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  • 涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)
  • 七夕シンドローム 第一章

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

七夕シンドローム 第一章

最終更新:2020年03月18日 23:53

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集






 その日、坂道を登る俺を取り巻く空気は暑かった。
 最近だんだん暑くなってきたなという事は感じていたが、なにもこんな急に気温を上昇させることはあるまい。慣れない暑さのおかげでじわりと額に汗が浮き、俺は急に日本列島に躍り出た暖気に恨み事を漏らすことも出来ずに黙々と学校への道を辿っていた。
「よう、キョン。今日はあっちいなー!」
 後ろから余計気温を上昇させそうな声が降りかかってくる。振り返るまでもない、谷口だ。
「だんだん暑くなってきてるとは思ってたんだがな、こうもいきなり暑くなるとは思わなかったぜ」
「うるせえ。暑い暑い連呼すんな。余計暑く感じるだろ」
 視線もよこざすにそう返す。しかし谷口は気にしたふうも無く、
「まーそんなこと言うなって。それよりキョン、聞いたか?」
「何がだ。俺はエスパーじゃないんだから、目的語ぐらいちゃんと言え」
「テストだよ、それも数学の! 抜き打ちだったんだが、昨日クラスの奴が職員室の教師の机にそれらしいプリントが積まれてたのを見たって話だ」
 それを聞いて俺は若干血の気が引いた。まずい。親が今にも俺を予備校に放り込もうとしている中、テストで悪い点を取ってしまえば強制的にそこに入学させられるのは必至だ。
「やばいだろ? で、キョンに数学のノート見せてもらいたいんだが……」
「無理に決まってるだろ。俺だって数学が得意じゃないんだ」
「あー! だよなあやっぱ無理だよなー! 国木田に見せてもらうしかないか、でもあいつノートとってない方が悪いとか言うぜ、絶対」
 それは流石に国木田に同意する。一応俺はお前と違って、分からないながらも板書程度はちゃんととってるんだ。
「なんだよ、困ってるのは俺だけか? キョンは俺側の人間だと思ってたのに」
 どんな人間と言いたいのかはわからんが、谷口側というのが良い意味じゃないってことぐらいは分かった。まあ、俺もノートと教科書のみでテストに太刀打ちできっこないのは分かり切っているから、ハルヒに教えを乞う事にしよう。罵倒されるのは目に見えているが。
「涼宮にか?」
 おい、何だその顔は。
「いや別に。ま、俺には関わりの無いことさ。せいぜい頑張れよ」
 そう言って谷口はやれやれ、という仕草をとった。似合ってない上に言ってる意味が分からないし、非常にむかつく。
 そして谷口と他愛もない会話を交わしつつ教室に着いてみると、いつも通りハルヒが頬杖をつきながら窓の景色を眺めていた。
「よう」
 短く声をかける。しかし、ハルヒは振り返らない。
「ハルヒ?」
「ん? ああ、おはよ」
 名前を呼んでようやっとハルヒはこちらを向いた。表情は昨日とは打って変わって不機嫌そうだ。もしかして、昨日コスプレ衣装が見つからなかったのか?
「聞いたか? 今日の数学で抜き打ちテストがあるって話」
 しかしハルヒは無感動そうに、
「へー」
 とそっぽを向いたまま答えるだけたった。まあこいつのことだ。どうせ抜き打ちテストなんて屁でも無いんだろう。
「で、頼みがあるんだが……数学で分からないところがあるんだ。テストに出そうなところだけでも教えてくれないか?」
「はあ? なんであんたなんかにあたしがわざわざ教えてあげなくちゃなんないのよ」
 手を合わせて頼み込む俺を、ハルヒはちらと視線を寄越しただけで一蹴した。いつになく酷い言い草だ。それほどまでにコスプレ衣装が見つからなかったのがショックだったのか?
 また窓の外に視線を戻すハルヒ。もうこうなるとハルヒはいくら頼み込んでも教えてくれやしないだろう。俺は諦めて自力で頑張ることにした。ああ、国木田には頼まないぞ。谷口とは違う人間なんだからな。
 まあ、他人に教えを請う時点で駄目人間なのは変わりないだろうが。しかし数学は二時限目だ。一時限目の古典を捨てるとして一時間でどうにかなるものだろうか? そう思いながら俺は席について教科書を開いた。途端に訳の分からないグラフやら数式やらが目に飛び込んでくる。ちくしょう、なんでこんな人生に全く役の経つ余地がないものを必死こいて勉強しなきゃならんのだ。そう思いながら、とりあえず一番最初の例題から目を通していった。
 正直、この時点で違和感にさえ気付きもしなかった俺は相当な馬鹿だったと思う。



 その後数学のテスト以外は何事も無く授業は終了し放課後。俺はダウナーな気分に陥りながら部室へ向かっていた。
 うすうす分かってはいたのだが、やはり自力では無理だった。テストを返されるのは次の授業でらしいが、返されずとも分かるくらい俺の解答用紙は酷かった。一時限目で必死に勉強してもしなくても同じような結果だったかもしれない。あれを親に見せてしまったら予備校行きは必至だ。これは事実の隠蔽も考えなくてはなるまい。
 ハルヒが教えてくれれば何とかなったかもしれないのに、と他人のせいにしたくなる気持ちが頭をよぎってつくづく自分が嫌になる。
 そういえばハルヒは今日は一日中不機嫌だったな。そんなに朝比奈さんのための衣装が見つからなかったことが悔しかったんだろうか。もしかしていつもの面倒くさいことを思いつく前兆かとも思ったが、昨日は七夕という一大イベントを控えて準備に動いてたみたいだからその線は無いだろう。
 なんとなく不思議に思いながらドアをノックする。「はぁい」と間の抜けたかわいらしい声が聞こえてきた。
「よっす」
 扉を開けてみると、俺以外の四人全員が揃っていた。なんだ俺は最後か?
 そのまま定位置の席にある椅子を引き、鞄を横に置く。
 そうだ、古泉が理系特進クラスなのだから、こいつに数学を教えてもらえばいいのか。しかしもう終わったテストだし、古泉に分からないところを教えてもらうというのは妙に癪だ。しかし長門に教わって俺に理解が出来ると思えないが……そこまで考えて、俺はようやっと周囲の異変に気付いたのだった。
 皆が俺に奇異なものを見るような視線を向けているのだ。あろうことか長門まで。なんだなんだ、俺の顔に何かついてんのか?
「あ、あの、えーっと……お客さん、ですか?」
 最初に口を開いたのは朝比奈さんだった。お客さん? 一体誰の事だ。扉の方を向いてみても誰もいない。
「……この場合、あなたしかいらっしゃらないと思いますが。もしかして、ご依頼か何かですか?」
 そう言うのは、向かい側に座る困り顔の古泉だった。俺がお客さん? 部外者と言いたいのか?
 意味が分からない。冗談でも笑えないぞ古泉。
「冗談、と言われましても……」
 困ったものです、とでも言いたそうな顔で古泉は首を傾げた。その言葉に異議をはさむ者は誰もいない。皆俺を異質なものでも見るような目で見ている。
 何なんだ? これは何かのドッキリなのか? いくらなんでも趣味が悪すぎる。それとも俺は夢でも見ているのだろうか。夢なら早く目を覚ませ俺。部室に行ってみたら俺がSOS団の団員じゃ無くなっていたなんて、悪夢以外の何物でもないじゃないか。
 混乱してその場から動けなくなっている俺を現実に引き戻したのは、団長机の椅子が引かれる音だった。
 すっくと立ち上がったハルヒが真っ直ぐ俺を見ている。
「違うわ古泉くん、もしかして……」
 ハルヒが俺の方へつかつかと歩いて来た。そうだハルヒ、お前なら分かってくれると思っていたさ。俺がこのSOS団雑用係にして団員その一であることをな。
 ハルヒは俺の目の前に立ち、輝くような笑顔をこちらに向けた。
「あんた、SOS団の入団希望者でしょ!」

 ―――その瞬間、俺は目の前が真っ暗になるような気持ちがした。

 しかし、ハルヒはそんなことを全く気にかけた様子もなく続ける。
「男子が古泉君しかいなくてバランス悪いなとは思ってたんだけどね、春に誰も新入生が入ってこなくて」
 ――違う。
「もう新しい団員はいいかなって諦めてたんだけど、あんたならちょうど良いわ!」
 違うんだハルヒ。
「まあ特に不思議な要素は見当たんないけど、このSOS団の入団希望って事は、それなりになんかあるってことで良いのよね?」
 俺は、俺はSOS団団員その一であって……
「なら今すぐここで見せてちょうだい! 準備が必要なら待ってあげてもいいわ。ただし十秒以内ね!」
 ―――気が付けば、俺は部室を飛び出していた。



 ぜえぜえと肩で息をしながら壁に背中を預ける。この暑さのせいで体中から汗が噴き出た。
 気付けばここはもう校門の外だ。
「一体、どうなってんだ……っ!」
 駄目だ、冷静になれ俺。大きく深呼吸をし、呼吸を整える。額から流れた汗をワイシャツの袖でぬぐいとった。本当に、何の冗談だよ。
 皆から向けられたあのおかしなものを見る視線が何度も点滅するように甦る。なんだ。何が起こった。意味が分からない。何で俺はあそこから逃げてきた? 何であいつらにあんな態度をとられた?
 疑問が脳内を埋め尽くし、頭が混乱した。とにかく、一度帰ろうか。恐らく部室に戻っても何の意味もない。また奇異の視線を向けられるだけだ。
 駅までの坂道を下りながら、先程起きた出来事を整理する。部室に入ったら、俺がSOS団のメンバーでないことになっていた。皆俺の事を覚えていない。恐らく、長門でさえもだ。
 何なんだ。あまりにもいきなりすぎる。
 だが確かに予兆のようなものはあった。朝のハルヒのよそよそしい態度。俺と全く付き合いが無いことになっていれば確かにあの態度は当然だ。
 しかしあいつらのドッキリなんじゃないのか。その線も考えた。考えはしたが、古泉はまだしも、おどおどとおびえたような態度だった朝比奈さん。こちらを見て若干驚いていたような顔をした長門。映画であれほどの大根っぷりを披露した二人が、あそこまでの演技を出来るだろうか?
 そしてなにより。
 朝から不機嫌だったはずのハルヒが、俺を入団希望者と見てその不機嫌顔をみるみる明るくさせたのだ。
 あの100ワットの笑顔が、むしろ俺を決定的に絶望させた。



 家に着くとシャミセンを抱えた妹が出迎えをしてくれたが、俺は返事もそこそこに自室のベットに飛び込んだ。
 一体どうなってやがる。
 いや、俺も既に分かってるんだ。このあり得ない状況。急激すぎる変化。

 間違いなく、世界の改変が行われている。

 やったのは誰だ? ハルヒか、長門か、それとも長門の親玉か。別の新たな勢力か何かか。だが俺は最初の二人はあり得ない、そう思いたかった。
 俺がSOS団に存在しない世界を作るってことは、雑用の俺を疎ましく思っているという事だ。SOS団に俺はいらない。ハルヒに朝比奈さん、長門、古泉の四人だけで良いという事。そんなことをハルヒや長門が思っているなんて考えたくなかった。しかし、あの情報思念体が世界を改変するにしても理由がないし、いまさら俺をどうこうしたって何か変化があるとは考えられないのも事実だ。
「くそっ……」
 全く意味が分からない。改変をやった奴は誰なんだ? その理由は?
 晩飯の時も、風呂に入る時も俺は考え込んだままだった。
 答えの出ない思索を延々と繰り返しているうちに夜は更け、俺がSOS団のメンバーでないこと以外は全ていつも通りの朝が来た。



 七月三日。気の早すぎる夏日は今日も続行中だった。
 坂道を登る足が重い。夕べ遅くまで堂々めぐりの思考は続き、ほとんど寝ることも出来なかった。
 それでもとにかく学校に行くしかない。周りに頼れる奴がいない今、自分で情報を集めるしかないんだ。ちょうど、あの冬の日のように。
 教室に着いてみると、ハルヒがまた頬杖をついて窓の外を眺めていたのだが、どこに目がついているのか俺が教室に入るなりすぐにこちら側へ振り返った。
「あら、おはようキョン! ……でいいのかしら」
 ああ、良くは無いが呼びかけられる場合に一番多いのはそのあだ名だな。
「変な名前よね、でも妙にしっくりくるわ」
 そんなもんこなくていい。俺は溜息をつきながら自分の席の椅子を引いた。
「あのさ、昨日は急に飛び出して行っちゃったけど、いつあんたの能力を見せてくれるのかしら? それともあれがそうなの? 人より足が速いのが特技っていうのならSOS団には入れないわよ」
 あれは別に自分の能力を見せた訳では無いし見せるつもりも無い。そもそも俺には特別なもんなんて何も持ってないさ。この世のさまざまな不思議、というか面倒事に巻き込まれまくっていたおかげでそこらへんの経験値は一般人と比べて群を抜いていると自信を持って言えるがな。
「何よ、あんた何も無いくせにSOS団の門をたたいたわけ? 言っとくけど、うちはあんたの思ってるような仲良しグループのお遊び団体じゃないの。これでも宇宙人や未来人と遊ぶっていうれっきとした目的の元に行動してるんだから」
 あーそうかいそうかい。
 ハルヒの主張、というか演説を右から左へ聞き流しながら机に突っ伏す。どうでもよかったんじゃない。ハルヒの言葉が、まるで俺からどんどんSOS団という存在を引き離しているようにしか聞こえなかったからだ。
「何よ……もう」
 ハルヒは期待外れ、とでも言わんばかりの溜息をひとつついて、そのまま会話は途切れた。



 そのまま授業は消化され昼休み。ちなみに数学のテストも返された訳だが、その点数は言うまでもあるまい。あとはどうこの紙切れを親の目から逃がし続けるかどうかだ。
「キョン、やっぱりふられちまったのか! いやー、そりゃそうだよな、あの涼宮だし」
 谷口がご飯粒を飛ばしながら能天気な顔で笑っている。正直ムカつく。
「ま、しょーがねーって! 元気出せよ、俺が放課後にナンパスポットへ連れてってやるから、特別に」
「断る。俺はお前ほど女に飢えてはいないんだよ」
「でもさ、今日のキョン何だか暗いよ。大丈夫?」
 国木田が卵焼きを一口大に取り分けながら言った。ああ、やっぱ顔に出ちまってたのか。
「ま、キョンは昔から変な女が好きだったからね。そこまでとは思わなかったけど頑張って。僕は応援するよ」
「別にハルヒと付き合いたいとかそういうことを思ってる訳じゃねえ。勝手に誤解すんな」
「まーまー、強がるなって」
 谷口が同情的な表情で肩をとんと叩く。なんなんだこいつ。
「お前の勇気には賞賛を送ってやるよ。玉砕覚悟で向かっていくなんてな」
「だから恋だのなんだのは関係無いって言ってるだろ。そもそもなんで俺が玉砕すること前提なんだ?」
「お前……知らないのか?」
 谷口が急に声をひそめる。同情してるような表情が本当にムカつく。
「俺は昼休み行かなきゃならん所があるんだ。言いたいことがあるなら端的に言え」
 谷口はしばらくわざとらしい沈黙をすると、
「いや……何でもないさ。ま、頑張れ」
 と言ってまた俺の肩を叩いた。てめえ、今箸の先が俺の制服についたぞ。
 言いたいことは色々とあるものの、昼休みという時間は実に短い。急いで弁当を腹に詰め込んでいると、わあ、と教室の入り口の方で数人の女子による歓声があがった。
 反射的に声の上がった方に視線を寄越す。

 俺の箸の動きが、止まった。
 そいつは、教室の入り口で数人の女子に取り囲まれた向こうで笑っている。
「うん、もう大丈夫よ。午前中に病院で点滴打ってもらったらすぐによくなったわ。
 家にいてもヒマだから、午後の授業だけでもうけようと思って」
 そいつが、あの時と一字一句違わず同じ台詞を吐いて、周りの女子に人当たりの良さそうな笑顔を振りまいている。そして、――昨日、空席だったはずの席に、鞄を置いた。
 ハルヒの席に座っている国木田の元へと近づくことは無い。当然だ。"あの時"とは違って、ハルヒは今もこのクラスに在籍しているのだから。
 朝倉涼子。
 もう、『どうしてお前がここにいる』とは、言わなかった。
 なるほどな。お前のおかげでよく分かったよ。おかしいのは俺でもなく他のSOS団の面々でもなく、この世界。
 二度も繰り出された同じシチュエーションのおかげで、俺は自分でも意外なほど冷静だった。
「……俺、ちょっと行ってくる」
「おい、何処にだよ? まだ弁当残ってるぞ」
「いい。とにかく今すぐに俺は行かなきゃならないんだ」
 弁当をかたす時間ももどかしい。朝倉は笑顔で女子たちと会話を交わしている。
 昼休みが終わり教室に戻ってもまたこいつがいると分かってはいるが、俺はこの場から離れずにはいられなかった。恐らくこいつは世界改変とともに、俺のクラスに在籍している委員長ということになったんだろう。
 俺が半ば走りながら教室を出た時、一瞬視界の端にからかうような笑みをこちらに向けた朝倉が見えた気がした。



 まだ昼休みの終了には時間がある。俺は部室に向かった。食後すぐに走り出したせいで脇腹が痛んだ。
 尋常じゃない様子で廊下を駆ける俺に、周りの視線が突き刺さる。
 畜生。またこのパターンかよ。だが、これで確信が持てた。
 ここは確実に改変世界だ。消滅したはずの朝倉。そいつを復活させられるのは、それ相応の能力を持った奴だけ。
 やっぱり、ドッキリなんかじゃ無かったか。内心もしかしたらとも思っていたんだがな。俺がいない間に、ハルヒが長門と朝比奈さんにきびきび演技指導をしていたんじゃないか……そう頭の片隅で持っていた希望は、奴の復活によってあっさりと崩れ去ってしまったようだった。



「長門!」
 文芸部室の扉をハルヒ並に勢いよく開けた。窓際には、分厚いハードカバーを広げた少女が座っている。眼鏡はしていない。昨日見たから当然か。
「はっ……長門………長門、お前は」
 ガラス越しじゃない、直の視線が俺に突き刺さった。
「お前は、俺を知っているか」
 数秒、俺を凝視して。
 長門は、首を横に振った。
「やっぱ、そうだよな……」
 膝に手をついて、息を吐き出す。やはりそうか。やっぱり、昨日俺に見せた驚きの表情は嘘じゃなかったんだな。昔と比べたら随分と表情が豊かになったもんだな長門。
 荒くなった息を整えながら、部室の床に視線を落とす。違う。そうじゃない。頭をもたげる違和感。

 ―――何かがおかしい。何となくそんな気がした。

 そうだ。あの冬の日を思い出せ。あの長門――眼鏡をかけた長門は、普通の女の子だった。多分、あれが長門の望んだ自分の姿……なんだろう、きっと。じゃあこの目の前にいる長門はなんだ? 俺のよく知る、唯一の文芸部員でありSOS団団員その二でもある対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。一昨日までの長門そのままだ。じゃあ何故改変が起こったことを知らない? 俺の事が分からない?
 俺は顔を上げた。
「お前は普通の人間……なんだよな」
 長門はまた俺を不思議そうに凝視してから頷いた。
 やはりそうだ。間違いない。こいつはあの内気な長門でも、出会ったばかりのころの無機質な人形のような長門でもない。だんだん感情が出てくるようになってきた、俺のよく知る長門だ。
 しかし、こいつは今は"人間ということになっている"。明らかにおかしい、この中途半端さ。
 誰なんだ。誰が世界を改変した? 誰がこいつから宇宙人属性を奪った?
 しかし頭で考えている暇はない。恐らく部室に居られるのはこの昼休みの間だけ。
「長門、ちょっと本棚を見せてもらってもいいか」
 数秒の沈黙の後、首肯。
「ああ、ありがとな」
 あの時と違って、俺の取るべき行動は明確だった。
 ざっと本棚の背表紙の列を見渡す―――あった。長門が一番最初に貸してくれた、あの分厚いSFのハードカバー。すぐに取り出してしおりが挟まっていないか確認する。
 ……無い。
 だががっかりするにはまだ早い。別の本に挟まっていてもおかしくないはずだ。俺は急いで本棚の他の本を取り出した。
 開いては大まかにページを捲り、また戻す。この作業を延々と繰り返している様は端から見ればとても奇妙に映るだろうが、そんなことには構っていられない。
 とにかく、あるはずなんだ。長門からのメッセージが。
 しかし、半ばを過ぎてもあの堅い字でヒントが書いてある栞は見つからない。残りの冊数が少なくなると同時に、残り時間もみるみる減っていく。
 明らかに俺は焦っていた。お願いだ、ヒントを見つけられなければここで手詰まりになっちまう。何も手掛かりが無くなっちまう。一冊一冊本を取り出す動作さえもどかしい。
 しかし、俺の祈るような気持ちとは裏腹に、遂に栞は見つからなかった。
 最後の一冊を閉じて、本棚に収める。
「はは……嘘だろ?」
 嘘だと言ってくれ。
 これで手掛かりは無くなった。元の世界を取り戻すヒント。足掛かり。

 俺に元の世界の存在を示すものは、何一つ無かった。

 呆然として整然と並ぶ本の列を見る。予鈴がなった。もうすぐ昼休みも終了だ。
「どうしろってんだ……」
 でもそんな音も俺の耳には届かない。絶望感が俺を支配していた。俺は一体どうすればいい? 鍵を揃えればいいという事じゃない。そんな条件は初日で既にクリア済みだ。
 何なんだこの世界は。あの冬と同じようで、全く違う。ハルヒが目の前にいるのに、何も見つからない。SOS団がそこにあるのに、俺だけがその外側にいる。
 ふと、人が近付く気配。
「長門……」
 眼鏡の掛けていない、無機物とは言い難いが人間と言うにもまだ表情の乏しい元宇宙人の少女がそこにいた。
「何を、探しているの」
 俺の良く知る長門そのものでも、こいつ自身は俺を知らない。
「あー……栞、だよ」
「栞?」
「ああ。でも、どうやら置いてきちまったみたいだ」
「そう……」
 時計を見ると、既に針は五限目の始まるギリギリを指していた。いつの間にこんな時間になっちまったんだ? 早く戻らないといかん。だが、授業なんかを受けている場合だとは思えない。
「これ。使って」
 そう言って目の前に差し出されたのは、季節の花が印刷された、シンプルな栞だった。
「これは?」
「わたしの栞」
 ああ、そりゃまあ、そうだろうな。しかしだな長門、別に俺は本を読むのに不便だから栞を探していたわけじゃないんだ。元の世界のお前からのヒントを見つけたかったからで……
 色々と言いたいことはあったが、結局俺はその紙切れを頂く事にした。
「ありがとな、長門」
 目の前の長門は、微笑まなかった。





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