火炎放射器ーーーーー水の代わりに発火した液体燃料を噴射する巨大な水鉄砲
航空軍事用語辞典++より引用

「……」
私は両手を合わせて捧げるーーーーー

「……」
黙とうをーーーーーー

☆彡 ☆彡 ☆彡
ーーー黙とうを捧げる前ーーー 三千院ナギ

ーーーザッ

「ここは……」
ヒスイとの闘いを生き抜いた私とモナはヒスイが歩いてきたであろう東を歩いていた。

「闘技台だな」
そこは、まるで古代ローマのコロッセウムを彷彿させるような建物。

「……大丈夫かナギ?」
おそらく、私の歩みが遅くなってきたのに気づいたのだろう……モナが話しかけてきた。
私は心配させたくないからーーー

「あ…ああ。大丈夫だ……ふふん♪モナも見ただろ?○ッチの○也にも負けない私の大リーグボールを!星○馬には悪いが私が巨○の星だ!!」
強がった。しかし、正直疲れている。
それもそうだ。ハヤテと出会う前は50m走を走っただけでへばってしまうほど、極度の運動音痴。そんな私がいくら、ヒスイに威勢のいい宣言をしてもそう、体が急に適応できるはずがない。

「……入るぞ」
私はやせ我慢しつつも短くモナに移動を促した。
それには理由があるーーーーー

「ナギ…そこの猫の言う通り、私は姫神側の人間で、既に参加者を一人殺した――――」
先ほど闘った幼馴染のヒスイが放った脳裏から離れない言葉。

なぁーーーヒスイ、嘘だろ?お前が人を殺したって?嘘に決まってるよな?私に発破を掛けるつもりで言ったんだろ?

泣き虫で煮え切れない私のためにーーー
私は藁にも縋るようにヒスイの殺人を否定して闘技台に入った。
そこで目にしたのはーーーーー

ーーーーー闘技台の中央に仰向けで斃れている男の死体だった。

☆彡 ☆彡 ☆彡

ーーー黙とうを終えてーーー 三千院ナギ

「……」
名簿を見ると、名前は烏間というそうだ。
正直、名簿に載せてある目つきが怖いが、この損傷を見る限り、殺したのはヒスイだろうーーーー

「なぁ、モナ」
私はモナに提案をする。たとえ、それが自分を危険に晒す可能性が上がるとしてもーーー

「……どうした?」
私と一緒に黙とうをしていたモナは私の雰囲気を感じ取ったのか静かに次の言葉を待ってくれている。

「この、烏間……という男だが、このままでは不憫だ……簡単でいいから墓を作ってやりたい」
私の言葉にモナは難色を示す。

「……ナギ。気持ちは分かるが、ここで、疲労を重ねると、さっきのヒスイのような殺し合いに乗った人物が襲い掛かってきたら、一網打尽にされる恐れがある。それに……ナギも会いたい人がいるんだろ?」

正論だ……モナが言っていることは私にも痛いほど伝わる。
もし、こうしている間にハヤテやマリアの命が奪われたのだとしたら私は一生後悔をするだろう。
だけどーーー

「わかっておる!!」
モナは悪くない。だが、私は声を大きく張り上げるーーー

「こうしている間もハヤテやマリア……伊澄にヒナギクにハムスターと私の大切な人の命が危険にさらされているやも知れない!だけど!!この烏間を殺めたのは私の幼馴染なんだ!!!だから、私がアイツの代わりに供養してやらないと!!!!」
正直、烏間という男がどういう男かは私にもわからん。
目つきがちょっと怖いし、もしかしたら悪い男だったのかももしれない。
だが、烏間を殺したのはヒスイ。私の幼馴染だ。
だからこそ、私が供養してやらねば……放送が流れれば、おそらく、こうしたこと(墓づくり)はもうできない。

「頼む……我儘をいうのはこれっきりだ」
そう言い終わると私はモナに頭を下げた。

「「……」」
「たく…しょうがねぇなー」
モナは頭をポリポリとかいてーーー
「よしッ!善は急げだ!!さっとやっちまおぜ!!」
ーーーありがとうモナ。

☆彡 ☆彡 ☆彡
ーーー墓づくりを終えてーーー モルガナ

「はぁ…はぁ…はぁ…」
一旦、外へ出て烏間の墓を作り終えたワガハイとナギは疲労を回復させようと乱れた呼吸と体力を回復させようと闘技台の中へ戻り、休憩をしている。

……チラッ
(ナギの奴……精神的にも参ってやがる……)
幼馴染が殺した男の墓づくり、体力・精神どちらも負担は軽くはないはずだ……
何かいいのはないか……
(そうだ!たしかワガハイの支給品に……)

「これでも、聴いてみるか?」
ワガハイはナギに支給品のCDを渡した。

「これは何なのだ?」
キョトンとした顔で受け取る。

「なんでも、このCDを聴くと「火炎ゴッドファイアー」とかいう必殺技を会得できるらしい」
ーーー桜川六花という人の字でCDに付属していた紙にそう書いてあった。
ちょっと嘘くさいが、ナギの気分転換になればいいとワガハイは薦めた。

「おお! 」
案の定、ナギの目が曇りから漫画のヒーローが新しい必殺技を披露するのを期待に満ちた目に代わりやがった。

「モ…モナ!早く、私にそのCDを聴かせるのだ!!」

「そんなに慌てんなって!え〜と、ラジカセもセットだったな……)
ワガハイはナギに急かされつつもザックからラジカセを取り出すとーーー
ガチャ!……CDが再生される。

ーーー火炎放射とわたしーーー
完全燃焼しよ☆
ららら 防犯ベルの一種です バーニーング
背中のタンク 純情な 乙女の嗜みです♪
だって 命を差し出す〜 覚悟切り〜
だって とうぜんお持ちでしょ〜
ごめ〜んね 鳥があおほど ひいちゃった♪
アチチの痛み メララの快感を全部〜♪
分け合いたいの 一緒に!
お願い 叶えて石油王♪
あなたの夢をも 焼き払い〜
まる焦げで ごめんなさいの あとさらい〜
お願い いいでしょ 耐熱〜
愛は裸になれること♪
炙り〜(炙り〜)尽くして(尽くして) 火炎放射器で 完全燃焼しよ☆
チャチャチャ♪ チャチャチャン♪♪

☆彡 ☆彡 ☆彡
ーーー青春火吹き娘ーーー 三千院ナギ

「「……」」
な、何なのだ!?この国会○事堂や金○寺が燃えている前で可愛らしく踊る魔法少女のような歌詞は!?
リリカル・トカレフ・キルゼムオールみたいな魔法でも使うのか!?三千院奥義書でも、もっとマシな技が書かれているはずだ!……たぶん。

「ま…まぁ、これでナギも必殺技を会得できたってわけだ……」
おい、モナ。そうはいっておるが、腕組みしながら渋い顔をしておるではないか!!

「おい。本当にこれで会得できたのか?」
ラジカセからCDを取り出すと、ラジカセをザックに仕舞いつつ私はモナに疑問を投げかける。

「あ…ああ。そのはずだ」
(火炎放射器……パレスの力なら具現化できてもおかしくないが……)

「どうにも胡散臭い……」
(火炎放射器を使う女……肉体言語だな)

私とモナはそれぞれ、【火炎放射器を扱う女】を【想像】した。

「ん?」
ふと、何か気配を感じ、その方向へ目を配るーーーすると。

ズズ……

突如、靄のようなものが私たちの前に現れたかと思うと人の姿に変わった。
その人物は女性でなんと、バカでかい鉄鋼を片手で持っているだけでなく背中には「火炎放射器」を背負っていた。

「一体何なのだ!?あの「汚物は消毒だ〜」と叫びそうな女は!?」
(それに、あれは火炎放射器ではないか!?)

まるで、先ほどのCDの歌詞に出てきた女のようだーーー
「やべぇ!ここは一度、退くぞ!!」

モナの提案に賛成の私はそのまま闘技台の外へ向かおうとする…が

「……!!」
潰れたのか顔が見えない女は私とモナの前へ一瞬に移動した。

「ナギ!!離れろ!!!」
ボォォォオオオオオオオ!!!!!!
モナの言葉と同時に女は焼き払うかの如く、火炎を勢いよく噴射してきた。

「うわぁああ!」
「あらよっと!」
危なかった!モナの言葉がなければ、私は炙りつくされてもおかしくなかった。
膝を擦りむいて痛いなどと言ってはいられない。

(くそっ!火炎が激しくてあの女に攻撃できない!!)
モナはどう攻撃をするべきか悩んでいるようだった。

「モナ!あそこの壁に攻撃しろ!!」
「そしたら、ガルーラをして、後ろの壁も同様にだ!!」
「!?」
(一体!?……へっ!ナギが自信満々に指示を出したんだッ!!乗ってやるぜ!!!)
「よし!任せろ!」

そう、それはーーー
ーーー駒捌きーーー

「意を示せ!ゾロ!!」
モナの言葉に応じたペルソナは風を舞い上げ、私の指示通り女ではなく、壁に攻撃を仕掛けた。
ゾロの怒涛の攻撃に闘技台の壁は崩れ落ち女に降り注ぐ。

「……!」
当然、女は攻撃を中止し、先ほど見せた超スピードで私たちの後ろへ回り込む。
火炎放射器は燃やした液体を【直線状】に出すのが特徴ーーーつまり、攻撃を避けた後、私とモナを確実に炙りつくすには、後ろへ回り込むのが定石だ。

「……」
再び、火炎放射器で私たちを狙いに定めると炎を放つがーーー

「ガルーラ!」
モナのペルソナが起こした勢いのある風は火炎放射器の炎を殺す。
そして、風の勢いは火炎だけでなく女をも吹き飛ばす。

「引導を渡す!」
場所は違えど再び、攻撃による瓦礫の落下。
火炎放射器による攻撃中かつ吹き飛ばされた状態で避けることはできずーーー

ガラガラガラガラ!!!!!!
女は私の予想通り瓦礫の山に埋もれた。

「うむ!チェックメイトだ!!」
「撤退撤退てったーい!」
無理は禁物。モナと共に急いで闘技台から逃げ出すーーー


☆彡 ☆彡 ☆彡
ーーー撤退ーーー モルガナ

「はぁ…はぁ…」
おかしいーーー追いかけてこない?
てっきり、追いかけてくるかと思ったが火吹き娘の姿は見当たらなかったーーー

「……」
(あれで、仕留められる相手じゃないが……)
あれこれ考えても仕方がないな……ワガハイとナギは草むらで汚れるのを覚悟で座り込んだ。

「そろそろ放送も流れる。一度、休憩しながら聴くとするか……」
本格的な戦闘ではなかったとはいえ、ヒスイに鋼人七瀬と主催側のジョーカーともいうべき存在との連戦はナギの限界を迎えていた。
放送も流れる頃だ。
ワガハイはナギに提案をする。

「あ……ああ。そうしよう。私ももうこれ以上は走れん……」

(案の定、疲れ切ってるな……よし、ナギの奴に労いをかけてやるか)

「そうそう、ナギ。いい指示だったぜ!」
ワガハイはそう言いつつ手を挙げる。
ワガハイの意図に気づいたのかナギは苦笑しながらーーー
「フン。当たり前だ!私の指示なのだから!!」

ーーーパン♪
互いの手が合わさり、スカッとする気持ちよい音が鳴った。
ピリピロリン♪
シュパァァ!!ザンッ!!!RANKUP!

コープのランクが5に上がった!

☆彡 ☆彡 ☆彡
ーーー撤退ーーー 三千院ナギ

私とモナは火吹き女から逃げ切ると、草むらに座り込んだ。

(全く……何なのだ!何なのだ!!あの女は!?)
私はあの名も分からぬ火吹き娘に憤慨する。
その横でーーー

「そろそろ放送も流れる。一度、休憩しながら聴くとするか……」
モナからの提案。
正直、草むらだと服が汚れるが私は疲れ切っているのもありーーー
「あ……ああ。そうしよう。私も、もうこれ以上は走れん……」
賛成した。

「そうそう、ナギ。いい指示だったぜ!」
モナは手を挙げている。
なるほど、モナの意図に気づく私。
(モナめ。私を労わろうと……ふふ)
つい私は苦笑すると同様に手を挙げてーーー
ーーーパン♪
互いの手が合わさり、スカッとする気持ちよい音が鳴った。

放送ーーーーー死者の名前も知らされる。

「……」
(なぁ、ハヤテ……マリア……死んでいないよな?大丈夫だよな?)
私は、不安を抱きつつも疲れた体と心を休めようとしたーーー


【B-4/草むら/一日目 早朝(放送直前)】

【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
[状態]:疲労(大) 不安(小) 膝に擦り傷 手の爪に砂や泥
[装備]:CD火炎放射器と私@虚構推理
[道具]:基本支給品 CDラジカセ
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗らない
1.姫神…何をたくらんでいるのだ?
2.次に出会ったとき、ヒスイと決着をつける
3.ハヤテー!マリアー!どこだー!……生きているよな?
4.烏間なる人よ……成仏してくれ
※モルガナとのコープが5になりました。以下のスキルを身に付けています。
「駒さばき」集団行動のとき、メンバーに的確な指示を出すことができるようになる
「お嬢様の追い打ち」モルガナの攻撃で相手をダウンできなかった場合、追撃する。
※ヒスイとのコープが9になりました。まだスキルは解放されません。
※ヒスイが姫神側の人間であると知りました。
※ペルソナの存在について理解しました。
※ロトの鍵捜索中からの参戦です。
※もしかして自分は「運動が実は得意」なのではないかの思いが内心、芽生えました。

【支給品紹介】
【火炎放射器と私@虚構推理】
モルガナに支給された音楽CD。鋼人七瀬の生前……七瀬かりんが主演に抜擢されたドラマ青春火吹き娘のOPソング。
実は桜川六花により、再生をして生まれた想像によってパレスの力と合わさり鋼人七瀬が強化されるようになっていた。なお、お詫びのつもりなのか再生するためのラジカセは付属品扱いとして支給されている。

【武見内科医院薬セット@ペルソナ5】※ヒスイに渡さなかった分
武見妙が扱う医薬品。効果は確かに効く。
内訳 ナオール錠50mg×1 ダメージ・疲労を(低)回復させる
   タケミナイエールZ×2 味方全体のダメージ・疲労を(中)回復させる
   全快点滴パック×1 味方全体のダメージ・疲労を全回復させる※参加者との戦闘中は使用不可

【モルガナ@ペルソナ5】
[状態]:ダメージ(低)疲労(中) SP(低)
[装備]:ノーザンライトSP@ペルソナ5
[道具]:基本支給品 不明支給品(1)(不明支給品にモルガナが扱える武器は含まれていません。)
[思考・状況]
基本行動方針:ナギとの取引を果たす
1.ここは誰のパレスなんだ?
2.姫神の目的はなんだ?
3.ここで一度休息も兼ねるか……
※ナギとのコープが5になりました。
※ヒスイが姫神側の人間だと匂いでわかりました。六花の匂いにも気づきましたが、異様な匂いだと感じています。
※シドウ・パレスのレストランで政治家・大江を倒した時よりは後からの参戦です。

【支給品紹介】
【ノーザンライトSP@ペルソナ5】
三千院ナギに支給されたパチンコ。ガンカスタムが施されており、「低確率で凍結付与」の効果が付いている。
弾の装填数は4。戦闘1回ごとに補充される(1回の定義は放送毎に補充)

☆彡 ☆彡 ☆彡
ガラガラと音を立てながらも瓦礫の山から這い出た火吹き娘……ならぬ鋼人七瀬。

「……」

このまま、ナギとモルガナを追うのか、別のエリアへ行くのかわからない……が、一つだけわかるのは想像力の怪物が取るべき行動は何も変わらない。

参加者の襲撃ーーーーーそれが自身に課せられているのだから。

【B-3/闘技台/一日目 早朝】
【鋼人七瀬@虚構推理】
[状態]:ダメージ(極小)
[装備]:鉄鋼@虚構推理 火炎放射器@虚構推理
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:参加者の襲撃

※パレスの認知と桜川六花の虚構が混ざり存在している。ただの物理攻撃では倒せない。
※致命傷を与えられると、靄に包まれ、別のエリアへ移動する。
※噂や想像が鋼人七瀬に影響を良くも悪くも与えます。
※CD【火炎放射器と私】により、火炎放射器が装備に加わりました。
※その他の状況はまだ不明。

※B-3闘技台の外に烏間の墓(簡易)があります。


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投下順
026:理想と現実はちがうけどできるだけ理想に近付きたい 三千院ナギ
モルガナ
028:現実・幻想・虚構 鋼人七瀬
最終更新:2021年05月01日 01:01