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  • 涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)
  • 古泉とみくる

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

古泉とみくる

最終更新:2020年03月14日 08:52

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

ある日の午後。久しぶりの着信音に僕は溜息をついた。
 
閉鎖空間だ。
 
ここしばらく精神状態が良好だった女神様が、機嫌を損ねたらしい。
 
彼ならば、やれやれ、と呟いているだろう。
 
「古泉、行くわよ」
 
森さんの声で意識を現実に帰還させる。
 
「分かりました、しかし久しぶりですね」
 
「そうね、せっかくの休日が台無しよ」
 
「はは、ランチはまた今度にしましょうか」
 
閉鎖空間の発生している場所は、ここからそう遠くはない。
 
僕は助手席に乗り込むと、すぐに長門さんに連絡を取った。
 
今までなら真っ先に連絡を取るのは彼だった。
 
しかし、状況というのは刻一刻と変わる。
 
鍵の所在は彼から長門さんへ。
 
 
電話をするとすぐに繋がった。ツーコールもなかったと思う。
 
「……」
 
「長門さん、こういうときは、もしもし、とか言ってもらえると嬉しいんですが」
 
「用件を」
 
この通り、一年かけても彼女と友好的なコンタクトを取るのは、僕では難しかった。
 
「閉鎖空間が発生しました。それもなかなかの規模です」
 
「分かっている」
 
「貴女の近くに涼宮さんはいらっしゃるのですか?」
 
「いない」
 
長門さんが彼のような迂闊な行動を取るとは思えない。
 
それでも連絡を取ってしまうのは長門さんが鍵だから。
 
さて、涼宮さんの機嫌を損ねたのは一体なんなのだろう。
 
「どうやらこれが最後のようですね」
 
辺りを見回し、標的がいなくなったことを確認する。
 
いなくなったことに安堵の溜息をすると、横にいた森さんが言った。
 
「そうみたいね。久しぶりだから少し時間がかかったわ」
 
閉鎖空間の発生自体が久しぶりなのだ。それも仕方がないことだと僕は思う。
 
「それは違うわよ。たんに気が抜けていたということ。反省点ね」
 
「ごもっともで」
 
服の汚れを手で払った森さんが空を見上げる。
 
空が割れていく。閉鎖空間の消滅だ。
 
「この光景だけは何度見てもいいものね」
 
「えぇ」
 
煌びやかな光景。
 
もしかしたら僕たちは、これを見るために闘っているのかもしれない。
 
現実世界へと戻ってきた僕たちに休憩はない。
 
僕は森さんに別れを告げると、涼宮さんの周辺調査へと向かった。
 
そして、現場へと着いた僕は納得とともに驚愕した。
 
あの二人が一緒にいる。そこにいるのは二人の神。
 
持っている能力は一緒。
 
しかし、同じ神ではない。相反する神だ。
 
その二人が揃っているあの喫茶店は紛れもなく世界の中心地。
 
そしてその二人が向かい合って話をしている。
 
涼宮さんの機嫌が悪くなるのも無理はない。
 
自分が想いを寄せた男の彼女と一緒にいるのだ。
 
これは胸中お察ししますよ。
 
なにはともあれ、閉鎖空間が発生した理由は分かった。
 
男の僕でも分かる。あの場の空気が。
 
従来の彼女ならきっと、あぁはならなかった。
 
気に食わない相手にはとことん噛み付く。本来ならそんな人だ。
 
それがどうだろう?一緒にお茶をしている。
 
いつだったかの長門さんの言葉を思い出す。
 
涼宮さんの精神の強さ。成長。
 
 
人は常に成長するもの。彼女もまた、例外ではないということだろう。
 
とはいえ久方ぶりの閉鎖空間のおかげで、彼女の精神が揺らぎ始めたことが分かった。
 
少し様子を見ていることにしよう。もちろん僕の他にも監視についている人はいるのだろう。
 
でも、僕は当事者の一人だ。自惚れではなく、僕は神の友達であり、仲間でもある。
 
全てを知っていなければいけない理由がある。
 
そんなことを考えていると、動きがあった。
 
そう、涼宮さんがキレたのだ。
 
涼宮さんが感情的になることは多々ある。
 
しかしそれは以前の話。僕たちの学年が一つ上がってからの彼女は、そういった感情の爆発が極端に減った。
 
涼宮さんは、もう一人の神、すなわち彼の彼女である佐々木さんに水を浴びせると、そのまま喫茶店を出てしまった。
 
これはまずい。以前あった告白騒動以来の危機だ。
 
その証拠にまた僕の携帯が呼び出し音を鳴らしている。
 
そして本日二度目の戦場への迎えが来る。
 
まったく、たまらないな。
 
閉鎖空間での仕事が終る。
 
事後処理があるものの、いわゆる戦闘員の数は限られているため、僕たちは早々と解放された。
 
この日は久々の閉鎖空間ということもあり、いささか疲れていた。
 
僕の部屋まで送ってくれた森さんに別れの挨拶を済ませ、シャワーを浴びてベットに転がる。
 
おっと、寝る時にかけるCDをコンポに入れ忘れていた。
 
本当に疲れているときに聞くのは、Caes○rsのコンピ盤。
 
以前寝る前にかけたら、うるさい、と怒られたが、どういうわけか僕の耳には心地いい。
 
この時点で僕は想像もしていなかった。
 
考えていたとしても、何事もなければいいな、この程度だろう。
 
明日起こる出来事。
 
それは以前、長門さんが起こした事件のようであり、しかしそれに比べるととても不完全で、それゆえに僕たちの手ではどうしようもない出来事だった。
 
いつも通りに学校に通学した僕は、いつも通りに授業を受け、いつも通りに学友と談笑し、いつも通りに放課後を迎えた。
 
そんないつも通りの流れで文芸部の扉を開ける。そこには、読書に勤しむ寡黙な宇宙人と、メイド姿の朗らかな未来人、そして明らかに不機嫌な神がいた。
 
「どうも。どうやら僕が最後ではないようですね」
 
いつも通りに微笑みながら部室に入っていく。
 
最初の頃は作り笑顔だったが、近頃自然に笑顔が出てくるようになった。
 
この空間が居心地のいいものになってきたというところだろうか。
 
「あっ、古泉くん。今日は古泉くんが最後よ」
 
不機嫌な部長が僕にそう言った。
 
はて?彼の姿が見えない。
 
「なんだか、あいつ休みみたいなのよ。連絡しても繋がんないし、学校にも連絡をよこしてないみたいなのよ。古泉くんは何か知らない?」
 
彼が無断欠席?今更反抗期なわけあるまいし。
 
「あいにく僕は存じません。朝比奈さんや長門さんも連絡が着かないのですか?」
 
本から顔を上げた長門さんは、わずかに頷いた。
 
「はい、電話もメールもダメでしたぁ」
 
心配そうな表情をしながら、朝比奈さんもそう言ってきた。
 
「ふむ。そうですか」
 
以前彼は、自分だけではなくSOS団全員が涼宮さんの鍵だと言っていた。
 
その自覚があるならこういったことはなるべく自重してもらいたい。
 
「もしかして何かの事件に巻き込まれたのかしら」
 
青い顔をしながら涼宮さんが言った。
 
「まさか。彼も思春期の男の子ですから、ちょっと背伸びがしたいんですよ。どうせそんなところでしょう」
 
彼が事件に巻き込まれるとしたらその中心人物は目の前にいる。どんな場合でも命の危険はないだろう。
 
そう思った僕は、適当なことを言ってこの場を収めることにした。
 
普段はイエスマンの僕だ。たまにはこれくらいいいだろう。
 
まぁ後で彼が何を言われ、どんな仕打ちを受けようが、それは自業自得だ。
 
 
「そんなもんかしら?」
 
しぶしぶ納得した様子の涼宮さんは携帯をいじりながら定位置へ。
 
おそらくまた連絡しているのだろう。
 
僕の言葉でもこうやって聞き入れてくれる。あながち僕ら全員が鍵だというのも間違っていない気がする。
 
試しに僕も彼に連絡を取ってみた。
 
メールには返信がなく、電話をすれば、電波の届かないところにいると言う。
 
彼への連絡をやめ、機関にメールを打つ。
 
鍵の所在が不明なのはいいことではない。
 
もしかしたら以前朝比奈さんが誘拐されたように、彼があちら側の手に渡った可能性もある。
 
ちょうど昨日の喫茶店での光景がよみがえる。
 
線が交じることのなかった神同士が、一人の人間に出会うことで交差した。
 
そして対峙した。いや、してしまったと言うべきか。
 
 
彼はあちら側の鍵でもある。彼を連れ去る十分な理由がある。
 
考えれば考えるほど辻褄が合ってくる。
 
ただ一つ気になることがあるとすれば、佐々木さんの性格上それは望んでいないだろうという事。
 
そこは僕が考えても分からない。それはあちら側の事情だ。
 
このときの僕は、そこまで深くは考えてはいなかった。
 
この世でもっとも安全な人間は彼だからだ。
 
二人の神に愛された、奇跡の人。
 
それが彼だ。危険なはずがない。
 
いつものように長門さんが本を閉じる。解散の合図だ。
 
その日の部活は少し早く終ったこと以外、何もなく終った。
 
僕はどうしていたかって?……それは聞かないでほしい。
 
「ふふふ♪また勝ちましたよぉ♪」
 
「……ははは、お強いですね」
 
ただ、彼より先に倒さなきゃならない人間がいる、とだけ言っておくことにする。
 
 
涼宮さんは終るとほぼ同時に帰路についた。
 
おそらくは彼を探しに行ったのだろう。
 
うらやましいものだ。フッてもなお自分を慕ってくれる女性がいる。
 
とはいえ、その尻拭いをさせられるのは結果的に僕たちである。
 
自分達の存在や役割に笑えてくる。
 
朝比奈さんが一足先に部室を出た。どうやら鶴屋さんと用事があるらしい。
 
僕は、帰ろうとする長門さんを呼び止めた。彼女なら彼の所在が分かるはず。
 
「長門さん。あなたの力で彼がどこにいるか調べてもらっていいですか?少しお説教をしなければいけませんので」
 
これで問題は解決する。そう思っていた。しかし長門さんは、僕の問いに対して首を横に振った。
 
「なにか問題が?」
 
その僕の問いに対する答えに、僕は一瞬凍りついた。
 
「彼という個体は今存在しない」
 
「ま、まさか死ん」
 
滅多なことを口にするものではない。でも咄嗟で僕は言いかけた。
 
「分からない。存在そのものがない。遺体であれ存在すればそれを特定することは可能」
 
「つまり、涼宮さん……ということですか?」
 
「おそらく」
 
涼宮さんが彼がいなくなることを望んだ?
 
信じられない。いったいそれが彼女にとってなんのメリットが?
 
そもそもいつから?たしか彼は昨日は友人と遊んでいたはず。
 
その友人である、二人は普通に登校していた。なら、最低でも夕方までは一緒にいただろう。
 
そういえば家からも連絡がないと言っていた。まさか彼の家族も?
 
突然の展開に頭の中から疑問符が一向に消えない。
 
「気付いたのは放課後」
 
長門さんの言葉に我に返る。
 
放課後。……ということは、
 
「彼は先ほどまでは存在していた、ということですか?」
 
「分からない」
 
頼みの綱がこの調子では困る。今までの出来事は最終的には彼が収めてくれた。
 
それは彼が鍵だったから。しかし今の鍵は僕の眼前にいる。
 
「あなたはどう考えているのですか?」
 
「……」
 
ここで沈黙を選択されると、途端に怪しくなる。
 
そして僕は思ったことを口にした。
 
「まさかあなたがまた何かしたのですか?」
 
冷たい声。仲間を疑っている。酷い男だ。
 
「それは違う」
 
長門さんは僕の疑いの言葉にすぐさま反論してきた。
 
その瞳はいつもの無機質な雰囲気ではなく、しっかりとした意思が宿っているように見えた。
 
「失礼しました。……これからあなたはどう動くつもりですか?」
 
彼女の意思は、情報統合思念体の意思。
 
「涼宮ハルヒの近くで観察する」
 
「親友を、ですか?」
 
我ながら意地の悪い言い方だ。
 
「涼宮ハルヒの力は今不安定。原因の一つは同様の存在との接触」
 
佐々木さんのことだ。
 
「わかりました。しかし観察なら遠方からでも十分では?」
 
こんな言い方をする必要はない。ただ、彼女の人間の部分の答えを聞いてみたかった。
 
「観察は情報統合思念体の意思。涼宮ハルヒの近くにいることは私の意志」
 
そう言い残し長門さんは部室を後にした。
 
涼宮さんの成長と共に長門さんの精神もまた成長している。
 
彼女が人間としての自我を持つ日は、そう遠くないのかもしれない。
 
 
部室の鍵を閉め、校門を出る。外には森さんが待っていた。
 
「何か情報は得られた?」
 
車の助手席に座り、先ほどの長門さんとの会話を話す。
 
「そちらはどうですか?」
 
森さんはすぐには答えず、しばらく黙っていた。
 
少し時間が空き、次に口を開いたのは赤信号で止まった時だった。
 
「わかっていることは彼だけがいなくなっているということ。周りの人間達の記憶をそのままにね」
 
彼だけということは彼の家族は無事ということ。不幸中の幸いだ。
 
「彼の家族は警察に捜索願いを出したわ。親としては当然ね。でも動きにくくなることはたしかね」
 
警察にも機関の協力者はいる。しかしそれが全体に影響しているわけではない。
 
「きっと明日の朝には失踪事件として、TVや新聞にも出るでしょうね」
 
信号の色が変わる。ゆっくりと前進を始めた車の中はしばし沈黙に包まれていた。
 
「TFEI端末の話の通りなら機関としてやれることは少ないわ」
 
確かにそうだ。閉鎖空間限定の能力。色々なところと繋がっているとはいえ、それはあくまで人間の力。
 
今回の事件も神の気まぐれなのだろうか。
 
しかし解せない。
 
「どうしたの?」
 
森さんにそう聞かれ、僕は今思った疑問を話した。
 
「涼宮さんが原因。これは間違いないと思います。理由は定かではありませんが。佐々木さんにはまだこれだけのことを起こす力は持ち合わせていませんしね」
 
人一人を消滅させる。それも想像しただけで。
 
自分で言いながら改めて思う。でたらめで恐ろしいものだと。
 
「今までの事柄から考えると、彼女の力が発揮される時はたいてい周辺を、はたまた世界全てに影響を与えています」
 
繰り返された夏休みがいい例だ。局地的な事象であれば世界との間に時間的なズレがでてしまう。
 
地球全体、いや宇宙規模だと考えてもいいと思う。それだけの影響力があるのだ。
 
 
「今回起こっているのは彼一人が消える、それも皆の記憶をそのままに。当の涼宮さんは本気で心配されている様子でした」
 
神の力からもっとも影響力がなかった人間が消えた。それだけでも驚きの展開だ。
 
「長門さんの言葉を借りるなら、不安定になった涼宮さんの力が間違った形で作用した、そう考えるといくらか自然だと思います」
 
「不安定だから探しても出てこない、っていうこと?」
 
「はい。そして周囲の記憶を改ざんすることさえ出来なかった」
 
今自分で言ったことが真実なら、僕たちに出来ることは涼宮さんの精神面のケアしかない。
 
巨大な閉鎖空間を発生させることとは別の意味で、彼女の力は……揺らいでいる。
 
考えを巡らせながら外を見る。まだ夕暮れと呼ぶには早い空模様だ。
 
もしこんなことを彼の前で言ったら気持ち悪がられるだろう。
 
でもこれが一番適切な言葉だろう。だから僕は呟くように言った。
 
「どうかご無事で」
 
次の日の朝も当たり前のようにやってきた。
 
目覚めてすぐに機関と連絡を取ってみたが、昨日と状況は変わっていなかった。
 
TVを点ける。どの番組でも見慣れた学び舎と顔写真が映し出されていた。
 
彼の妹は今頃泣いていることだろう。慕っていた兄が突然消えたのだ。当然だ。
 
気まぐれで消えた彼は、気まぐれで戻る以外方法はないのかもしれない。
 
つまり、もう戻ってこないかもしれないということでもある。
 
しかもその気まぐれが、女神本人にも悪い影響を。
 
重い足取りで学校へと続く坂道を登る。
 
周りを歩く生徒たちの口からは今朝のニュースが語られる。
 
彼をよく知らない人達にとってはあくまで話題のタネらしい。面白おかしく語っている様子を見ると苛々してくる。
 
案の定校門の前には多数の報道陣がいる。登校してくる生徒という生徒にマイクやカメラを向けてはインタビューをしている。
 
彼らにとっても彼の失踪は話題のタネなのだろう。
 
さっきと同じく、彼をよく知らないであろう生徒達が、あたかも知っているかのように質問に答えている。
 
こんなに純粋な怒りの感情を覚えたのは久しぶりだ。
 
怒りを抑えるように唇を噛み締め、足早に校内へと入ろうとした。しかし、それを邪魔するかのようにリポーターが僕の前に現れた。
 
「先日行方不明になった○○君のことはご存知ですか?」
 
本名で呼ばれたがっていた彼だが、まさかこんな形で世間にその名前が知れ渡るとは皮肉なものだ。
 
「突然の失踪について何かご存知ありませんか?」
 
ご存知どころか全て知っている。
 
僕が無言でいるのも気にせずまた質問を投げかけてくる。
 
このときの僕の表情に笑顔はなかった。なぜならば、今すぐにでも殴りかかりたい衝動に駆られていたからだ。
 
次だ、次にふざけたことを聞いてきたら、そのにやけ面とカメラを叩き割ってやる。
 
 
しかし、僕が行動を起こすより先に行動を起こした人がいた。
 
「てめーしつこいんだよ!いいかげんにしろ!」
 
何かが割れる音とともに周囲の人間の目はそちらに集中した。
 
騒ぎの主は彼のクラスメイトの谷口くんだった。
 
 
彼は顔を真っ赤にしながらリポーターの襟首を絞めている。近くにはレンズが割れたカメラが一台。
 
その脇では国木田くんが彼を制止しようと必死になっている。
 
「他の連中もだ!キョンのこと知りもしないくせにベラベラと、ふざけんなよ!」
 
機関の話では、彼と最後に遊んでいたのはあの二人ということになっている。
 
辺りの報道関係者はさっきの発言を聞き、一気にあの二人に駆け寄っていく。
 
彼と繋がりのある人物だということはさっきの言葉で十二分に理解できる。
 
 
たくさんのカメラのフラッシュとともに、たくさんのマイクが谷口くんに向けられる。
 
「君は○○君の友達?」
 
「○○君は普段はどんなこだったの?」
 
「なにか心当たりはない?」
 
ふざけた連中だ。反吐がでる。
 
気付けば僕は谷口くんへの加勢とばかりに、報道陣を掻き分けて彼の元へと向かっていた。
 
中心にたどり着き、群がる報道陣を無視して、暴れる谷口くんの腕を引き校舎へと向かう。
 
しかし、次に我慢できなかったのは僕だった。
 
「近頃のガキはまともに話も出来ないのかよ」
 
呟くように言ったリポーターのその言葉に反応した僕は、そのリポーターの顔面に向かって拳を振りぬいていた。
 
閉鎖空間では超能力があるとはいえ、基礎体力も必要だ。それなりに鍛えている。
 
無防備な顔面にまともに喰らったリポーターは、その場にそのまま崩れ落ちた。いい気味だ。
 
フラッシュの光が強くなる。シャッター音がまるで雨音のようだ。
 
結局その場は、学校からやっと出てきた教師たちや駆けつけた警察により治められた。
 
僕ら三人はそのまま職員室に連れて行かれ、しばらく説教となった。
 
昼前になり解放された僕たちは、少し話をした。
 
「さっきはありがとな」
 
恥ずかしそうに笑いながら谷口くんが言ってきた。
 
「いえ、あなたがやらなかったら、多分僕がやっていました。まぁ、実際には手を出しましたがね」
 
そう笑いながら返す。
 
「でもキョンはどこに行っちゃったんだろうね……」
 
そう心配そうに呟いたのは国木田くんだ。正直彼はただの巻き添えだ。なんだか申し訳ない。
 
「そればかりは分かりませんね」
 
彼らとは何度かSOS団の行事で一緒になったことがある程度で、そこまで親しい仲ではない。
 
それでも彼を心配する気持ちは一緒だ。
 
「とりあえず戻ってきたらぶん殴ってやる」
 
そう言った谷口くんの言葉には、僕も国木田くんも笑って賛成した。
 
二人と別れて教室へ向かった。教室に入ると、級友たちの手荒い歓迎が待っていた。
 
説教が終ったばかりだから勘弁してほしいと言い、自分の席へ。
 
殴った拳が少し赤くなってズキズキする。
 
ポケットから携帯を取り出すと、僕は朝比奈さんにメールを打った。
 
今の僕が出来そうなことをしらみつぶしにやっていこう。
 
そう決めた。
 
キョンくんが消えてからもう二日がたった。
 
原因となっている涼宮さんは、放課後になるとすぐに街に下りてキョンくんを探しに行った。
 
長門さんは涼宮さんと共に行動をしている。今は長門さんの存在が涼宮さんの精神のバランサーとなっている。
 
古泉くんは、機関と連絡を取り合って事態の収拾をしようと頑張っている。
 
じゃあわたしは?
 
わたしは見ているだけ。これまでの出来事を。これからの出来事を。
 
もちろんわたしも教育を受けているから、どういった歴史があるかはある程度把握している。
 
でもそれは年表上でのこと。全てを知るわけじゃない。
 
今起きている失踪事件。細部までは知らなくても結末だけは知っている。
 
その結末は『SOS団のわたし』としては受け入れたくないもの。
 
だから以前、長門さんに忠告した。
 
未来人としての朝比奈みくるではなく、SOS団の朝比奈みくるとして。
 
涼宮さんと距離を置くように、って。
 
自分達の未来を確保するため、より良い未来にするため、規定事項以外の行動は禁じられている。
 
じゃあなぜ長門さんにあんなことを?
 
……楽になりたかった。罪悪感に押しつぶされそうな日々。
 
だから長門さんにそのことを伝えたことで、わたしの苦悩が少し取れた。
 
わたしは言った。危ないって。だからもし何かが起きてもわたしは悪くない。
 
こんなことを考えていた。そんなことを言っても、長門さんは涼宮さんから離れないと分かっているのに。
 
友達が危険な目にあっているかもしれないこんな時でも、わたしはわたしの役割を守らなくてはいけない。
 
わたしは……この時代の人間ではないから。
 
わたしは今、部室にいる。
 
昼休みに古泉くんからメールがあって、話があるから会ってほしいと言われた。
 
こんな状況だから、話の内容は限られている。
 
服は着替えずにお茶を淹れて待つ。
 
少し待っていると、誰かが部室をノックしてきた。
 
「はぁい」
 
わたしはいつもの調子でそのノックに答えた。
 
「入るよみくる」
 
部室を訪ねてきたのは鶴屋さんだった。
 
「どうしたんですか?」
 
「みくる……」
 
心配そうな顔をした鶴屋さん。どうしたのかな?
 
「大丈夫かい?」
 
「え?」
 
思わずキョトンとしてしまう。
 
「今日のみくる、昼休みからなんか変だよ?」
 
これでもなるべく表に出ないようはしていたのに……。
 
鶴屋さんの勘の良さにはいつも驚かされる。
 
「わたしは大丈夫ですよぉ」
 
わたしはそう言いながら微笑んだ。
 
「……キョンくんが突然いなくなっちゃたりして大変だよね。でもあたしでよかったら相談でも何でも乗るっさ!」
 
心の底からの笑顔じゃない。鶴屋さんは無理矢理笑顔を作ってわたしにそう言ってくれた。
 
「だから……だから元気だしてね?」
 
こんなに弱々しい声をした鶴屋さんは初めて見た。
 
わたしを励まそうとしてくれるその言葉に涙が出そうになる。
 
「ありがとうございます。でも、キョンくんは必ず帰ってきますよぉ」
 
これ以上内心を悟られないように、なるべく自然な笑顔で答える。
 
「うん、そうだよね」
 
やっと鶴屋さんの顔にもいつもの元気が戻ってきた。鶴屋さんはこうでなくっちゃ。
 
「みくるはまだ帰んないの?」
 
「少し古泉くんとお話があるんです」
 
きっと楽しい話ではない。
 
「あたしも残ってていい?」
 
上目遣いでこちらを見てくる。それでもわたしは断った。
 
鶴屋さんには聞かせられない。そういう話だから。
 
「わかったよ。でも古泉くんに怒鳴られたりしたら、あたしにすぐ言うんだよ?あたしがぶっ飛ばしてあげるから」
 
「はい」
 
今度はちゃんと笑えた。鶴屋さんのおかげ。
 
この時代に来て、一番嬉しかった出会いはこの人かもしれない。
 
いつか、いつか本当のことが話せる日が来るといいな。
 
それでも鶴屋さんはわたしを受け入れてくれるかな?
 
鶴屋さんが帰った少し後、ノックをして入ってきたの古泉くんだった。
 
「おまたせしました」
 
いつものような笑顔は古泉くんにはなかった。
 
「いぃえ」
 
わたしは湯飲みにお茶を淹れて差し出した。
 
古泉くんはお礼を言ってそれを飲む。
 
「それでお話ってなんですか?」
 
白々しくもそう聞いた。
 
わたしも覚悟を決めなきゃ。
 
「単刀直入に聞いてもいいですか?」
 
「答えられる範囲なら」
 
一呼吸おいてから古泉くんはこう言った。
 
「この後彼が、世界がどうなるかご存知ですか?」
 
「……禁則事項です」
 
「今起きてる事件は収束に向かうのですか?」
 
「……禁則事項です」
 
古泉くんの声に苛立ちがみえはじめた。
 
覚悟と言ってもそれはわたしの気持ちの話。
 
自分が情けない。
 
「涼宮さんにとって最大のカードである彼が危機なんです。今回は未来からの情報がどうしても欲しいんです」
 
今は長門さんが鍵とされている。
 
それでも涼宮さんの精神を揺さぶるのは、良くても悪くてもキョンくん。
 
わたしは古泉くんの質問にまたこう答えた。
 
「……禁則事項です」
 
話せるなら話したい。でもそれは出来ない、許されない。
 
「話になりませんね」
 
こんなに怒った声を出すのは初めて。いつもの温厚な古泉くんではない。
 
朝の出来事は耳にしている。古泉くんもキョンくんが心配なんだ。
 
「ごめんなさい」
 
わたしはつい謝ってしまった。
 
「そんな言葉は要りません。しかし、あなたがそこまで平然としているのは、いずれ彼が帰ってくると見ていいのかもしれませんね。どうです?」
 
その言葉に、わたしは無言で返した。
 
「肯定、と受け取っていいんですか?」
 
それにすら無言で対応する。
 
「いい加減にしてください!あなたの未来では彼がこのまま死んでいるのかどうかは知りません!でも、あなたの情報次第では助かるかもしれないんです!」
 
怒鳴り声を上げ、わたしに訴えてくる。
 
わたしは怖くて泣きそうになりながら必死に答えた。
 
「もしそれでわたしの時代に問題が起きたらどうするんですか!」
 
「やはりなにか知っているんですね?」
 
わたしの言葉の揚げ足をとるように古泉くんが言ってきた。
 
「言えません。言わないんじゃなくて言えないんです」
 
古泉くんはわたしの言葉に溜息をついてこう言った。
 
「最初に僕は、朝比奈さんを以前誘拐した連中を疑いました。しかしそれは長門さんに否定をされました。そして次に疑ったのは長門さんです。彼女には前科があります。もちろんそれも否定されましたよ」
 
わたしのことを見据えたまま、古泉くんの話は続く。
 
「結論としては涼宮さんの力、ということでしょう。でも、僕にはもう一つ仮説があります。理由など分かりませんが、もし、彼が未来に連れて行かれたとしたら?」
 
「そ、そんなことはしてません!」
 
わたしはすぐに否定した。そんなことをするメリットはない。
 
なにより、そんなことは知らない。
 
「信じていいんですか?」
 
「わたしにはそれを証明することは出来ません。だから……信じてとしか言えない」
 
「……分かりました。僕はSOS団の面々の言葉なら疑うつもりはありません。少し鎌をかけてみただけです。すいませんでした」
 
少しの沈黙の後、わたしは少しだけ喋った。
 
「わたしのこの時代での仕事は遠巻きでの監視のはずだったんです」
 
わたしの目からは涙が溢れていた。
 
泣いてこの場を乗り切ろうというわけじゃない。自然に流れてしまった。
 
「気付けばわたしは涼宮さんに連れられてこの部活に入っていました」
 
そうだ。ここは本当はわたしがいていい場所じゃない。
 
「SOS団での一年間……純粋に楽しかったです。仕事のことなんか忘れちゃいそうでした」
 
まるで走馬灯のように記憶がよみがえってくる。
 
「でも、頭のどこかには必ず後悔がありました。どうしようって、楽しんじゃいけないのにって、仲良くなればなるほど辛くなるのにって」
 
これから起こる出来事もそう。そして、いずれ訪れるこの時代との別れもそう。
 
だから嫌だった。この時代に、生活に、友達に、SOS団に愛着を持つなんて、嫌だった。
 
「もしわたしがここで未来の情報を口にしたら、わたしだけじゃない、元の時代にいる家族や友達、わたしの時代にいる生きている人達全員に影響がでるんです」
 
「しかし、今救える命があるかも知れないんですよ?」
 
その言葉にわたしはついカッとなった。
 
「わたしの独断で出来ることじゃないって言ってるじゃないですか!だから!だからわたしはここにいたくなかったのに!友達にさえならなければこんなに辛くないのに……」
 
古泉くんは黙ってしまった。部室に聞こえるのはわたしの泣き声だけ。
 
少しの沈黙のあと、古泉くんが口を開いた。
 
「……すいませんでした。朝比奈さんの事情をまるで考えていませんでした」
 
わたしは自分の役割に必死で、それはまた、古泉くんも同じ。責めることは出来ない。
 
「答えなくていいので聞いてください。あなたの口ぶりだとこのままでもいずれ解決、またはそれに準ずる形を迎えるのだと思います」
 
わたしは耳だけ傾けた。聞くだけならなんの問題もない。
 
「しかし、彼とは明言していないものの、なにかしらの犠牲が出る。だから一緒にいたくなかった」
 
古泉くんはそのまま言葉を続ける。あの少ない言葉でここまで推測していく。
 
「そしてあなたに関係のある人物だ。だから辛い。つまりSOS団の誰か……」
 
何も言えない。元々答えることは出来ないし、それを誰と教えることも出来ない。
 
教えてしまえば、それは未来を変えることになる。
 
「僕の見立てでは朝比奈さんの時代は、関係や方法はどうであれ、彼と涼宮さんが作りあげた世界だと思っています。なら消えるのは僕か長門さん、といったところでしょうか」
 
古泉くんは寂しそうに笑った。
 
「とはいえ、僕にしろ長門さんにしろ一筋縄ではありません。朝比奈さんには申し訳ないですが、見事に未来を変えさせていただきます」
 
なんて力強い言葉だろう。
 
「こんなに魅力的な日常なんです。笑って終われるハッピーエンドにしてみせますよ。まぁ僕の想像での話しですがね」
 
そう言ってまた笑う。
 
「わたしも……そうなって欲しいです」
 
これは本心。わたし個人としての本心。
 
誰も欠けてほしくない。
 
「それでは失礼しました」
 
そう言って古泉くんは部室を後にした。
 
わたしは椅子に座ったまま自分のスカートに端を強く握り締めた。
 
手の甲には次々に水滴が落ちていく。
 
何も出来ない。教えることも、手伝うことも。
 
未来に連絡をとっても上手く繋がらない。これも涼宮さんの力の影響かもしれない。
 
わたしはなんて役立たずなんだろう。
 
自分の時代からの支援も乏しい。必要な情報すらまともに与えられない。
 
事件が起きても足を引っ張り、今わたしを頼ってくれた古泉くんにも答えて上げられない。
 
学校からの帰り道。わたしは本来思ってはいけないことを思っていた。
 
わたしに出来ること。
 
これから迎える悲しいエンディング。それを回避するための方法。
 
それを変えることを出来ないのは分かっているし、やってもいけない。
 
でもわたしだってSOS団のメンバーなんだ。
 
やれそうなことを探してみよう。
 
残りの日にちは……もう少ないのだから。
 
もう夜もだいぶ遅い。
 
僕は自室に戻ってからずっとベットの上に座っている。部屋の明かりも点けずに。
 
朝比奈さんにはハッピーエンドにするなどと言ってしまった。
 
……。
 
今頭の中には嫌な想像でいっぱいだ。
 
初めて閉鎖空間に入ったときの事を思い出す。
 
あのときも恐怖で頭の中がいっぱいだった。
 
膝を抱えうずくまっていると、誰かが部屋に入ってきた。
 
「古泉?いるの?」
 
声の主はどうやら森さんのようだ。
 
僕の直属の上司。部屋の鍵を持っているのも当たり前だ。
 
もちろんそれ以外にも理由はあるが。
 
「真っ暗じゃない。電気点けるわよ?」
 
「すいませんが、このままにしてもらっていいですか」
 
本当に自分の声かと疑いたくなるほどに弱々しい声だった。
 
「……分かったわ」
 
そう言って暗いままの部屋に入ってきた。
 
今夜は月明かりがない新月。
 
カーテンも閉めているから人の姿もはっきりと見えない。
 
それでも森さんが僕とは少し離れたところに腰を下ろしたのは分かった。
 
「朝の話は聞いたわ。軽率な行動は控えなさい。あなたは高校生である前に機関の人間なのよ」
 
その通りだ。それでも森さんの声に怒りはない。
 
「すいません、ついカッとなってしまいました。罰則ならキチンと受けます」
 
「相手にたいした怪我もないみたいだし、別に構わないわ。ただ意外に熱いところもあるのね」
 
そう言って森さんが少し笑った。
 
その笑い声は不思議と僕の心に染みた。
 
だからきっと、僕はくだらないことを聞こうとしたんだと思う。
 
「……」
 
「……」
 
しばらく無言が続いた。そして先に口を開いたのは僕だ。
 
「もし……」
 
言葉に詰まってしまう。
 
もし僕が死んだらどうしますか?
 
こんなことを聞いたらきっと怒られてしまう。
 
そして余計な心配を。
 
超能力を持っているとはいえ、僕はまだ高校生だ。
 
子供だとは言わない。でも大人でもない。
 
不安と恐怖だけが頭の中をグルグルと回っていく。
 
「古泉。辛いなら降りてもいいのよ?」
 
何かを察してくれた森さんが優しく声をかけてくれる。
 
「……辛い、ですか。たしかに辛いです。そして怖い」
 
閉鎖空間に入るときはいつも覚悟をして入る。そこは異空間。何が起こるか分からない。
 
それでも自分が頑張れば生きてまた通常の世界に帰ってこれる。
 
でも、今回は誰かが死ぬかもしれない。予言とは違う。それは未来からの予告。
 
それは僕かもしれないし、僕じゃないかもしれない。
 
確実に誰かにおとずれるであろう不幸な結末。
 
……たまらなく怖い。そしてそう考え出した途端に体中が震えてきた。
 
自分の思考に意識を向けていると、不意に体が重くなった。
 
森さんだ。
 
僕の肩に寄りかかるように体重をかけてくる。
 
何かを言ってくるわけじゃない。それでも心強かった。
 
この人と一緒にいると、この人の体温を感じると、この人の鼓動を感じると、それだけで体の内側が温かくなってくる。
 
「古泉は何のために頑張っているの?」
 
何のため……。僕が今ここにいるのは、世界を守るため。そう神に望まれたから。
 
「それだけ?」
 
そう言ってくる森さんからは、女性特有の甘い匂いがする。
 
僕が答えに困っていると、森さんが口を開いた。
 
「私も最初はなかったわ。でも今はあるの」
 
それは初耳だった。
 
「私は死なないわ。そもそもヘマをしないから」
 
私は死なない、か。さすがは超能力者。僕の思考を当てられた。森さんにはサイコメトリーのよう能力も備わっているのかもしれない。
 
「だから古泉、いえ、一樹」
 
初めて下の名前で呼ばれた気がする。
 
「何があっても必ず帰ってきなさい」
 
命令とあらば。
 
「違うわ。私の個人的な願いよ」
 
微笑みながら言った森さんの顔が、間近へと迫る。
 
暗闇に目が慣れてきて辺りが見える。
 
目前にあった森さんの顔がまた僕の肩に戻る。
 
何のために……。今分かった。いや、決まった。
 
僕が神人と戦い、世界を守る理由。
 
僕には守りたい笑顔と約束が出来た。
 
絶対に生き延びる。ハッピーエンドは皆が笑えて初めて完成する。
 
もう、悩んだりはしない。
 
 
~To Be Continued~
 
 
 
 
 
 
おまけ
 

 

~佐々木と橘~
 
彼との連絡が取れない。
 
今朝のメールも、昼の電話も、そしてつい先刻のメールも全て音信不通。
 
どんな理由であれ、私からの連絡を無視するとはいい度胸だ。
 
昨日の涼宮さんとの一件。私は自分が酷いことを言ったことを、やはり彼に打ち明けることにした。
 
彼に仲立ちをしてもらおうという訳じゃないけど、どうしても相談したかった。
 
 
本日四度目の電話をする。
 
やっぱり出ない。溜息とともに携帯を枕に投げつける。
 
すると突然携帯が鳴った。そして飛びつくように携帯にでる。
 
「もしもし!キョン?」
 
「えっ?橘京子なのです」
 
その声にまた溜息をついてしまった。
 
「……京子は溜息をつかれる覚えはないのですよ」
 
不満な口ぶりで言ってきた。これは失言だった。
 
「ご、ごめんね」
 
「別にいいんですけどね」
 
電話越しからもプンプンと彼女らしい雰囲気が伝わってくる。
 
「それで何か用?」
 
「あっ!そうでした!佐々木さん、彼氏とは連絡取れますか?」
 
彼氏の部分を嫌そうに言ってきた。私に彼氏が出来たと聞いたときの反応を思い出す。
 
ひどくショックを受けていたっけ。しかし今はそのことより、
 
「取れない。橘さん、何か知っているの?」
 
橘さんは少し言葉を詰まらせながらこう言った。
 
「どうやら行方不明みたいなんです」
 
何を言っているか分からない。これが私の最初の感想。
 
「橘さん、私はそういうくだらない冗談は好きじゃないよ?」
 
少し、もしかしたらたっぷりと怒気を籠めて言葉を返した。
 
その声を聞いた橘さんは、怯えた声で続きを言った。少し泣きそうにも聞こえる。
 
「じょ、冗談じゃないのです。昨夜から行方が分からないらしくて、その、ご家族が警察に届け出たって聞きました」
 
 
言葉を失う。行け不明?彼が?何で?
 
頭の中を色々なことが巡る。
 
そして一つ、思い浮かぶ。あくまで可能性だ。
 
でも心当たりがありすぎる。
 
私はかつてないほど自分が愚かしく思う。
 
自分の発言のせいで招いた事態。そうとしか考えられない。
 
たった一言だった。彼女を嘲笑するつもりで言った言葉じゃない。
 
でもその一言のせいで、私はつい数日前までの幸せな時間を失い、彼の家族は彼を失い、彼は……。
 
願望を実現させる力の持ち主。私のそれより遥かに強力な。
 
……願望を実現させる能力?
 
それはつまり彼を消し去ったのは、彼女にとって彼が邪魔だったから?
 
彼に消えてほしいと彼女が願ったから?
 
でも彼女も彼が好きだったはず。
 
消えてほしいのは私のはず。
 
 
もう会えないなんて嫌だ。また会いたい。それだけじゃない、ずっと、ずっと一緒にいたい。
 
先のことなんて分からない。でもせっかく気持ちが通じ合ったんだ。
 
彼に会いたい。そして彼に優しく抱きしめてほしい。
 
そしてまた好きだって言われたい。もちろん私も言う。
 
好き好き好き、大好き!何回だって言える。
 
「あの、佐々木さん?」
 
「え?」
 
すっかり今電話中だということを忘れてた。
 
「その、きっと今回のことは、涼宮ハルヒだということで私たちは考えはまとまっているのです」
 
私と一緒だ。でも、本当の原因は……。
 
「でも藤原くんは協力は出来ないっていうし、九曜さんはなんだか訳がわからないんで多分無理です」
 
きっとそれぞれ自分達の事情があるんだと思う。
 
「だから京子に協力させてください。正直あんまり佐々木さんの彼氏さんは嫌いですけど」
 
嬉しいんだけど、そんなことは正直に言わないでほしい。
 
それでも佐々木さんが困ってるなら京子は協力しますよ!」
 
「ありがとう」
 
素直にお礼を言う。
 
私のしたいこと。彼を元に戻す。
 
私がしなくちゃいけないこと。もう一度涼宮さんに会う。
 
それでもダメだったときは……もう悩んでなんかいられない。
 
「橘さん、頼りにさせてね?」
 
「はい!」
 
彼女の声はいつも元気だ。羨ましい。
 
次の日の朝のニュースを見て、やっぱり現実なんだ、と確認する。
 
昨夜は橘さんとの電話が終った後にしばらく泣いていた。
 
でももう泣いている場合じゃない。
 
きっと彼の周辺も動いている。
 
私にも出来ることがある。いや、私にしか出来ない。
 
どんな望みでもかなえられる私と涼宮さんの力。
 
以前言われた。彼女の力を私に戻す、それが正しい形だと。
 
完全な力。これが私の、私にしか出来ない唯一の方法だ。
 
キョン、待っててね。私がきっと……
 
~To Be Continued~
 

 

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