな地獄の練習が20分程続いた後、ようやく河川敷にたっちゃんが姿を現した。
つれてきたのは――三人、どうやらこれでメンバーはそろったようだ。

「悪ぃ悪ぃ、ちょっと遅れちまった」
「気にしなくて良いぜたっちゃん」

 たっちゃんが急いで掛けてくると後方からはついてくるように駆け足でやってくる三人、
内二人は俺も見覚えがある選手、というより何故こいつ等を呼んだんだ、たっちゃん。

「よろしくおねがいしますっ、箱壬さん!」
「はこみん!手伝いにきたわよ!」

「千晴ちゃんに……梓さん」

 たっちゃんよ、確かに人選はすばらしいと思う。
千晴ちゃんは投手としては戒くんや由姫ちゃんを遥かに超すリリーフエースになるし
梓さんは素晴らしい二塁手である事は確かだ。

 しかしこの人数ギリギリの中ポジション被りの選手なんて要らないんだよ!
流石に本人の前でそんな事は言えないのでたっちゃんを少し離れた所まで連れ出して言うとたっちゃんは首を横に振って笑みを浮かべる。

「心配すんな、千晴ちゃんは外野手としても素晴らしい実力をもってるし今井さんだってショートは守れるさ」


 う~む、いまいち信用し難い……
まあたっちゃんが言うのだからそうなのだろうな、うん。
それはどうでもいいとしてもう一人の少年は誰なのだろう――


「たっちゃん、もう一人の子は?」
「ああ、俺も知らねぇ――千晴ちゃんが連れてきたんだ」
「知らねぇって……いい加減な」

 俺は再び千晴ちゃんらの方へと戻りもう一人の少年を見る。
見た感じスリムで体のラインは男とは思えないぐらい細い、俺と同じかな?
髪の色も白髪……ここも俺と一緒だ。
第一印象からは好青年といった感じの雰囲気が出ている。

「ねぇ、君は何者だい?」

 俺は早速、彼に尋ねてみる事にした、
彼は礼儀正しく一度頭を下げると姿勢を正し俺の目を見て語りはじめた。


「は、初めまして! 俺の名前は足立原零侍です。
 箱壬さんに会えると千晴ちゃんから聞いてやって来ました!
 ポジションは外野手です!主に左翼手を担当しております!」
「あ、この人凄い方なんですよ~」

 千晴ちゃんが俺に一応説明してくれる、
彼の名は足立原零侍(あだちはら れいじ)、奈良県の中学野球では全国には行けなかったものの
凄まじい成績を残し高打率を記録しているらしく各地方の強豪高校からスカウトが殺到しているらしい。

 奈良では今ここにいる宮代中学の万能投手千晴ちゃん、
そして古都中学にいる強打者ドイツ人ハーフの一塁手“バルバース=ワカトモ”、超華麗な守備の神門晃(みかど あきら)等と共に激戦区、奈良中学野球を盛り上げている内の一人らしい。
成程、コイツも使えそうだ……。

 俺は千晴ちゃんに聞いてみる。

「なぁ、こいつには仲間集めの理由とか話したか?」
「いえ……」
「そうか」

 どうやら彼はまだここに来た本当の理由を知らないらしい、
俺は前話でニートと熱血の心を動かした熱い演説で彼をやる気にさせる事にした。

「早速だが零侍君! 君にお願いがあるんだ」

 こうして、俺は彼に前話でニートと熱血の心を動かした熱い演説をする、
話し終えると案の定彼らと同じ反応をしてくれたようで、なんだか目には涙を浮かべている。

「箱壬さん……なんて良い人なんだっ、
 許すまじ山塚――、箱壬さん!俺にも協力させてください!」
「よく言った!入れ入れ!」

 今回も難なく説得に成功、俺って案外説得上手?
よっしゃ!これでメンバー全員揃ったぜ! しかし順調すぎて恐いな……

 だが、どちらにせよこの戦いは人の命が掛かっている。
気を抜いてはいけない――使えるものは全部使う、出し切る。


待っていろよ、山塚
 決着をつけてやろうじゃないか


 俺は心の中で山塚に対しての挑戦状を叩きつける、
その瞬間俺の胸の奥にしまい込んでいた“情熱”が見る見るうちによみがえってきたような気がした。


「さあ野郎ども!練習するぜぇ!」
「私女だよ~?」
「私も女ですが……」
「はこみんったら本当考えないわねぇ~」

 なんか女性陣から要らぬツッコミが入ってしまい締まらなくなってしまったが、
俺達は残り2日しかない練習時間を有効に活用するために――とにかく練習する。









決戦まであと――2日





最終更新:2010年02月10日 12:39