現実―――いま目の前に事実として現れているもののこと。
桂ヒナギクは困惑していた。
今まで、教会地下迷宮探索をしたり、ロボットと戦ったり、ミコノス島で黄金の王の亡霊と対峙したりなど、様々な某ネコ型ロボットの大長編のような場面を切り抜けてきた。
しかし、『殺し合い』というバイオレンスな場面は精神に陰りを与える―――
桂ヒナギクは無力感に苛まれていた。
あの場において自分は何もできなかった。
坂本とかいう金髪の少年のように姫神に反逆の意志を見せることもなく、ただ観客Aとして立ち、少女の頭と首が離れるのを唖然と眺めていた……
「千穂さん…といっていたかしらね」
死んだ少女…佐々木千穂とは、ほんの少し会話を交わしただけ…別に友人でもない。だが、自分と同じ【居るだけで安心できる人】がいたのだ!!
もう、佐々木千穂は大切な人と会話を交わすことはないのだッ!!!
両眼を瞑るヒナギク……
「絶対に負けないわよ…ッ!!」
白皇学院の生徒会長としてこれ以上、情けない姿を見せるわけにはいかない。
目をカッと見開いたヒナギクは行動に移す。
デイパックの名簿を手に持つとパラパラパラと勢いよくページを捲る……
「…よしッ!名前と顔は覚えたわ」
普通なら『いやいやいや、ギャグでしょ!?』とツッコむところだが、
1000人はいる白皇学院全員の生徒の名前と顔を把握しているヒナギクにとって44人は苦にもならない。
ヒナギクは名簿の記載から思案した。
三千院ナギ―――同じ白皇学院に通う生徒で大切な友人。中々、剣道部へ顔を出さないのが、もどかしいが……
マリア―――ナギに使えるメイドさん。ハヤテ君のことで相談を聞いてもらったりアドバイスをくれる大人のお姉さん。たまにストレートに突き刺さる言葉は勘弁してほしいけど……
西沢歩―――学校は違うが、ナギ同様大切な友人。そして、恋のライバル―――
鷺ノ宮伊澄―――ナギや私と同じ白皇学院に通う生徒。結構、面倒事に巻き込まれるとき、よく関わる子……
初柴ヒスイ―――ナギの幼馴染の一人らしい。私自身は面識がないからなんとも言えない……
綾崎ハヤテ――――ナギに使える執事で、私の想い人―――
「…ハヤテ君」
好きだが自分から告白するのは【負け】と感じるヒナギク。
だが、一抹の不安がヒナギクを覆う。
「もし、ハヤテ君が…私が死んだら?」
最悪の光景を浮かび、それを取り除くよう頭を振るヒナギク。
「…大丈夫よ。私もハヤテ君もこんな場所で死んだりはしないわ!」
精神を落ち着かせようと自分に言い聞かせるヒナギク。
今後の事を考えながら歩いていると……
「ッ!?あれは!!」
視線の先に見えるのは自分と同じ桃色の髪をした少女が鉄鋼をもつ紫髪の女性に襲われている。
「……」
プルプルと体を震わせるヒナギク……
「白桜ッ!!!!!」
主の声に呼応して白桜は神速に鉄鋼女へ突っ走る!!!!!!
☆彡 ☆彡 ☆彡
「はぁぁぁあああ!!」
白桜の一閃が鋼人七瀬に叩き込まれるッ!
―――が白桜の刃は鋼人七瀬の体をすり抜ける……
(やっぱり、攻撃が通らない!?)
「……」
ブンッ!握りしめた鉄鋼が振り回される。
(攻撃を受けとめることができない…けど、避けきれるッ!)
ヒナギクは鉄鋼の動きを読み、紙一重で避けている。
鋼人七瀬による鉄鋼攻撃は動作こそ単純だが、一撃その身に浴びれば致命傷へとつながりかねない。
現に白桜を装備したヒナギクでさえも衝撃を殺しきれず、打ち飛ばされたのだ。
(うッ!?…あまり長期戦はできないわね…)
腰の痛みに脂汗が額に浮かぶ。
鋼人七瀬と戦うには、不死の体をもつか、それこそ、人の身でない頑丈な体をもつ者しか対抗手段はない……
「ヒナギクさん!」
(どうしよう!?私に何かできないことはないのかな?)
鹿目まどかは涙目で自分のデイパックの中身を確認する。
出てきたのは中心に鈴がついているリボン……説明書には【これを身に付ければ、あなたもハーマイオニーになれる】と書いてあるだけ…
一見、見ればただのコスプレ用のリボン……しかし、まどかはその名を目にして。
(ハーマイオニーってたしか…)
まどかは、ハーマイオニーの名前に小説の魔法使いの少女が頭に浮かんだ……
「あうッ!?」
鉄鋼の直撃こそ避けているが、腰の痛みがヒナギクの動作を遅くしていく……
まどかは、そんなヒナギクの姿を見ると意を決して、鈴のリボンを首元に装着すると両手で祈る!!
(お願い!何も取り絵もない私だけど…ヒナギクさんに力を貸して!!!)
カッ!! すると、リボンから光が放ち…!!
「こッ…のぉぉぉおおお!!胴!!!!!!」
バシィィィイイイ!!!!!
ヒナギクの力を込めた胴が…鋼人七瀬の腹にヒットする!
「……!?」
「え?当たった!?」
攻撃を繰り出したヒナギクはもちろん、鋼人七瀬も驚きを見せた。
パレスは認知の世界―――
キュゥべえと契約をかわしていない、まどかはただの中学生の少女……
しかし、インキュベーターに【魔法少女】としての素質を見込まれている。
まどかが身に付けた綾崎ハーマイオニーのリボンが【魔法】の【媒体】となって【祈り】が通じたのだ!!
「ヒナギクさん!!」
「まどかさん!?…ありがとう。これならアイツをブッ倒せるわ!!」
ピロピロリン♪ ♪ ♪
ヒナギクはまどかに視線を向けると、攻撃が通用した理由を瞬時に察して、サムズアップしてウインクした☆
我は汝…汝は我…
汝、ここに新たなる契りを得たり
契は即ち、
囚われを破らんとする反逆の翼なり
我【審判】のペルソナの生誕に祝福の風を得たり
自由へと至る、更なる力とならん…
シュパァァ!!ザンッ!!!RANKUP!
コープのランクが4に上がった!
ヒナギクの白桜の連打が鋼人七瀬に次々とヒットする!
攻撃が通るようになり、鋼人七瀬も動作がゆっくりとなる。
(…腰の痛みがなければ…ッ!)
一気に畳みかけてぶっ飛ばしたいが腰の打撲がそれを許さない―――
「……!!」
ブオッ!!!
「しまッ・・・!?」
「ヒナギクさんッ!!」
鉄鋼がヒナギクの顔面に迫る―――
ガッ!!!!!
☆彡 ☆彡 ☆彡
幻想―――根拠のない空想。とりとめのない想像。
大山猛(ファフニール)は激怒していた。
人間の手により左腕を切断されたことに。
混沌勢に属する自分が襲撃者の命を刈ることができなかった己に怒っていた。
大山猛(ファフニール)は自己を見つめ直していた。
(俺は、弱くなったのか?)
(人間と関わるようになったからか?)
(人間ごっこをし続けている結果がこれなのではないか?)
ファフニールの目がどんどん濁っていく。
(いや…アイツは強くなっている…人間と関わって)
しかし、人間と関わることで強くなったドラゴンがファフニールの身近にいる。
ファフニールの脳裏に浮かぶドラゴン―――トールは守るべき財宝を見つけた者の強さを身に付けている。
(俺は…アイツのように人間と関わることで強くなるのか…?)
ファフニールの疑問に答えはまだ出ない。
互いに無言で歩いていると、滝谷が何かに気づき発した。
「ファフ君!あれ!!」
滝谷が指さす方角に映るのは、二人のピンク髪の人間と鉄鋼を振りまわす危なげな女―――
「このままでは、あの女たちは死ぬな―――」
ファフニールの見立てでは、ピンク髪の二人の死を予見していた。
「…どうする?今のうちに別のエリアに移動する?」
滝谷の選択……
それは、見捨てる――――非情だが、生き残るためには必要な一手かも知れない……
「ふん。…悩む暇があるなら力を磨き続けることが俺のやるべきことだ」
「え?」
ファフニールは一直線に戦いの場へ走った―――
☆彡 ☆彡 ☆彡
ガッ!!!!!
「……え!?」
死を覚悟したヒナギク。
そんなヒナギクの眼前に右前腕で鉄鋼を受け止める男性―――
「あの人、腕ッ!!」
青ざめるまどか―――
鉄鋼の威力を見続けてきた、まどかには分かる。
『あれ』を生身で受けたら無事で済まないことを……
「…大丈夫だよ」
「…えッ!?」
震えるまどかの肩を落ち着かせるように優しく手を置きながら話しかける滝谷。
「ファフ君はとっても強いでヤンスから」
眼鏡をかけると、中指でクイッと持ち上げる滝谷。
ドガァァアア!!!
鉄鋼を右前腕で受け止めたファフニールはすかさず、左足で鋼人七瀬の鳩尾深く蹴る!
ズザァァァアア!!!
蹴りの衝撃で鋼人七瀬は地面に足をつけたまま、吹っ飛ぶ。
「チッ…殺すつもりで蹴ったんだが、気に入らん……」
「あ…あなた!大丈夫!?」
不満な顔に声のファフニールにヒナギクは心配そうに声をかける。
「問題ない。それより、邪魔だ。下がっていろ女」
「…はい?」
ピキッ☆
ヒナギクは笑顔のまま眉をひそめる。
「……」
鋼人七瀬は乱入してきたファフニールに鉄鋼を振り回そうとするが…
「胴ぉぉぉぉ!!!!!」
ヒナギクは鉄鋼に構えるファフニールの前を通り過ぎると、鋼人七瀬に鋭い胴をお見舞いする!
ヒナギクの胴に吹っ飛び横転する鋼人七瀬。
「…おい。どういうつもりだ?言葉が通じないのか?」
ファフニールは自分の忠告を聞かずに退かないヒナギクにイライラした声で諫めるが……
「悪いけどそういうわけにはいかないのよ」
ヒナギクは腰の痛みを感じさせない凛とした声で――――
「私、生徒会長だから、目の前で困っている人を助けないわけにはいかないの」
ファフニールに言い放つ―――
☆彡 ☆彡 ☆彡
虚構―――実際にはない、作り上げたこと。作り事を仕組むこと。
鋼人七瀬は悠然と立ち尽くす―――
存在を否決され、確かに消滅したはずだった……
一度、根付いた話はそう覆ることもなく、復活をするはずがない。
鋼人七瀬は指令に従う―――
復活したのなら鋼人七瀬が行うことはただ一つ……
姫神・再度自分を生み出した桜川六花の想像力が鋼人七瀬の原動力となる。
殺し合いという場において座り込むという愚行を犯しているピンク髪の少女の命を刈ろうと……
無情に鉄鋼を振り下ろす。
☆彡 ☆彡 ☆彡
幾度となるヒナギクとファフニールの攻撃を受け、倒れても起き上がっては襲い掛かる鋼人七瀬。
(チッ…埒が明かない。癪だが、仕方がないな…」
ファフニールは眉を顰めるとヒナギクへ視線を向けて。
「おい女!俺に合わせろ!!」
「嫌よ。あなたが私に合わせなさい!!」
「ドラゴン相手に対等のつもりか人間」
今すぐにも、ヒナギクを呪い殺しにかかってもおかしくない形相で睨むファフニール。
「そうよ」
ヒナギクはファフニールの眼光に怯まず凛と答える―――
「…フン。言ったからには、やってみらうぞ」
ーーパリィン!
「ええ―――小手ぇぇ!!」
鋼人七瀬の鉄鋼を持つ手右手に人七瀬の鉄鋼を持つ手右手に力強い小手がお見舞いされる!!
「…ッ!?」
さしもの鋼人七瀬も鉄鋼を手から放す―――
「いまよぉぉぉぉ!!」
「―――上々だ。女」
ズンッ!!!
ファフニールの拳が鋼人七瀬の腹を突き破るッ!
「……ッ!!??」
拳を引き抜くと同時にまわし蹴り!!
鋼人七瀬の首があらぬ方向へ向いて地面に伏した。
「やったわ!!…ん?」
喜ぶヒナギク。
「……」
ファフニールはヒナギクから顔をそらしつつも、右腕を挙げている。
「……クス」
ファフニールの意図を察したヒナギクは微笑むと―――
「やったわね♪」
ハイタッチを行った―――
我は汝…汝は我…
汝、ここに新たなる契りを得たり
契は即ち、
囚われを破らんとする反逆の翼なり
我【陰者】のペルソナの生誕に祝福の風を得たり
自由へと至る、更なる力とならん…
シュパァァ!!ザンッ!!!RANKUP!
コープのランクが4に上がった!
大山猛(ファフニール)が「呪サポート」・「ドラゴンサーチ」・をしてくれるようになった。
ズズズ…ゴキッ!!
鋼人七瀬は起き上がると、曲がった首を元通りに戻す。
「チ…しぶといな」
「まだ、やるつもり?」
ヒナギクとファフニールはうんざりした様子で構え直すが……
「「「「……消えた?」」」」
鋼人七瀬は靄に包まれると姿を消した―――
☆彡 ☆彡 ☆彡
対峙していた鋼人七瀬が影もなく姿を消したため、互いに自己紹介を交わす―――
「ドラゴン…まさか、空想上の生き物だと思っていたけど実在するなんて…驚きだわ」
「ドラゴン…なんだか、とってもカッコイイですね♪」
ファフニールがドラゴンであることにそれぞれ違う反応を見せるヒナギクとまどか。
「ふん…それより、これからどうする?足手まといになられるのだけは、勘弁してほしいが」
「そうね。この場合、「どちらが」だけど♪」
「「……」」
協力し合ったばかりの2人の間に火花が散る―――
ピロピロリン♪ ♪ ♪
「ヒ…ヒナギクさん!!」
「むむ!これが、リアルツンデレでヤンスか!?…まま!後、数時間で放送が流れるでヤンスから。それを聞いてから、今後の方針を立てては?」
つかの間の休息――――
【C-3/平野/一日目 黎明】
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態]:腰の打撲 疲労(低)
[装備]:白桜@ハヤテのごとく!
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:誰も死なせない
一. 放送に耳を傾けて今後の方針を考える。
二.まどかと行動を共にする。
三. 佐々木千穂の思い人に出会ったら、共に黙とうを捧げたい…
※ファフニール・鹿目まどかとのコープが4になりました。
※名簿を暗記しました。
※参戦時期は姫神と面識を持つ前です。
※情報交換によりドラゴンの存在と向こうの世界(異世界)について知った。
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康
[装備]:綾崎ハーマイオニーの鈴リボン
[道具]:基本支給品 不明支給品1~2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを終わらせる
一.放送に耳を傾けて今後の方針を考える。
二.キュウべえが居るなら、魔法少女になってでも
三.ヒナギクと行動を共にする。
※ヒナギクとのコープが4になりました。まだスキルは解放されません。
※情報交換によりドラゴンの存在と向こうの世界(異世界)について知った。
【支給品紹介】
【綾崎ハーマイオニ―の鈴リボン@ハヤテのごとく】
鹿目まどかに支給された鈴リボン。本来なら、ただのコスプレ道具だがまどかの持つ素質とパレスの認知が融合してヒナギクに祈りを届けた。
結果、ヒナギクは「怪異なる存在」に攻撃を与えられるようになった。現在はただのコスプレ道具―――(※また、リボンから祈りが届く力が発動するかは後続の書き手様に一任します)
滝谷真@小林さんちのメイドラゴン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3(本人確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:好きなコミュニティーを維持する
一.放送に耳を傾けて今後の方針を考える。
二.ファフ君がドラゴンとして殺し合いに乗るのを防ぐためにも、まずは自分が死なない
三.小林さんの無事も祈る
[備考]
アニメ第6話と原作第54話(滝谷とファフニール)より後からの参戦です。
【大山猛(ファフニール)@小林さんちのメイドラゴン】
[状態]:左腕喪失(再生中) 人間に対するイライラ(低)
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3(本人未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:姫神を殺す。
一.放送に耳を傾けて今後の方針を考える。
二.ひとまずは滝谷を守りながら脱出の手段を探す。
三.ふん、生意気な女だ…(ヒナギクに興味を抱いた)
※ヒナギクとのコープが4になりました。以下のスキルを身に付けました。
「呪サポート」バトル中、一定の確率で相手を呪う
「ドラゴンサーチ」この殺し合いの場で出会った人物のみ、自分の周辺エリア(四方)にいる参加者をサーチすることができます。
[備考]
滝谷真と同時期からの参戦です。
【?-?/?/一日目 黎明】
「……」
とあるエリアに出現する鋼人七瀬。
これからも彼女は参加者を襲う。それが自らに課せられた想像力だから―――
【鋼人七瀬@虚構推理】
[状態]:健康
[装備]:鉄鋼@虚構推理
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:参加者の襲撃
一.……
※パレスの認知と桜川六花の虚構が混ざり存在している。ただの物理攻撃では倒せない。
※致命傷を与えられると、靄に包まれ、別のエリアへ移動する。
その他の状況はまだ不明。
最終更新:2021年09月19日 18:52