青春は短い。宝石の如くにしてそれを惜しめ。
倉田百三
「無事に下山できたわね」
「う……うん。……そう……だね」
あれから私たちは特に問題なく下山できた。
殺し合いに乗った参加者にも出会うことはなかった。
つまり、夜空から陽が出てくるまで二人きりで過ごしたということになる。
思春期真っ只中の中学生が夜から夜明けを過ごす……
こんな状況を殺せんせいーに見られたら、ネタにされるわね
地球を破壊しようとする超生物は、生徒の恋愛ネタを追い求める下世話の一面を有している。
※殺せんせーの弱点⑬ 下世話
チラリと彼を見る。
両手を膝に置いて深呼吸しながら肩を大きく上下に動かしている。
これでも無理しないコースを選んだはずだが、インドア派の彼にはやはりきつかったようだ。
でも普通の中学生はそれが当たり前。
多くの中学生は、裏山でフリーランニングの訓練なんかしない。
ナイフを使った戦闘術なんか体育の授業で教わらない。
私だって、E組の担任に殺せんせーが着任しなければこうした身体能力を身につけることはなかっただろう。
とはいえ、たしか超能力をもっているのよね
正直、最初【超能力】なんて聞かされたときは、”まぁ……そういう年頃ね”と軽く受け流そうと思ったが、実際に見た以上は受け入れるしかない。
というより自称超生物である殺せんせーの存在がまず超常現象なものだ。
案外、世界には彼のような力を持つのがごろごろいるのかも知れない。
そう考えると、普通の中学生の定義ってなんなのかしらね。
(……)
もし、影山がE組にいたら殺せんせーをどう暗殺するのかしらね。
ふと、ありえない想定をしてしまう。
超科学の結晶である律でさえ、単独では殺せんせーを暗殺することはできなかった。
なら、超能力では?磯貝やカルマの指揮を活用すれば、あるいは?
(……)
はぁ……ばかね。出会ってまだ6時間程しか関わってない人間に、こんな想定をするなんて
そもそも、私って他人と交わるより影(一人)を好むはずだった。……自分で言うのもなんだけど、変わったものね
これもE組の連中と過ごした影響かしら
……そろそろ、移動を開始したほうがよさそうね
「どう?そろそろ歩けそうかしら?」
「うん……だ……大丈夫。待たせてごめんね」
「気にする必要はないわよ。ただでさえ整備されていない山道。並の中学生だったらへばっているわ。それなのに、そんな道を文句言わず歩いたのだから、肉体改造部で鍛えている体力がつきはじめている証。自信を持ちなさい」
「でも」
「?」
「狭間さんが、僕の体力に合わせてくれたのが伝わった。歩くスピードだって調整してた。出会ってからずっと思ってたけど、やっぱり狭間さんは良い人だ。ありがとう」
「……別に。疲労困憊な状況で襲われたらひとたまりもないっていう打算的な考え。お礼をいう必要はないわ」
「それでも、自分の気持ちを大事にすると決めたから。」
「……」
そう面と向かって感謝をいわれると照れるわ……
……そうね。この悪趣味な催しから生還できたら、寺坂達に加えて影山の分のチョコも作ってあげようかしらね。
そのためには、連絡先を聞かないと……って何考えてるのかしら
でも……私達は中学生。文字での世界でしか感じなかったけど、青春ってこういうことを指すのかもね
我は汝…汝は我…
汝、ここに新たなる契りを得たり
契は即ち、
囚われを破らんとする反逆の翼なり
我【魔術師】のペルソナの生誕に祝福の風を得たり
自由へと至る、更なる力とならん…
シュパァァ!!ザンッ!!!RANKUP!
コープのランクが4に上がった! ……ぬるふふふふ
「ねぇ……」
《え?》
「うちの担任みたいなふざけた口調ださないで。呪うわよ?」
《あ、はい……すみませんでした》
それにしても、姫神の狙いは何なのかしら。
影山にも話したけど、私達は蟲じゃない。
だからこその爆弾首輪(脅し)なんでしょうけど、裏を返せば、積極的な参加者は少数の可能性が高い。なら、スタート開始時刻から考えると、そこまで殺し合いも起きてないのでは。
つい頭をよぎる甘い考え。
だけど、そんな甘い考えはすぐに吹き飛ばされた。
放送が流れた。
先生と同級生の名前が呼名された。
2人の間にかすかにあった青い空気が殺された。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「……」
烏間先生。
クラスの副担兼体育教師。
本職は防衛省の職員だけど、うちの担任(殺せんせー)を殺すために私達を鍛えてくれていた。まぁ、私の好みの顔ではなかったけど、倉橋をはじめとした一部の女子に人気があったし、いい先生だったと思うわ。
……少なくとも本校舎の教師達より教師だった。
エンドのE組に移籍させられて濁っていた私達にいつも真剣に向き合っていた。
堅物という言葉が合う先生だが、真っすぐな目で生徒(私達)を見てた。
片や本校舎の教師たちときたら、落ちこぼれはどこまでも落ちこぼれ。関わりたくない。厄介ごとに巻き込まれたくない。といった視線に態度。
お前のおかげで担任(オレ)の評価まで落とされたよ
唯一良かったのはもう陰気なお前を見ずに済むことだ
そう、お前。えーと、き……ん?お前なんて名前だったっけ?
侮辱。決めつけ。保身。無気力かつ無活発なでもしか先生ばかり。
そう……先生(あの人)にお礼(ありがとうございました)を伝えて高校生になることは、もうできないのね
「……」
そして、茅野カエデ・・・・・・クラスの同級生。
殺せんせーを殺すためにサポート役に徹するのかと思えば、巨大プリンを使った暗殺を計画し、陣頭指揮を行うなど行動的な一面もある子。
特段親しい仲というわけではない。
おそらく、卒業したら会う機会もほぼないだろう。
しかし、同じ教室で日々を過ごしてきた。
一つの目標(暗殺)に関わってきた。
無関心でなんかいられない。
それと、親しさでいうならむしろ、瀬田の方。
瀬田渚。一見、平々凡々としたクラスの一男子。
でも、あのクラス(E組)で一番の暗殺力を有している。
私は国語力だけの暗殺者。それだけに、嫉妬することもある。
だって銃とナイフと暗殺が先生と生徒を繋ぐ絆なんだから……
「本当……やってくれるわね」
理不尽。カフカの変身やカミュの異邦人の如く不条理の極み。
同級生は”殺し合い”だから”死にました”で、はいわかったわと納得なんかできるわけない。
姫神とその協力者であろうキュウべえを呪い殺せるなら殺したい。
だってもう、全員がそろっての卒業はできないのだから。
でも、先生と同級生の死を悲しむ暇はない
隣から怒りを感じたから。
今まで肌で感じた中で一番の怒り。
4月、潮田を脅して、自爆特攻を行わせた寺坂達に向けた殺せんせーの怒り以上の。
その怒りは殺気にも似ていて、それは最高と名高い殺し屋”死神”以上の。
その原因は直ぐに理解できた。
影山律。
そう、先ほどの放送では、私の知り合いだけではなかった。
影山の弟さんの名前も呼名された。
身内が亡くなったのだ。どす黒い闇の感情は当然。
そして、その顔は―――
――― 100% ―――
ブワッ!!!!!
周囲の地面は崩壊し、視界に映る世界は激変する。
私は抗うことが出来ずに吹き飛ばされる。
先ほどの顔を想起する。
……そんな顔するんじゃないわよ。
呪うに呪えないじゃない。
違った。
力を過信したかつての私達でも底知れぬ闇でもなかった。
あのとき私の瞳に映ったのは、涙を流す同じ中学生だった。
―――ガンッ!!!
かくして青春は過ぎ去った。
来るは嵐。
全てを吹き飛ばす暴風雨。
人はなべて吹き荒ぶのみ。
【A-5/崩壊した周辺/一日目 朝】
【狭間綺羅々@暗殺教室】
[状態]:気絶 負傷(中)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品 不明支給品1~3(本人確認済) チョーク2本(現地調達)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。正当防衛くらいはする。
一.……
二.殺せんせーじゃないけど、影山の手入れをしてあげないと
三.そう、もうE組が全員そろって卒業することはないのね……
※わかばパークでのボランティア以降の参戦です。
※茅野の正体を知る前です。
※影山とのコープが4になりました。
獲得スキル
「E組の闇トーク」相手との会話交渉が決裂した時に、交渉をやり直せる
「黒魔術の追い打ち」影山の攻撃で相手をダウンできなかった場合、追撃する。
※モブの暴走により吹き飛ばされた際に頭を木にぶつけ気絶しています。
【影山茂夫@モブサイコ100】
[状態]:覚醒100% ぐちゃぐちゃとした感情
[装備]:対先生BB弾@暗殺教室
[道具]:基本支給品 不明支給品0~2(本人確認済) チョーク2本(現地調達)
[思考・状況]
基本行動方針:?????????
一.??????
二.……律
※ショウによって偽装された遺体を見せられ、家族の生存を確認して以降の参戦です。
※100%になり覚醒状態となりました。
※モブの覚醒によりA5周辺は荒れています。
※狭間とのコープが4になりました。
最終更新:2024年08月25日 08:23