アットウィキロゴ
ハルヒと親父 @ wiki
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

ハルヒと親父 @ wiki

涼宮オヤジの20冊

最終更新:

haruhioyaji

- view
管理者のみ編集可


ホメロス『オデュッセイア』


 ホメロスは世界で最初の、しかも最高の文学者だ。ここで神話と文学は分かれる。
 古代ギリシアの悲劇も叙事詩も、ともに神の血を引く人間たちの姿が英雄的に描かれる。
 だが、『オデッセイア』は違う。この主人公は、どんな英雄も、巨人も、精霊も、神をも向こうに回すが、その終始違わぬその望みは、愛するものがいる故郷へ、我が家へ帰り着くことだけだ。なにしろ戦争に駆り出されたくなくて、アホの振りをしたくらいだ。
 多くの神に愛され守られていたトロイアは、この男オデッセウスの知謀なしには、決して攻略されなかっただろう。そのせいで神の恨みを買ったこいつは、10年間の戦争の後、さらに10年、世界中の海を彷徨い、恐ろしい一つ目の巨人や歌声で魅了し船という船を難破させるセイレーンなんかに遭遇する羽目になる。あらゆる危険を切り抜け、未知なる海という海を巡り、森羅万象を学びながら、たったひとつだけを望み続け、男はとうとうその望みを果たした。
 その旅に報いて、神ゼウスは、その男と妻のために、夜の時間を引き延ばすことで応じたって話だ。





エリック・ホッファー『波止場日記』


 ミスフィット(misfit)という言葉は、ホッファーの本で知った。「フィットし損なってる」、不適格者って意味だ。ただ自分一人がミスフィットなんだと考えるのは、若いうちは珍しいことじゃない。ホッファーが気づいたのは、自分はミスフィットという一群の人々、あるいは階層に属している、ということだ。俺たちは孤独ではない。しかし、孤独でない者同士でさえ、お互いを慰めることがかなわない。そういう人間たちが大勢いるんだ。おれやおまえさんもそうかもしれない。
 ホッファーは7歳のときに母と視力を失った。それから8年間、目が見えず、そのあと奇跡的に視力を回復した。気づくと15になっていて、学校へ行ったことは一度もなかった。視力が回復してから、次に失うかもしれないいつかを恐れて、それまでの間、できるだけ多くを読もうと、一日12時間、本を読みつづけた。
 20歳前後で父が死に、天涯孤独になった。残った300ドルをもってバスでロスに行き、スキッド・ロウ(どや街)に入った。1930年、28歳までスキッド・ロウでその日暮らしを続けた。自殺もしてみたが死にきれず、ロスを出てカリフォルニア中を動きまわった。 1934年の冬、こういう自分がいったい社会の中の何にあたるのか、やっと思い知った。
 ミスフィット(misfit)だ。
 ホッファーはその後も、肉体労働を続けながら、本を読み続けた。ポケットにあるのはモンテーニュだった。モンテーニュは、おれのことを書いている!とホッファーは思ったんだ。彼はその後も、サンフランシスコで沖仲仕、つまり船の荷物運びの仕事を続けながら、読み続け、書き続けた。
 沖仲仕の哲学者と呼ばれるようになるのは、もう少し後の話だ。



記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー