ハルヒと親父 @ wiki
ファーストキス・ショット
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haruhioyaji
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- ハルヒ母
- お父さん、こんなのが出てきました。
- オヤジ
- 写真か。あんまり得意じゃないから、何枚も残ってないんだが。ほう、ちっこいハルヒだ。
- ハルヒ母
- ビデオは、たくさんあるんですけどね。
- オヤジ
- 俺もあいつも、じっとしてられないタイプだからな。
- ハルヒ母
- そうですねえ。
- オヤジ
- だが、こいつはよく撮れてる。
- ハルヒ母
- そうなんです。
- オヤジ
- 何故だろう?
- ハルヒ母
- ふふ、何故でしょう?
- オヤジ
- 降参だ。母さん、おしえてくれ。
- ハルヒ母
- 見て分からない? この写真のハル。
- オヤジ
- うん。
- ハルヒ母
- 目をつぶっているわ。
- オヤジ
- そうだな。
- ハルヒ母
- で、口を閉じてるでしょ。
- オヤジ
- 珍しいこともあるもんだ。
- ハルヒ母
- ちょっと唇を突き出して、ね。
- オヤジ
- !なるほど。ヤフオクに出したら30万は下らないな。
- ハルヒ母
- お父さん。
- オヤジ
- 冗談だ。キョンの奴なら、倍出しても買うだろう。
- ハルヒ母
- それは、どうかしら?
- オヤジ
- そうだな。サイフはすでに握られていると見ていいからな。だがハルヒには効くぞ、この写真。
- ハルヒ母
- わたしが持っておいた方がいいみたいですね。
- オヤジ
- そうしてくれ。これを撮った後のことを思い出した。殺されるかと思ったぞ。
- ハルヒ母
- ハルも本気でしたからね。
- オヤジ
- ちょっとした冗談だったのにな。
- ハルヒ母
- あの年頃の女の子には、ちょっとあれは。
- オヤジ
- あの頃は素直だったなあ。
- ハルヒ母
- この時以来、すっかりバカ親父呼ばわりですものね。
- オヤジ
- 信じていた者に裏切られると、人間変わるもんだ。
- ハルヒ母
- お父さんが裏切ったんですよ。あの頃のハルはお父さんが大好きだったのに。
- オヤジ
- やれやれ。にがい記憶がよみがえっちまった。キョンには一応教えとくか。……お、キョンか? 俺だ、親父だ。もしハルヒとこっぴどくケンカしてな、なんとかして謝りたいと思ったら、いいもの持ってるから連絡しろ。ああ、切り札だ。ハルヒのファースト・キスの写真だよ。未遂だけどな。どうやって撮ったか? 言わせるな。
- ハルヒ母
- 『ハルヒ、お父さんとキスしようか』って言ったのよね。
- オヤジ
- な、何を怒ってんだ、キョン。相手は3歳児だぞ。……ああ、切りやがった。
- ハルヒ母
- キョン君、怒ってた?
- オヤジ
- うん。母さん、俺って極悪非道か?
- ハルヒ母
- 時々、そう思うこともありますね。
- オヤジ
- やっていい冗談とわるい冗談の違いが分かれば、今頃、大司教ぐらいにはなってるぞ。
- ハルヒ母
- 分かった時は遅いことが多いんですよ。
- オヤジ
- 人生の縮図だな。今度はもっと縮尺の大きいのにしよう。
- ハルヒ母
- この写真、引き延ばして、居間に飾りましょうか?
- オヤジ
- 母さんって、ときどき悪意抜きでひどいこと言わないか?
- ハルヒ母
- そうかしら?
- オヤジ
- 一度、みんなで一緒に撮るか。今なら、シャッターを切る間ぐらい、じっとしていられるだろう。……バカ娘も、バカ親父も。
- ハルヒ母
- そうねえ。……お父さん、覚えてませんか? 映画の『細雪』だったと思うんだけど。
- オヤジ
- ん?市川崑のやつか?
- ハルヒ母
- ええ。最後に4人姉妹の長女がね、『みんな、良(え)えようになったら、ええなぁ』って言うの。いま、そんな気持ちよ。
- オヤジ
- そういう写真になればいいがな。
- ハルヒ母
- 楽しみね。